灰色の本

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『デジモンゴーストゲーム』第36話「嘆キノ迷宮」:感想

 『デジモンゴーストゲーム』第36話「嘆キノ迷宮」の感想です。

作画やカメラワークなどには見るものがありましたが、冒頭から良く分からず、若干首を傾げているあいだにぼやぼやした展開がぼやぼや続いた回だったような印象です。

 

 

 

■先輩は洞窟見学をなんだと思っていたのか分からなくて理解が詰まる

冒頭から状況がよく分かりませんでした。

>おいおい、今日は洞窟見学なんだろう? なんでそんな格好……

と先輩が言っていますが、ヒロ&ルリがしているのは懐中電灯付きヘルメットといういかにも洞窟探検につきものの装備です。……何がおかしいの?

続けて先輩はこう言います。

>まさかあれに入る気か? 何の整備もされていない、ただの穴じゃないか! 危険すぎる!

え? 先輩は、きちんと整備されてて中に灯りも設置されているような洞窟の『見学』を想定してたということ? そりゃあそういう洞窟もあると思いますが、なんでそんな好意的&楽観的な誤解を?

 

……まあ、どうせいつもどおり害獣ルリが先輩を騙して連れてきたってだけなんだと思いますけど、どうせ騙すならアニメ的に分かりやすいセリフ・分かりやすい導入になるような騙し方をしてくれないでしょうか……無駄に疲れます。

 

先輩は結局、「待って! 置いてかないで~!」と情けない悲鳴を上げて一行に同行することに決めましたが、このギャグも笑えません。

いっつもの先輩いじめは(良くないですしそれ自体がつまんなくて笑えないですけど一旦)良いとして、洞窟手前のその場所って、置いて行かれることを怖がるような場所なんですか? 普通にちょっと歩けば公道に出ることができて、そのままおうちに帰れるような場所なのでは? わざわざ尺を使って入れているギャグシーンなのに、笑いよりも状況設定の解せなさが先に来ます。

 

 

■ネット仲間がいるのにわざわざ先輩(とヒロ)を引きずっていくクズルリ

ついでに言いますが、ルリ。

ヒロや先輩の他にも乗り気でオカルトツアーについてきてくれるオンラインメンツがいるのに、わざわざヒロや先輩を騙し討ち状態(今回のようにヒロのほうは同意の場合もあるようですが)で連れていくのですから、クズヒロインだと思います。

 

 

■石化ネタは二度目だが、ネタかぶりが悪いというより……

石化ネタって意味では二回目だと思います。第15話「占イノ館」も襲った女性を石化してましたからね。

なんというか……。ネタのマンネリが悪いとまでは思わないんですよ。正直、毎週毎週新しい怪奇ネタを出してくるのって大変ですよね。ホラーって、既にやりつくされていて新ネタを考えるのが難しいジャンルだというイメージがあるので、そこは同情します。放送開始当初から「毎週ホラーネタって、そんなハイコストなこと息切れせずに続けるんだろうか?」とは俺は思っていましたよ。6~7話ぐらいであっさり息切れしたので「だよなあ」と思いました。

 

けど、

・その乏しいネタを出来るだけ最高の状態で活用しようという意識。

・そもそも、乏しいネタを無駄に消費しないで温存しようという意識。

『ゴーストゲーム』の制作について、この2つの意識には大きく欠けていると思っています。

 

前者は、第22話「悪夢」の悪夢ネタや、第25話「紅ノ饗宴」の吸血鬼ネタ、第27話「美妖液」の都市伝説ネタがあげられます。脚本の出来が、到底それらのネタの魅力を引き出せるものではなかったと自分(中の人:グレイ)は感じました。

後者であげられるのは第19話「逢魔ガ時」のドッペルゲンガーネタと第29話「妖花粉」の花粉=濃霧ネタでしょうか。第19話のドッペルゲンガーネタはその回の恐怖感には大きく寄与していたものの、ピッコロモンが引き起こした怪異の本筋ではありません。第29話の花粉もタイトルにまで挙げられているものの、その回の怪異の本筋は閉鎖空間での毒蜘蛛騒ぎです。本筋じゃない回で、だらしなくネタを消費している気がします。

 

で、今回です。今回の石化をやりたかったなら、第15話「占イノ館」は石化じゃなくても良かったんじゃないですか?

