灰色の本

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『デリシャスパーティ♡プリキュア』第22話「ブラペ引退!?伝説のクレープを探せ」:感想

『デリシャスパーティ♡プリキュア』第22話「ブラペ引退!?伝説のクレープを探せ」の感想です。 

 

※これはものすごく言い訳なんですが、今回『デリシャスパーティ♡プリキュア』第22話がなかなか言及が難しくちょっと悩んでしまうような回だったのに対し、別に感想を書いている『デジモンゴーストゲーム』のほうも非常にツッコミどころが満載でうっかり文字数が非常にかさんでしまって=感想に時間をかけすぎてしまって、『デリシャスパーティ♡プリキュア』側にあまり丁寧に時間をかけられなかったところがあります。正直ちょっと急いで書いてます。ごめんね。

 

 

■比較的「問題があるほうの回」だが、点数は相変わらず高い

今回も面白く、読後感の良いお話ではありました。これはもう、『デリシャスパーティ♡プリキュア』の作風の問題なんですよね。実際には何をやっていても、キャラは立っているし、基本的に善性を持っている子たちばかりでキャラが固まっているのであまり嫌な展開になりようがないし、画面のコミカルさは徹底しているし、敵にギミックを何かしらつけることをノルマにしていることもあってバトルの面白さの最低ラインはある程度まで担保されているし、だいたいの回がさわやか&なごやかに終わる。各回を見ていけば内容に細かい文句があろうと、平均点と最低点が非常に高い。星5つで表現すれば星4か5が当たり前。悪めの回でも星3止まりで、星2をつけにくいというのが『デリシャスパーティ♡プリキュア』だと思っています。

 

今回、自分は「『デリシャスパーティ♡プリキュア』の中ではかなり問題があるほうの回」だと感じました。星5つであらわすのに大変困ります。今まで「残念だけど星3ぐらいだろうな」と思った回と比較して更に悪いと思うので相対評価で行くと星2をつけざるを得ないですが、絶対評価で言うと星2ではないだろうという感覚です。それなら今回に星3をつける代わりに、今まで星3ぐらいの感覚だった回を星4に引き上げるほうがまだ適切かもしれません。

だって、いつもどおりのさわやかさは有って、何も考えずにざーっと見たときに「ああ、今回も面白かったなあ」という感覚もちゃんと有って、細かい描写には「これこれ。これが見たかった」というものもありましたもの。敢えてプリキュアたちをモブ(サブキャラ)の立ち位置に落として、拓海を主役に据えて拓海側から見た拓海の日常を描くという取り組みも非常に意欲的で面白かったですし、拓海の掘り下げ自体は待ち望んでいたものでしたもの。『デリシャスパーティ♡プリキュア』の作風で普段から担保されている面白さは損なわれていなくて、個別に褒めたい点もいくつもある。

仮に星5つであらわすなら、星2をつけるのは厳しすぎる。なんなら側面によっては星4ぐらいつけたい思いもある。どこがどうという言及をせずに単純な数字に押し込んでしまうなら、やはり星3になるんでしょうね。

 

で、どこがそんなに「どのぐらいの低評価が妥当か」なんて気にするほど悪く感じられたかというと……拓海の掘り下げかた、ですね。

 

 

■前段:主人公としての拓海

拓海は、立ち位置的に完全にプリキュア4人娘と同格とまではいえませんけど、でもそこに非常に近しい、主人公に近い立ち位置なんですね。

裏主人公と書こうかと思いましたが、そこまで『裏』っぽくもないんですよね。何かダークな特性があるわけでもなく、本来的には隠れて立ち回る必要があるわけでもありません(拓海がゆいに正体を晒すのを恥ずかしがっているだけだと思われます)。彼目線から見れば非常に王道的な主人公なので、描かれる比率が違うにも関わらず、裏主人公というよりW主人公のような風格さえあります。

 

