灰色の本

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『デジモンゴーストゲーム』第8話「百鬼夜行」:振り返り感想

デジモンゴーストゲーム』第8話「百鬼夜行」の感想です。

本筋がつまらないのでキャラの話ばっかです。

 

※この記事は初見当時に他媒体で書いた感想を元に、後から再構築したものです。

 

 

 

■今作世界のデジモン並の害獣と化しつつあるルリ

ジェリーモンが害獣なのは制作スタッフの想定通りなんでしょうけど、もはやヒロインのルリが害獣なのでどうしましょうね。

ルリさんは、ジェリーモンのように自分から災厄をメイキングすることこそしません。しかし、ルリがよく分からない動機で理不尽にヒロと先輩を引きずり回したために事件に巻き込まれて酷い目に遭う展開が既に3回存在するんですよね。第4話(パシるためにカルチャーセンターに連れてった)、第6話(ホログラムゴースト巡礼でカラオケに連れてった)、今回の第8話(ぴったり探しとやらの謎の試みのためにレーシングカートに連れてった)です。第7話で恐らく理由を告げずにミカの相談を聞くのに同席するよう呼び出して、鳥の異変の解決に巻き込んだのも入れると4回です。

……待て。ルリさんの本格登場が3話で、今が8話。3話以降の話数は6話分ですよ?

4、6、7、8話の4話分でルリが誘因になってるって、それもうルリが誘因じゃないケースのほうが例外じゃないですか。

しかも今回の引きずり回しは本気で理由が不明です。ルリの言うぴったり探しとやらが何なのか分からないし、「今までも探していたのだ」という情報もありませんでした。そんなもののために、誘われた側のキャンセル不可で強引に引きずり回してくるルリが『ゴーストゲーム』世界のデジモンの平均的害獣ぶりと何が違うのか分かりません。今作のデジモン並に理不尽でデジモン並に危険です。ついでに、「なんで僕たちまで連れてきたのか」の問いに「だって男子ってこういうの好きでしょ?」とまた無礼発言もするから本当てめえ。ドン引きされてるじゃん。

今回のルリの害獣挙動を見ていると、第6話カラオケ回のホログラムゴースト巡礼を始めたのもこんな強引な導入だったんだろうなと思えて回を遡って害獣になってしまうので救いようがありません。

彼女にはいいかげん反省してほしいです。「今度はわたしが助ける」じゃなくて、まず首を突っ込むのをやめてほしい。事件が終わった後で「自分の行動のせいでみんなを巻き込んでしまった」と申し訳なさそうな顔をするぐらいはしてほしいです。そのほかのパシリ前科とか諸々を含めて、人の心を持ってほしい

 

ただ、ヒロも先輩もだいたい『気乗りしてない』って設定なのは可哀想ですね。せめて一緒に楽しそうにしてればまだルリの強引さが目立たなくなるんですが。

ヒロはだいたい「うわー楽しー!」とか「これは興味深い……」なんていう積極的に楽しそうな顔はしていません。今回もほんとにびたいち楽しんでなくて、終始「うわあついてけねえ。」って顔をしていたので可哀想でした。

先輩は言わずもがなです。ビビリ設定があるのでビビり散らかしていて、楽しむどころではありません。今回も「危ないじゃないか」とレーシングカーに乗りすらせずベンチで待っていました。

なんで、二人がルリと一緒に楽しんでくれる設定にしなかったんでしょうね。ていうかもっと前の段階の話をすれば、なんでこの3人が「意気投合して超仲良し~~~! ズッ友~~~!」みたいな設定にしなかったんでしょうね。レジャーに仲良くもない連中を強制的に引きずり回してるように見えるから、ルリの印象が悪いのです(まあ制作スタッフ的には仲良し描写をやったつもりになってるんでしょうが、びたいち同意できません)。設定がヘタで、そこはルリが可哀想です。一緒に楽しんでくれる設定にしたらそれはそれで「こいつら命の危機とか死の恐怖って概念マジでねえの?」になるけどな。

え、ガンマモン? あの子は赤ちゃんだから、それっぽい感覚刺激があればなんでも喜ぶからなあ……

 

 

■事件に関わる動機が「ルリの引きずり回し」任せの消極的なメンバー達

まあ実際問題、ルリがこんな暴走馬キャラに設定されているのはなぜかと言うと、他のメンバーには積極的にデジモン事件に関わる理由が存在していないからなんです。比較的に何を目的にしているかが分かりやすいアンゴラモンさんでさえ、「手の届く範囲で目立つ異変が起きたら、被害が拡大する前になんとかしたい」ぐらいなのでガンガンに積極的なわけではありません。

他のメンバーだけだと話が動かないから、ルリという暴走馬害獣に引きずり回させる。そうすることで事件に無理矢理突っ込ませて、アニメを1話分1話分しこしこと作っているわけです。

こうまとめると、『自発的な目的や意思がない主人公(ヒロ)が悪い』ってなってきますね。

印象的に示されてないだけで主人公ヒロの動機は『父親探しのためにデジタルワールドの情報を得る』のはずです。もっと能動的に動かなきゃいけないはずなのに、迷惑な謎積極性を見せるヒロインに動機を全部任せているのです。

 

 

