灰色の本

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『デジモンゴーストゲーム』第25話「紅ノ饗宴」:感想②

デジモンゴーストゲーム』第25話「紅ノ饗宴」の感想②です。

 

長くなったので①②③に分割しています。

 

 

■そうじゃなくても虚無

前回の記事で「設定が繋がっていなくて杜撰」という話をひたすらしました。

でも、それ以外のところも脚本が下手で虚無です。

前回の話は設定同士の接続がちぐはぐだからおかしい・虚無になっているという観点からの話です。でも、接続は問題なくても虚無なところもあります。

 

 

■進化しても盛り上がらない

そもそも何度も言っている通り、『ゴーストゲーム』では進化したところで大して嬉しくないんですよ。

 

今回の相手は格上で、進化しなきゃ倒せないので進化が必要だった。それはそうですね。でも、次に格上の敵が来るのか同等の敵が来るのかって、何にも法則性がないでしょ?

『ゴーストゲーム』は「敵組織との戦いが激化しているから次も強敵が来そうだ」っていう話じゃないんですよ。敵は散発的に来ているだけだし、格上が来ようとなんだかだでどうにかなるし、負けたことも一度もありません。

(※ほんとは、例えば第21話「蜘蛛ノ誘惑」なんかは通常の戦闘では歯が立たなかった負け回なんですが、グルスガンマモンがご都合主義的に現れて助けてくれたのでヒロ達は深刻な『負け』を経験せずに済んでしまいました。他の負け回も同様です。

ヒロ達は「今回はたまたまなんとかなったけど、まともに戦ったらやられていた。今後、強い敵が来たらどうすればいいだろう……」というような深刻な悩みを経験したことがありません。負けなかったからというより、先輩を除いてヒロ達に『命の危険があることに首を突っ込んでいる』意識が薄すぎるからですが……。)

 

今回の戦いが過去のピンチ回と比べても特にピンチな状態だったのか、全くぴんと来ません。

毎回頭を使って切り抜けてきたと言えば聞こえは良いですが、毎回その場しのぎでなんとかしてきた(それすら出来てないのにたまたま敵が引いてくれたこともある)のがヒロ達です。

今回はその『その場しのぎ』が『土壇場での突然な進化』だった。それだけとしか思えませんでした。

 

 

■散々引っ張ったドラクモンの回収が下手すぎ

ラクモンの使い方がヘッッッタクソ過ぎてドン引きしました。

別にここに投入すること自体はそこまで問題ないと思いますよ。ドラクモンがここに出たこと自体が無理矢理な展開だとは思いません。

とにかく使い方がヘタすぎてドン引き。

 

いやさあ? 「ドラクモンはどんなふうに再登場するんだろうなー♪」ってうきうき妄想するようなファンがどれくらい多いのか知りませんけど、少なくともそういう妄想をしてたファンが一人もいないことはないと思うんですよ。

そのファン(とりあえず素人と仮定する)の妄想すら確実に確実に何段も下回るだろう展開をするな。ドラクモンの使い方ヘタクソ選手権を開くな、優勝すんな。

 

こんな虚無すぎる回収をするならこんなに引っ張んな。そもそも最初からドラクモンを逃がすな。遡及的に第3話の評価を下げるのを止めろ。今後第3話を見返したら、「でもこの不穏なこと言ってるドラクモン、特にキーキャラでもなんでもなく意味なくさくっと殺されるだけの役なんだよなー」としか思えなくなるじゃん。

 

ルリにフォーカスが合う回に絡めて再登場して、ルリに恐怖を与えたこと自体は評価します。けど、ほんっっっとにそれだけです。くだらない理由でくだらなく死にました。

 

 

■部下をあっさり殺す、みみっちいヴァンデモン

や、『ヴァンデモンの引き立て役になって死ぬ』なら分かりますしスタッフ的にはそういう意図なのかもしれないなとも思うんですけど、そう見えないんですよ。

ヴァンデモンみたいなどう見ても強キャラな奴がドラクモンみたいな如何にもなザコキャラを一撃で殺せるのは、わざわざ演出されなくてもまあまあ当然じゃないですか。いや、そりゃ、描写はきっちりあるほうが良いので、そういう意味ではドラクモンをあっさり殺すシーンがあるのは妥当です。

 

けど、自分がドラクモン殺害シーンから感じたのは、ヴァンデモンの圧倒的強さではありません。みみっちさです。しょうもない理由で部下を殺してしまう、器の狭さです。

 

