灰色の本

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『デジモンゴーストゲーム』第23話「ウメク蟲」:感想②

デジモンゴーストゲーム』第23話「ウメク蟲」の感想②です。

 

長くなったので①②に分割しています。

 

 

■せっかく再登場したキャラを蔑ろにしている

クロックモンといつのまにか仲良くなっていて困惑します。一応和解したとはいえもうちょっとのっぴきならない仲だった気がするのに、これじゃあクロックモンはちょっと口が悪いだけのそこらの気の良いあんちゃんじゃないですか。

 

だいたい、デジモンが人間に迷惑をかけないようにしているですって? クロックモンってそこまで平和活動に力を入れるような殊勝なヤツでしたっけ。自分の中ではクロックモンは、『改心はしたが、ヒロ達のことは正直ムカつく。人間には自分から手は出さない。トラブルを見かけたら嫌がらせも兼ねて「ヒロって奴に相談すると良いぜぇ~」と押し付ける。自分はそこまで動かない』ぐらいのイメージなんですけど。

 

人間を敵視しないように心変わりしたのは分からなくはないですよ。分からなくはないですけど、『敵視しない(何もしない)』と『迷惑かけないように止める(活動する)』は雲泥の差がありますよ。あんまり視聴者の善意の補完に頼りすぎないでほしいです。

 

前回第22話のバクモンもだし、今回はクロックモンだけでなくてマミーモンもなんですけど、脚本都合で再登場してるだけなんですよ。これこれこういう役柄のキャラが必要ですね、そう言えばその役柄に都合良く押し込めそうなキャラが前の回で出てましたね、再利用しましょうね。それだけなんですよ。

 

第22話は悪夢ネタだから夢を食うバクがいると良いよね。→バクモン再登場させましょう。(バクモンは尊敬していた恩師ボコモン先生の死亡後のようやくの初登場だけど、ボコモン先生の話は一切しないしさせない。)

今回第23話はパートナーがみんな蟲化して暴走しちゃう話だから、パートナー以外で味方になってくれるデジモンがいないと戦いづらいよね。→クロックモン再登場させましょう。(助けられて改心したとはいえヒロ達のことを正直面と向かって気に入ってはなさそうだったというクロックモンのツンデレ的な機微はガン無視してただの気が良いあんちゃんにする。)

今回第23話は怪異の謎解き用に、モルフォモンの鱗粉のことを理解して教えてくれる専門家が欲しいよね。→マミーモン再登場させましょう。(お久しぶりです元気してましたかといった交流会話も、今まで何をしてて状況はどうだという近況報告も作中ではすべてカット。)

 

バクモンクロックモンマミーモンというキャラじゃなくて、役柄が欲しいだけで配置してる。せっかく再登場したのに、こいつらをサブキャラとして育てていくという気配が見えない。

 

マミーモンはまだ良いですよ。マミーモンは元々(第2話みたいな誤解がなければ)良心的で協力的なキャラクターですし、専門家キャラなので、以前助けられたヒロが求めているならさくさく情報提供に協力してくれるのは分かります。専門家なので専門の知識が必要でなければヒロ達のほうから会いに行く用事がないというのも(友達甲斐がない話ではありますが)まあ分からなくはないです。専門家キャラなのでと割り切ったとしてもそこまでおかしくはありません。

 

けどクロックモンは駄目でしょ。まあちょっとは仲良くなってたけど、ここまで素直に頼りに来るヤツでもないでしょ。嫌がらせ半分で迷惑の解決を押し付けるキャラだったでしょ。

なんなら、実態としては「頼りに来てる」でも、「てめーらが不甲斐ねえから俺が動かねえとならねえじゃねえか」だの「警告しに来てやったんだよニンゲン」だの憎まれ口を叩くぐらいのキャラでしょうクロックモンは。そういう流れだったら困惑しなかったよ。