■何故か害獣なのに可愛いジェリーモン

どんどん悪くなっていく害獣ルリとは逆に、ジェリーモンは可愛いです。というか今回「いつもよりマシ」です。今回は初回並の害獣挙動を取っているんですけどね。

ジェリーモンはほんとに深刻な害獣(被害をまき散らす側)なんですけど、先輩と絡んでると印象がマイルドになるんです。

「何見てるさ?」

「うひっ!? 朝帰り…ですか…。」

「んっ、んっ。(デジヴァイスを指して実体化を要求する)」

「どちらへ行かれてたんですか?」

「ちょっとやぼ用さ。ミーがいなくて、ユー、寂しかったさ?」

「あ~…。(口ごもってから)はい、とても!」

このシーンは、相変わらずジェリーモンが先輩を理不尽にこき使っているシーンなんですが、可愛らしくて良かったと思います。

要求を明確に口には出さず「んっ、んっ」と不機嫌そうに言うだけのジェリーモンとそれに応じて実体化をする先輩。要求を理解する程度には相互理解が進んでいるように見えます。

「朝帰りですか」「どちらへ行かれてたんですか」という先輩の問いかけも良いですね。先輩はジェリーモン(の行動?)に全くの無関心ではないことが分かります。

「ミーがいなくて、ユー、寂しかったさ?」の掛け合いも良いですね。ジェリーモンは先輩を気に入っていて、こんなからかいの台詞を言ってくる、先輩は正直イヤなんだけど逆らえないので「はい、とても!」と肯定する。二人の関係とキャラ性が良く出ています。

このやりとりはそんなに長いものではないですが、「主従関係を強いるジェリーモンと被害者の先輩」という本来仲良くなりようがない二人でありながら、何故か関係が前進しているように感じられて個人的にはとても良かったです。あと、この二人ってちゃんとコミュニケーション取るんだよね。このやりとりからは、なんだかんだ言って普段からお互いいろいろと喋ってるんだろうということが自然と分かります。

 

と言いつつ。ジェリー許せない派には絶対「ジェリーのせいで先輩がやたら酷い目に遭う・度が酷すぎる」の理由があると思います。

いくらやりとりをして仲良くなっているようでも、明確な設定としては先輩→ジェリーモンへの感情は「ド厄介だが言うこと聞かないとシメられるので従わざるを得ない」のままです。ジェリーモンというキャラクターが、先輩に害悪をかけないとバランスが取れないというのはなかなか詰んでるのかもしれません。

 

 

■相変わらずホップステップで犯罪をする子供たち

相変わらず、事件解決に乗り出す動機が見えません。事件の深刻度もよく分からない状態で、毎回ホップステップ犯罪しやがります。今回のカート盗難は監視カメラ映像から捕まるんじゃないですかね。

しかも、犯罪行為を気にしているのがだいたい先輩だけです。先輩はヒエラルキー最下位なので聞き入れてもらえないし、共犯を強要されます。やめてほしい。あ、でも今回は先輩も「(ヒロのピッキングは)アナログだが美しい……」みたいなこと言って肯定的でしたね。ほんとやめろよ、なあ?

正直ね、創作作品で「ここってよく考えれば犯罪やってるよね……」ってケースはしばしばあります。けど大半のケースは、犯罪までしなきゃいけない理由が視聴者に分かるようになっているのです。

あんまり他の作品を引き合いに出したくないのですが、例示として分かりやすいのでデジモンシリーズの近年の作品である『アプリモンスターズアプモン)』を引き合いに出します。アプモンのレイはブラックハッカーという設定のキャラで、彼もたいがい犯罪者でした。故意に人に迷惑をかけてるかは厳密には微妙ですが、システムに侵入する時点で犯罪ですし、個人情報が五万人流出する原因になったのに平然としてる少年ではありました。ですが、彼の動機は『誘拐されて生死不明の弟(唯一の家族)を探すため』でした。彼の犯罪を許せるかどうかはさておき、行動に納得はいきますよね?

※ただしアプモンのレイは弟の誘拐前や作品全体の事件が解決した後も「もしかして生活資金を得るためにハッキングをしているのだろうか……」と思わせる点があるなど、細かいところで問題がないわけではありません。ただし、はっきり「違法行為のハッキングで生活資金を稼いでいる」という明言もありません。

一方、『ゴーストゲーム』は主人公のヒロにもヒロインのルリにも動機がない・不明・曖昧・SNS映え程度なのに、死にかねない怪異に自分から首突っ込んだ挙句に危険度がイマイチ分からん段階で即犯罪行為で対応しようとします。アカンでしょ。「実際にデジモンの被害が出たんだから、犯罪かどうかで躊躇ってたら手遅れだったでしょ?」というのはメタな目線からの意見なんです。

 

 

■そのほか

・自動運転車の描写、自動運転専用レーンが整備されている高速道路の描写はさりげないながら技術の進歩が感じられて良かったです。

・シスタモンシエルは今作デジモンとしては平均的な害獣っぷりだったと思いますけど、性格がモロにヒャッハー系なぶんだけ余計に強烈な害獣に見えましたね。

このかたは他の作品ではこんなスピード狂の設定ではないらしい(なのにこんな設定になっているので首を傾げる)という感想を見かけました。自分はデジモンについてはにわかなので特に何も思わないんですけど、他作品で既にデジモンに愛着を持っている人たちからすれば今作のデジモンの害獣っぷりはどう映るんでしょうね?

・シスタモンシエルにカートレースで自力で勝っちゃうルリ、設定盛られてますね。今までの描写が描写なので鼻につきます。

・ヒロ(とそれに乗ったルリ)の機転のダシにされて「にょ!?」と動揺してるジェリーモンは可愛かったです。彼女はそういう隙を見せていったほうがバランスが取れると思います。

・オチは突然やってきた配達人がデジタルワールドへのゲートを開いて全部吸い込んで終わりって、よく分からなかったですね。

アンゴラモンさんの今回の締め、「はやきこと風の如く。しずかなること林のごとく。そして…。逃げること、最速で最強がごとし。」は笑いました。普段は意味が分からないことが多いですが、今回は先輩が爆速でチャットから逃げた状況に対して適切です。