灰色の本

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『デリシャスパーティ♡プリキュア』第1話「ごはんは笑顔♡変身!キュアプレシャス」:感想

『デリシャスパーティ♡プリキュア』第1話「ごはんは笑顔♡変身!キュアプレシャス」の感想です。

 

プリキュアについては通しで見たことがあるのは数作品だけのにわかなのですが、デリプリは第1話が良かったので『デジモンゴーストゲーム』の感想が落ち着いたらゆっくり視聴して感想を書きたいなと前から思っていました。まさか東映アニメーション不正アクセス事件で『ゴーストゲーム』と一緒に放送が止まるとは思っていませんでしたが。

 

※リアルタイムより遅れて視聴していますが、先の話を視聴していない状態で執筆しています。

 

 

■コミカルで楽しい印象が良い。このまま続けてほしい

1話にして既に作風とイマジナリーラインがきっちり固まってる印象なのが好感が持てます。コミカルな映像で、明るく楽しい雰囲気です。完全とは言わないものの気を使って粗は潰している印象で、ほぼスムーズに見ることができました。細かくは気になるところはありますが、1話の限りは粗<面白さと思います。

このままの明るい作風を維持していけるなら面白そうだなあと素直に思いました。適度に目標を切って、頑張って中だるみは回避して、適度に目標達成してくれればそれで良い。1話の印象のまんま妥当に積み上げていきましたみたいな作品が見たい。無理して奇をてらわなくて良いから、このまま王道で進む作品が見たいです。

 

 

■主人公ゆいが好印象。独善的でアンバランスな面もあるが……?

ゆいはなかなか面白いバランスで描かれていて、魅力的だなあと感じました。最初におにぎりを食べているシーンで既にすごく魅力的な表情だったので叶わなかったですが、それ以外も魅力的。

 

ゆいはおにぎり目当てで人を手伝いに行って、ほわほわと実に美味しそうに幸せそうにおにぎりを頬張っているほわほわした女の子です。

が、その一方でスポーツ万能で俊敏。人のピンチを発見するとその俊敏さも活かして突撃していきます。そのときの真剣な表情はまるで別人のようです。行き倒れていたローズマリーを見ていきなり抱きかかえ、「大丈夫! すぐにこの街で一番のお店に連れて行くから!」と言い出したときの表情は自信満々でローズマリーを連れていくことの不安は何もなく、なんとも頼れる様子でした。何も知らない状態で「コメコメと一緒にプリキュアに変身よ!」と指示されて、「分かった、やってみる!」と答える声と表情もなんと頼もしいことか。変身後も、自分がとんでもない身体能力で身体を動かしていること自体には全く戸惑いません。

 

その自信にあふれた姿は凛々しく頼もしいですが、独善とも表裏一体です。

彼女はレシピッピを守ろうとするあまり、ローズマリーが周囲の人間を巻き込まない目的もあって展開したと思われるデリシャスフィールドに無理矢理突っ込んできました。ローズマリーが逃げるように指示しても全く聞き入れずに突撃し、結局は敵に捕まり、ローズマリーはあやうく彼女のためにジェントルーを見逃してレシピッピを奪われるところでした。結局はそれがゆいのプリキュア覚醒に繋がりましたが、覚醒する隙を作るための攻撃を放ったことで、ローズマリーのネックレスにはめられた宝石はヒビが入って光を失ってしまいます。その宝石はローズマリーの力の源かなにかと思われ、恐らくローズマリーは重要な力を失ったのだと予想されます。ゆいが身勝手な行動をしなければ恐らくローズマリーは宝石と力を失わずに済んだのです。

ゆいの強い優しさと、その優しさを現実の行動に転換する勇気と自信と判断力(とついでに身体能力)は間違いなく彼女の美点です。しかし、非常にアンバランスな美点です。迷うことなく自信満々に振るわれる優しさは、いつでも独善に陥り、彼女の望みと逆の結果をもたらす可能性があるからです。

 

