灰色の本

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『デジモンゴーストゲーム』第43話「赤目」:感想

デジモンゴーストゲーム』第43話「赤目」の感想です。

良回でしたが、100点を上げられないような減点ポイントがきつい。

 

 

■視聴者に好きにならせる気がないゲストキャラ、エマ

エマ、最初から印象最悪で凄いです……。まあ彼女も一発こっきりのゲストキャラだからどうでも良いのでしょうが、視聴者にキャラを好きにさせる気はないのでしょうか。キャラデザや声は割と可愛いんですけど。

だって彼女、もともと詮索クズなんですよね……。今回の怪異、度合いや職業には差がありますけど、『詮索クズに取りつく』怪異ですもんね。

 

『ゴーストゲーム』という作品がまず彼女について説明したのは、見知らぬ通りすがりの夫婦喧嘩の事情を根掘り葉掘り聞きだそうとするクズであるということでした。しかも、推測としてぶつける言葉がいちいち無礼で救いようがありません。怒った夫妻に現場を去られると、即座にその後姿を盗撮するというオマケ付きです。『ゴーストゲーム』らしいホップステップ軽犯罪っぷりだ。

先輩も、大学で学友として机を並べた仲である(? ※)と思われるエマのことを全く歓迎しません。疫病神だ、とんでもない詮索魔かつ言いふらし魔でデジモンのことがバレたら大変、言い出したら聞く奴ではないからなんとかやりすごそう、とほぼ全否定のモードです。エマ・ヘインズではなくてエマ・デビル・ヘインズであると、上手くもなんともない表現で直球に悪魔呼ばわりしています。更には秘密(黒歴史)をネットで全世界にバラされたという凶悪な前科まで出してきます。

先輩が先輩であるというのもエマのキャラ描写にとっては難点でした。実際には先輩側もエマを迷惑なだけの知人とは思っていないのではないかという気配も作中には無くは無いんですよ。しかし、先輩はもともと「お人よし」キャラなのですよね。怖かろうがなんだろうが、目の前で誰かが困っていれば助けるという善良なキャラであるのが先輩です。先輩は、エマを口では悪く言いながらも本心では友人だと思っているから助けた……ということが断言できるキャラではないのです。だって彼は、誰であっても困っていれば助けますからね。

そして結局、先輩のほうがエマをどう思っているのかは何も言及されないまま終わります。楽しかったエピソードひとつ、尊敬できる点ひとつ語りません。

 

視聴者から見て、助けてあげたい要素がないんですよね。エマ。

なおかつ、「先輩はエマを助けてあげたいに違いないな」と思える要素もないんです。先輩は善人だからまあエマだろうとエマでなかろうと結局は助けちゃうんだろうな、と思うだけで。

 

うん、まあ、正確には、今回の怪異はかなり悲惨でおどろおどろしいので「助けてあげて!」と全く思わないわけではありません。ですが、それは『エマだから』ではないんですよね……。むしろ、『エマ』がどういう子なのかを考えると身を滅ぼしてくれたほうが社会平和に良いとさえ考える余地があります。

 

なんなんでしょう。せっかく先輩の友人というキャラなのに、びたいち助けたくならないエマのキャラ性は。

まあ、『ゴーストゲーム』に助けたくなるようなキャラなんてほとんどいないだろ、いつものことだよと言われてしまえばそうなのですが……。

 

(※)学友……とははっきり言われていなかったので、本当に『留学中の友人(学校は無関係)』ってことなんですかね……。

確かに、飛び級で大学に通っていた先輩の「学友」なら「大学生以上」になってしまうはずなんですよね。エマは先輩と同年代に見えるので、学友というわけではないのでしょう。めんどくさい設定だね、先輩の飛び級設定。(※普通「飛び級設定」程度の設定がめんどくさく見えることは珍しいと思います……作中で活かされてないからめんどくささが勝って見えるんですよ。)

 

※追記。エマの「先輩に連絡を取ると女の子(※ジェリーモン)の声がすることがある」という発言から、定期的に連絡を取る仲ではあるというのは読み取れます。ただ、そのことを先輩がどう思っているかはやはり分かりませんが……。

 

 

■チームりるるんという存在自体がカスなチーム

チームりるるんの招集。まあもうメンバーの同意を取って結成してないこのチームの招集自体がカスなのですが、エマにデジモンのことをバラしたくないから一日耐えきらなくてはいけないということを知っているのに遠慮なく招集してくるルリは本当にドクズだと思います。

結果的にファインプレーだった? そんな作劇の都合の話はしてないんですよ。

 

えっ何、こいつ、パートナーのアンゴラモンも含めたデジモン達のこと、全世界に晒されたいわけ……?

まあルリがアンゴラモンをパートナーだと思っているのか? というところから説得力がありませんが。

あと、「逆にここまで騒動が起きるんならデジモンのことを一般に明かしたほうが良くね!?」というのも別の話です。

 

 

■劇場版かと思うようなリッチなつくりだが、何故前回に回さないのか理解に苦しむ

前回に「表情作画が気合が入っていない」と言った直後に、表情に気合が入りすぎていてビビります。メインキャラだけでなく、モブキャラが襲われる冒頭シーンから気合が入っていてきちんと怖いです。その作画、先週に回せなかったんですかね……? まあ、今回の作画が良かったのは良かったんですが……。

 

今回、表情の作画どころか、ライティングなどの演出まで作画が良かったです。更には間を持たすためのドリンクの作画まで非常に良かったです。作画だけに限らず、カメラワークやBGMの扱いも、劇場版を見ているかのようなリッチさがありました。な、なんなんですかね……その労力は前回に回すべきでは……?