もちろん、『ゴーストゲーム』がそこまで先の展開を見越して作るタイプの作品とは思っていません。仕入れた怪奇ネタによって展開が左右されるので、1話後に何をやるのかも考えずに作ってるぐらいだと思います。

だから、結果的にネタがかぶるのはある程度仕方ないんじゃないかと自分は思っています。ただ、第15話「占イノ館」時点の石化ネタは、最初から無駄な消費だったんじゃないでしょうか。ネタかぶりそのものにじゃなくて、「ネタかぶりを出来るだけしないようにする注意の意識」「後にも使えるようなネタを不必要に使ってしまわないように配慮する意識」が足りないというところに萎えますね。

 

 

 

■人間と無関係に進化するデジモンたち

前回に続いて、人間側の意思に全く無関係にデジモン達が進化している(前回第35話「人狼」はジンバーアンゴラモン進化、今回はカノーヴァイスモン進化)んですけど、それで良いんですか!? 襲われそうになった人間がひるんでいるタイミング=到底パートナーの進化を能動的に望むことができる状態ではないタイミングで進化してるんですけど……。

デジヴァイスによる進化なのに「デジヴァイスを装着した人間のカット」や「デジヴァイスのエネルギーが充填されるカット」がスキップされることが最近多いのですが、もしかしてデジヴァイスをはめているパートナーの人間が『いる』ことだけが進化の要件なんですか……? 意味が分からないです。もっと人間とデジモンの絆を大事にしてほしいです。

 

ついでに言えば、時間制限があるのにヒロの指示を待たず勝手に進化して、「ヒロ。この進化には……(時間制限がある)」と警告をほのめかすカノーヴァイスモンは何言ってるんだとちょっと思いました。ヒロのピンチにヒロの指示を待たずに進化したことは正しいので、重箱の隅つつきですが。

 

 

■特に戦闘シーンの作画と動きが良好

前回に続いて、作画が良かったです。前回は作画だけ良くてもカメラワークが大したことなかった気がしたのですが、今回はカメラワークにもところどころ光るものが感じられました。

個人的に好きなのは、アースクエイクで石柱の上に持ち上げられたベテルガンマモンが石柱から飛び降りるシーンと、その直後の落下しながらソルショットを撃つのを下から舐めるようなカメラワークで見上げるシーン。それとカノーヴァイスモン進化直後の、照り返しで白く輝くカノーヴァイスモンの顔がアップになるシーンです。

最後のハリケーンボンバーとドラゴニアの押し相撲は本来かなり単調な構図です(実際、第25話「紅ノ饗宴」で同じような押し相撲をしたときは重要な戦闘であるはずなのに単調過ぎて引きました)。けれどじりじり押し負けるギガスモンの表情描写→完全に押し切られて吹っ飛ぶギガスモン、敗北してふらふらとよろめいてから倒れるギガスモンと、しっかり枚数を使って絵的な情報が少なくならないように描きこまれていたと感じました。

 

 

■大きく広げられる動機をしょうもない理由で使いつぶす、害獣ギガスモン

今回の害獣、ギガスモン。

「お前らの墓を作ってるんだ」「人間はどうせ滅ぶ」という、SFにはありがちなロマン設定かつこれからの展開にも広がりを感じさせる意味深なことを言っていたのでものすごく興味深く見ていたのですが、最終的には「そういう映画予告を信じこんだ」だけだったのでズッコケました。俺(中の人:グレイ)の好みの展開だったのでうっかり期待してしまったぶん余計にしらけました。クソが。

デジタマがどうこう言ってたのでデジモン側の死生観を掘り下げる回なのかとも思いましたが特にそういうこともありませんでした。クソが。

 

で、ゲストのギガスモンがクソ害獣なのはいつものことなので良いんですけど、人類滅亡を信じて泣いているギガスモンに初手から雑に「人類滅亡なんて起こらないよ……」と言い出すヒロもどうかと思いました。まず、ギガスモンが『映画の予告を現実のことだと信じただけ』と分かるのは視聴者だけです。ヒロ達には分かりません。まず「なんで人類が滅亡すると思ったんだ?」と聞き取りをするのが正しいと思います。もし本当にギガスモンが人類滅亡の兆候を掴んでたらどうする気なんですか。

 

で、ギガスモン自身は本当に人類滅亡を信じているのに、ヒロ達を見て「お前たちにはまだ、希望があるみたいだ……!」と突然納得するのも雑過ぎます。現実の、人間の世界滅亡論者がそんなに簡単に納得してくれますか? ヒロ達の持ち上げもいい加減にしてほしいです。

 

……あと、人間の滅びを慰めるための埴輪を、人間から作るって。どーよ。

 

 

■オチてない

ところどころ光るものはあったんですが、最終的にはぼんやりした印象の回でした。

だって、結局……ビル消失事件、どうなったんですか? 本当にビルごと取り込まれてるんですよね? 被害者は解放されて生還したかもしれませんが、「本当にビルごと消えたならもっと大騒ぎになっているはず」という話はどうなったんですか?

