灰色の本

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『デジモンゴーストゲーム』第28話「顔取リ」:感想②

デジモンゴーストゲーム』第28話「顔取リ」の感想②です。

 

 

長くなったので記事を①②に分割しています。

■起きた事件がラスボス戦並みで引く

アシュラモンがやらかしたことが盛大過ぎて引きました。実体化して一般人を手当たり次第に無差別襲撃、一般家屋に侵入・破壊って……。どう考えても誤魔化し効かないでしょうが。ザッソウモン回を「集団幻覚」で誤魔化したということにしたところで、今回は誤魔化せないでしょうがよ。

え、引くよ。『ゴーストゲーム』ってデジモンが一般人に知られていないタイプの話でしょ。こういうタイプの話でこんな暴力的な形でデジモンの存在がバレるって、最終回ごろの展開でやるようなことじゃないですか? いや、そりゃ、必ずしもテンプレに従わなくても良いですけど、テンプレに従わないなら従わないだけの心づもりは有って進めてるんですかね。

 

今までの回で、社会的影響が出そうな話があってもその後の回に何も影響を及ぼしてないから言ってるんですよ。

これだけのことが起きてても次回もまた何も影響なく話を進めるつもりですか……? ドン引きです。

これで次回に影響が出てたら謝るけど、それなら「いや今までの他の回にも社会的影響出てないとやばい事象いっぱいあったけど!?」ってなるだけですよね。

 

 

■共感できたかもしれないが結局いつもの害獣であるアシュラモン

今回の敵、アシュラモン。

『感情が足りない』って、それはそれで深刻な悩みですよね。もっと描き込みが深ければキャラとして愛せただろうなと思いました。事実、アンゴラ集会入りで解決する程度のキャラだったんですよ。ちゃんと和解できるポテンシャルはあった。もっとキャラを描き込めば、深刻な悩みに共感できるキャラになり得たと思います。

 

が、実際には。むしろあっさり集会入りで解決したところが異文化過ぎて、やっぱり害獣すぎる。

やらかしたことに対して改心が早すぎるんですよ。

いや、ううん。今回は『改心すらしてない』が正しいですね。顔を取るのを止めると言ったわけではないので、普通にまた繰り返す可能性が高いんじゃないですか。

ギャグみたいにヒロをゆさゆさするオチで終わらせて良かったんですかね。ギャグオチで済ませられるほど、そんなに丸く治まってなかったなかった気がしますけど。

 

てーか、集会に行って「いろんな気持ちが楽しめるかもしれないよ」って、つまり他のデジモンと触れ合ってみたらもっと他の感情も生まれるかもしれないよってことですよね……。生得的なものだと思われる「アシュラモンには三つの顔しかなく、顔に対応する三つの感情しかない」という特性が、他のデジモンと仲良くコミュニケーションすることで改善されるなんてことある……?

 

 

■そのほか

・コタロウ、登場のたびにいちいち女好きスケベ野郎を強調してきて気持ち悪いですが、アイドルにハマって推しぬいで喜んでいるなら無害である気がします。そのまま大人しくしておいてくれ。

 

・コタロウ、登場のたびに被害には遭う&被害に遭ってるのにヒロには雑に扱われるのでそこは可哀想ですね。同じ寮に住んでるのに二日放置かあ。

今回はヒロは被害を知ってからはコタロウを真面目に助けようとしていましたが、その後、話が流れていき、話の中心からコタロウはいつの間にか消えていました。なんだろうね、もう遅い気はするけど、コタロウ完全ヒロイン回(ヒロ&コタロウ親友回)ぐらいやってあげればいいのにね……。(あいつら別に『親友』ではないと思うけど。)(コタロウに尺回す前にメインキャラを描き込めよって話だけど。)

 