(比較すると、戦闘シーンは画面に色を載せて誤魔化しているだけで大して動いていませんでしたが……それでも普段の回よりは頑張っていたと思います。)

 

いや、今回だけ見れば本当に評価ポイントなんですけどね。高評価なんですけどね。

『ゴーストゲーム』は、本当に「話の流れとして重要な回」「作画に気合が入っている回」「脚本や演出がよくできている回」「宣伝に力を入れている回」がばらばらに狂っています。今回は本当にすごかったですよ。作画も脚本も演出も、アニメ映画を見ているような満足感がありました。でもなんで前回のグルスガンマモンにその脚本と作画と演出の力を持っていかなかったんですかね。本当に解せません。

 

 

■そのほか

・エマのキャラデザイン。可愛いですが、外国から来た金髪碧眼美少女って、いまどき珍しいコテコテっぷりとも言えますね。『ゴーストゲーム』って先輩の銀髪が謎である以外は日本人のマジョリティとして現実的なカラーリングの髪色をしていますから、エマの金髪も多分本当にあの色なんですよね。このご時世ですし、もうちょっと外しても良かったと思いますけど……とはちょっと思いますが、そういうハイレベルな配慮を『ゴーストゲーム』に求めるのは酷な気がします……。

ただ、彼女の綺麗な青い目が真っ赤に差し変わるというのは色のギャップが強くてなかなか良かったです。

 

・ガンマモンの「キヨ、頭かゆいか?」のセリフ。ふつー、先輩が頭を掻きむしって困っている絵を先に見せてから言いませんかね……? こういうとこ、『ゴーストゲーム』と「絵の見せ方」の解釈が合わない。で、その後に先輩が頭を搔いている絵は見せてくれるんですけど、ガンマモンがわざわざ聞くほど派手に頭を掻いて取り乱しているのかと思えばそうでもないですし。なんなんだ。

 

・エマについて「ダーリンも酷い目に遭ったさ~」と嬉しそうに語るジェリーモンですが、素直に考えれば『留学中』の友人であるエマとの事件をジェリーモンは知らないはずだと思うんですが……。だってジェリーモンが先輩と出会ったのは日本ですよね。

……え? もしかして先輩の留学中からずっっっっっとジェリーモンは先輩を張り込んでたんだ、って言ってます? さ、流石にキモッ……。

 

・ライティングの雰囲気からするに、本来は夏に放送する予定の話数だったんでしょうね。……不正アクセス事件による話数ズレって、そんなに修正できないもんなんですかね……。特に『ゴーストゲーム』の場合は、演出や話に時候が関係する話の放送話数を早めて、時候が関係ないものを後回しにするだけで終わると思うのですが。話の進展なんてないですし、一話完結だし。

 

・ジェリーモンが先輩のほっぺたを無言でぷにゅぷにゅすることでハッパをかけるシーンは、「よくここで余分なことを言わずに無言で通す演出を決めた!」と褒めたい気持ちと、「いやそれで通じ合えるような絆を描けてないんだから大人しくセリフ言わせろよ」と非難したい気持ちの両方がありますね……。もう少し分かりやすい文脈でなら無言で良かったと手放しでほめたと思うんですが。ごく一瞬分からなくて次の一瞬で「ああ、ジェリーモンは先輩の背中を押したんだな」と考えたとき、『ゴーストゲーム』では恒例の善意補完をさせられてるなとも思いました……。

 

・先輩&ジェリーモンの進化バンクはやっぱりカッコいいですねー。……ジェリーモン進化自体が久々なような気がしましたが、流石に気のせいですよね。先輩は最近出番が少なかったからあながち間違いじゃない可能性もあるのがつらいな……。

 

・アイズモンを倒した後のアンゴラモンのセリフ。「どこかのコミュニティに預けて監視してもらったほうが良いね」

い、いや……なんでもかんでもコミュニティに押し付けて解決したことにするの、やめなよ……。アンゴラモンさんも割と、善人&常識人に見せかけたカスですよね……。

 

・アイズモン撃破後のエピローグを見ると、エマも決して可愛げがない女の子ではないんですよね。ジェリーモンをあしらえてしまう(先輩もジェリーモンもまとめて振り回してしまえる)というのは強烈な個性で、まともにやれば人気のサブキャラに育てることは可能なポテンシャルがあったと思います。

でも……まあ……。まともにやらなかったし、どうせこれからもまともにやる気がないんでしょ……。仮に後付けでまともにやろうとしたって、「でもこいつ詮索魔のクズなんだよな……」ですよね……。ほんとにすべてをゴミのように使い捨てていきますよね、『ゴーストゲーム』って……。

※なお、視聴者に「助けたい」と思わせられるか? という観点からすると、アイズモン撃破後にエマの可愛らしい様子を見せるのは『遅い』です。