灰色の本

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『デリシャスパーティ♡プリキュア』第29話「おいしいパラダイス!レッツゴー!クッキングダム!」:感想

『デリシャスパーティ♡プリキュア』第29話「おいしいパラダイス!レッツゴー!クッキングダム!」の感想です。 

全体的には楽しげな回でしたね。ナルシストルーの大人しい退場が意外だったり、セクレトルーの参戦にもびっくりしたり。

 

■クッキングダム回と思いきや、前線に出たセクレトルーの印象が上回る

正直、クッキングダムの描写に集中して、密度が高い代わりに小さく終わる回だと思っていました。クッキングダムの楽しい様子を見せながら、クッキングダムならではの情報、例えばデリシャストーンの詳細であったりシナモンの話であったりに集中する回だろうと。予告の印象からすると、一種の臨時仲間入りをしたナルシストルーももう少し深掘りしておくのかなと。

実際には、クッキングダムの楽しげな暮らしが描写されたのは予想通りでしたが、セクレトルーを前線に投入して話を動かしてきたのにびっくりしました。セクレトルーは最終盤まで前線に出ない、あるいは最後まで非戦闘員である可能性もあると思っていたので虚を突かれました。しかも息一つで衛兵を眠らせてしまえるような、なかなかの実力者です。前線に出ずに静かに控えていた秘書キャラが強い、ロマンで良いですね。

 

逆に意外だった&少し残念だったのは、クッキングダムの描写が表面的なものにとどまったことですね。今後に繋がるような描写はマリちゃんの台詞によるシナモンの匂わせぐらいで、ほぼ現実世界でもできる描写かなと思いました。いやまあ、楽しそうなファンタジー世界で和んだんですけどね。行き来にはコメコメがエナジーを貯める必要がある=そうそう行き来できないのだから、2話分ぐらい滞在してしっかり描写してくれても良かったんですけどね。

しかし、「シナモンは冤罪かも……」と言わせるだけの短い尺で話が進んでる感を持たせるのはやはり上手いですね。ほんとマリちゃんは便利なキャラです。……もうちょっと進んで欲しい気はしましたが。(シナモン冤罪疑惑自体は既出の話ですから。また、マリちゃんばかりが話の進行を背負わされていて、プリキュア達が話を進めることがないのも物足りない。)

 

 

■ナルシストルーの退場を埋めるような、ブンドル団の『目的』を見せていけるか?

加えて、ナルシストルーが大人しく退場したのも意外でしたね。もうひと暴れするか、もうひと振り回されするかだと思っていました。といっても彼は掘り下げ不足ですし、人気キャラですからそのうちまた理由をつけて再登場するんじゃないかという気がしますが……あまねとの因縁も中途半端ですし、彼の食事への憎悪も救われていませんしね。……流石に、「最後に駆け足で彼の生い立ちを語ったからノルマ達成、終わり!」ということはデパではないと思いますが……

 

というより、ナルシストルー以外のブンドル団の動機がまだ描かれていないので、セクレトルー&ゴーダッツだけで今後の話を牽引していけるのかどうかよく知らないんですよね。ナルシストルーはゴーダッツ様と無関係な私怨の要素でも動いていて、ほのめかしだけであってもドラマが生まれていました。けれどゴーダッツ様もセクレトルーも食には肯定的なほうですので、ナルシストルーとは明確に動機が違うんですね。その動機がまだ語られていないので、ブンドル団を何を目標としている組織(レシピッピを集めてレシピボンを探すことで何をしようとしている組織)として見れば良いのかあやふやです。早めに方針が見えてほしいところです。

 

……シリーズの別作品であったように、序盤敵幹部がライバル化して実質ラスボス化、敵組織の親玉(本来のラスボス枠)は敢えてあまり描写しないことで感情移入できない絶対悪として描く……という手法はアリだと思います。が、それをやるには現時点でも既にゴーダッツ様を描写しすぎかもしれないという難はありますね。いろんな料理が好きそうだったり、部下を労ってたりと、「レシピッピ強奪」という手段(そしてその先にあるだろう何らかの目的)を除けば善人っぽささえあるんですよね。

関係ないですが、メシを美味そうに食べるやつは創作上でもだいたい善人みたいなとこありますよね。

 

 

■シナリオに恵まれた良ゲストキャラ、セルフィーユ

セルフィーユはゲストながらなかなか良いキャラをしていて、怖がりを克服するというシナリオにも恵まれていたと思います。惜しむらくは、クッキングダムの住人であるセルフィーユは素直に考えれば再登場が難しいことですが……何かしらの理由をつけて再登場してほしいものですね。可愛いし。

 

ところでセルフィーユ、短髪に女性声で、性別不明っぽい感じでしたね。衣装もキュロットスカートなので、「いやズボンですよ」と言ってしまえばぎりぎり通るデザインでした。一人称が「わたし」なのも、セルフィーユという名前も男女どちらとも取れる印象です。そういうところも面白いなあと思いました。

仮にセルフィーユが女性なら、クッキングファイターは女性でも良いのですね。いや、作劇としてはシリーズ上どうしても正規のプリキュアにはなれない『男子』を戦わせるための肩書が『クッキングファイター』だという意図があると思うので。

 

 

■そのほか

・序盤、ナルシストルーとローズマリーのやりとり。

>「俺様の辞書に反省の文字などない!」

>「捨てちゃいなさい、そんな辞書!」

そんなに捻ったやりとりではないんですが、「(私)の辞書に○○の文字はない」系のセリフって言い捨てにされることが多い気がするので、真正面から突っ込んでるのは面白いなと思いました。

そして、前回分の感想でも触れましたけど、やはりローズマリーは敵のナルシストルーに対してまで保護者スタンスなんですよね……。どちらかと言うと怒っている方向のセリフなのに、子供の将来を心配して適切に叱る親のような視点のセリフと声色だと思いました。

 

スペシャルデリシャストーンはもう作り出せる人がいないのに、スペシャルデリシャストーンがないと基本的にはクッキングダムと行き来できないって……。大変ですね……。『デリシャスパーティ♡プリキュア』という作品がどういうオチを選ぶかはさておき、現実的に考えてしまえば(スペシャルデリシャストーンを作り出す方法を見つけない限り)クッキングダムとはそのうち行き来ができなくなると思います。

 

・途中で出てきたレシピッピたちはプリキュアたちが助けたレシピッピ、つまり今まで出会ったレシピッピたちという意図であるはずですが……あまねと仲良かったパフェピッピが出てこないことにはちょっと首を傾げました。せっかくの再登場のチャンスだったのに。それとも、パフェピッピはあの場所にはそもそもいない設定(あまねのハートフルーツペンダントにずっと居座ってるとか)なのでしょうか。

 

スペシャルデリシャストーンはもう作れる人がいなくても、デリシャストーンの増産は容易なんでしょうね。デリシャストーンを持ったクッキングファイターが99人もいて、見習いのセルフィーユにもぽんとデリシャストーンを渡せてますしね。セルフィーユが唯一の見習いというわけでもないでしょうし、見習いの数だけデリシャストーンの準備(あるいは増産の準備)はあるはずですから。

 

・セルフィーユが葛藤しているシーン。あれ、作劇としては「敵(ウバウゾー)が何故か攻撃せずに待ってくれてる」という展開で、「敵が棒立ち」と揶揄されやすいような展開なんですけど。

「敵が何故か待ってくれている」に対して、「敵はプリキュアたちを自分の身体の中で転がすのに忙しい」という理屈がちゃんとついているのが可笑しかったです。