灰色の本

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『デジモンゴーストゲーム』第47話「永遠ノ記憶」:感想②

 『デジモンゴーストゲーム』第47話「永遠ノ記憶」の感想②です。 長くなったので記事を①②に分割しています。 

 

 

■ルリの傲慢さとその言動にツッコんでもらえない話

「君たちも天才なのか?」という保のその問いかけもアホくさいんですけどお。

堂々とその発言に乗るルリ、調子よすぎてカスか?

普段の言動が酷すぎるルリがやると可愛げにならないんですよね。ただの傲岸不遜、しかもルリの場合は傲慢さから他人への暴言やパシリなどの行動に出るので、周囲への被害付きですからね。ルリカスって呼んでいい?

(そういう意味では先輩の天才ナルシストボケは「メインキャラに相手にされてない」ことでバランスは取れています。……その「メインキャラに相手にされてない」ところがもはや人権蹂躙レベルなので弊害がいくらなんでも大きすぎるのですが。あのですね、ナルシストボケをかまし続ける先輩を雑に扱うヒロ&ルリ&ジェリーモンという設定それ自体は実はあんまり問題ないんですよね。ナルシストボケキャラである先輩を『視聴者にとってもウザい』キャラにしないための処理としては適切です。設定時点では正しいです。ただ、ヒロ&ルリ&ジェリーモンの『設定』ではなくて『実装』が最悪すぎるだけです。ジェリーモンは『設定』時点でダメかもしれませんが。

 

ルリ、第45話「幽霊新聞」でも地味に傲慢っぷりが出てるんですよね(傲慢が服を着て歩いてるような子なので地味な傲慢っぷりはずっと出てるんですが)。ジェリーモンに「アイドルどう?」って聞かれて「ぴったり来ない」って言いますからね。容姿や能力の問題で無理だとは思っていないらしいです。……自己肯定感が高いキャラは俺は基本的に好きなんですがね……ルリの場合はそれで他害するのでダメです。さっさと心が折れてほしいです。

でも予告見る限り次回も「ルリのドレス姿可愛い!」の持ち上げ回なんですよね……。

 

……いちゃもんじゃねえかって? お前がルリのこと嫌いなだけだろって? そうですね、ルリは嫌いなタイプの害獣ですね。現実に割といそうで。

じゃあ別の観点の話をしましょうか? ルリはねえ、ヒロや先輩との絆が築けてない状態でこういうこと言うから、何も反応してもらえないんですよ。言いっぱなしなんですよ。褒めてももらえないし、ボケ扱いでノッてももらえないし、(友人同士のじゃれあい程度の意味で)けなしてももらえない、あしらってすらもらえない。そういうとこがダメだと思うよ。

絆がないのに「けなされる」だけ発生する先輩ももっと酷いとは思いますが……

ルリに限らず、『ゴーストゲーム』はそういうコミュニケーションが全くと言っていいほど発生しない作品ですけどね。「会話」は有っても「コミュニケーション」がない。言ってること分かりますかね。

 

……ガンマモンに反応されてる? うん、ガンマモンは外部からの刺激にはなんにでも反応する赤ちゃんですので。一年以上見ても初期値から情緒的な成長がほぼ見られない赤ちゃんですので(たまにそれらしい描写があっても積み重ならず、後から無かったことにするかのような描写が入って積み重ねが壊されることすらある)(※)。ルリだから反応しているわけではありません。というか、意味がある反応すらしていません。ほぼオウム返しです。

ガンマモンのような赤ちゃんにしか反応してもらえない、まともなコミュニケーションが発生しないっていうのが、結局のところルリの評価だと思います。

 

(※)流石にこの言及の仕方はアンフェアなんで、話の流れからは脱線していますが補足しておきましょうか。次項目参照。

 

 

■特にコミュニケーション能力の成長が見られないガンマモン

ちょっと今回の話からは逸れますが、ここまでのガンマモンの成長の話をしておきましょう。

 

第40話「螺旋海岸」に反抗期らしい描写があったのは、俺は個人的には反抗期描写だと認めていません。あの回の反抗期らしき描写は唐突なものでしたし、あの回だけで後に続かない単発の話でした。しかも「破壊行動をたしなめられるのはいつものことで、破壊行動をするなという命令を聞かないこと自体はいつものこと」です。その意図なら見せ方がヘタクソすぎると思います。

 

しかし、そんなガンマモンにも初期から成長したと思われる描写(明確に作中で言及されてはいないが繰り返し描写されている事柄)が存在します。ガンマモンは明らかに、気に入ったゲストキャラなどを「助ける」ようになってきたんですよね。初期はチョコに釣られてしか人を助けないチョコ害獣だった(※)のに、自発的に他者を助けるようになった。これは流石に意図的に設定されて描かれているものだと思います。意図的じゃなくて「展開的にさっさと助けに向かってもらわないと困るから、たまたま」だったら流石に泣くぞ。