「ゆいを守りたい」という、恋心を含んだ願い。

「ゆいに格好良いと思われたい、頼りになると思われたい」というヒーロー願望。

更には今回第22話で、 「思い出を奪うやつは許せない」という正義感にも(改めて?)目覚めたように思います。

 

いやあ、やっぱり主人公の風格ですね。彼は、あくまでサブという側面が強かったタキシード仮面とは違います。「まだまだ頼りないけれど精いっぱいを頑張り、話数を重ねるたびに少しずつ成長していく」タイプの主人公として、彼自身が作品の主人公を張っていても何もおかしくないキャラです。これが『プリキュア』という作品だから、そういう切り取られ方をしないだけで。

(何ならコミカライズなどで拓海主役&拓海視点で『デリシャスパーティ♡プリキュア』の話を追う話物語を展開しても作品としてしっかり成立するのではないかと思います。拓海~ブラックペッパーとプリキュアでは手に入れられる情報の流れやタイミングが変わってくるので、そこのアレンジに力量は必要そうですが。)

 

自分は個人的には、拓海に非常に大きな期待を寄せていました。『プリキュア』で平時から戦闘に参加する男の子キャラ、という作品上の立ち位置が面白いということだけでなく、拓海というキャラ自身に好感を持っていたからです。

だから今回の拓海の掘り下げにも「待ってた!」という思いでしたし、やってしかるべきという思いでした。

 

ただ……その掘り下げかたは、個人的な期待が大きかったせいも強いとは思いますが、あまり満足できるものではありませんでした。

掘り下げ自体の踏み込みが甘い。

今回を1話単位で見たときに、提示された問題と解決がちぐはぐしている。

そもそも1話で終わらせなくていい~終わらせられないような葛藤を、1話でなんか良い感じにキリがついちゃったかのように描いている気がする。

 

残念です。W主人公的な立ち位置といえどそれは「暗にそう感じられる」というだけで、実際にはシリーズの主役である『プリキュア』ではなく出番の尺が限定される拓海です。次の拓海回は恐らくかなり先になるだろうに、こんなところで一旦葛藤が消えてしまうなんて。

それなら「引退!?」なんていう大ごとの葛藤として取り上げないでほしかったです。そんな展開、「実際にはやらない。撤回する」と分かり切ってしまっているのですから。

 

 

■拓海の葛藤はもっと丁寧に描かれるべきだった

自分は頼まれてやっているわけではない。役に立てていない、足を引っ張っているかもしれない。それなら、身を引いたほうがプリキュア達の――ゆいのためになるかもしれない。

拓海のその葛藤は正しいです。「自分が役に立っていないかも」というこの葛藤がきちんとできること、それ自体は拓海は偉いです。

だって図太くて図々しい人・良くも悪くも深く考えないタイプの人なら気にしませんよそんなこと。逆に表現すれば、拓海くんって結構にナイーブ、繊細な男の子ですね。そして、相手思いの子です。相手思いじゃなければ「自分がやっていることは迷惑かも……」なんて考えません。思いやりがあるからこその、等身大の悩める男の子です。

 

ですが。

葛藤の内容自体は正しいんですが、一方で拓海のこの葛藤は、とことんまで独りよがりなのです。

言ってしまえば拓海=ブラックペッパーは、別に正体を明かすのは嫌ならそれでいいから、プリキュアと情報共有ぐらいは行っても良いはずだからです。それを妨げる事情は特にありません。彼の方針でそうしていないだけですし、その方針も特段の理由が直接はっきり語られたこともないと思います。ゆいに話すのが恥ずかしい~正体バレるのが恥ずかしい、程度の話ではないでしょうか。

 

これは、プリキュアの女の子たちが(時にはローズマリーのサポートを借りながらも)しばしば丁寧に話し合って悩みや物事を解決してきたのと対照的です。拓海には相談できる人がいません。彼はブラックペッパーとして活動している事実を誰にも明かしていないのでブラックペッパーとしての悩みを誰にも相談できませんし、唯一デリシャストーンの力に詳しい父親は遠い海上にいて連絡もろくに取れません。

