灰色の本

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『デジモンゴーストゲーム』第32話「オマエハ誰ダ」:感想②

デジモンゴーストゲーム』第32話「オマエハ誰ダ」の感想②です。

 

長くなったので記事を①②に分割しています。 ①は今回のメインであるガンマモン・ベツモン・ヒロに関連する話です。②はそれ以外の話です。

 

■ただの気の良いオトモダチに堕ちた腑抜けクロックモン

前回の登場回(第23話「ウメク蟲」)でも指摘しましたが、クロックモンがただのお友達キャラ、どころか子供(ガンマモン)を見守る良いお兄ちゃんキャラになってるのはどうなんでしょうか……。

貴方、特にヒロ&ガンマモンのことは「一応建前上は仲良くしてやるが目の敵だぜ。お友達なんかじゃないぜ」って態度じゃありませんでしたっけ。ガンマモンに普通に気さくに声かけてニコニコしてるので、第23話での登場時より更に腑抜けたオトモダチキャラになってしまっています。

 

これがね、サブキャラとしてもっと定期的に出番が有って、丹念に心境の変化を描いているなら良いんですよ。むしろ、そうだったならクロックモンはかなりエモい、深みがある良サブキャラになった可能性はあります。

だけど忘れたころに突然出てきて、そのたびに過程の描写も何もなくオトモダチレベルが勝手にごりごり上がってるって、なんですかこの一貫性がない腑抜けたキャラ。なんですか、今回のニッコニコの笑顔。

別にクロックモンはツンデレデレデレ兄貴キャラ(時系列の最初はツンだけど後半になるとデレデレになる意味でのツンデレキャラ)になってもおかしくなかったとは思いますよ。今回のニコニコ笑顔も、経緯によっては「クロックモン兄貴は今日もデレデレだね~昔はあんなに凶暴だったのにね~」とネタ交じりに微笑ましく見守ることはできたと思います。けどその『経緯』がないんだよ。なんでこんなにデレデレになったんだよ。

極めつけはラストです。クロックモンが、対処がめんどくさそうな大量のベツモンを自分から引き取って「根性叩き直してやる」と約束してくれるなんて、ベツモンガンマモン以上に「オマエハ誰ダ」だよ。どうしたんだよ。

 

前回の登場回(第23話「ウメク蟲」)への指摘は以下の記事に書いています。

 

haiironohon.hatenablog.com

 

 

 

■特に大した意味がない、エッセンス程度の役割であるメイクーモン

メイクーモン。映画で大きく取り上げられたデジモンであることは知っています。流石にキャラデザイン自体は可愛かったですね(獣っぽいですが)。

しかしどうでも良い役柄でしたし、暗い中でみじめなずぶ濡れ姿を晒しているだけだったので、可哀想なだけの登場でした。可愛いデザインも生きていなかったです。

 

だってさあ、ガンマモンを相手にして、「誰にも思い出してもらえず認識してもらえないなら、どうやって自分が自分だと証明するのか?」という哲学的疑問をぶつけてもね……。赤ちゃんガンマモンにそんな疑問を出しても、まともに考えられるわけないんだから意味ないでしょ。

しかも、疑問を出すだけ出しておいて、「ベツモンの集団が本物のデジモンや人間とすり替わろうとしていることがガンマモン視点からも分かる」「ガンマモンが偽物を打倒して偽物を偽物と証明する」と怒涛のように進んでいってしまいます。『赤ちゃんガンマモンにその問いについて考えられるだけの思考能力があるか?』以前に、ろくに考える暇もありません。メイクーモンが疑問を投げかけるシーンがなくても話に全く影響はなかったと思います。

意味ありげに出てくるけど、最後まで見終わって考えてみれば伏線でもなんでもなくただのエッセンスにしか過ぎないというのは、『ゴーストゲーム』では割とよくある事態です。

 

なんでしょう。『ゴーストゲーム』って、過去作で重要だったデジモンや大物っぽいデジモンの登場のさせ方がずっとがさつですよね。第19話ピッコロモン、第21話アルケニモン、第25話ヴァンデモン、第29話エリスモン、第31話ズバモン。このあたりはデジモンにわかの自分でも「過去作で大きな出番があるデジモンキャラだな」と知っているキャラなのですが、全員がそろって出番が雑だと思います。