あとはこれは注意して切らなきゃいけない切り札かもしれないけど、「……ボコモン先生には世話になったからなあ……(なのでボコモン先生が気にしていたヒロ達のことは守りたい)」とぼそりとクロックモンに言わせる手もあったと思うんですよ。

 

とにかく、必要な役柄に当てはめることばかりが優先されていて、デジモン個人のキャラ性が蔑ろにされているなあと感じました。

 

あ、でも、モルフォモンが人工衛星を通じて鱗粉をばら撒いていることが分かったときの「人間が作ったんだから人間がどうにかして破壊しろよ、こちとら急いでんだよ」というクロックモンの態度の悪さはクロックモンらしくて好きです。

 

 

■そのほか

・サブタイトルの「ウメク蟲」。『蠢ク蟲』か『ウゴメク蟲』が正しいんじゃないの? 『蠢く』じゃなくて『呻く』なの? と思っていましたが、ゲストデジモンが人間に捕まって泣いていたのが原因だったので、『呻く(苦しさのあまり、うなる)』という表現だったのは故意だったということなんですかねえ。

 

・話の流れに合わせて、冒頭から示されている赤い月の表現がとても綺麗です。終盤では画面全体が赤く染まったように表現されていますが、第19話「逢魔ガ時」のときの不気味さが強い赤色とはまたちょっと違う色合いですね。今回のほうが、不気味さはありながらも少し神秘的な印象もある色合いであるような気がします。

『ゴーストゲーム』って、表情描写が表現力不足だったり、カット割りが不親切で話が分かりづらかったりという下手さはあるんですけど、背景や小物による表現は地味に上手なんですよね。さりげなく近未来技術を表現してたりとか。さりげなさすぎて近未来ネタが空気なのはいただけないですが。あとは、主人公達が結構いろんな種類の服を着ている(当然そのぶん設定画を作るコストが必要なはず)というのも豪華な造りだなあと思います。

 

・ジェリーモンが壁を抜けてきたのを察して「おかえりなさい、遅かったですね」という反応をする先輩、当たり前の反応っちゃそうなんですけど、夫婦かよと思ってしまいました。最初が最悪すぎて先輩&ジェリーモンコンビは何やっても好感度が上がる。

ただ先輩&ジェリーモンコンビは今回は割を食ってはいましたね。ヒロルリが身を挺してパートナーのために暴走したパートナーと戦った一方で、先輩だけはジェリーモン個人のためには何もやれていませんでしたから(厳密には先輩もジェリーモンと戦ってはいますけど見せ場にはなってないです)。残念。

でも先輩は怯えてくれるだけでホラー度合いが上がるので、これはこれでまあ。

 

・冒頭、蟲化したジェリーモンに先輩が襲われるシーン。ホラー描写だから別に良いけど、先輩さあ、パソコン作業のときは照明ぐらいお点けなさいよ(笑)。

 

・ジェリーモンは蟲化状態で、触手(髪の毛)部分も脚として使って這いまわっているのが芸が細かくて良かったです。

 

・マミーモンは再登場なのに特にパッとしませんね。まあ、先述したとおり専門家キャラとして割り切ったんなら別に良いです。

しかし、下記の台詞。

>われにも分からぬ。

>が、一刻も早く連れてくるのだ。本人がいなければ診察もできぬ。

>そのまま元に戻らぬ可能性もある。

>よもや今生の分かれになるやもしれんぞ……。

つまり「直接診てみないとわかんねーっす! 悪い可能性はいろいろ考えられるっすね、診てみないと分からんけど☆(ゝω・)v」ぐらいのことしか言ってないんですよね。

なのにわざわざ「今生の分かれになるやも」と言い出すマミーモンさん、地味に性格がよろしくないw そりゃあ可能性はゼロとは言えないけどさあ。

 

スマホだかタブレットだかを見て発狂するガンマモンのシーン。

あれ、ガンマモンはヒロに「図鑑~(を貸して)」と言って要求していました。映像を見ていれば実際にはスマホタブレット?)のことだとすぐに分かりますが、なんでわざわざ「図鑑」って言ったんでしょう? 今まで、ガンマモンがスマホタブレット?)を図鑑って呼ぶシーンありましたっけ? だいたい、なんで図鑑?

