灰色の本

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『デリシャスパーティ♡プリキュア』第21話「この味を守りたい…! らんの和菓子大作戦」:感想

 『デリシャスパーティ♡プリキュア』第21話「この味を守りたい…!らんの和菓子大作戦」の感想です。

おばあちゃんの話はすごく良かったと思ったんですが、らんである必要も、あまねである必要も、プリキュアである必要も特にない話かな……。

 

 

■おばあちゃん回になっていて、サブタイトル詐欺ぎみ

今回は、制作スタッフとしてはあまね&らん回だという意図だったのだと思います。しかし、実際にはらん回だという印象でした。いいえ、らん回だとしてもエッジが足りないと思います。

実際には今回は、和菓子屋のおばあちゃん(松山咲枝さん)の回。それが一番の印象でした。らんちゃんがおばあちゃんの意思を聞いて反省・成長する良い回だと思うのですが、そのささやかならんちゃんの成長物語はおばあちゃんの物語の外周を回っているにすぎません。あまねは更にその外周でした。

 

『らんの和菓子大作戦』と言うのですから、らんちゃんが和菓子を作って何かとんでもない面白いことをしてくれるのかと思えば、そうでもありません。らんちゃんが和菓子を作るシーンはないし、「歴史」や「伝統の味」という言葉が頻出するのに和菓子屋の味をらんちゃんが受け継ぐみたいなシーンもありません。地道にチラシ配りをして、地道にいつものキュアスタ投稿をするだけです。メインメンバーたちがなんだかんだで和菓子屋の宣伝には協力しない道を選んだため、本当に一人で地味に宣伝していました。

 

良い回だとは思うんですよ。

でも、ゲストのおばあちゃんが全部持っていってるんですよ。メインメンバーがなんかもはや脇役になってる(らんちゃんは名脇役だと思いますが)。

単純に俺(中の人:グレイ)がおばあちゃんの語りに感銘を受け過ぎただけかもしれません。でも、もっとメインメンバーであるらん(らん&あまねセット回という意図であるならあまねも)をしっかり立ててほしかったです。

 

 

■個々のシーンには良いものが目立つ

いろいろ言っちゃいましたが、終わってから総合的な流れを振り返るといろいろ気になってしまっただけで、個々のシーンは非常に良かったと思うんですよ。

 

特に好きなのはAパート終了直前の、らんとあまねが意見をたがえてしまうシーンです。

前回のAパート終了直前、夕暮れの橋の上でお互いを認め合ったあまねとここねに対して、夕暮れの公園で喧嘩したかのように分かれたあまねとらん。それぞれの人間ドラマが際立っていました。

何が良いって、夕暮れのビジュアルが美しくシーンを支えているのが非常に良かったと思います。同じ夕暮れでありながら受ける印象が全く違い、しかしそれぞれの美しさがありました。

 

「あまねんなら分かってくれると思ってたのに」という調子のらんを、ここねが諭すシーンも好きです。前回あまねと友情を築き、またメンバーを諭すバランス感覚の良さを安定して見せていたここねが「私は、あまねの言うこともわかるな……」とフォローに入るのが流石だなあと思いました。(ここねがいきなり聖人すぎてビビる、というのは前回の感想で書いたとおりですが……)

らんちゃんも、「ここぴーまでそんなこと言うの……?」と最初こそ否定的反応を示しましたが、次の瞬間には「ゆいぴょんは?」と更なる意見を求めていて偉いなあと素朴に思いました。……まあ、結局自分の意見に固執して「らんらんが間違ってるってこと?」「もういい! 一人でなんとかするもん!」って飛び出して行っちゃいましたが……。

 

あとは最後の、このセリフのシーンも好きですね。

>「キュアスタにはごろも堂のこと書こ!」

>「そうすれば、はごろも堂が消えることはない」

閉店を決めたはごろも堂のことを悟って肩を落とすらんに、ゆいとここねが現実的に自分たち(らん)のレベルで行動できることに落とし込んでフォローする。やはり、流石です。良い子たちだし賢い子たちなんですよね、ほんと。今回暴走気味だったらんちゃんも含め、自分たちにできることを積極的にやっていこうとする子たちです。