・コタロウの被害に気付いたときのヒロのセリフ。

>こんなおかしなこと、もしかしたら、デジモンが原因なんじゃ……。

推定は妥当だが言い始めるのがびっっっくりするほど遅い。そんなの第3話とかそこらで言い始めて、第10話ぐらいで逆に(デジモンが原因であることが圧倒的に多いため、とりあえずデジモンを原因だと仮定して動くようになるので)言わなくなってほしいような話です。第28話にもなって何を今さら言い出してるんだ。しかもセリフ回しのせいで妖怪ウォッチみたいなので余計に間が抜けています(妖怪ウォッチが悪いんじゃないですけど、ホラーアニメを見ているときに思い出すものとしては絵面が呑気すぎる)。

 

・コタロウが掃除当番をヒロに代わってもらった件、コタロウが廃人状態になってからヒロに依頼したなら「廃人状態のコタロウと話をしてるのにおかしいと思わず放置したヒロって……」になるし、コタロウが廃人状態になる前に依頼したなら「(恐らく)アイドル推しぬいを買いに行くためにヒロに掃除押し付けるコタロウって……」になるのでどちらにしてもどちらかの株が下がりますね……。強いて言うなら、後者であれば「コタロウは押しぬいを買いに行く日(週?)の掃除当番を別の日(週)に交代してもらっただけ」とは主張できる気がしますが、作中ではそういうフォローはありませんね。

ちなみに「頼られたら断らない」と言われているヒロの特性は、自分は個人的にはただのセルフネグレクトの一種だと考えているので、全く評価していません。その描写があるたびにむしろヒロと制作スタッフの評価は下がります。まあ今後そのセルフネグレクトについて堂々と言及してヒロが自己批判し、そんな状況に陥る元凶となった父親を真正面から糾弾する回が来たなら手のひらドリルしますが、この制作スタッフにそんな期待はするだけ無駄のような気がしています。

 

・「口だけにされた人間」は引きこもるから、本人は発信しないし、目撃されないから噂にもならない。だからSNSにはその手の書き込みはない。なるほど、正しいですね。

んじゃなんでデジモン達のあいだで噂になってんの? 引きこもってる人間なんかデジモン達の目にも触れないでしょうがよ。それともデジモン達は不可視・すり抜け可能な身体を生かして日常的に家宅侵入しまくってる前提ですか?

 

・絶対既出のツッコミだと思いますが、アシュラモンの顔の取り方、ジョジョのスタンド『シンデレラ』みたいだなーと思って苦笑いしました。「顔を奪ってのっぺらぼうにする」というネタで『口の部分だけ無視して、目鼻の部分だけマスク状に切り取る』は真っ直ぐに出てくる発想ではないので、まずまあ参考にしているんだと思います。ジョジョの『シンデレラ』を参考にしていないなら、無駄に独自性が高すぎますので。

 

・ルリの顔をとった時のアシュラモンの評価。

>力を抑えきれん!

>胸が熱い! これが苦境を突破せんと立ち向かう人間の心、勇気なるものか!

笑いました。つまり制作スタッフがルリをそう見てるってことですよね。アシュラモンが力を抑えきれないほどの勇気だそうです。ルリ、ほんと一次メアリー・スーですね。

でさー、ルリの顔をとってルリの感情を取り込んだアシュラモンですが、それまでは一応こそこそしていたのに急に気が大きくなって人間を堂々と襲撃しまくりますよね。それ、勇気っていうより加害性とか暴力性とか衝動性なんじゃないですか? 今までのルリを思い返すと、そのほうが納得できます。

 

アンゴラモンがヒロの「頼まれると断らない」特性を利用しようと考えたこと自体は評価するんですが、アンゴラモンってヒロをそんな目で見てたんでしょうか……? アンゴラモンは他人には興味ありますが、そこまで人間の情緒や挙動を細かく観察している印象もないのですが(アンゴラモンが特に着目する挙動とも思えないし)……。