 

ネット仲間メンバーたちもキャラが濃そうに見せかけて実は薄いという印象でした。事件内容的に謎の洞窟に突っ込んでいく必要があったので通常のモブでは無理だからネットのオフ会という仕様にしたんでしょうけど、そもそも別にいなくても話は回ったんじゃないかな、と……。最後まで見ても存在意義が分かりませんでした。そのぶんメインキャラの描写に尺を回さなくて良いんでしょうか……と思いましたが、暇な中でそんな描写をやらないのが『ゴーストゲーム』なので、今さらですね。

 

ガンマモンの「図鑑で見た」ネタも、最初こそ「おおっ」と思ったものの、特にオチにつながるわけでもなく「だから何」という内容でした。今までの回数で徐々に「図鑑で見た」という描写が増えていっての今回なら気にしなかったと思いますが、今回突然言い始めて突然連発して、特に本筋には関わるわけでもないので首を傾げます。

 

全体的に、話の芯がふらふらしていると感じました……というか、話の芯が不在だと感じました。

 

 

■完全版OPの出来にはガッカリ

完全体3体が出そろって完全版になったと思われるOPについては……ガッカリですね。

そりゃ確かにカノーヴァイスモン追加時は、既存のガンマ/ベテルガンマ/カウスガンマ/ウェズンガンマのカットはそのままでカノーヴァイスモンだけ強引に割り込ませた追加でしたよ。でも、テティスモン追加時はジェリーモン~テスラジェリーモンのカットも含めて全部描きなおして新規カットにしていたじゃないですか。なのに、なんですか、ラモールモンについては最後のカットだけの差し替えで終わらせるって。

曲との兼ね合いでもともとやたらダラダラと尺を貰っていたルリ&アンゴラモンなので、全部を差し替える予算がなかったってことなんでしょうけどね……。

 

差し替えたルリ&ラモールモンカット自体がダサいのもしょっぱいです。他二組に対してキャラの動き・カメラワークともに凝ってません。他二組の追加カットが狭い尺に押し込んだせいでハイペースでぐりぐりと良く動くのに対して、その二組の間に挟まれたアンゴラモン~ラモールモンの担当パートだけがスローな動きなので見ててリズム感が狂ってズッコケそうになります。

制作スタッフはルリ贔屓で一貫してるのにどうしてだろうな……とちょっと思いましたが、制作スタッフがアンゴラモン系列を扱いかねていることは一貫しています。なので、これはアンゴラモン(ラモールモン)を見せたい新規カットだと考えれば、ダメな意味で「まあこんなもん」なんでしょうね。

それと多分、完全な獣デザインで人間の骨格ではないラモールモンについて、格好良い動作を描ける人、格好良い動作を思いつく人が制作スタッフにいなかったのではないでしょうか。ヒロ&カノーヴァイスモンのOP追加カットも、人外の体型であるカノーヴァイスモンの動きが凄いというよりカメラワークや構成が凄いってイメージですからね。

 

最後のグルスガンマモン~全員集合カットもダサくて厳しいです。

グルスガンマモンは旧バージョンの、ただのシルエット状態のほうが威厳が保てていたと思います。新バージョンはなんだろう、見せ方が下品……ではないし。安直? 安直すぎて威厳、気品がないです。威厳のほうはともかく、気品があるキャラかというと違うのですが。

 

全員集合カットも、制作スタッフは『ゴーストゲーム』を通常のよくある冒険ファンタジーだと思ってるんじゃないかと疑問になる構図でした。平凡でダサくて締まりがなかったです。これもノルマなんですかね? 進化系列をとりあえずずらずら並べておかなきゃいけない、みたいな。

進化系列大集合がノルマだとしても、その並ばせ方もダサいのできつかったです。

いや、分かりはするんですよ。

・画面左にアンゴラモンの進化系列を配置。

・画面右にジェリーモンの進化系列を配置。

・画面上部にガンマモンの進化系列を配置。

・ガンマモンはキャラ的にもサイズ的にも画面を陣取って映えるキャラではないので、ヒロの近くに置く意図もあって例外的に画面下部に配置。

・ウェズンガンマモンは空を飛ぶキャラではなく大地をしっかり踏みしめるタイプのキャラなので例外的に画面右下部に配置。

・ガンマモンの正統進化系列であるベテルガンマモン→カノーヴァイスモンは画面中央に置きたい。

・となると、残ったカウスガンマモンは自然と画面中央寄り右上部か画面中央寄り左上部に置くしかない。

 