 

 

■『アホの子』らんちゃんの扱いが不安定に見える

らんちゃん、今回の描写の印象だと、すべてを直感で処理しているため『直感とズレること』『短時間での直感では分からず、時間をかけて理解する必要があること』には弱そうですね。直感に全振りしちゃって他がアホの子という感じでしょうか。

 

うーん……。個人的には、らんちゃんが頭が悪い子という印象はあまり無いんですよね。確かに、落ち着いてじっくり考える子ではないかもしれない。ひらめき頼りなところがある子かもしれない。

でも、自分の目指す夢や理想のためには、わざわざ改まって「考える」ことすら必要なく、自然と考えを突き詰めて行動していける賢さを持った子だ……という印象のほうが強いんですよ。

そんな自分の印象に反して、どうもここねやあまねという「分かりやすく頭が良い子」を引き立てるためにらんが「アホの子」として都合よく使われている印象があって、ちょっとモヤります。まあ確かにらんちゃん(とゆい)が「アホの子」類型のキャラであること自体は正しいのでしょう。ですが、らんちゃんはそんな「アホの子」という一言で収まるような分かりやすいキャラではないのだから、もうちょっと丁寧に扱ってほしいですねえ……個人的には。

 

 

■閉店を決めながらも未来を見ているおばあちゃんの語りが光る

閉店への思いを語るおばあちゃんのシーンは、あたたかさと切なさが同居する名シーンでした。

>「わたしももう年だし、新しい店がたくさん来るんだったらそこに譲ろうかなと思ったの。

>なんでも古いのと新しいのは入れ代わっていくもんだから」

>「じゃあはごろも堂の味はどうなるんですか?」

>「そうね、それだけが少し寂しい気もするけど……

>でもお客さんの記憶に少しでも残ってもらえたら、良いかなあ……。

>みんな常連さんで、最後にって食べに来てくれてるの。それで十分。

>さあ、良かったら、貴方も思い出に食べていって」

おばあちゃんのあたたかく優しい声で語られる代替わりへの意思の話は地に足がついた現実的な話で、ひとつのものが確実に『終わる』という話でありながら、非常に前向きな、未来を見据えた物語でした。

 

この話を一種の勧善懲悪として描くことは簡単だったと思います。新しいデパートと新しいお店がやってきた。古くからのお店の伝統を守れ。らんちゃんの応援が功を奏してお店は再び大繁盛、閉店を免れた。そう描いたってちゃんと1話を作れたと思いますし、らんちゃんらしく明るい突撃物語にできたと思います。(『らんの和菓子大作戦』というサブタイトル的には、そっちの展開のほうが相応しいです。)

ですが、どう見ても、制作スタッフは故意にその展開を避けました。そんなテンプレ的で非現実的なドラマティックさは古い、という判断なのではないでしょうか。また、『デリシャスパーティ♡プリキュア』という作品が表面的には非常にコミカルな味付けを好みつつも、実際の脚本部分では地に足のついた、派手ではないが繊細な情感を丹念に描こうとしている意思の表れのひとつなのではないでしょうか。

 

この語りだけでもぐっと来てたのに、回の最後を『閉店した店を眺めるおばあちゃんの「ありがとう」』という完璧な締めで終わらせるのやめてくださいよー、ちょっと涙腺に来ちゃうじゃないですか……。

 

■「思い出」という言葉にふさわしい、はごろも堂の思い出

おばあちゃんの語りの直後にナルシストルーが現れてレシピッピを奪いますが、いつものバンクにらんが「レシピッピ!」と叫んで手を伸ばすカットが挿入されているのが印象的でした。そう、奪われているのはレシピッピーー思い出なのです。

 

おばあちゃんの語りの出来の良さに支えられて、今回は初めてレシピッピ強奪による思い出喪失に共感できました。そうだよ、『料理の思い出』って言われたらこのぐらいのレベルを想像するんですよ。