 

さて、今回の話の大筋(ウバウゾーとの戦闘はやや違う話になるので一旦割愛)を見ていきますが、まず前半は下記のようになるかと思います。

・知り合いが入院した奥さんのために(マクガフィン)を探していることを拓海が聞く。(※マクガフィン=伝説のクレープです)

・拓海が知り合いの細かい話をよく聞かないままに勝手に張り切ってしまい、(マクガフィン)を持ってこようとする。

・(マクガフィン)は用意できたが、細かい事情を聞かずに一方的に関わろうとしていたことに気づいて落ち込む。

 

ここまでは良いんですよ。でも、その後。

 

・だが、知り合いは拓海の好意を受けて行動に踏み出すことができた。

・知り合いは拓海本人が思う以上に、拓海に感謝した。

 

……うん。問題なさそうに見えますね。見えるんですけど、でも。

今回の話って……「拓海のコミュニケーション不足(自分の行動が迷惑でないかどうか、本人達に確認しないこと。確認する前に行動してしまうこと)」が問題だったんじゃないでしょうか?

なのにそのオチで、拓海を全肯定してしまって大丈夫?

拓海もそれで「このままやっていこう」になってしまって大丈夫?

 

いや、すまんね、俺はそうは思わないですね……。まずゆい達だったり知り合いだったりの話をもっとよく聞いてみようよ。知り合いの話はもう一件落着したから結果オーライで良いにしても、まだブラックペッパーとして戦闘に関わるなら、ゆい=プレシャス達に一言、自分から聞いてみようよ。

そういう意味ではプレシャスがボトルにメッセージを書いて渡したのは、もちろんプレシャスにそのような意図はないのですけれど、ブラックペッパー=拓海への甘やかしです。彼が「自分から聞いてみる」という行動をする前に、彼女が勝手に答えてしまったのです。普段の彼女ならちゃんと言葉で話すことを選んだでしょうし、「どうして助けてくれるの?」と問いかけることでブラックペッパー=拓海に自分から答えさせることもしたでしょうに。……でも、それは「脚本の都合」は確かにちょっとなくはないのでしょうが、「不自然な脚本」でもありません。ブラックペッパーがあまりにも何も話さず、戦闘が終わるといつも素早く消えてしまうから、ゆい=プレシャスはせめて短いメッセージだけでもとボトルに書いて渡しただけなのですから。

 

今回の話はですね、「拓海が思う以上に、みんなは感謝しているから大丈夫」というところに落とし込んだのだと思えば、別にそこまで変な筋書きではないんですよ。「ゆいだけじゃなく、他の人も守りたい。思い出を奪われるのは許せない」と改めてブラックペッパーとして戦っていくことを決意したという落とし込みだと見ても、おかしい流れではありません。

 

ただ、それと「手段が妥当か?」は別ではありませんか?

その葛藤は、こんなふうに「解決した」ことにはなってほしくなかったです。解決するにしても別の何かが見たかったですし、そもそもこの時点でまだプリキュア達と正式に共闘関係を結ばせたくないなら葛藤が解決する必要もなかったと思います。

心揺れる悩めるヒーローとして、葛藤したまま、等身大のまま、進めていってほしかったと思います。

 

 

■そのほか

※今回あまり丁寧に記事を書く時間が取れなかったので、細かい項目を立てずに『そのほか』にぶちこんでます。ごめんなさい。

 

「和洋中全部盛り」「かわいい顔もつけてみた」らん達のこういうとこ好き(笑)。可愛いし、人生遠慮なく楽しんでる感じがするというか。

 

・コメコメ進化形態について「誰!?」という発言が出てくるのにビビりました。だってコメコメ……今まで勝手に進化しまくってたよーな気がするので、大騒ぎするほどのことじゃないような気がして……。

