灰色の本

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『デリシャスパーティ♡プリキュア』第27話「コメコメ大変化!? らんのハッピー計画」:感想

『デリシャスパーティ♡プリキュア』第27話「コメコメ大変化!? らんのハッピー計画」の感想です。 

前半のらん×コメコメの噛み合わせがとても良く活きていて良かったです。一方で、後半はその話をぶん投げてしまうのがなんとも……。後半も面白いんですけどね。

 

 

■らん×コメコメの「変だと思われたくない」という噛み合わせが良く活きている

コメコメの耳と尻尾=他の人間と外見が違うという悩みをらんの「変だと思われたくない」という悩みに接続してきたのは流石です。また、コメコメが「自分の耳と尻尾は変」と思ってしまったきっかけがらんの弟や妹との関わりというのも無駄が無くて良いですね。ちゃんと設定を活かした組み合わせが作れていると思いました。

らんの弟や妹は別に一度もコメコメの身体を「変」だとは言っておらず、あくまでコメコメ自身が勝手に思ってしまったというところが問題というのも『デリシャスパーティ♡プリキュア』らしい優しい筆致だと思います。

(※ただ、悪意を持って見れば「コメコメ自身の心の持ちよう次第で問題を簡単に解決できるような状況設定にしているだけ。踏み込み不足」などの批判はできますが……ここはそこまで踏み込むようなテーマではないでしょう。もしこの指摘をするときは、『デリシャスパーティ♡プリキュア』という作品の問題と言うより、もっと大きな社会全体への批判になるような気がします。)

 

強いて言えば残念なのは、らんがゆい達以外の学友に認められたという描写がほとんどないということです。『デリシャスパーティ♡プリキュア』って、序盤以外では学校の描写がないんですよね。あまねがフィナーレに変身した頃を境に学校描写が消えていると思います。それ自体は別に良いのですが、らんが学友に認められた描写がなく、そもそも食レポを学友にはっきり公開した描写がないのに今回の話をやるのはちょっと筋が悪いなあと思います。久々に学校描写を挟んで、らんの話を学友が褒めるという描写をわざわざ入れているのはその点をカバーしようと思ったのだと思いますが……付け焼刃で唐突だなあと思いました。

 

ただ、その「学友に褒められる」という話から、らんの「あれは隠したいってこと?」「もしかしてコメコメ、自分の耳と尻尾を変だと思ってるのかな」という気づきにつなげたところは非常に良かったです。らんじゃなければ説得力を持たない気づきでした。

 

 

■「ふわふわだね!」で済んで良かったね

それはそれとして、ほんと、りんとるんがコメコメの耳と尻尾を「ふわふわだね!」で済ます子供で良かったですね!?

いや、別に作品を非難する意図でこれを言うんじゃないんですけど、らんが「(挙動が)変」なのとコメコメが「(見た目が)変」なのって、実は全然違う問題ですからね。らんの話は「周りに迷惑かけてないだろーが」で済みますが、コメコメが「なんかあの尻尾、本物に見えるんだけど……ほんとに人間?」ってのは場合によってはもっと深刻な話である可能性はありますからね。

 

これ、ちょっと筋が悪いのが、何故コメコメ達が正体を隠したいのか……ということをはっきりとは作中で語っていないことです。逆に、コメコメ達が「正体がバレても別に良い」とも語っていません。そもそも人間じゃないんだよ、ってりん&るんに説明するのはやっぱりまずいんでしょうか……。

ああ、でも、今回の話の流れだと正体が人間かどうかに関わらず「自分の尻尾や耳がりんやるん達に比べて変なのが嫌」だから、正体の話が重要なわけではないというのはそうですね。

 

 

■食を無意味と全否定するスピリットルーの設定の、情報量の多さ

スピリットルーの「楽しい食事の思い出? そんなデータはおいどんの中にはないでごわす! そもそも料理を食べるなんて意味が無いでごわす!」というセリフは興味深いですね。ロボットである彼は、実際にものを食べることがないということなのでしょうか。食について、ほとんど全否定です。

セクレトルーの「好き嫌いが多く、料理に良い思い出がない。偏った考えですね」という評価も興味深いです。セクレトルーは割と料理自体には好意的なんですよね。美味しいものは自分も食べたそうにしている発言がちらほらありますので。

セクレトルーの見立てだと、スピリットルーのデータはナルシストルーが入力したもの。ゆえに、「ナルシストルーがひねくれているからスピリットルーもひねくれている」あるいは「スピリットルーに入れるような楽しい食事の思い出がなかったからナルシストルーがひねくれた」そうですが……どうなんでしょうね。ちなみに、ナルシストルーも別に美味しいものそれ自体は嫌っていなさそうな発言があるのですが……(『食事の場』は嫌っていそうですが)。

非常に意味深です。設定自体はシンプルなのに、引き出せる情報量が多いですね。

 

 

■きれいに噛み合っていた前半を投げ捨てる後半に困惑

バトルからの展開について。うーん……スピリットルーの葛藤は非常に興味深かったですし、突然再登場して悪役ムーブをして次回に繋ぐナルシストルーの出し方も流石なのですが……。前半がらん&コメコメの組み合わせで非常に良く嚙み合っていたにも関わらず、それと全く関係ない話を展開するのでついていけませんでした。

スピリットルーへの説得内容(語り掛けの内容)はせっかく優れていたらん&コメコメの前半の話とは全く関係がないんですよ。それどころか、スピリットルーが語り掛けるキャラが今回頑張っていたらんちゃんですらありません。(かといってスピリットルーに大きく影響を与えてシナリオ上の意味で『撃破』するのが主人公のゆいでなくてらんになるというのも、ちゃんと事前にスピリットルーとらんの特殊な因縁を描いていない限り呑み込めなくはあるのですが。)

それとも前半の話と後半の話が関係あるべきというのが思い込みなんですかね。ときどき噛み合わせが雑なことはあっても、前半と後半のリンク自体を投げ捨てたのは『デリシャスパーティ♡プリキュア』では初めてだと思いますが……。

 

 

■そのほか

・ハート型の紙せっけん、プリキュア達限定のアイテムというわけでも無いんですね。今回、ごく普通にるん(らんの弟)が使っていましたので。おいしーなタウンではありふれたアイテムなのでしょうか。

 

・ものすごく細かいところですが、らんの水あめシャボン液作りを手伝うシーン。あまねがかき混ぜて、パムパムが支えていたので「うーん……」となりました。あまねに対となるエナジー妖精がいたらその子が支えてくれたんでしょうね。やっぱりあまねにもエナジー妖精をつけてあげても良かったんじゃないかなあ。

そういえばパフェレシピッピはもはや完全に存在が消えてますね……。

 

・コメコメの「尻尾と耳を消したい」という願いから「本当は尻尾と耳が嫌ってこと?」と見抜く時点で頭が良いんですが、そこから「コメコメ風の尻尾と耳を作って装着する」という方向で解決を図ろうとするらんちゃん、マジで天才だと思います。学校の勉強はさておき、らんちゃんは頭が悪いわけではないんですよね……どちらかというと、分野によりますが天才の部類に当たる気がします……。