灰色の本

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『デリシャスパーティ♡プリキュア』第17話「4人目のプリキュア!? あまねの選択」:感想

『デリシャスパーティ♡プリキュア』第17話「4人目のプリキュア!? あまねの選択」の感想です。

うーん。何かが致命的に悪いわけでもないが、とにかく全体的にピンと来ない。

 

 

■あまねのプリキュア化前のワンクッション回の出来栄えは……。

前回の感想より。

>次回があまね再登場&プリキュア化回のようなので、「大丈夫かな……」とも思います。

>あまねの失意&ゆい達との友情の始まりをじっくり描写する回をプリキュア化回とは別にワンクッション挟むとか、前回今回のここね&らん個人回をあまねを絡めて進めるぐらいでも良かった気がしますが……

実際には、まさに今回第17話がそのワンクッションにあたる回でした。あまねが今回プリキュア化しなかったことに驚きました。

でも確かに、今までのプリキュア化回ではすべてサブタイトルに変身後のプリキュア名が入っていましたからね。プリキュア名がサブタイトルに入っていない時点で、勘が良い人には「今回はあまねのプリキュア化はおあずけ」とバレバレだったのかもしれません。

 

で、そのワンクッション回としての出来ですが……うーん。

いろいろとピンと来ませんでした。はっきり「ここが強烈に悪い」というところもないんですけど、もっとなんとかできたんじゃないかな……。

 

 

■あまねの葛藤がピンと来ない

あまねはずいぶんと、自責的な女の子ですねえと思ってしまいました。みんなに慕われているし、生徒会長の堂々とした振る舞いからは自分に自信がないタイプの子だとも思えないのですが。(かといって生徒会長の振る舞いが仮面というわけでもないようですし。)

根がまじめだというのが強いのか、それともジェントルーとして暗躍させられていた件は彼女にとってそれだけダメージがある事件だったということでしょうか。はたから見ると「あまねの意志じゃなくて洗脳させられてたんだから仕方ないじゃん」と思ってしまうのですが、やはり本人からするとそう簡単ではないのでしょうか。

 

疑問なのは、ジェントルーとしての暗躍と、生徒会長を辞める……というのが繋がってこないことなんですよね。別に生徒会長として生徒に迷惑をかけたわけじゃないですよね? 確かに生徒会長の権限を使ってプリキュア達を補習で動けなくさせようとしたことはありますが、ほかの生徒に被害を出したことはないと思います。

これが例えば「レシピッピが見えることをきっかけに料理によりいっそう興味を持ち、パティシエを志していた。洗脳されてジェントルーとしてレシピッピを傷つけてしまった自分にはもうレシピッピ=料理に携わる資格はないと考えてしまい、心が折れてパティシエを辞めると言い出した」なんて流れなら分かるんですけど、レシピッピを傷つけたから生徒会長を辞める……ねえ。ピンと来ません。

 

あまねは洗脳無しの状態でしっかり登場するのは今回が初めてという状態です。確かに、洗脳されていた状態でもレシピッピを傷つけることへの葛藤を感じていたので真面目で優しい善良な人物だというのは分かっています。今回の展開が極端に不自然というわけではないと思います。

それでも、描き方が強引だなあとは感じてしまいました。せっかく変身前のワンクッション回を入れたんだから、もうちょっと丁寧に……。

 

 

■副生徒会長のエピソードもピンと来ない

残念ながら副生徒会長のエピソードも唐突でピンと来ませんでした。副生徒会長自体が突然現れており、突然にエピソードを話すだけ話したみたいな印象です。

 

序盤であまねが生徒に慕われている描写を挟んだのはあまねの描写としては良かったと思います。ですが、そのせいで副生徒会長は「ほかの生徒たちと同様にあまねを尊敬する人」かのように見えてしまい、「あまねが『特別に』信頼している人」だという印象は薄くなってしまった気がします。いや、ちゃんと「あまねに恩があり、あまねを支えて自分も頑張る人」だとは描けているんですけどね。ほかの生徒とのギャップが弱いというか……。

例えばこのシーンで、副生徒会長が先陣を切って駆けつけてきてあまねを心配し、ほかの生徒を整理してあまねに「ありがとう。心配をかけた」などと言わせていれば、短い尺であっても唐突感は薄れたんじゃないかなあと思います。

 

フルーツポンチエピソードもざっくりしているというか、「いつもどおりノルマはこなしました」感がありました。フルーツポンチが重要というより、あまねの言葉かけが良かったっていうだけじゃないですかね?

