灰色の本

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『デリシャスパーティ♡プリキュア』第20話「あまねのマナーレッスン!憧れのレストラン」:感想

『デリシャスパーティ♡プリキュア』第20話「あまねのマナーレッスン!憧れのレストラン」の感想です。

良い回だけど、いつもよりは粗が多く感じられました……というか、ここねが聖人すぎてギョッとしました。

 

 

■着実にあまねのキャラを積んでいこうとしている

あまねのキャラをがんがん立てに行っていますね。その姿勢には好感が持てます。

(新キャラのキャラ性をどんどん立てに行くのはまあ当然なのですが……。というか、むしろジェントルーの状態では『あまね』のキャラは立たないことは『デリシャスパーティ♡プリキュア』の制作スタッフなら分かり切っていただろうに、洗脳解除からプリキュア化までの筆致がやたら強引すぎました。)

 

責任感が強くて、自分で仕事を見つけて動ける子、また何かしら動いて忙しくしていたほうが性に合う子……というのが「ここねの家の高級レストランに行くから相応しいマナーをみんなに身につけさせないと!」というやや暴走気味な行動に出るのは意外でした。意外というか、微笑ましい&良い子だなあというのが半分、なんかいたたまれなくてちょっと見てられないというのが半分といったところです。

なんか『デリシャスパーティ♡プリキュア』は、キャラが良い子ぞろいで、問題が起きるときはだいたい「誰かの空回り」が原因だからなのか、ときどきいたたまれなくて見てられないことがあります。共感性羞恥的なものが勝手に発動してダメージが……。

しかし、彼女は理解力がある女の子でした。自分のマナー講座でゆいとらんがグッタリしてマナー嫌いになりかけていたこともちゃんと理解し、ここね本人としてはゆいとらんに向けただろう言葉を聞いてきちんと反省しました。そしてその反省をすぐに口に出し、ここねにお礼を言いました。賢くて、素直な女の子です。えらい子だなと思いました。

 

キャラの動かし方などの画面作りも可愛らしくて良いです。

マナー講座のシーンで言えば、あまねのメガネ姿は状況に合っているだけでなく見たい人も多い姿ではないかと思います。「アシスタント」ということで、画面にエナジー妖精たちを出してくるのも良かったです。全問正解だったここねを褒めるシーンで指示棒をくるくるして笑顔のあまねも可愛らしかったです。

 

 

■大人びたお姉さんとしてのここね/あまりに聖人すぎるここね

ここねとあまねはお互いを尊重していて良いですね。

以前は「こうしなきゃ」が非常に強かったここねが、あまねのマナー講座にへこむゆい&らんに「そんなに気にしなくても……」という声掛けをしていたのがなんだか感慨深かったです。ここねは「そんなに気にしなくても良い」という答えを出せる立ち位置を見つけたんですね。一方、あまねはまるでかつてのあまねが「こうしなきゃ」と言っていたように「いいや、マナーは大事だ」と譲らない態度でした。もともとの性質が近いんでしょうね。

 

あまねは落ち着いた態度で、一貫してみんなのお姉さんとして振舞いました。

レストランに行くための服を選んでいるのにらんらんちゃんがパンダの着ぐるみを着始めたとき(しかもおふざけではなく本気でそれを着ていくつもりかのような様子だったとき)、あまねは

>いや、そんな服で高級レストランに行けるはずが……。

と否定と困惑の調子でつぶやきましたが、ここねは動じもせずに

>すっごくかわいい!

