灰色の本

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『デジモンゴーストゲーム』第50話「オカエシ」:感想①

デジモンゴーストゲーム』第50話「オカエシ」の感想①です。

なかなか良いほうの回だったのに、オチのつけ方が悪くて全部虚無化するという『ゴーストゲーム』の中でも珍しいパターンの酷さの回。

 

長くなったので記事を①②に分割しています。

事務連絡:リアルのほうが忙しすぎて感想執筆が全然追いついていません&そのうえ録画の管理をミスって第51話と第52話の録画を吹っ飛ばしました(正確には感想執筆中だった今回第50話も吹っ飛ばしました)。51話と52話の感想は気が向いた頃にどこかの動画サイトででも視聴して補完しますが、あくまで『気が向いた頃に』なので時期は保証されません。

 

 

■すべてを虚無に返す、投げっぱなしぶったぎり結末の回

『ゴーストゲーム』の中では比較的良いほうの回だったのに最後の最後で宇宙猫の顔になりました。珍しくCパートがあるのか? と疑ったくらいです。Cパートで本当のオチを見せるタイプの作品でも、Bパートをここまでぶったぎりは普通しませんが。

 

いや、メイクラックモンの最後の挙動ほんと何なんですか???
流れ的には「好きだからこそ別れる決断をした」あたりかなと思いますけど、何ですか、そこを何も説明せずに「考えるな感じろ」で無理やり押し流したことにする流れ。一番大事なところですよね?

ゲストも「メイクラックモンいなくなって寂しい」って顔じゃなくて怪異いなくなってほっとしたみたいな顔してんじゃん、何なんでしょうか。「そう見えるのは流石に悪意の主観だろ、普通に微妙な表情してただろ」って反論が来るのは分かってますよ。でも、『どうとでも取れる表情』でしたよね。それは視聴者に丸投げしてるって意味なんですよ。「好きに解釈しろ」と言えば聞こえは良いですが、描写の不足を丸投げしてるんですよ。

 

創作なんて、結局は伝えてナンボですよ。作者の考えた物語を提示してナンボなんです。視聴者の自由な解釈にゆだねるタイプの作品だって、解釈の材料となる情報は提示するのが筋なんです。なんですか、この丸投げ。別にこれは『ゴーストゲーム』ばかりがやらかしてる悪事と言うわけでもないのが残念なところですが。
そういう意味では一番「見る必要がなかった」回でした。物語として完成させることを怠った、商品未満の回だと思います。商品未満の出来でも、放送してしまえば『作品』ということになるし、よっぽどじゃなければ円盤にできるんですから楽しいお仕事ですよね、アニメって。

 

 

■成長や救済を与えられることもなくゴミ箱から拾われてまた使い捨てられる深津

ゲスト(深津)に追加エピソードを用意するという、ゲストキャラやサブキャラを一向に育てようとしない『ゴーストゲーム』には珍しすぎる手厚い挙動については視聴前から不思議でした。が、前回登場の第44話「赤錆」で深津は精神的課題を何も解決せず、前進の可能性のカケラすら見せずに放り出されたため、深津をもう一度引っ張り出して掘り下げる選択肢はアリだと思っていました。

けど、これ……「友達いないキャラ」が欲しかったから再利用しただけですよね!?

 

この流れなら、せめてメイクラックモンと和解しないと、深津の精神的課題(大阪から出てきて以来、半年友達ができていないこと)は何も前に進まないじゃああありませんか。

イクラックモンと離別展開で終わるなら離別展開で終わるで、

 

・メイクラックモンのおかげで深津には人間の友達ができたから、メイクラックモンがいなくなっても生きていける状態になってしまったとか。

・深津がメイクラックモンに依存しているor共依存状態になっている自分自身に気づいて、このままじゃダメだと人間の友達を作れるように奮起し始めたとか。

・メイクラックモンが悪意なく深津の人間の友達を傷つけてしまうことを繰り返すので、辛くとも離れなくてはならないと決意したとか。

・凶暴化して襲ってくるメイクラックモンを撃退する(メイクラックモンから逃走する)のに同じ寮の人などが身を張って協力してくれて、友達とはそういう人のことを指すのではないかと考えたとかor自分にはもう友達がいるのだと気づいたとか。

 

パターンはいろいろ考えられますけど、そういう、何かしら深津が抱える友人問題を前進させるような展開無しに離別エンドなんてやっちゃあ、深津はすべてを失っただけじゃないですか。

 

前回登場の第44話「赤錆」で、深津は物品を無償で与えることで周囲の人の気を引きました。その物品が消滅してしまったことで、彼は周囲からつるし上げられました。その後、総スカンを食らったと考えるのが自然でしょう。

今回の彼も……最後のほうにはメイクラックモンとの絡みを見た周囲にドン引きされていました。これ、深津さん、この後……寮で暮らすの相当気まずくないですか……? 深津、精神的課題が解決or前進するどころか、ずるずると状況が悪くなってるようにしか見えないんですよね……。

 

アンフェアなので一応記載しておきますが、今回の描写から見るに深津は「全く人が周りに寄ってこない」状況ではありませんでした。その事実にどれだけの重みをつけて解釈するか、ですね……。メイクラックモンにドン引きしたせいで深津の周りにもう寄らなくなってしまうのか、それともメイクラックモンがいなくなってさえしまえば再び深津ともそこそこ仲良くしてくれるのか……。

