灰色の本

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『デジモンゴーストゲーム』ヒロがよく分からない、とかそういう話

デジモンゴーストゲーム』の主人公ヒロのことが未だによく分からねえとか、こいつのこういうとこ本当どうかと思うよとかそんな話です。

第15話「占イノ館」までの内容を踏まえています。

 


※この記事は初見当時に他媒体で書いた感想を元に、後から再構築したものです。

 

 

 

■動機(目的)が分からねえ

ヒロの動機が分からねえ。1クール超えて15話も見たのに未だによく分からねえ。


ヒロは『頼みを断れないし断る選択肢を思いつきすらしないパシられ属性』とばかり語られている。更には『頼みを断るより自分でやったほうが早い=めんどくさくないから断らない』と語られている。断ったほうが早くてめんどくさくないと思われるときは断っている描写もあり、自分から動くことが少ないので本質的にはめんどくさがりであるようにも見える。

なので、第2話と第3話で見られた『不審なデジモンを見かけると首を突っ込みに行く』の挙動が謎

ルリの巻き込みのせいで事件に関わっているケースが多すぎるのでよく分からなくなっているが、第2話と第3話から見ると、ヒロはルリに巻き込まれなくてもデジモン事件に首を突っ込みに行く奴なのである。その動機が説明はされてないんですよ。

 

父親捜しに関わるからという説明もない(厳密には、説明はあるがそんなに積極的な目標でない様子が描写され続けている)。

デジモン事件について正義感が強くて許せないキャラでもない。

優しすぎて放置できなくてつい行っちゃう、街の危機を見過ごせないキャラでもない。そんな説明はされてない。

 


もっと言うと、ヒロはパシられ属性が強いゆえに、弱気・消極的とは言わないが『受動的』な印象(動かざるを得なくなってから動く印象)がある。

それに対して『ルリの巻き込みが無かろうと、不審なデジモンを見かけると首を突っ込みに行く奴ではある』というのが能動的すぎて分からない。

 

第2話と第3話がおかしかっただけで自分から動くキャラではないというのが正解なんですか?

 

逆に、動機ゼロの完全巻き込まれ型で「大変大変! デジモンが見えるようになってから、デジモン事件にばかすか巻き込まれるようになっちゃった☆」の主人公ならそれでもよかったと思うんですよ。でもヒロはそうじゃないですよね。完全巻き込まれ型と呼ぶには、あいつは、首は突っ込むほうなんです。

いやもう、第2話で博物館に不法侵入(正確には不退去)したり、その他の回でもレッツラ犯罪行為してまで事件に首を突っ込みたがるせいで、「俺は巻き込まれてるだけなんです」のツラをすることができなくなってる。

 

 

■何考えてるのかわからねえ

別の観点から言えば、そもそもヒロ自身が何考えてるのか非常に分かりづらい。感情が見えず人間味が薄い。

なので、当然ヒロ自身の意志や望みの部分も見えず、どうしても能動的に見えない、というのがある。

 

ヒロは一応、父ちゃんを見つけることを目標に置いてはいるみたいです。

が、「まいっか元気そうだし」「元気そうだったので(情報が無くても気にしなくて)良いです」といったような発言もある。『そう積極的な目標ではない』ということは繰り返し描写されてしまっているんです。

てーか父ちゃん見つけてどうしたいのかすらよく分からない。「生存してるかすら分からないからひとまず火急で生存確認がしたい」という流れではないわけだし。

 

 

■そもそもパシラレ属性を設定した意味がよく分からねえ

第1話であれだけ尺を使って『パシられやすい性格』だと描いたの、どういう意図だったんでしょうね。コタロウ(とモブ教師)の頼みかたと頼み事の内容はやたらパシリっぽいものでしたが、別の表現はできなかったんですかね。しかもルリにも繰り返し繰り返しパシられ、『パシられやすい性格』であることは何度も何度もしつこく強調される。

なんというかさ。それって主人公として魅力的な性格なの?