 

(※)厳密には、ガンマモンは実は初期の時点からチョコが無くてもそれなりに助けようとしてくれる子なのに、周囲が「こいつチョコがないと動かないから」とばかりに先にチョコで餌付けしてるように見えなくもなかったですが……

 

ただ……まあ……先ほどまでしていた話って、「コミュニケーション」の話なわけですよ……。

ガンマモンは外部刺激にはなんでも反応するし、「気に入ったゲストキャラを助ける」っていうのも「干渉してきたゲストキャラはだいたい全員気に入る」というのが実情です。人懐っこいのは良いことだと思いますが、ガンマモンと他者でコミュニケーションが成立しているわけではない場合がほとんどなんです。ガンマモンを気に入ってくれたゲストキャラもだいたいがガンマモンのことはペット、赤ちゃん、抱っこ人形扱いだと思います。ガンマモンには愛嬌の能力はあっても、相互コミュニケーションの能力はないんです。ずっと成長せずに赤ちゃんだと思います。

そういう意味では第40話「螺旋海岸」に出てきた凛は言葉によってガンマモンに影響を与えた、『ゴーストゲーム』屈指のコミュニケーション成功事例なのですが……肝心のガンマモンの拗ね方が理不尽すぎるので、この回は話全体が良く分かりません。ガンマモンのコミュニケーションの印象がプラスかマイナスかって言われるとマイナスな回です。

 

 

■人権を平気で無視して電流を流されるエスピモンに引く

エスピモンを電磁石にするというの、発想はすげえので褒めます。褒めますけど、相変わらず倫理観は最悪ですね。

 

今回のエスピモン、何故その場にいたのか初見ではよく分からないほどの空気っぷりなんですよ。そんな状態で無理やり参戦させられた挙句に体へのダメージを気にもされずに電流を流されて電磁石にされてるの、人権がなさすぎて制作スタッフにもメインキャラにも引いちゃいます。エスピモンに同意を取って仲間加入させたわけではないのにエスピモンに身を強制的に呈させてるんですよ。わざわざ追加されたキャラなのに何でしょうねこの扱い。仲間という同意が取れてないヒロと先輩をルリが使い倒すのに似ていて、非常に『ゴーストゲーム』らしいですね。

 

『ゴーストゲーム』の、害獣であるところのデジモンに「人権」が必要なのか? という問題は真面目にやれば相当深掘りできるテーマですけど、そんな高度過ぎる話をする状態ではありません。メインキャラがやっていることがシンプルに酷すぎて引きます。更に、エスピモンに電流を流すことを指示したのが先輩である、というのもダメすぎると思います。いじめの連鎖構図かよ。

 

エスピモンとの信頼関係が成り立ってる状態でも勝手にやるのはかなり微妙な行為なんですよ。ほぼアウトの好意なんですよ。なのに、エスピモンとの信頼関係がゼロの状態でやるんですからかなりキてると思います。先輩とエスピモンってつるんだこと無いだろ。
ちなみに先輩いじめについても、信頼関係ができててもかなりアウトな行為なのにヒロルリが先輩との信頼関係ゼロ時点の最初からフルスロットルだからキてると思います。
ちなみにヒロとルリが指示した場合はまあ、もともと人の心がない外道なので……キャラ崩壊ではないだけマシなのではないでしょうか……。自分で書いておいてなんですが、何がマシなんだろうな。

 

エスピモンさんは登場初回から考えると、理由さえあれば容易に「ちっしょーがねーなー」してくれるという『ゴーストゲーム』世界のデジモンの中ではかなり奇特なキャラなんですよ。今回だって他に解決法がなく急を要していたのですから、ちゃんとお願いすればエスピモンさんは口では渋りながらも引き受けてくれたでしょう。なのにお願いをしない。無理やりやらせる。こいつなら何回黒焦げにしても平気で復活するから南海黒焦げにしても平気やろ、みたいなギャグキャラとしてキャラ付けしてるわけでもないのに。酷いです。しかも今回はなんだかだ理由なくただの成り行き利他精神でついてきてくれてるんですよ。成り行きでついてきてくれて、スキャンしてくれたおかげで敵を見つけられたんですから、その時点でMVPなんですよ。それなのに事前のお願いもせず、事後のお礼も言わずに強制的に電流ぶち込むって。どうかと思います。

 

(逆の発想ですが、ヒロが「あ? 家に置いてやってるよな? メシも食わせてやってるよな? おら働け、電磁石になって来い」って堂々と言い出す図太いキャラなら気にならなかった可能性があります。同意取る手続きも無く、無理やりやらせる手続きも無いというのがダメなんです。それらの描写の欠如のせいで、「これは酷いことなんだ」と制作スタッフが認識してる気配を感じられないのがダメです。)