と肯定から始め、

>でも、その服だと食事しづらいかも……。

>レストランに行く服装は、食事するときのことを考えたものが良いと思う。

>食事を楽しむための場所だから。

 

と落ち着いて自分の意見を言い、らん(&ゆい)を諭しました。

 

>父と母が良く言ってた。

>食事を楽しむために、周りが嫌だと思うことをしない。

>そんな思いやりこそ、マナーだって。

 

その言葉はゆいとらんの心を動かしました。太陽に照らされた旅人が自分からコートを脱いだように、二人は自分からマナーに沿う意欲を見せたのです。

 

更には「じゃあ、パンダはなしだね……」とさみしそうな声を出したらんちゃんにパンダの髪飾りを勧めてあげるというフォローっぷりで、完璧です。今回のここねは、一貫してみんなのお姉さんでした。

 

個人的には、Aパート最後でここねがあっさりと「あまね」と呼んで、あっさりと「また明日」と言って去って行ったのが印象的でした。成長しましたね、ここね。

 

惜しむらくは、ここねが何時の間にそこまで成長したか分からないことです。ど……読後感は爽やかですごく良いのに、そのことを考え始めると致命的に良くなかった気がして辛い……。

何時の間にここまで大人に……聖女になったの、ここねちゃん。今までの描写だと、ここねは成長が必要なタイプのキャラであって、完璧に周りを支えちゃうようなお姉さんキャラじゃないと思うんですよ。外見&性格とも『ぱっと見た』ときの印象が他のキャラよりお姉さんなキャラなのは分かるんですが……。

 

うう……橋の上でのあまねとの会話が、きちんと『中学生なりの未熟で瑞々しい人間ドラマ』としてちゃんと出来上がっているだけに、「ここね=人格的にも既に成長している大人」というその前提にいまいち同意できないのが辛い……。

 

 

■他と比べてキャラが薄味に思えるゆい

ずっと思ってたんですけど、『デリシャスパーティ♡プリキュア』って、主人公であるはずのゆいの個人回がない……気がするんですよね。ここねやらん、あまねの個人回はあるし、ローズマリーもしょっちゅうフォーカスが当たるし、ブラックペッパー導入のための拓海回もあったのに。

 

ゆいは、ある意味では既に完成してしまっている主人公です。最初から安定したメンタルと、人助けなどの善行を躊躇わない高潔な精神を持っています(個人的には、こうと決めたときの盲目さがあると感じられるので不安定な善性だと思いますが……)。他の仲間たち――ここね、らん、あまねのように、成長すべき要素もなければ、葛藤もないように思われます。(これは他のキャラも共通だと思いますが)プリキュアをこのまま続けることで何かを得たいとか、そういう望みも見えません。一番ドラマ性が薄いんですね。

 

初期はそうでもなかったような気がしていたんですが、最近はらんちゃんと一緒にアホの子キャラをやっていることが多いです。

また、仲間たちに何か助言の声をかけるときはいつもおばあちゃんの言葉の引用で、それを仲間たち自身に解釈してもらうという手法を取ります。意味が分かっていないわけではないのでしょうが、自分の言葉で説明することができません。自分の言葉で説明しようとするとなんでも「ご飯は笑顔!」になってしまっているように思えますし、その言葉ももともとはやっぱりおばあちゃんの言葉です。

結果的に、なんだか自我が薄く見えます。いや、自我が薄いというのは違うかな……自我はあるけど、悩みなし能天気キャラ&アホの子キャラなせいで考えが浅く留まっていてキャラに深みがないというか……『良い子』という三文字以上の彼女の特徴や意思が見えないというか。

 

今回、ここねの語り掛けを受けて、

>じゃあ、服もマナーもみんな、ご飯は笑顔になるためなんだ!

といつもの言葉でまとめてしまったゆいを見て、なんだか引いてしまいました。別に良い子なんだけど……良い子なんだけど。全部その概念に引き寄せないと考えられないの? もっと複雑で繊細なさまざまな事柄を、そんな大きなフォルダに全部まとめて分類もせずに突っ込んでしまうの?