いや、「がさつじゃない登場をしたゲストデジモンキャラが今までいた?」と言われると、ボコモン先生ぐらいかなあ……と思ってしまうのでしょんぼりなのですが。ボコモン先生も出番の回数が多かっただけで、殺され方は雑でしたが。シリーズ的に大物そうなデジモンの中で出番が比較的マシなほうなのは、マジラモンとかもんざえモンとかぐらいかなあ……。

 

あ、おっさん声なのは良かったと思います。役柄的に「誰にも自分だと認識してもらえずうら寂しく忘れられる」キャラなので、悲哀たっぷりの中年男性ボイスがマッチしていました。

……制作側が「中年男性声で」と指定して依頼したのだと思いますし、声優さんはきっちり役柄に合わせてらっしゃいました。それは良いのですが、メイクーモンに中年男性声を当てるというのはシリーズ的には良かったんですかね? もっと他の、中年男性声が映えそうなデジモンを出せばよかったんじゃないでしょうか?

……まあ、第29話「妖花粉」エリスモンだってモブ雑魚コミカルキャラみたいな声を当てていたので今さらですね。

 

ポケモンは個体によって声優を変えることはあっても(名探偵ピカチュウのおっさんキャラみたいな例外でない限り)可愛い種族の声は可愛い声、格好良い種族の声は格好良い声でという統一感がある気がしますが、デジモンにはそういう意味で統一感を持たせる意識はないということで良いんでしょう。まあ、基本的には鳴き声しか出さないポケモンと人語を喋るデジモンでは事情も違ってきますしね。

 

 

■過去の怪異への反応がなく、危機感ゼロに見えるモブたち

今回は入れ替わりをされただけだったので被害者たちが怪我をしたわけでもなく、回復を考える必要がなかったのは良いですが……。

でも、縛られてそこらに転がされてたのを助けたんですよね。それ、デジモン(ベツモン)のことを説明せずに終わらせるのって可能なんですか?

 

ヒロルリも自他の命に興味なくてがさつですが、周囲のモブたちもかなり……危機感がないですね。

だってモブたち、

・第12話「不幸ノ手紙」では直接デジモン達と殴り合ってるし、

・第28話「顔取リ」では個々の被害は小規模といえ広域で連続して物理的被害が出ているし、

・第29話「妖花粉」では街のど真ん中に謎の霧が出て救急車騒ぎになってる

んですよ。もう、騒がないで済むレベルをとっくに通り越しているはずなんですよ。デジモンのこと(またはホログラムゴーストのこと、怪奇現象のこと)自体が盛大に噂になっている~社会問題としてニュース報道されるような事態になっていてもおかしくないんです。

 

なのに、デジモンのことなり他の怪奇現象のことなりについてモブ達が反応している~人間社会が反応している描写が一切なく、危機感を覚えている様子が感じられません。

社会的反応を起こしたくないなら、注意して「社会全体には影響を及ぼさない、当事者以外には『ただの眉唾オカルト与太話』で済まされる事件」の範囲にとどめたお話を作れば良いだけなのに。社会状況設定ががさつだと思います。

 

 

■普通に実体化するデジモン達と、実体化の無価値化

今回ツッコむことでもないかもしれませんけど、最近、ゲスト怪異デジモンたちがふつーに実体化してますよね。

 

なんだったんですかね、「人間の負の感情を利用して実体化を企む悪質なデジモン達がいる」っていう第15話「占イノ館」のフェレスモン達の描写(※)。わざわざ企みなんかしなくても、どいつもこいつも実体化してるじゃないですか。

第14話「座敷童」で満足して納得したコエモンが実体化したときはちょっとした感動すらあったんですけどね。もはや実体化のバーゲンセールすぎて、大した意味もありません。

ゲストデジモン達の実体化の価値が下がるなら、当然「ヒロ達のデジヴァイスデジモンを実体化or非実体化できる」の価値も下がります。というか、デジヴァイスによる実体化を行うシーンが最後に描かれたの、いつでしたっけか。

 

(※)「人間の負の感情を利用して実体化を企む悪質なデジモン達がいる」は具体的なエピソードとして描かれたのは第15話のフェレスモン達だったと思いますが、初出は確か第9話「捻レタ時」でのボコモン先生の説明だったと思います。

 

 

■放置される先輩は、『ヒロに』放置されたのか?