うん……それは分かるんですよ。でも、結果的に出てきたものが、

・画面右上の謎の空白。

・カウスガンマモンとウェズンガンマモンに隠されてやたら見えづらいラモールモンとテティスモン。

・ラモールモンに至ってはやたら絵が小さい。他のデジモンキャラはそこそこ正しいサイズ感で描かれているようなのに。

アンゴラモン系列が黄色いので画面左部が全体的に黄色いのは仕方ないが、そこにカウスガンマモンの翼の黄色まで加わってくる構図。黄色メンツで埋もれあっていて、ぱっと見で何が何だかわからない。初見ではラモールモンがどこにいるのかと思った。

・画面中央もベテルガンマモンとカノーヴァイスモンが赤同士で潰しあってる感。

・ジェリーモン進化系列はまあ良いんじゃないかと思うのだが、そこにウェズンガンマモンが割り込んでいるせいで画面右部もごちゃごちゃして見づらい。ウェズンガンマモンの砲塔がテティスモンを隠していてマジで邪魔。テティスモンが派手な配色のキャラだったらまだマシだったろうが、テティスモンは淡めの紫色なので、彩度が低い緑のウェズンガンマモンと埋もれあってる。

・人間キャラとデジモンキャラのパートナー同士が全く影響し合わない立ち絵。ジェリーモンだけは先輩に寄り添っているように『も』見えるが、先輩側はジェリーモンを気にしていない。他のキャラも、誰もパートナーを気にしていない。特にひどいのはルリとの距離が何故かやたら遠いアンゴラモン。

(・どうでもいいけどアンゴラモンの表情やポーズ、キャラ崩壊してない? こういう表情を全くしないキャラとまでは思わないけど、こういうカットでこの表情を前面に出すキャラかといわれると違う気がします。)

 

構図自体を大きく変えて、もっとメリハリがありデジモンキャラ達が埋もれない画面は作れなかったんでしょうか。制作スタッフの発想に柔軟性がない(変な意味でシリーズに縛られている)という特徴は、『ゴーストゲーム』では一貫していると思います。

 

 

■そのほか

・ルリのネット仲間に対してガンマモン=ホログラムという虚偽の説明をするシーンがきちんと入っていたのは良かったです。……良かったんですが、知らない他人相手にはこの説明シーンをいちいち入れないとやや不自然になるというガンマモンたちの設定はダルいですね……。

 

・イイヅカが襲われるシーン、最後は敢えてそのものを見せずに、スマホの録画越しで見せる演出が良かったです。

んにしても、「ちょっとスマホ取ってくるわー先に行っといて!」と言われたわけでもないのにさっさと先に行き、イイヅカが悲鳴を上げても気づかない一行って……。「遅いなあ」じゃねえんですよ。

 

・怪異の内容で「不思議な声が聞こえる」が前段になっていましたが、加工がされすぎていて「声」に聞こえなくて、ここも理解を阻害しました。

 

・足を踏み外して落下した先輩に「ダーリン! 今行く、さッ!」と即座に飛んでいくジェリーモンは非常に良かったです。初期ごろの謎の仲の良さを思い出しました。ちゃんと定期的にこういうのを描いてほしいです。

「ダーリン! 返事するさ!」のシーンの、クラゲ形態からくるっと一気に人間形態になるアニメが活きが良くて好きです。

 

「壁が、もこもこって……」と先輩が言っているシーン。カメラが3Dで回り込む演出なので、止め絵の単純なスライドではなく、地味に枚数を使って描かれているんですよね。わずかな時間のシーンですが、ちょっとハッとさせられるものがありました。メリハリになってて良かったと思います。

 

・『ゴーストゲーム』にはめずらしく、全員が戦う気満々でガンガン進化するのが良かったです。……と思っていたら、やっぱりジンバーアンゴラモンは即座に完封されて出番終了でしたが……。アンゴラモンの不遇、いい加減どうにかしろと思います。

あと、ルリはやたら好待遇なのにそのパートナーのアンゴラモンがやたら不遇なの、『ゴーストゲーム』がというより『デジモン』シリーズがデジモンを人間パートナーのおまけと考えている傾向の発露だなあと思います。普通なら、一人のキャラを贔屓して持ち上げるならそのパートナーも自然と持ち上げる形になりませんか? まあまず贔屓持ち上げを止めろって話ですが。

 

・他のキャラが白目剥いた悲惨な顔(言ってしまえば、恐怖に歪んだ不細工な顔)で石化してるのに対して、ルリ(とアンゴラモン)だけ綺麗な顔で石化してるのは『ゴーストゲーム』のいつものルリ贔屓だな~と思いました。第34話「壁這ウ者」ではめずらしくトカゲ人間化で不細工な状態のルリを描いてたんですが、やっぱりそっちが例外なんでしょう。