 

 

■コミュニケーションが成立しない『ゴーストゲーム』世界

またコミュニケーションの話なんですけど。

結局、今回のエスピモン電磁石化が酷く見えるのも「コミュニケーション不足」の話なんですよね。お願いする、無理やりやらせる、後でお礼を言う……そういう真っ当なコミュニケーションが存在してないよねって話なんだと思います。

 

『ゴーストゲーム』のメインキャラですが、ただの会話ではなく真っ当に『コミュニケーション』したシーンがぱっと思い当たらないレベルだと思っています。

基本的にパートナーの絆どころか友情関係すら存在しないんです。というかパシリ-パシラレで繋がる関係を友情とか仲間と呼んでるように見えます。

ヒロはルリにもカス友人のコタロウにもカス親父にもパシられるし、ある意味ではガンマモンにも良いように利用されています(これに関してはガンマモンは悪くないのですが、ガンマモンは本来ヒロからすれば育てる義理などないのです)。一方で先輩のことはパシります。それ以外に深い関係性を結んでいるキャラは見受けられません(第24話「歪ンダ愛」のゲスト・優人との交友関係がもっと深掘りされていれば話は違ったでしょうが……)。パシリ・パシラレ以外の関係性の築き方を知らないんだと思います。

ガンマモンについては上でも触れましたが、今言ってるレベルでのコミュニケーションが成立する知能がないです。ガンマモン側にもコミュニケーション力がないのでヒロを全く支えられません。ガンマモンは登場当初からずっと情緒的には役立たずです。

 

一方、ルリは本人はパシリ魔害獣のくせしてパシリじゃない友達もいるのでそこは何故かまともです。が、コミュニケーション力の無さはトップクラスだと思います。友好的に興味の視線を向けてくれる、温厚な気質のアンゴラモンとさえコミュニケーションが成立しませんからね。ラモールモン初進化回(第35話「人狼」)の会話のドッジボールっぷりは酷かったです。あの回はアンゴラモンのほうは一応ちゃんとキャッチボールをしようと試みてるんですよ。けどルリがボールをかわした挙句にぶつけてくるので、多分ルリはコミュニケーションをキャッチボールじゃなくてドッジボールだと誤解していますね。

 

比べると先輩&ジェリーモン組は、酷いけどヒロ&ガンマモン組やルリ&アンゴラモン組よりはまだまともなんですよね。ジェリーモンはメインデジモンの中では一番害獣で一番言うことを聞かないにも関わらず、他の組のコミュニケーション不全が酷すぎるために、一番まともにコミュニケーションしてるという酷い状況です。ジェリーモンは『言うことを聞かない(お願いや命令を聞いてくれない)』だけで、『言ってること自体は聞いてる(相手の意思自体は理解できてる)』ですからね……

ジェリーモン謝罪回(第44話「赤錆」)のことはだいぶダメ展開だと思ってますけど、先輩がジェリーモンをガチで叱りつけて、その説教の内容をきちんと理解したがゆえに害獣のジェリーモンがしおれたというのは作中では珍しいコミュニケーション成立描写ではあるんですよね。
まあ先輩ジェリーモン組がコミュニケーション成立しているような気がするのも、1クールと2クールの貯金だけって気がしますけどね……3クール4クールはなんか全員が空気ですから……

 

 

■そのほか

・公式も、それどころか声優さんも「先輩に友達なんていたんだ!?」という態度なのが酷いなあと思いました。

①既出のエマは友達扱いじゃないんかい。

②いわゆるの友達ではないけど、大学教授や研究分野が同じ先生たちには可愛がられてるタイプの人だろ先輩は。知能ギャップが埋まる(大学の?)研究室内ではまあまあ普通に溶け込んでるのは想定内では。

③友達いないことが即座に悪いという前提で話してるのが気に食わん。

ヒロのほうが友達いなさそうコタロウとの関係はパシリパシラレに近いし、実際ヒロもコタロウにそこまで篤い友情を感じていないので、怪異に巻き込まれてる時に「興味ないから気づかない」をやるので対処が無慈悲に遅いし。友達いないことが即座に悪いわけではないし、友達いないことが性格が悪いことの証明になるわけでも無いんですが、ヒロに関しては「性格悪いから友達いないんですね……」です。比較すると先輩はめんどくさいときはひたすらめんどくさいですが普段は善人・常識人なのでめんどくさいモードに入ったときをやり過ごせれば良き友人になれる可能性はある。

ヒロが友達いなさそうって話は下記記事でも書きました。第15話を見たころの感想なので既に30話は前ですが、そのへんの印象は変わってません。

haiironohon.hatenablog.com