逆説的に、やっぱりこの「ナルシストルーがレシピッピを強奪すると料理の思い出が消える」という設定自体がよろしくなかったような気がしてきます。今回の「閉店するお店の思い出」みたいな規模のものを持ってこなければ、「思い出」というきらきらした言葉に追いつかないんですよ。

 

 

■らんには信念を持ってイートイン解禁を宣言してほしかった

「最近イートインのお店もまた(キュアスタに)載せるようにしたんだ」というらんちゃんの発言……うーん。

らんちゃんは相当の葛藤を持って、ブンドル団に狙われないためにテイクアウトの店に絞ってキュアスタをやっていたと思うのですが、それで良いんですかね……。らんのキュアスタアカウントを利用してターゲットを決めていたジェントルーはもういないので、良いっちゃ良いのかも知れませんが……。

個人的には、らんちゃんはらんちゃんの信念と葛藤を持って「テイクアウト限定にする」と決めたのですから、その制限を緩めると決めるシーン(イートインのお店をを解禁する宣言をするシーン)も作中で見たかったです。ジェントルー洗脳解除直後ぐらいにそういう回を入れても良かったんじゃないですかねえ。別に1話まるまるその話に費やせとは言わないので。

 

 

■敵のえぐい攻撃と、今日のMVPのブラペさん

今回のかき氷モチーフの敵もなかなか面白かったです。冷気噴きつけによる移動力ダウンからの固め攻撃、コンボが凶悪すぎますよ。

「やめなさ~い、かきプレシャスなんてダメよ~~~!」とギャグみたいにやってますけど、やってることがエグすぎますね(苦笑)。固まったプレシャスをかき氷機でがりがり削るって意味ですよね……。真面目に想像すると相当スプラッタです。

 

今回はほんとに、別動隊のブラックペッパーさんがいて良かったですね。ブラックペッパーさんがいなきゃ全滅してました。ブラペが完全に一方的にプリキュアを助けたのは初めてです。『デリシャスパーティ♡プリキュア』の制作スタッフは、意図的にその展開は避けているのだと思っていたのですが……さて、今後どうなるか。

ともかく、ようやくまともにプレシャスを助けられてお姫様抱っこできたブラックペッパーがツボでした(笑)。考えてみると、ブラックペッパーが助ける余地が残っていそうという意味でも「プレシャスばかりが特攻して敵の攻撃を食らう(ギャグ)」というのは良い立ち回りなのかもしれませんね。

 

 

■あまね&らんの協力攻撃は良かったが、セリフは説得力に欠ける

『デリシャスパーティ♡プリキュア』では敵のダウンを取ってから必殺技を撃つという流れが多い(※他プリキュアシリーズでも多めな印象ですが、作品によると思います)です。

今回のダウンは「バリバリカッターブレイズ」のような基本技ではなくてヤムヤム&フィナーレの友情パンチだったのが良かったですね。ちょっと意外性もあったし、演出によってちゃんと強そうで、心が通じ合ってる感も出ていましした。

 

ただ、その『心が通じ合ってる』の根拠になるあまねの「ヤムヤム! はごろも堂を思う気持ちは……私も同じだ!」というセリフが説得力に欠けるのが玉に瑕ですね……。

らんがはごろも堂にときどき通っていたことは(ちょっと描写不足な気はしますが)セリフから分かります。しかし、あまねははごろも堂に訪れるのは今回が初めてだったのではないでしょうか? はごろも堂を思う気持ちと言われても、うーん……。

今回の話で、あまねは脇役すぎるんですよ。あまねにもっとスポットライトが当たる脚本で、あまねがもっとはごろも堂やおばあちゃんのために足を使って立ち回るような内容だったら、あるいはあまねの「はごろも堂を思う気持ち」ももっと説得力を持って響いたのではないでしょうか。

 

