灰色の本

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『デリシャスパーティ♡プリキュア』第13話「うばわれた思い出を守れ! 明かされる拓海のヒミツ」:感想①

『デリシャスパーティ♡プリキュア』第13話「うばわれた思い出を守れ! 明かされる拓海のヒミツ」の感想①です。

拓海関連の謎が明かされる、ダイナミックな回でした。『デリシャスパーティ♡プリキュア』はいつも展開がスムーズかつ情報量がちゃんとあって飽きないなーと思っているのですが、やっぱりこうやってどかんと新情報があると見応えがありますね。

 

長くなったので記事を①②に分割しています。

 

■拓海関連の謎が大きく進展

主人公の幼馴染という設定であるのに謎まみれだった拓海のことが明かされ始めましたね。

彼自身がクッキングダムに縁があったのではなく、父親にクッキングダムの縁があるとのことです。持っていたピンクの小箱は父親に託されたものだと。中身は緑色のデリシャストーンで、細かい能力は差があるかもしれませんがローズマリーが持っているものと同じものであるようです。つまり、デリシャストーンに認められた拓海にも、デリシャストーンが壊れる以前のローズマリーと同じく戦闘能力があることになります。

 

拓海についての謎への回答が開示されて大きく進展した一方で、実は謎自体はそこまで消滅していないという塩梅がなかなか面白いなと思いました。

基本的に、謎の中心が『拓海』から『拓海の父親』にスライドしただけなんですよ。拓海の父親が何故クッキングダムと関わり合いがあるのか? 何故デリシャストーンという重要アイテムを持っていたのか、「おいそれとは使ってはならない」デリシャストーンとはどういうものなのか? 何故、拓海の母親と一度別れようとしたのか(恐らくクッキングダム関連で何かしら使命が有って旅をしていたと思われるがその使命とは)? 

 

しかし、拓海の父親は通信も安定しない遠方の海(遠洋漁業で良いのかな)にいて、拓海は父親に詳細を改めて聞くことや今後の相談をすることは叶いませんでした。今回はまだ拓海・拓海母の過去回想のみに情報が限られている状態です。さて、次に拓海が拓海父と連絡を取り、クッキングダムやデリシャストーン関連のことを相談できる回は何話になるのでしょうか。楽しみです。

 

 

■明かされるゆいと拓海の家庭、深まるディテール

謎解きという意味でなく単純にキャラ設定の開示としても大きい回でしたね。ゆい好きや拓海好きには嬉しい回なのかも。

 

・ゆいと拓海は父親が同じ漁船に乗って世界を旅している、家族ぐるみの幼馴染。恐らくは生まれた時から一緒に遊んでいたのでしょう。

 

・拓海の父親は行き倒れたところを拓海の母親に助けられた流れ者で、そこから意気投合→大恋愛の末に結婚。その経緯は同じく行き倒れていてゆいに助けられたマリの姿ともかぶるものがあり、だから拓海は余計にゆいの周りをうろちょろして親しそうにしているマリを警戒していたのもあるのでしょう(ゆいが好きな拓海から見れば、もしゆいが自分の同じようにマリと大恋愛なんてことになれば大ごとです)。

 

・拓海の母親が、父親に何か相談したいらしい息子に「なになに、どうしたの? 恋の相談ならお母さんも……」と嬉々として聞いてくる(そして思春期の息子にちょっと邪険にされる)ような人で拓海と関係が良好そうなのをさらっと描いてくるのもなかなか良いですね。

 

・拓海の母親は(恐らく自分では訪問したことがないものの)拓海の父親経由でクッキングダムのことを既に知っているのも面白いと思います。今後何かに使う要素なんでしょうか? 拓海の行動を邪魔しないorどちらかというと支援しますよ、ぐらいの意味合いかな?

 

 

■ゆいのおばあちゃんの正式登場

ゆいのおばあちゃんが正式に顔見せしました。かわいらしいキャラデザのおばあちゃんですね。

・おばあちゃんであることはちゃんと伝わって、

・ちゃんと『デリシャスパーティ♡プリキュア』の画風のキャラで、

・モブらしくなくきっちり『サブキャラ』ぐらいの顔をしていて、

・なおかつかわいらしい顔立ち。

……の、おばあちゃまです。プロなので当たり前と言ってしまえばそれまでですが、プロのキャラデザイナーさんは凄いなあと思ってしまいました。さらっとこなされていて地味に凄い。

今どき割烹着のこてこてのおばあちゃんがいるかいな、とはちょっと思ってしまったものの(苦笑)、ゆい=キュアプレシャス自体が割烹着モチーフだったりするので世界観的にはこれで正しいでしょう。

 

ところでこのおばあちゃま、過去回想でしか登場しませんが、御存命なのでしょうか? 年齢的には生きていらしてもおかしくなさそうですが……。クッキングダムとの関連もほのめかされていますし、クッキングダムに渡って楽しく生きている可能性も大いにあるかと思います。

 

 

■『拓海の』回想、であることに意味はあるか?

ゆいとゆいのおばあちゃん、そして「ごはんは笑顔」。ゆいの過去回想でも何度か語られたシーンは、今回は拓海の回想として語られました。

 

ゆいのおばあちゃんの顔と名前が判明したのは今回が初だと思うんですが、ちょっとびっくりして、そして首を傾げました。ここまでゆいのおばあちゃんについては意図的に詳細を伏せていたように見えたのに、あっさりと顔と名前が明かされたからです。ここで明かすことに何らかの意味があるんでしょうか? 逆に言えば、今まで伏せていた(ように見えた)のは何か意味があったんでしょうか?