ここ、セリフ回しを見ていると、実際ちょっとちぐはぐした印象を受けるんですよ。

>回想あまね「まあそう思い詰めるな。

> 好きこそものの上手なれと言うだろ」

>副生徒会長「わたし、周りの評価を気にして

> 好きなことをやめようとしていたんだ。

> けど、あまねが作ってくれたフルーツポンチを食べたら、

> すっごくおいしくて気持ちが晴れて、

> そしたらなんかさ、また頑張ろうって思えた。

> だから今もピアノを続けられてるのは、

> この大好きなフルーツポンチのおかげ!」

>あまね「そうだったのか……。

> わたしはただ、美味しいフルーツで元気になってほしくて……」

副生徒会長の「わたし、周りの評価を気にして好きなことをやめようとしていたんだ。」は、過去あまねの好きこそものの上手なれと言うだろ」を受けています。素直に考えれば、副生徒会長を救ったのはあまねの『言葉』です。

ですが、あまねが作ってくれたフルーツポンチを食べたら、~」以降は突然「フルーツポンチが美味しくて気が晴れたこと」が副生徒会長を救ったことになっています。

しかし、それに対するあまねの「そうだったのか……。わたしはただ、美味しいフルーツで元気になってほしくて……」は、「フルーツポンチが美味しくて気が晴れた」と言っている人に対する返答としてはやや言い回しが変です。フルーツポンチと一緒に差し出されたあまねの言葉に救われた、と言われた場合の返答になっているように感じられるんですよね。フルーツポンチが美味しかったおかげという言葉に返答するなら、「美味しいフルーツで元気になってくれて良かった」みたいな返事になるんじゃないでしょうか。

ここは、脚本家さんが「普通なら言葉で救われる流れ」「でも料理の思い出がノルマ」という板挟みで微妙に混乱しながら書いたんじゃないかと思います。

『料理の思い出』ノルマは大変なんでしょうけど、フルーツポンチの力を偉大に見積もりすぎている気がします。個人的にはちょっとついていけません。これ、「あまねの言葉で考えが変わった」「そのときあまねに出してもらったフルーツポンチのことが忘れられない」ぐらいにシンプルに書いちゃえば良かっただけなんじゃないでしょうか。

 

今のところ、「ナルシストルーにレシピッピを奪われると料理の思い出が消える」設定から派生する「毎回『料理の思い出』が語られる」ノルマにはあまり良い印象がありません。話を無理やり『料理の思い出』に合わせているだけで、上手く活かせていないと思います。料理の思い出を重大なものだと描こうとしすぎなんだと思いますね。そりゃあ、重大なものじゃなければプリキュアたちの「返して!」という戦う動機に説得力はなくなってしまうんですが……。

 

※いろいろ言いましたが、副生徒会長自身は良い人だと思います。エピソードがちぐはぐなだけで。

 

 

■『キャラ』としてのレシピッピに困惑

ここまで「料理のもとに出てくる、喋らないゆるふわ生物。意志は弱く、ふわふわ漂っているだけ」という描写だったレシピッピに、急に人格が肉付けされたキャラが出てきたので戸惑いました。それも「あまねを心配して通訳を頼みに来る、ワガママ居丈高上から目線のツンツンお嬢様」で、テンプレ感はあるもののキャラ付けがなんかやたら濃いです。しかも、あまねにプリキュアの資格があるというシーンで「あまねならわたくしも文句なくてよ!」と何故かエナジー妖精ヅラした発言までします。

じゃあ何故、レシピッピたちは今までろくに喋らず黙っていた(というか、『キャラ』として登場しなかった)のでしょうか。エナジー妖精たちがわざわざ通訳する価値があるようなことを喋っていなかっただけ?

レシピッピは今まで「そんなに深く描きこまない。深く描きこむような情報量を最初から持たせない」ところでバランスを取っていたと思うので、この展開には戸惑います。遡及的に、「じゃあレシピッピが新武器をくれる第10話は、もっとレシピッピとの交流を濃く描いてからやるべき話だったんじゃないの?」と思ってしまうのですが……。

 

第10話の感想は下記記事にまとめてあります。

haiironohon.hatenablog.com

 

 

ローズマリーの機転は良いが、活躍が多すぎでは?

>それ、貴方に預けておくわ!

>大事に持っておいて!

