灰色の本

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『デジモンゴーストゲーム』第5話「神ノ怒リ」:振り返り感想②(ここまでの作品全体について)

デジモンゴーストゲーム』第5話「神ノ怒リ」の感想②です。

長かったので記事を分割しました。②は、第5話までの作品の全体的な話についてが中心の感想です。

 

※この記事は初見当時に他媒体で書いた感想を元に、後から再構築したものです。

 

 


■進まないパートナーの絆

なんか、とにかくメンバーの絆が進みません。仲良くなってる気がしません。

人間とデジモンのパートナー間の絆も進んでいません。そもそもシリーズ恒例(だと思うんですが)の『デジモンパートナー』という語も作中に出ておらず、「二人セットで描かれてる」感はあってもパートナー感すらありません

ていうか実際彼らって、なんというか、『分かちがたい』パートナーなんでしたっけ? ヒロはガンマモンを押し付けられただけですし、ルリはアンゴラモンに興味が薄そうです。デジヴァイスも、特定のデジモンじゃないと実体化できないとははっきり言われてないですよね? 3話のドラクモン戦は、ドラクモン相手にもデジヴァイスを使うことができるって前提でドラクモンを釣ってた気がしますし。

 

結局、第4話の感想で述べた通りの状況なんだと思います。

・主人公組とヒロイン組の人間がキャラが薄く、短時間で相棒と濃く交わることができない。

・主人公組のデジモン(ガンマモン)は赤ちゃん過ぎて対等な関係を築くのに難がある。

・ヒロイン組のデジモンアンゴラモン)は逆に大人すぎて一歩引いたところに下がってしまっているので難がある。

という状況です。

ホラー描写頑張るから熱い絆描写は敢えてやらない方向性なんです、そういう番組じゃないんです。という言い訳をするなら、『パートナーの人間にデジモンの技名が閃く描写』はその方針と相性が悪いと思います。その言い訳をするなら、逆に今回の先輩×ジェリーモンは熱すぎる気がします。

ていうか、よくよく振り返ってみれば過去回も確かに「お互いがピンチの中、相棒の声掛けをきっかけに奮起して進化する(2話ガンマモン)」とか「君のピアノが好きだ、君を絶対守るというアンゴラモンの表明をきっかけにルリがアンゴラモンの実体化に踏み切る」といった『相棒との絆』という演出意図の展開はしてるんですよね……結果がびっくりするぐらい薄味なだけで……。

全コンビが薄味なら「作風かな」で終わるんですが、薄味・薄味・やたら濃い(しかも主人公でもヒロインでもないポジションが濃い)と来ると単に主人公組とヒロイン組の味付けに失敗してるだけだろって気がします。あるいは、他のメンバーとのバランスを取ることを考えずに先輩組をぶちこんじゃったか。

 

■進まないルリの絆

ヒロインのルリは未だに仲間化フラグが立たないし友情フラグも立ちません

『制作スタッフはとっくにフラグを立てたつもりでいる』というのが正解なんでしょうが、表現ががさつなためルリが傲慢に見えるばかりで同意しがたいか、画面外で済まされているのでちっともピンと来ません。

てーかさあ、この子、ほんっと変なバランスで安定して描かれてるんだよね。一回変な回があるだけなら「たまたま脚本が悪かったのかな?」で済むんですけど、一貫して↓こんな感じなんですよね。

・積極的なトラブルメーカーとまでは言わないが、彼女がいるとなんかトラブルが近くに沸く。見た目上は積極的にトラブル解決に動いてくれているが、総合的に見るとあんまり相殺できてない。

鼻につかない程度のナチュラルな強気なのは良いのだが、その一方でツンデレのツンとかではなくナチュラルにほんのり無礼

・ヒロのことを『命の恩人』とも友人とも思ってないように見える。友人と思っているけど『パシリにしていいほうの友人』と思ってるならもっと厳しい

 

■ルリを相棒にしてしまったアンゴラモンさんのメタ的受難

実は、仲間フラグが立ってるのはアンゴラモンのほうなんです。今回の序盤のルリ&アンゴラモンの描写も、「街の様子を心配しているアンゴラモンが(ルリを通して)ヒロに連絡をくれる」というもので、つまりルリではなくアンゴラモンが主体なんです。

アンゴラモンが街や人間達の状況を気遣って連絡してくれるだけで、ルリにはヒロに関わる動機もなければ描写もありません(少なくとも印象的な描写はないです)。ルリは今回の終盤でアンゴラモンについて一緒に来てくれたのが謎なほどです。

で、アンゴラモンさんも厳密には仲間フラグではありません。どちらかと言うと、保護者スタンスで心配してるから情報回してくれるだけで、自分一人では手に負えないから共闘を持ちかけているだけなんです。

見た目が人外なので分かりづらいですけど、彼は人間で言うと『20~30代(若めだが主人公から見るとオッサン)の常識人知識人良識人保護者枠』に当たるのではないかと思います。

アンゴラモンさん、ルリとの相棒関係を捨てて単独で物語に関わったほうがキャラ立ちしそうなのでタチが悪いですね。キャラ立ちの面で見ればヒロインさんが完全に足を引っ張ってます。

 

■何故か最初から息が合ってる(気がする)先輩×ジェリーモン

そんな友好度の低いメインメンバー達の中に突っ込まれたのが、この今回の先輩×ジェリーモンのコンビです。何か知らんけど既に息が合っている感がある。おかしい。無理矢理張り付いて脅してワガママ放題にしているハイテンションクズ(ジェリーモン)と、その被害者(先輩)という、友好度が上がるわけないだろというとんでもない設定のコンビなのに。