個人的には、ゆいはそのアンバランスさも含めて魅力だと感じました。ですが、果たしてこのキャラを、脚本は上手く制御していくことができるでしょうか? このまま独善性が大きくなっていって破綻するのか? 逆にその危なっかしさが影を潜めて、無かったことになっていくのか? それとも、彼女の物語が進むにつれ、その独善性にもなんらかの成長と結末が用意されるのでしょうか。この観点に注視したうえで、見守っていきたいキャラだな、と思いました。

 

 

■主要モチーフである『食事』が魅力的に描かれている

食事の表現がしっかりしていて良いです。豪華で「すげえ、超美味しそう! 食べてえ!」という絵ではありませんが、シンプルながら丁寧に描かれていて、「ああこれは美味しいんだろうな」と分かります。ときどき料理の作画が他の作画に比べて浮いているアニメってありますが、『デリプリ』の料理作画はちゃんと世界観にもマッチした絵柄で、当たり前のことかもしれませんが感心しました。

また、食べているキャラの表情演技も相まってちゃんと「美味しそう」なのが良いですね。アニメとしての枚数の話は詳しくは分かりませんが、少なくとも(食べるシーンに限らず)表情はよく動いていたと思います。

やはり印象的なのは、主人公・ゆいがおにぎりをほおばる最初の食事シーンでしょうか。デフォルメ強めに頬をピンクに染め、大きく頬を膨らませて満面の笑みでおにぎりを食べるゆいはコミカルですが「美味しい」と思っていることがよく伝わってきて、このシーンだけでも魅力的なキャラだと感じました。

 

 

ローズマリーの扱いはやや危なっかしいか?

ゆいがプリキュアになるきっかけを持ち込んだローズマリーについては、今のところ好印象寄りですが、スタッフがどのように考えてこのキャラをメイキングしたのか掴めておらず、やや懸念がある状態です。

 

ものすごく雑に表面的に言ってしまえば、ローズマリーはいわゆる『オネエキャラ』っぽいキャラ付けであるわけです。この『オネエ』という属性自体がまだまだ差別的な目に晒される存在であり、更には『オカマ』、『ホモ』という蔑視表現と結びついたり、『ゲイ』(同性愛者)に対する差別とも紐づきやすいというのが日本の現況です。

この属性のキャラを出さないでほしいというわけでは全くありません。ただしこの属性のキャラが出てきた時点で一部の視聴者なり読者なりは、「この作品の制作者はどのような気持ちでこのキャラを出したのだろう。差別的な笑いを取るためか? 逆に『私たちはこんなキャラを出してるけど差別者じゃないんですよ』というアピールのために聖人キャラにするつもりか?」と制作者に対して身構えてしまうというのはあるのです。自分はそうやって身構えながら1話のローズマリーを見守って、まだ構えを解くことはできません。

 

実際、『デリプリ』の制作スタッフもそのようなことはとうに承知で、気をつけてローズマリーのキャラのバランス取りをしているようには見えるのです。

行き倒れ状態でゆいの前に現れるけれど、過度に無様さや無能さを強調するような描写をして笑いを取りに行くことはしない。空腹で倒れた直後でもお金がないので施しを断るという常識人らしさも見せ、食事のお礼の皿洗いを不満そうな様子ひとつなくこなす。無理矢理デリシャスフィールドに突っ込んできて身体能力だけで非常識をするゆいにコミカルにドン引きしていたのも常識人らしさを強調していました。ゆいに逃げるように指示するものの、レシピッピを助けようとするゆいの意志を止められそうにないと判断するとゆいのサポートに回って彼女に危険が及ばないように立ち回ったり、ゆいが捕まってしまうと自分の目的を捨ててまで庇おうとしたりするのは善人らしさが出ていました。

ついでに言えば、キャラデザインも『オネエだからおかしい』というような見た目ではありません。男性だと分かる(男性だと思わせる?)骨格と髪の表現ですが、メイク表現は丁寧で、個人的には「ちゃんと綺麗だなあ、綺麗な範囲におさめたキャラデザにしているなあ」と思いました。

 