そこが最初の弱みで、作中でどんどん成長していくんだっていうなら分かりますよ。優しいゆえに断るのがヘタなのだ、というならそれも分かる。

でもヒロはそうじゃないですよね。

ヒロは優しいのではなくただただ怠惰であるがゆえに他人の要求を断らないだけの人物で、それを良いとも悪いとも何とも思っていません。第4話カボチャ回のルリには「ほんとになんでもやってくれるのね」なんて揶揄するようなことを言われる。

そんなやる気のない性格で目的もない子、主人公としての魅力、ありますかね。振り回されてるだけで面白いってキャラでもないし。

 

ヒロがパシラレ性格に育っていることについては、ヒロのクズ親父である北斗も関連していると思っています。ヒロ&カス親父については専用記事を書きたいと思っているので細かくはそちらで述べます。

 

 

■『守りたい』意志がなさすぎで引く

ヒロは別に、街や人命を守りたくて動いてるキャラではありません。そういう『守る』意志があるのだと説明されたことはないのだから、アンパンマンさんとかアンゴラモンさんみたく、積極的に街をパトロールしてデジモン事件の被害をできるだけ抑えるように努力しろとまでは言いません。

 

それはそれとして『守りたい』意志がなさすぎで引く。

 

父親捜索のためにデジモンに関わりたいというのは納得できる理由ではないんですけど、それでもこの理由が地味に説明されてるせいで「じゃあこいつ父親のことが無ければ人を助けに行かねえのかよ?」になってる。ちょっと主人公としてどうなのって思う。人を平気で見捨てるタイプの輩なんですよみたいなダークでドライな主人公を目指したわけでもないでしょうに。流石にもうちょっと積極的に善人でいて欲しい

 

ヒロね、『デジモンとコンタクト取りたいからコンタクト取ろうとしたら巻き込まれた』『デジモンとコンタクト取りたいから事件に勢いよく首を突っ込んだ』が多くて、『助けたいから助けた』感が薄いのが厳しいんですよ。

 

たとえば第5話の先輩加入回。先輩が「制作スタッフ的に見下して笑いの対象にしていいキャラ」に片足だか両足だか突っ込んでるせいもあるんでしょうけど、ヒロはジェリーモンにめちゃくちゃ絡まれてる先輩をとりあえずで見捨てようとしてるんですよね。面倒を避けたい意志は感じても、『守りたい』『助けたい』意思は感じられないんですよ。

 

第3話ルリ加入回でルリに「助ける」って近づいたのは、デジモンに纏わり付かれること自体に問題はないケースを知らなかったから&コンタクト欲しかったからだと思うんですよね。それは「助ける」意志があるって言うんじゃないかって? いやあ……『「誰かを助ける」の優先順位がだいぶ低くない?』っつってるんですよ。

 

厳密には、ヒロは『巻き込まれたら』解決に動く善人ではありますよ。それ以上でも以下でもないだけです。そこに守りたい・助けたいという強い意思はないです。積極性が無くて受動的なんだよな。

 

あと、人間の被害が出ているorこれからも出続ける可能性があることが分かり切っているのに、事件の根本的解決にあまりにも興味が無さすぎるよなとも思います。それってつまり、人命に興味がないってことですよね。

第3話のドラクモンはヒロ達の目の前では改心したふりをしていたので仕方ないと考えるにしても、第12話のザッソーモン軍団とか、第7話のゲスト人間のダイゴ(鳥に魅入られて一人でカルトな方向にイッちゃってた奴)といった『いかにも再犯しそうな連中』のその後に興味無さそうなの、どうかと思うんすが……。

 

 

■一人キャンプ趣味が悪いのではないが、『ヒロが』という場合……

ヒロの一人キャンプ好きの設定、ああそうだろうなと納得する。

一人キャンプが悪いんじゃなくて『ヒロが一人キャンプが趣味だと言い出すと』、「ああ……おまえ友達いないもんな……」と変な納得をしてしまう。

 

「友達いなさそう」っていうのは本当は、悪意を込めて発することは可能でも、それ自体は悪口にすらならない言葉です。例えば、一人でやる趣味が好きなので一人でいるほうが好き、なので友達がいない~少ないという人がいるとして、それで楽しく問題なく過ごしているのなら「友達いなさそう」という言葉は本来は悪口として成立しません。

ただ、実際には、「友達がいないことは即座に悪いことだ」という世間的な偏見があり、その偏見を内面化した人に「自分には友達がいない=悪いんだ」という後ろめたさが生まれることで、ダメージが発生するのです。

 