あまねは歴史がどう、と大きな話をしたがっていたのも説得力の無さに繋がっていた気がします。

キャラ的にはそれで正しいんですよ。大きく理想的で、ゆえに曖昧でもある話を本心から口に出せる彼女だからこそ、生徒会長として多くの人の心を打ってきた側面はあるのでしょう。

でも、今回の場合、「具体的な詳細がないからこそ人の共感を呼ぶ話」ではなく、あまね個人の具体的な思いを聞きたかったのです。そこが語られないので、余計に説得力を欠いてしまったように思います。

 

 

■そのほか

・かき氷を「ちょっと早いけど楽しみにしてるお客さんもいらっしゃるから」というセリフに違和感。放送日は7/31で、十分夏まっさかりだと思いますが……。旧暦の6月1日=6月30日の話が今出てくるのにも違和感ですね。

や、「だって不正アクセス事件で一ヶ月休止したじゃん、一ヶ月ズレたじゃん」って言ってしまえば終わりですよ。実際そうだと思いますよ。それは良いんですけど……まだそのズレが吸収できてないんでしょうか? そうだとすると、不正アクセス事件が発生した3月頭の時点で、6月末~7月初めの放送回の内容が既に融通を聞かせられないほど確定していたということ? もし本当にそうなら頭が下がりますが、しかし、ジェントルー=あまね=フィナーレ周りと拓海=ブラックペッパー周りは、不正アクセス事件を受けて融通を利かせざるを得ずにどたばたした筆致になってしまったとしか思えないのですが……。

……ていうか、かき氷の「ちょっと早いけど」のセリフを修正して、水無月のお菓子を時節にあったものに差し替えれば良かっただけなのでは……? 不正アクセス事件以前に声を収録済みで差し替えられなかったとか? そんなことあるんですかね?

 

・コメコメ人間フォームは特に存在感がないままですね。可愛いのはすごく可愛いですけどね。妖精フォームでも人間フォームでもどっちにしろ空気なんですよ。エナジー妖精たち自体が空気なんですが(この手のマスコットキャラを扱いかねてガチで空気にするタイプのアニメから比べればちゃんと出番を貰ってはいますが)、人間フォームを貰っているコメコメが一番空気な気さえします。意味がある言語をほぼ喋らないからですかね。

あ~~~、でもしかし、最後のシーンで突然出てきてゆいに持ち上げられてにこにこしてるコメコメ、かわええ~~~~~。

 

・『デリシャスパーティ♡プリキュア』の料理はいつも美味しそうですが、今回の宇治金時のかき氷はほんとに美味しそうでぐっと来ました。普段は宇治金時は食べないのですが、「今度かき氷食べるときは宇治金時頼むか~!」と思ってしまいました。

らんちゃんの「なんと美しい緑! そして頂上から小野曲線はゆたかな京都の山の稜線のよう!」「口の中に京都が広がる!」「まるで、なれない着物でゆっくりしか歩けないけど、その分じっくり観光できたみたいな感じ~!」というレビューは表現力に無駄にあふれていて笑いました。いや、個人的には、グルメレポには味や触感をもっと具体的に表現してほしいな、と思いはするのですが……まあ楽しそうだから良いでしょう。例え方が悪いとは思わないですしね。

 

・ブンドル団の会議(?)シーン。

今回はナルシストルーもセクレトルーも、一応会話は成立させているくせにお互いの話をろくに聞いてもなさそうな雰囲気が面白かったです。

ブンドル団は毎回面白いんですけど、ぐだぐだダベるばっかしてないで話をそろそろ動かしてほしいなあという期待が強いですね……。(残念ながら、プリキュアサイドが話を動かす期待はあまりしていません。まだクッキングダムサイドのほうが期待が持てるでしょうか。)

 

・らんちゃんがチラシを配っていても全然受け取ってもらえてないというのは、やっぱり人望の無さ……から来てるんでしょうね。悲しいね。(短いカットなので『その後ちゃんと受け取ってくれる人もいた』という可能性はありますが、それならあの短いカット内でも足を止めてくれる人ぐらい描いても良さそうなものです。)