部下としてのドラクモンが忠実だったかというとキャラ性格的にはそんなことなさそうですし、ヴァンデモンからすれば下品な下っ端だったとは思いますが、極端な命令違反をしたとも思えませんでした。

ルリですよ? ぶっちゃけ、ヴァンデモンがメインで狙う女性の年齢層よりだいぶ低いでしょ。更には、ヴァンデモンはたまたまルリを引き当ててしまっただけで、ルリにそこまで興味があったわけじゃなかったはずです。そんなガキ一人ぐらい、ドラクモンにあげちゃえば良いじゃないですか。

 

ヴァンデモン、みみっちくてダサいなと思ってしまいました。

「ルリを渡すのはかまわんが私に逆らうのは許さない」「序列が一番下のお前が血を数のは許さぬ」という、身分の上下関係を重んじる貴族気質みたいなテイストが強調して描かれてたらまた違ったと思います。

 

いや、一応そのつもりで描いてるのは理解しますよ。

作中での一回目の招待会の女性参加者が3人、ドラクモンは序列がドベ=4番目なので血をもらえず。

二回目の招待会は女性参加者が4人、ドラクモンも吸血している。

三回目の招待会(ルリが参加した回)も女性参加者は3人だったので、序列ドベのドラクモンは本来血を貰える立場ではなかったのです。

分かるよ。でもさあ、なんでそんなとこを「台詞はないけどちゃんと描いてる。ちゃんとよく見て、分かってくれる人だけ分かれば良いのだ」っていうノリで描くんですかね。なんですっげーさらっと済ませるんですかね。

そこは、ちゃんと視聴者に伝わったほうが良いところだと思いますけど。明確に台詞で言ったほうが良いところだと思いますけど……。

 

そもそも、ヴァンデモンから見たらドラクモンなんか蟻ん子みたいなもんでしょ。蟻なんか踏みつぶしても、『圧倒的強さ』は伝わらないんですよ。大昔のヒロ達(仲間もそろってなければ進化もろくに進んでいない状態)ですらそいつ踏みつぶしたことありますよ。

 

 

■ノルマ回収を物語に組み込む下手さ

感想記事①②の統括をしますね。

 

まあ、分かるんですよ。分かりはするんですよ。

クール初めの重要回なので、

 

・主人公のパートナーであるガンマモンを進化させたい!

・大物っぽい、有名な怪奇ネタを出したい!(吸血鬼→ヴァンデモン)

デジモンの大物キャラを出したい!(ヴァンデモンは過去作でも重要ボスとして扱われている有名キャラ)

(・ついでに、ドラクモンの使い道を思いつかなくて邪魔なのでそろそろ消しておきたい!)

 

……という要求が先にあったことは。分かりますよ。クール末はどうでもよくても、クール初めはもりあげたいというのが『ゴーストゲーム』なんですよね。そういう事情が先にあることは察します。

 

でも、あんまりにその回収の仕方ががさつです。

なんですか、この「ノルマ要素だけ重ねてお話にしました」みたいな造り方。

 

『ゴーストゲーム』は、ノルマらしいノルマは少ないです。結局ここまで見てきても、ノルマだと思えたのは仲間回収と進化回収のみです。ボコモン先生はグルスガンマモンの進化回収の一環なだけです(今のところ、ボコモン先生の唱えた「人間とデジモンの架け橋」はときどき思い出されるだけに過ぎず、何にもなっていません。それすらまた忘れられて遠い過去になっている気がします)

 

それなのに『ノルマ回収』と『物語(ホラーネタなり出来事なり)』の組み合わせが下手です。

前に気になったのは、第10話「死ノ遊戯」でジェリーモン進化のノルマ回収とコタロウを抱き合わせたことです。そのせいでヒロとコタロウの友情は描き切れず(そもそもコタロウとの友情なんてろくに描く気すらないのだと思いますが)、何も役に立てないヒロが先輩に「コタロウを助けろ」としつこく言うことだけはするというちぐはぐな話運びになっていました。

 

今回も、ノルマであるガンマモンの進化を引き立てるような『ヒロとガンマモンの絆の物語』を用意できていません。土壇場でいきなりピンチになって、土壇場でいきなり絆っぽいことを叫んで、土壇場でいきなり進化した。それだけです。

ノルマ回収ヘタクソ選手権を開くな。