 

また、この『拓海の』過去回想にレシピッピが全く現れなかったのが気になります。やはり拓海自身はレシピッピが見えていないのでしょうか。

 

逆に言えば、ゆい目線の回想だとゆいのおばあちゃんの顔が伏せられていたのには「ゆいは実はおばあちゃんのことを詳しく覚えていない」なんてことがあったりして……? いやあまさか。あれだけおばあちゃんっ子でおばあちゃんの謎格言ばっか引用してる子が?

……前回に、クッキングダムには「心を操作する技術」があるらしいとちらっと言及されたのが気になっています。おばあちゃんもクッキングダムの関係者らしいことがほのめかされていますし、ゆいはおばあちゃんに関連する記憶をクッキングダムの技術で一部忘れさせられていたりして……いや、まあ。妄想が過ぎますね。はい。そうだったら「それほんとに伏線だったの!?」って盛り上がれて面白いんですが。

 

 

■拓海という男性キャラを戦闘役として参加させる意義

拓海、変身するんじゃなくて自分で着替えるタイプかい。OPの見た目から各所で「タキシード仮面」呼ばわりされていたのは知っていますが、そういうところもタキシード仮面なんだ(笑)。

(※『美少女戦士セーラームーン』に登場するタキシード仮面は、少なくとも初期の段階では自分でタキシードを着て夜の街を徘徊している変な一般人です。)

 

そこには笑いましたが、拓海の設定は『実戦的』だなあと思いました。

拓海は何が起こっているのか自力で調査して良く考え、好きな女の子を守るために戦うことを決めるという、素朴ながら堅実なことをやっていたのです。

 

プリキュアシリーズは、そこまで熱心なファンでない外野の人間から見ると、「誰がプリキュアになれるのか?」が非常に取りざたされている作品です。公式がどこまで考えているのかは知らないのですが、少なくともファンはしょっちゅうその話題を取り上げています。

いわく、妖精はプリキュアになれる、小学生はなれる、アンドロイドはなれる、人魚はなれる。だからプリキュアは素晴らしいのだと、ファンはその点に重きを置いて語っているように外野からは見えます。

その中でも有名なのが、ネットニュースでも散々バズった『HUGっと!プリキュア』の「男の子でもプリキュアになれる」だと思います。男の子でもプリキュアになれる。だからプリキュアは素晴らしい。ファンの方々はそう語っていました。シリーズ公式全体がどこまで本当にその点を重視・神聖視していたかは分かりませんが、少なくとも脚本家が話題作りも兼ねて意図的に『男の子プリキュア』を登場させたこともほぼ明白でしょう。

 

ただ外野から見ていた自分(グレイ)個人としては、「随分と表面的なことで一喜一憂しているなあ」と思いました。

その『男の子プリキュア』は追加戦士というわけでもなく、プリキュアとしての活躍はプリキュアに変身した回ほぼ1話きりというゲストキャラクター状態だったからです。『プリキュアになったこと』それ自体が重要というだけで、プリキュアになって何をするのかということは語られませんでした。というより、変身回のあと『プリキュアとして』何か特別なことをやる描写が大してなかったように記憶しています。

 

そこに比較すると、『プリキュアになること』に重きを置くのではなく、『守ること』に重きを置いて『プリキュアではない存在』として戦うことを選んだ拓海は、非常に現実的で実践的な設定だと思いました。

そうですよね。プリキュアじゃなくたって、男の子だって、脅威から好きな女の子を守りたければ守れば良いじゃないですか。化け物というファンタジックな脅威から守るにはファンタジックな力が必要ですが、拓海にはそのファンタジックな力(デリシャストーン)があるのですから。

 

また。プリキュアは第1話時点で主人公が変身する都合上、『プリキュアになること』自体は巻き込まれた勢いで進行しがちです。プリキュアになる前に「プリキュアとはどういうものか、プリキュアになるとはどういうことか」を冷静に考える暇がありません。つまり、プリキュアになる決意を固めるという描写はされないことが多いのです(あっても追加戦士などに回されがち)。

その点でも拓海は実戦的でした。拓海はプリキュアの素質を見出されて戦闘の場でいきなり変身したのではなく、ゆいが自らの意志で戦っていることまで自分で調査して、自ら考えて力を使うことを決めたからです。これは『プリキュア』ではどうしても書きづらい要素を上手く補完しにいったと思いました。

 

いやあ。拓海、本当に偉いと思う。「好きな女の子を守りたい」という少女漫画的なふわふわした、しかしその実ひどく身近で切実な願いを、現実的に自分が取れる手段で叶えようと自分で考えて実行している。彼がデリシャストーンを元々持っていたのは超絶ラッキーですが、父親に「おいそれとは使ってはならない」と言われて預けられていた石を使うこと、戦うことを自らの意志できちんと決めて実行に向かっている。

偉い子です。自分で考えて実行するって、言葉で言えばシンプルですけど、究極には大人でも難しいことですよ。本当に偉い。自分は彼に惜しみない拍手を送ります。どうか彼が自らの望みのとおり、ゆいを守ることができますように。

展開としては途中で拓海がやられて洗脳されたりなんかして第二のジェントルーになったほうが波乱があって面白いんじゃないかなとかそういうことは言っちゃダメだ。(笑)