 もちろん他人を利用するほうの人間であるルリは出会ってかなり早くから勘付いてヒロを利用していますし、寮長として近場からしばしば呆れながら寮生のヒロを見守っていた先輩が気づいているのも分かります。でもアンゴラモンはヒロのその特性に気づく余地があったんでしょうか? 今回の前半で特性を指摘した先輩を戦闘参加させて、先輩が閃いた形のほうが自然だったとは思います。まあ重箱の隅か。

 

・あんまり格好良い出番ではなかったですが、カウスガンマモンの尺が長かったこと自体は評価します。カウスガンマモンやウェズンガンマモンを完全な捨て駒にする気はないようでよろしいです。ガンマモンから一気にカノーヴァイスモンに進化する、いわゆる『ワープ進化』にあたるものが使えるようになるまでは、一応カウスやウェズンもスクラップ廃棄にはならなくて済むようですね。忘れてました。

 

・一方で、まーたルリが不在なせいでアンゴラモンがジンバーアンゴラモンに進化できないのはマイナス評価です。制作スタッフはジンバーアンゴラモンさんに何か恨みでもあるんですか? ……『格闘家キャラなので、出演させると枚数を食う』って恨みだとは思いますが。だったら最初から格闘家キャラなんか設定しなきゃいいじゃん……。

 

・今回は進化ソングの使い方もマイナス評価です。ずっとダラダラ流れてるし、そのくせ話の内容が完全に負け戦(最後にアンゴラモンの機転で負けを回避しただけの状態)なので締まらないし。

デジモン進化ソングっていわゆる『処刑用BGM』『勝ち確定BGM』として扱われているので、『ゴーストゲーム』の話の構成とそもそも相性が悪いっちゃ悪いんですよね……。『ゴーストゲーム』は爽快に敵を倒す回が少ないので。別にさあ、殺さなくても『倒す』はできるんだから『倒す』ぐらいはやれば良いと思うんだけどなあ……。

 

コンゴウモンもマッシュモンも、キーキャラみたいに見せておいて空気なので反応に困ります。

特にマッシュモンのほうが困ります。マッシュモン本人のドラマは何も語られないんですもん。何か事情が騙られるかと思ったら特にそんなことはありませんでした。自分がアシュラモンにやられるのが怖かっただけで「俺、もう知ーらね」以上に反省も後悔もしてなさそうなマッシュモン、こいつもこいつで信用ならないですよね。人が死にそうな事態になってるんですけどね。

まあ、デジモン達が人間の命を大事にしているとも思いませんけどね。デフォルトでは「人間の命=虫ケラ並み」だと思っていると思います。人間の命も大切だと思っているアンゴラモンのほうがデジモン的にはイカレてるんだと思います。

 

・どうでもいい重箱の隅つつきですが、今回のネタは第26話「飢餓屋敷」とだいぶかぶってると思います。

第26話が人間の魂(=記憶=知識?)を奪って快楽を得たい話。

今回第28話が人間の顔=心=感情についての知識を奪って快楽を得たい話だと思います。

一応要素を分けて書きましたが、つまり人間の精神に近いクリティカルなものを奪うことで人間の精神に蓄えられた知識を得ようとする話だと考えられるということです(※第26話については多少自己解釈が入っていますが)。もうちょっと話数が離れてれば気にしないんですが、近い話数で似たようなことをやられるとちょっと気になります。

んで、第26話のデジタマモンは「(狂ってるのは一緒でも)上手くなだめすかせれば話ができなくはなさそう」「引きこもってるので被害者数は少ない」「明らかに『人間世界に出てきてから』狂ってしまったので、被害者的側面もある」という状況です。今回のアシュラモンは「人間から見ると話なんかできそうにない」「ばんばん外に出て人間を襲撃している」「別に反省はしてない。完全に加害者」です。デジタマモンのほうが同情できるのに、デジタマモンは殺害されてアシュラモンは生かされてデジモンコミュニティで楽しく暮らすんだ……うわあ。