個人的には、ローズマリー本人には問題を感じませんでした。制作スタッフが意図しただろうとおりに、きちんと『オネエキャラであることを馬鹿にしないオネエキャラ』としてバランスが取られ、無様さを強調されるギャグキャラでなく、かと言ってなんでもできる超人・聖人でもなく、大人ではあるものの相応に悩む等身大のキャラとして描かれていたと思います。

 

気になるのは、二度にわたるゆいとのやりとりです。

ローズマリー「美しさの秘訣? 気になるわよね~やっぱり~!」

>ゆい「それはいいかな」(ゆいの他の台詞の印象と釣り合わないほど淡々とした声で)

ローズマリー「代わりに、美しさの秘訣を教えてあげるから」

>ゆい「それはいいかな」(どちらかというとやはり淡々とした声で)

明確にゆいがローズマリーをどう思っているか、ということが分かる発言ではありません。ただ、「ローズマリーはオネエ~オカマだから自分を美しいと思っている」「ローズマリーはオネエ~オカマだから当然美しくはない」という前提で発されているやりとりのように見えて、モニョりました。1回ならまだ分かるんですが、2回も繰り返されてしまうとちょっと「制作スタッフはどういう意図でこれを2回も言わせたんだろう……」と鼻につきます。

アウトかセーフかと言われると、判断に迷いますが個人的にはギリギリセーフということにしておきたいです。長々と書いておいてなんですが、まだあげつらって非難するほどの酷さではないとも思いました。

ただ、例えばこれを定例やりとりとして後々まで繰り返し、何のフォローもリカバリもないのなら、「ローズマリーが『オネエキャラ』であることについてものすごく気を使って描写しているように見せて、やっぱり根本的なところが雑なんだろうな」と思ってしまう可能性は高いと思います。ひいては、ローズマリーは『オネエキャラ』にしないほうが良かったよね、ローズマリーというキャラじゃなくて良かったよねと感じてしまうと思います。

どうか制作スタッフが『オネエキャラ』という属性を与えたローズマリーのことを最後まで応援できますように、と願います。

 

 

■あくまで「食べる」がテーマ? 「作る」がテーマに変わっていくのか?

OPの歌詞を参照すると「作る楽しさ」という文面があり、素直に考えると単に「料理を食べる」だけではなく「料理を作る」という方向に進むように思われます。

ただ、1話を見る限りは「料理を作る」までこの作品でやる必要はないと思います。個人的な好みでも、そこまでやらずに「料理を食べる」のみで通してくれたほうが良いです。

なんか、ここに「料理を作る」まで入れると取っ散らかりそうな気がするんですよね。料理を食べるのが好きな子たちが「料理を作る」に辿り着くのはそこそこ自然ではありますが、この世界観なら「美味しい、嬉しい」という単純な話を丁寧にやり続けたほうが良い気がします。

最も、定食屋の娘である主人公ゆいが、食べるのが好きなのに全く作るほうに意識が向かないのもそれはそれで不自然なので、「作る」の方向に話がシフトしてもおかしくない土台はできていると思います。

 

 

■そのほか

・いちいち嫌味を言うセクレトルーは、今回は大した出番がないにも関わらずキャラが既に濃いなあと思いました。こういうポイントを持ってるキャラは強いですね。本格的な出番が来たときに印象がどうなるかはまた別問題ですが。

 

・ブンドルー! は似合ってないし、やらされてるともなんとも言われてないのにやらされてる感があってシュールですね。世界観には合ってると思います。

 

・キュアプレシャスの目のカラーリングが綺麗で好きです。

 

・コメコメはキャラ的には可愛いのですが、『キュアプレシャスの相棒枠』として見るとどうしたいキャラなのかいまいち分からないです。戦闘で補助役などの能動的な立ち回りができそうなキャラにも見えないし、一応『変身するのに必要』という設定なのでしょうが、変身バンクでも影が薄くてキュアプレシャスに力を与えている印象が薄いです。小さいからサイズ的にも目立たないですし。

 

・『デリシャスパーティ』というタイトルネーミングは好きなのですが、『パーティ』要素は何かあるのでしょうかね。複数人で食べるから、ぐらいの意味? 単に『デリシャスプリキュア』だと味気ないから足しただけ?