 

世界にはいろんな特性のいろんな人がいます。頭を使って考えるだけが人生の正解ではないかもしれません。ですが自分は、彼女にもっと考えてほしいなと思いました。そうして、彼女に自分の意思を、単なる『良い子』に収まらない側面をもっと見せてほしいなと思いました。

 

もう一つ言えば。

勝手な印象なんですけど、『プリキュア』シリーズって主人公&追加戦士でコンビを組ませて、残りの既存仲間同士で組ませるってことが多いと思うんですよ。そのパターンで行けば、『デリシャスパーティ♡プリキュア』ではゆい&あまね、ここね&らんで組むはずでした。

でも実際には、今回があまね&ここね回だということを差っ引いても今のところ「ゆい&らん」「ここね&あまね」で組んでるんですよ。ケーキ作りのチーム分けとか。ここねがあまねを呼び捨てにするシーンが強調されている&他キャラに比べて繰り返されているとか。

アホの子元気っ子同士と落ち着いた大人っぽい子同士の似たものコンビで落ち着いた……と言ってしまえばそれまでです。ですが、邪推すれば、ゆいにはあまねを引っ張ったり支えあったりするようなタイプの意志力がない、ってことなのかな……とちょっと思ってしまいました。

 

 

■あまねの双子兄の出番が多いが、邪魔でも不自然でもない

あまねの双子兄はやたら出番がありますね。連続で出てくるので驚きます。声を担当しているのがジャニーズの方らしいので、ジャニーズノルマというやつでしょうか。

でも、邪魔ではないんですよね。あまねのキャラ立てがまだ不安定な現在では双子兄がいてくれるほうがあまねのキャラが立ちやすいので、しばらくはいてくれたほうが良いです。

また、今回の筋だと、そこまで不自然でもないんです。今回のレストランで恐らくローズマリーは「拓海を呼んで、ゆいとくっつけること」が本命だったと思われます。ですけど、拓海を男子一人だけで呼んで、既に絆ができあがってる仲良し女の子4人組の中でアウェーにすることも望まなかったんだと思うんですよ。ローズマリーが拓海を一人でアウェーにしないために双子兄を呼んだんだろうなあと補完できるので、そこまで不自然だとは思いませんでした。

ローズマリー、気配りが神すぎるな。序盤で妙に大量に服を借りてたのも、恐らくは拓海&双子兄の服も借りてたから多くなってたってことですよね……

 

ところで、双子兄。ジャニーズの方=本職の声優ではない方の担当なのに、声が上手いですよね(極端に難しい役柄でもないとは思いますが)。担当の方が非常に熱心に声優業を特訓して挑んでくれたと聞き及んでいます。努力が結果にきちんと表れていると思います。

 

 

■ダンスシーンの組み合わせににっこり

最後のダンスシーンは良いシーンでした。

ダンスペアが最初ゆい&ローズマリー、らん&拓海、あまね&双子兄でここねがあぶれ状態で「お、おい……」と苦笑しましたが、短い尺でさっとゆい&拓海、あまね&ここねにペアをチェンジする展開をさらっと入れたので思わずにっこり。ゆい&拓海を手引きしたのがローズマリーであるのにもにっこりです。

エナジー妖精たちもちゃんとダンスシーンを貰えているのにもにっこり。

 

……うーん。パフェレシピッピちゃんも入れてあげて。パフェレシピッピちゃんをレシピッピだからって仲間外れにするなら、エナジー妖精に昇格させてあげて……。

 

 

■物語の行き先が今のところ不在

『デリシャスパーティ♡プリキュア』は、短期的な事件や物事がずっと発生しているので毎回面白く見ているのですが、一方で長期的な物語性に欠けているきらいがあり、この物語がどこへ行きつきたいのかという点ははっきりしないところがあると思います。

具体的には、結局ブンドル団が何を狙っているのかとか……とりあえずモグラたたき的にナルシストルーのレシピッピ強奪を妨害しているけどこちらから仕掛けずにこのままダラダラとモグラたたきをしていて良いのかとか。

 

ローズマリーというキャラを介して語られるクッキングダムの過去の話はドラマチックだなと思います。ですが、基本的には結局過去の話でしかなくて、プリキュア4人娘が主役になる話ではないので個人的にはちょっとノリきれないです。

 

しばらくはあまねのキャラ付けにおおわらわなのは分かります。けど、1話1話は楽しくても、物語全体に大きな変化をもたらすものがなくてちょっと飽きてきたなとも考えてしまいます。あまねの加入物語も、拓海=ブラックペッパーのもろもろも一旦解決してしまいましたし。うーん、そろそろナルシストルーあたりにスポット当てて、強引に話に波を作ってくれて良いですかね……。