ジェリーがハイテンションクズなのにはビビりつつ笑いましたが、トンチキな先輩と合わさるとキャラが濃い×濃いの組合せで既に相性がめちゃくちゃ良いんです。既に相性がめちゃくちゃ良いので先行の二組よりも絆形成がなされているように思えますし、その錯覚は錯覚であってもかなり大事なんです。

あとさあ、こいつら『会話はしている』よね。ジェリーモンは先輩の要求や抗議はビタイチ聞かないけど、とりあえずお互い一応『会話はしている』んです。他の連中は会話すらしていないイメージです。

ルリとアンゴラモンは、まず作中で会話をあんまりしていませんアンゴラモンは元々どちらかというと無口な性格だしルリに求めることもあまり無いからというだけなんでしょうが、ルリはアンゴラモンにそもそも大した興味が無さそうに見えます

ヒロとガンマモンは、そのー……実際には会話はしているとは思われるんですが、赤ちゃんとでは真っ当で対等なコミュニケーションが発生しないんだなあという感じです。ヒロが一方的にガンマモンを気にかけるだけなんですよねえ。

トンチキ先輩×ジェリーモンは今回の1話分だけで他のキャラを上回る速度でお互いと会話しているのに加えて、名前が台詞上に出まくっている(お互いを呼びまくっている)のも地味にグッドです。耳から名前が覚えやすいですし、やっぱりお互いを呼び合うと相棒感や友情感が出るんですよ。

実は、先輩も地味に仲間化フラグは立っていません。しかし、この先輩ならデジモン関係の何かが起きるごとにヒロにとりあえず泣きつくと思われますので、行動を共にする動機は立っていると思います。また働かなきゃいけない場面では働いてくれるだろうしお礼ができる場面ではしてくれるだろうという期待ができることから、ルリよりも状況は全然良いです。

 

■濃すぎる先輩×ジェリーモン組、薄すぎる他メンバー

先輩×ジェリーモン組がいきなり濃すぎます。ええ、他のメンバーが薄いのが悪いんです。今までの感想記事でいろいろ言った問題点は、存在はするが実は些末なことで、『主人公組とヒロイン組のキャラが薄い』のがだいたい悪いということが判明した気がします。

キャラが薄いから目的や行動の理由が分からない。なので主体性が無く見えたり、友情が感じられなかったりする。本当はそれだけなのかもしれません。

ヒロインに主体性がなくて主人公をパシリに使うのは今のところ擁護の余地がないけどな。

 

■バディもの? ホラーもの?

トンチキ先輩とジェリーモンのコンビが良かったせいで逆に、『ゴーストゲーム』は「バディものとしてはイマイチ」なのが割れちゃった感があります。ホラーとしては面白いんです。

逆にトンチキ先輩とジェリーモンのコンビの良さを見せつけてきた5話はホラーとしてはそんな面白くなかったです。

まあ……こんなこと言うとデジモンファンに怒られそうなんですが……無印と02とアプモンを通し視聴(+通しではないけど他作品もちょこちょこ視聴)したイメージだとデジモンアニメシリーズって、あんまりパートナー要素・バディもの要素を重視できてないっていう気がします。個別の話はさておき全体的なイメージの話です。デジモンという種族への考察が甘くて、なんだかだデジモンを置き去りにして人間重視の話をしがちっつーか……。

まあ最悪バディものじゃない方向に舵を切っても全然良いんですけど、仮にこのままバディものらしさが薄いままにホラー要素も崩れていくと、ぺんぺん草すら残らない気がします。今作は『敵デジモンを倒さない』という縛りでやっているらしく戦闘の爽快感がどうしても薄くならざるを得ない造りなので、戦闘要素にもいまいち頼れません。

ホラーでもバディものでも、友情ものでもなんでもいいので、腹を決めて貫くべきだと思います。

 

■「街(人間)を守りたい」と思ってるのは誰?

ルリがどういう内心で動いてるか分かんないのがほんときついわあ。ヒロも何考えてるか全然分かんねえんだけどさ。

好意的に補完すると彼女なりにアンゴラモンとは仲良くしてるんだろうし、だから『アンゴラモン的には街や人間の被害が出るのは好ましくない、守りたい』のに協力してくれてるんだろうなという推察は立つものの、それが全部画面の外で処理されているんです。

また、アンゴラモンにそういう「街や人間を守りたい」意志があるのははっきり分かるんですけど、ルリ自身が街を守りたいという意志があるかについては何も触れられていないんです。きついわあ。

なお、ヒロにもそういう意志があるかは不明です。明確な説明がありません。ルリに3話で突然DMを送り付けてまで助けに行ったのは、『助ける』がメインなのか、『デジモンの情報収集』がメインなのかもよく分かりません。第2話で怪異のウワサ本を買った以降は、デジモン被害の調査をしている印象もありません

全体を見ると、一番『守る』意志があるのが主人公のヒロではなくてアンゴラモンであるという謎現象が起きています。

 

■第5話まで見ての総評

『現状の、単体の話では』かなり好意的に見てます。ただし『今後含めた、長編としての話では』信用できるポイントに乏しいです。

・仲間が(本当に加入してるのかはともかく)揃ったので、そろそろ目標をはっきり打ち出してほしいです。

ヒロの闇みたいに見える何か、さっさとどうにかしてくれ。「闇? あるに決まってるだろ」でも「闇? 何を勘違いしてんだよそんなもんあるわけないだろ」でもどっちでも良いから。

・ルリが(恩人の)ヒロをパシったのはしばらく許さん。