ブンドル団(ナルシストルー)が暴挙を続けていることを知って思うところがあるあまねと、あまねに共鳴して光るハートの結晶体を見てのマリちゃんのセリフ。

あまねを表情の様子からとっさに信頼&心配してアイテムを預ける機転と融通性、ウインクまでしてる余裕は良いですね。

 

第2話ではゆいをプリキュアにして戦いに引きずり込んだことを深く後悔していたマリが、あまねには自分から勧誘に入ったのもなかなか興味深いです。心境の変化もあるのでしょうし、「あまねには逆にプリキュアになることが必要」と計算したというのもあるのでしょう。さすが、頼れる人です。

 

ただ、それはそれとして、プリキュアになることを勧誘したのが他プリキュア3人ではなくマリだったのはちょっといただけないかなあと思いました。あと、細かすぎてどうでもいいところと言えばそうですが、ハートの結晶体があまねに反応したのを見ていたのがマリちゃんだけ(プリキュア3人はよそ見をしていた)のもちょっとだけですがいただけなかったです。

マリちゃん、サブキャラにとどまらずしっかりとメインキャラをしているのは良いんですけど、ときどきプリキュアたちがやってもいい出番を食うときがあります。しっかりとした頼れる大人&聖人キャラといえ、もうちょっと子供たちに『しっかりするところ』を譲っても良いです。

 

 

■一方的に助ける存在にならないよう、バランスが取られているブラックペッパー

今回のブラックペッパーさん。

最初はプリキュアたちのピンチに格好良く登場して救った(ブラックペッパーがいなければ負けていたと思われる状況だった)のでどうなるかと思いましたが、その次には逆にブラックペッパーがしゃもじの押しつぶし攻撃でピンチになりプレシャスに助けられます。その後のカットではプレシャス&ブラックペッパーの二人でしゃもじを支えており、敵の態勢が崩れたタイミングで二人でしゃもじを持ち上げて形勢逆転。ブラックペッパーがプリキュアを決して一方的に助けすぎないようにした流れにしています。

 

プリキュアという「女の子でも戦う」「女の子が戦う」ことを重視している作品にブラックペッパーという男子のサポートキャラを入れることは勇気が要ることだったと思います。実際の戦闘シーンでも、流石にバランスは注意して整えてきていますね。

この描き方は個人的には好感を覚えます。『美少女戦士セーラームーン』のタキシード仮面は美形で(表面的に)お高くとまりすぎている&セーラームーンに一目ぼれされる白馬の王子様的な役回りから「セーラームーンを一方的に救う強い王子役」と誤解されがち(※)ですが、そういう誤解をさせまいという意図が見て取れます。プリキュアには強くあってほしいですものね。既に戦闘実績があるプリキュアたちの元に後からブラックペッパーが現れるという作品の流れも、そういう「ブラックペッパーを、プリキュアを一方的に救う存在にはしない」という意思を感じます。

 

(※実際にはタキシード仮面はアドバイス程度の活躍であることが多いです。まあ、セーラー戦士のピンチに割って入って流れを変える役なので、彼が流れを変えなければ壊滅していただろうシーンも多い印象ですが)

 

 

■そのほか

・あまねちゃん、空手をやっていたのですね。なんか意外。お兄さんも空手ができる(家族ぐるみでやってる? そうでもない?)というのも意外です。

 

・あまねに対応するエナジー妖精が発表されていない様子なのでどうするのかと思いましたが、『ハートの結晶体』がエナジー妖精と同じくほかほかハートがルーツ(だから結晶体があればエナジー妖精なしで変身できる)ということで解決するようですね。

設定の整え方は丁寧で好感が持てます……が、わざわざそんな整え方をしなくても、彼女とペアを組むエナジー妖精を登場させてあげても良かったんじゃないでしょうか? 何か内部事情があるんでしょうか?

 

・ナルシストルーにも「……っていうか、~(ボソッ)」の構文で陰口を言い続けるセクレトルーさん、相変わらずキャラが立ってて大変よろしいです。せっつかれても堂々と切り返したり、ブンドルブンドルーの構えから逃げようとしたりするナルシストルーも◎。

 

・ナルシストルーに1+1を問われて両手の指で計算しているゆいさん、貴方……。ゆい、そんなに頭が悪い子という印象はないんですけど(成績は良くなさそうだけど)、制作スタッフ的にはアホの子枠なんでしょうか。

 

・ナルシストルー、とっておきを出すとか言ってましたけど……1+1ウバウゾーのことだったんですかね? 結構その場の思いつきだな……実験段階じゃん。

「コツはつかんだ……」と言って、何かのレーダー反応を見て去って行きましたが、何を見たんでしょうね。レーダー反応……レシピッピの反応でしょうか? だとするとパフェのレシピッピの反応かな?

 

「やべ、買い物の途中だった!」と言っていそいそと退場していく拓海=ブラックペッパー、生活感がありますね。(笑)

 

・これまたものすごく細かいことなんですが、「ほかほかハートの結晶体が反応する=プリキュアの資格がある」というのは、話の流れで分かると言えどぎりぎり説明がなかったよーな気がします。まあいっか。分かるし。サブタイトルからして、外部媒体を追わないアニメオンリーの視聴者だってあまねがプリキュアになることなんかみんな知ってるし。