 

 

 

■そのほか

・ここねの両親、ひいては家庭環境の話がちらっとぐらいは出ると思っていたのですが、ここね両親は海外出張に行ってしまったために顔は出さず、今回はまだお預けでした。早めにはっきり開示させて回していくタイプの話だと踏んでいたのですが、広い家で一人で食事を取るここねのシーンが思わせぶりに描写されてから音沙汰無しです。結構引っ張ってきますね。そろそろ描き始めてもいいと思うのですが。

特に今回、ここねが聖人になりすぎてしまっていると思ってしまったので、ここねがまだまだ未熟であるというところも早く描いてバランスを取ってほしいなー……。

 

・今さら仕方ないんですが、あまね=フィナーレだけ変身バンクが別なので悲しいです。設定的にそこまで他のプリキュアと比べて特別なプリキュアでもないのに、変身バンクが一人だけ別なせいで一人だけ仲間に入れていないように見えてしまうというか。

 

・ものっすごく今さらな感慨なんですが。レシピッピを足で探し回っていたジェントルー(あまね)に対して、ナルシストルーは探索機をピコピコ言わせて苦労せずにレシピッピを見つけるんですよね……。ナルシストルーが探索機を作り上げちゃった以上、土地勘があるというだけで利用されていたジェントルーって本当に用済みだったんですね……。

 

・今回の「思い出の味」は、薄味の設定でしたが逆に良かったと思います。高級店に、昔はお金を貯めてきたよね。それはシンプルで一般的な話なので、納得しやすかったです。

ただ、毎回のノルマなのか、「大事な思い出があったような……」という説明セリフには辟易します。分かりやすさの観点ではこのセリフはあったほうが良いのですが……そう毎回毎回『大事な』思い出、と強調しないほうが良いと思います。そういう意味ではいつもどおりですね。

 

・戦闘開始前の「みなさん、準備はよろしくて!」「ごきげんようは、『GO!プリンセスプリキュア』のセルフパロディかなと思いました(※『GO!プリンセスプリキュア』での戦闘前の名乗りが「お覚悟はよろしくて」、敵浄化時の決め台詞が「ごきげんよう」)。

GO!プリンセスプリキュア』と言えば、今作『デリシャスパーティ♡プリキュア』と同様に「洗脳が解けた敵幹部が追加戦士として参戦する。洗脳の関係上、追加戦士は参戦時には実質的に初対面に近い状態」「追加戦士の参戦直後は、既存仲間キャラと絡めながら追加戦士の紹介を進める」という構成になっています。

特に後者が重要だなと思って視聴しています。追加戦士枠のキャラを説明するのに『既存仲間キャラ+追加戦士新キャラのセットで話を作る』ってかなり有用な手法だと思うんですけど、プリキュアでは何故かあまり採用されていない形式であるような印象があります。(そこまで多数のシリーズを見ていないので、勝手な印象ですが。)

 

「フン! 思いやりなど反吐が出る」というナルシストルーの言葉。彼は彼で闇がありそうというか、何かしら拗らせてるんですよね。

 

・拓海=ブラックペッパーの話は動きませんね……。ブラックペッパーが戦闘に参加しても、特に重要なことは何も言わない(掛け声とかだけで終わり)のが悲しい。

強いて言うなら、フィナーレがやたらブラックペッパーに反応しているのが何かの伏線だったりするのでしょうか?

 

・拓海は相変わらず一人でラブコメをやっているので見ていて面白いです。ローズマリーの一人ロマンスはクッキングダムの過去の話が絡んでいて「重たい」と思うこともあるのですが、拓海は何も知らない等身大ボーイなので何も考えず素直に笑いながら見ることができます。

恐らく遅刻しないようにすっごく早くから来ていたと思われるのに、ブラックペッパーにお着換えして→戦って→また正装にお着換えしてるうちに結局遅くなって「すみませーん! 遅刻してしまって!」って走ってきてるのがなんかツボ。