あれ? コメコメ、「特に理由なくいっぱい進化してる」ようなイメージはあるんですけど、実際今までいくつの形態が出てきましたっけ。印象が無さすぎて覚えてないですね……。というか、「勝手に進化するから気にしても仕方ない」って思ってたから気にしてなかったですね……。コメコメ、可愛いとは思うんですけど、「可愛い」という雰囲気しか見てないので進化形態の細かいビジュアル差も覚えてないですね。そんなに劇的に変わるわけでもないですし。

そう、劇的に変わった印象もないのに騒ぎすぎなんですよ。これが、いきなり幼児からプリキュア達のような中学生レベルまで成長したなら流石にびっくりしますけど……。逆に言えば、騒ぎたいならもっとしっかりビジュアル差を出してほしかったですし、今までコメコメを「なんか勝手に育ってる」で済ませずにもっと丁寧にやってほしかったですね。

 

・クレープのうんちくも自然に兼ねた料理シーンは良いですね。うんちく聞くの好きなので、料理シーンなり、らんちゃんの雑学混じり食レポなり、もっとやってほしいです。

 

・他のメンツが鈍めである中、あまねは「案外世話焼きなんだな」と鋭く拓海の感情を察しているらしいのが面白いです。単にシーンとして微笑ましいですし、細かいところでキャラの情報量を盛っていこうとする態度にも好感が持てますね。ラブコメで「思いを向けられている本人(ゆい)が気づかない中、外野が気づいて微笑ましく見守る。片思いをしている本人(拓海)は赤面する」っていうベタベタな展開ですが、ラブコメは大枠の設定はさておき細かい描写はベタをやってなんぼみたいなところもありますからね。

 

・今回はナレーターが多い回でしたね。回(脚本家?)によってだいぶ方針が違う気がします。

 

・ウバウゾーが「あれ? この前(冒頭で登場したウバウゾー)のと似てる?」とわざわざ指摘されたのは……まあ、自虐ネタみたいなもんでしょうか(苦笑)。一話に二回の戦闘シーンを使いたい脚本だったけど、二体分のウバウゾーデザインをいちいち新規に起こす余裕がなかった……とかですかね。こういうのは自覚的にツッコんでくれたほうが安心して見られると思います。

 

・ヤムヤムの「いぃっ!?」の目が飛び出たコミカル顔、好きです。『デリシャスパーティ♡プリキュア』はコミカル表現をどんどん投入する方針で一貫してるのは良いですね。バリエーションもあって飽きないです。

ただ流石にキャラはゆい&らんに偏ってるかな。今後、あまねも変顔するようになっていくんでしょうか。それともキャラのクールさを優先してあまねの変顔は控えるのかな。

 

・今回の戦闘の、敵のダウンシーン。ブラックペッパーの「プレシャス!」→プレシャスの「うん!」という短いやりとりはロマンですね。ブラックペッパー=拓海のほうはナルシストルーに煽られて勝手に思い悩んでいても、プレシャスのほうは全然気にしていなくて、ブラックペッパーを共に戦う仲間と見ているんですよね。

プレシャスのパンチ技に対してブラックペッパーがライダーキックを出してくるのも良い感じに対になってると思いました。ペッパーミルということで回転キックなのも、「キィ――ン」という風切り音のSEも気が利いていますね。

 

 

ローズマリーがコメコメを褒めたセリフ。

「なんて尊いの~!」

なんというか、プリキュアという作品的に『尊い』はアリなんですね。単に、その俗語(それも言ってしまえばオタク文化圏寄りの俗語)の使用がアリなんだなあとびっくりしただけです。オタク語の使用がアリという前提なら、「尊い」というテンション高くポジティブに相手を褒めちぎる言葉はローズマリーのキャラには合っていたと思います。

※それとも、尊い=オタク語っていう認識ももう古いんですかね。「推し」のほうはオタク語を超えて世間的に認知されている気はしますが……。まあ、現代って、オタク層(の中のライトなサブカル好き層)と一般層の垣根がもはや無いと言っても良さそうですからねえ。