だから別に本来は「友達いなさそう」という言葉は悪口や煽りとしては成立しないのですが、ヒロは「友達いなさそう」っつっても本人はノーダメージなくせに煽りとしてはめちゃめちゃ成立すると思う

 

「友達いなさそう」って言葉には「地味、内気」ぐらいの揶揄は入っても「性格悪そう」までは明確には含意できないんだけど、ヒロに「友達いなさそう」って言ったら「そんなに性格悪かったら友達できないだろ」という意味まで直結してしまう感じがある。

いや……ヒロ、性格悪いというか、『性格が虚無』かつ『挙動が悪い』なんだよな……。

 

ヒロってさ。作中描写の限りでは、パシリパシラレ以外の友人関係を知らないんですよ。

ヒロは仲間以外に通常友人(コタロウのこと)の描写があるにもかかわらず、

・通常友人(コタロウ)からパシられる。

・モブ教師からさえパシられる。

・ヒロイン(ルリ)からもパシられる。

・先輩はばしばしパシる。

というパシリパシラレの描写ばかりがやたらあるので、パシリパシラレ以外の真っ当な交流がある図が想定できないんですよ。

 

これは重箱の隅をつつくような話だと思いますが、ヒロは初回でガンマモンにも

「まだよく分かんないけど……弟なんだろ!?」

と言ってるような奴なんですよね。

このセリフ、思い返すと本当に理解に苦しむんですけど、バトルの流れ的に「弟なんだろ(だから俺を守れ)」「弟なんだろ(だから俺のために戦え)」以外の解釈が可能だったら教えてほしいです。弟もこき使ってない? いや、突然カス親父に押し付けられたガンマモンを弟としてお世話して尊重しろっていうのはいろいろ納得いかないよなってのはあるのですが……

 

仲間の間ですらヒロは真っ当なコミュニケーションを取る様子がないので、作中に出てこないところでモブ友人と真っ当なコミュニケーションを取ってることが想定しづらいんですよ。パシリパシラレ以外の友達がいない気がする。

んで、パシるクズらがヒロに寄ってくるのはヒロ側にパシラレ体質があるからなんですけど、まあ……なんでそうなるかってつまり、自我が薄いからなんだよな……。友達にしづらいと思う……。

ソロキャン趣味の話も、スタッフは初出時点で『一発ネタ』っぽい浅い触れ方で済ませましたよね(実際には第16話がソロキャン回なので一発ネタではなかったようですが)。熱量のある趣味とはいまいち感じられないんです。多分ヒロ、多趣味な代わりにどれも熱意が浅いタイプ(そのくせ器用になんでもこなしはする)なんじゃないかなあ……。

彼、アイデンティティらしいアイデンティティがどこにもないんです。友達にしづらいというか、話しづらいと思う。

 

んで、自我が薄いのに問題解決行動に即座に犯罪行為を提案or実行してくるやつは友達にしたくねーよという問題もあります。

いやだよ! 「絶対こうしたい!」とか「これだけは何があっても絶対達成したい! そのためには手段は厭わない!」みたいな強烈な意思や感情があるわけでもないのにホップステップ犯罪するやつ!!! 怖くて側に置けないよ!!!

作中初代パシリマンのコタロウは、「自分が立入禁止区域に侵入するためにヒロを利用した」と表現すれば自業自得なんですけど、「ヒロが気軽にほいほい犯罪行為して立入禁止区域に入らせた」と表現すればヒロの犯罪行為のとばっちりなんですよ。

ヒロほんと怖くて側に置けねえよ。

 

 

 

■まとめ

・ヒロの願いややりたいことが分からねえ、何考えてるのかわからねえ

・ヒロに目的がねえ。「父親を捜す」はヒロもそんなに意欲的にやってねえし、緊急性も必要性も無くて共感できん

・巻き込まれたら事態の解決に動いてくれる程度の善人ではあるけど、それ以上のことはしない=被害拡大の恐れがあろうと放置するので、人命への興味の無さに引く

・一人キャンプという趣味が悪いわけではないけど、『ヒロの趣味は一人キャンプである』というのは、ヒロに友達がいない(ヒロはパシリパシラレ関係以外のまっとうな友達を作れない)からだろうなあ、と謎の納得をしてしまう

自我薄いのに積極的に犯罪するのやめろ。