ヒロ達はベツモンに襲われて縛り上げられていた寮の人々を寮中を回って助けたと思われるのに、先輩のことは縛られたまま放置した……ってことで良いんですかね。

たまたまベツモン達のジェリーモンの処理ががさつだった(ジェリーモンの外出に便乗しただけだった)から帰宅したジェリーモンが先輩を見つけることができたものの、仮にベツモン達がジェリーモンを帰ってこれないようにどこかに何とかして閉じ込めていたとしたら、ジェリーモンも先輩もそのまま放置だったってことでしょうか。

 

うん? それとも、放送の順番からすると「公園(?)でベツモン事件が解決した」「同時刻ごろジェリーモンが帰ってきて先輩を救出した」→「その後、帰ってきたヒロが寮の人々を助けた」なんですかね。そっちなら良いですけどね。ヒロが放置した説だと、流石に冷淡すぎますからね。……まあ、ヒロが先輩を冷淡に放置する事例は既にいっぱい実績があったような気がしますけど。

 

 

■そのほか

・OP、カノーヴァイスモン新規カットとテティスモン新規カットがぐりぐり動いて密度が高いのは良いんですが、どうしても既存のアンゴラモンカットの部分がすっとろく見えちゃいますね。カノーヴァイスモン新規カットとテティスモン新規カットは短い尺の中に無理矢理突っ込んでるから格好良いんですけど、アンゴラモンは元々尺が長いから余計に目立ちます。早くアンゴラモンさんも進化を達成して、新規カットに差し替わると良いですね。

曲との兼ね合いもあるといえ、ルリ&アンゴラモンカットがやたら長くて先輩&ジェリーモンカットがやたら短いというアンバランスさは元々良くないと思います。基本+進化三種(ガンマ、ベテル、カウス、ウェズン)を見せる必要もあって主人公組であるガンマモンが長いのは分かりますけどね。

 

・前に「ガンマモンは一人で出歩きたい」って前振りはありましたけどねえ……。本当に一人で出歩いてて、こういうとこだけちゃんと前の展開を踏まえているので呆れます。ガンマモンって、突然グルスガンマモンになって周囲を殺戮し始める可能性があるクリーチャーだったと思うんですけど。

それにさあ!? せめて、せめてせめて実体化してない状態(人間に見えず、人間に干渉できない状態)で出歩いてくれませんかねえ!?

 

・毎日のように託児でお世話になってるのに未だに先輩の私物をかじり続けるガンマモン、ほんと酷いと思います。まあ先輩の私物だけじゃなくてヒロの私物もかじるんですけど。赤ちゃんだからって、創作上のキャラとしてはいくらなんでも成長性が無さすぎです。

 

・ガンマモンに化けたベツモンと本物ガンマモンがヒロの部屋で初めてぶつかるシーン。BGMも締まらないと思います。なんでしょう、シリアスになりきれないなんか間が抜けたBGMです。コミカルとして見れば良いのかシリアスに見れば良いのか分かりませんでした。

 

・ベツモンに居場所を取られて病んじゃったメイクーモンですが、どんな居場所取られたんですかね。デジモンたちだけのコミュニティでもベツモンたちは乗っ取り事件をしてたってこと? それともあのおっさんメイクーモンも人間とつるんでて、人間との居場所を取られたんでしょうか。

 

・ベツモンのつっこみパンチ三連発→ウェズンガンマモンが吹っ飛ぶシーンは呆れました。もともと戦闘時のアニメ枚数が寂しい『ゴーストゲーム』ですが、これは今まででもワーストシーンかもしれません。

枚数が使えないアニメで技を使う側と技を食らう側のカットが切り離されているのはよくあることですが、上空からのつっこみパンチ三連発を食らう→直前のカットとは無関係にウェズンガンマモンが『上』に吹っ飛んでいく→アッパーをするベツモン×3の絵を直後に挟んで無理矢理アッパー攻撃(上への攻撃)だったことにして整合性を合わせるって。なんだこれ。

更には、つっこみパンチには「ぺしー♪」っていう声がSEとして伴われるという設定のようなんですけど、その入り方が締まらなさすぎて意味が分かりませんでした。結局、ベツモン3体からの3連続攻撃だったの? 同時攻撃だったの? それすら分かりません。