 

・↑のシーン、ほんとにスマホタブレットか分かりませんでした。というか、ガンマモンに「図鑑~」って言われてヒロが手渡したシーンはサイズからスマホに見えたんですよ。ガンマモンが受け取って操作しているシーンも、まあガンマモンは小さいから端末が大きく見えるだけでスマホかなと思いました。

でも、赤いモヤが原因と分かってから確認のためにヒロ私室に帰ったとき、ヒロが「これだ……!」と言って持ちあげたのは、あれタブレットですよ……ね? うん?

見直したら最初のシーンからスマホじゃなくてタブレットだったようにも見えました……が、それでもやっぱり、ヒロが手渡すシーンはスマホのサイズ感であるように見えます。ガンマモンが「スマホ~」でも「タブレット~」でもなく「図鑑」と言ってたせいもあって、見直しても正体が分かりませんでした。まあ別にどうでも良いんですけど……

 

・先輩、いくらジェリーモンが蟲化してるからって、殺虫剤は効かねえだろ(笑)

と思ったら、あれただのエアダスターなんですよね。そんなの二重に効かねえだろ!(笑)

 

・ルリの家庭事情。あの家に住んでてピアノやってる時点でそんな感じでしたけど、ぴったり探しで一瞬やっただけと思われるスポーツ用具を私物として持っている(=自前で購入している)って、かなり裕福な家庭なんですね。

前半のあれってホッケースティックですよね? フィールドホッケーかアイスホッケーか知りませんが、そう簡単に個人で人を集めてやれるスポーツでもない気がするので習い事として通っていたことがあるということでしょうか? それとも、ルリならSNSで呼び掛けさえすれば付き合ってくれる人が案外簡単に見つかるのでしょうか。

アンゴラモンにホッケースティックを折られた後、ルリが武器をゴルフクラブに持ち替えているのが芸コマ。ぴったり探しの中でゴルフもやってみたことがあるってことでしょうね。

 

・技こそ使って来なかったものの、技なしでフライパンをあっさりぶち抜くガンマモンこっわ。

 

・辛さで正気に戻ったガンマモン、若干ロジックが分からなかった(辛さで発狂鱗粉が無効になるのか?)けど、まあおかしいというほどではなかったと思います。

ただしヒロは、以前騙し討ちみたいにガンマモンに辛いものを食わせて悲鳴上げさせてたことがある(第2話)のでそのときの印象と重ねてしまって「無慈悲だなあ」と思ってしまいました。今回はガンマモンを正気に返すためにごめんなと言いながら辛いものを食わせたって描写なので特に問題ないんですけどね。

 

・「夜にしか行動しないのは虫だから?」→「人工衛星が夜に日本の上空に来るからだ!」という、ミスリードからの反転も良ギミックでした。さりげなかったけどこういうギミックは個人的にめちゃくちゃ好き。

 

・演出の問題ですといってしまえばそれまでなんですが、ウェズンガンマモンが技をチャージして発射準備完了時点でヒロが「アルビオン!」と叫んだのはよく分かりませんでした。あれって人間側が技を『指示』しているわけではないんですかね? 単に技の使用を『宣言』しているだけ? 宣言したら技のパワーが増すとか、そんなかんじ?

 

・ゲストデジモンのモルフォモンは綺麗と可愛いを両立した素敵なデザインですねえ。デジモンにわかなので、へー等身が低いデジモンでもこんな綺麗なデジモンいるんだーと思いました。珍しく悪意ゼロ(発狂鱗粉はとんでもなく迷惑ではあるのだが、人間に捕まって恐怖しながらSOS信号を出したためなので情状酌量の余地が十分にある)なので、相対的には好感度も高かったです。が、いかんせん登場が最後だけなので、空気。悲しい。