残念ながら、他の寮生達が深津のそばにもう寄らなくなってしまっても冷淡とまでは言えないと思います。そこまでの友情関係が築けているとも思われないので。

 

いや~……2話使って何も進まないゲストという謎枠が爆誕してしまいましたね。進展したキャラのほうが珍しいのが『ゴーストゲーム』ですけどね。メインキャラすら特に進んでないですよ。強いて言うなら何か進展があったのは先輩だけですね。第29話「妖花粉」があるので先輩だけは成長描写があると言って良いと思います(※)。後が続いていませんが。

 

※進化形態が進んでいるイコール、デジモンが精神的成長を遂げているという雑な解釈はいただけませんね。キャラの精神的成長は進化というアイコンではなく、描写と展開で示されるべきです。描写と展開で示されていないので納得しません。何も進んでないです。

……まあ正確にはその、精神的成長はともかく『絆の進展』を描いたつもりなのだろう回がいくつか存在していること自体は流石に認めるのですが……。だいたいそうやって無駄に気合入れた回のほうが絆、というか人間関係(人間&デジモン関係)の描き方が酷いので、救いようがありません。第11話「カマイタチ」とか第25話「紅ノ饗宴」とか第32話「オマエハ誰ダ」とか第35話「人狼」とか、絆回という意図(?)だと思われる回ほど酷いです。

 

 

■アフターフォローすらされない深津

深津の前回登場の第44話「赤錆」も、今回も、深津へのアフターフォローが発生しないのは「えっ?」となりますね……。

精神的問題が全く解決してないどころか怪異のせいで余計悪化した気すらするのに放置。まあ『ゴーストゲーム』の主人公達の人でなしメンタルには合っているんですが、それで良いんですかね……。子供のヒロ達にそこまでする義理ないよな、というのはそれはそれで道理なんですけどね。

 

かと言って深津さん、寮暮らしなわけですから、日ごろは親も近くにはいないわけですよね(休日ぐらいは一緒にいるのでしょうか)。誰も深津を見守ってくれる人がいません。状況的に仕方がないことですが、しみじみと悲しいことです。

状況的に仕方がないからこそ、メタの力(展開の力)で深津を救おうとはびたいち思わない制作スタッフはどーなってんだ、と思うわけですが……。

 

 

 

■成長のメタ展開を与えられない深津←→自分から成長もしない深津

深津さんは「自分自身では対応できないような範囲の約束をする」って悪癖は変わってませんねえ……。どっちにしろメイクラックモンは話を聞かずに「同じものを返せ」って喚いていたと思うので深津がどうしようと基本的な展開は変わらなかったとは思うんですよ。けど、メイクラックモンは「同じものをオカエシしろ」と割とはっきり言葉にして要求していたのに、雑にはいはい返す返すと約束したのは深津ですよね。不誠実だと思います。

最も、前回(第44話「赤錆」)の終わり方では深津本人には物事の経緯が分からず、反省しようがありませんでした。何も成長できていないのは当然だと思います。だいたい、たった一ヶ月半前のできごと(※)ですしね……。

(※)『ゴーストゲーム』の放送は現実と時間軸をリンクさせていると思われます。一ヶ月半前放送の第44話は、今回第50話の作中時間にとっても一ヶ月半前のはずです。

 

深津は、経緯的には成長できなくても当然です。でも、自発的な成長も見せてくれません。今回の筆致からすると、メイクラックモン事件を受けて特別に何かを考えることすらしていないかもしれません。

本当に、『出た』だけのキャラだなあと思います。2話にまたがってゲストになったキャラにも関わらず、完全に使い捨てのキャラです。

 

 

■活かされない読心術と、コミュニケーションを望まない深津&メイクラックモン

今回のメイクラックモンは実質「他人の心を読める」という特異な能力を持っており、いくらでも話を転がせる存在です。なのに、深津に友達がいないって話に対して「心が読めるからこれで友達できるね!」って話でもなく、深津が本当にメイクラックモンのことを怖がってることをメイクラックモンが心を読んで察しちゃうって話でもありません。読心術が話の流れになんにも関係してこないのです。オチが投げっぱなしで虚無だというのとは別観点で、虚無だなあと思います。

そもそもメイクラックモンの読心術、他人の機嫌を『一瞬』取ることで叱られるのを回避するためにしか役に立ってないんですよね。非常に消極的な態度です。友達が欲しい深津に必要なのは『一瞬』『面倒ごとを回避する』ことなんかじゃなくて、『継続的に』『他人の心に向き合う』ことです。

 

今回の話で、深津もメイクラックモンも対人関係の問題(≒コミュニケーションの問題)を抱えているわけですが、二人とも全く成長しません。だってほぼ読心術に近いスキルを「怒られるのを回避する」ためだけに使うメイクラックモンもそれを是とする深津も、他人とコミュニケーションなんか取る気がないってことですからね。

更に言えば、

・一方的に深津には不可能なお返しを期待するメイクラックモンも、

・(深津には無理だということは考慮しないものの)「全く同じ」お返しを返してくれとしっかり伝えてはいるメイクラックモンに雑な対応をする深津も、

全然お互いの言うことを聞いていませんからね。さもありなん、と思います。

 

そんなメイクラックモンが(恐らく)勝手に心が折れて、勝手に深津の元を去っていくの、ものすごく『ゴーストゲーム』らしいコミュニケーション不成立っぷりだなと思います。話し合いなさいよ、とりあえず。

でも、話し合えすらしないからメイクラックモンだし深津なんでしょうね。