灰色の本

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『デジモンゴーストゲーム』第39話「感染孤島」:感想

デジモンゴーストゲーム』第39話「感染孤島」の感想です。 何がやりたいのか全然ぴんと来ない回。

 

 

■何がやりたいのか分からない

全体的に……何がやりたいのか全くぴんと来ない話でした。『デジモンゴーストゲーム』は何がやりたいのかぴんと来ない話がもともと多いというのは今さらです。が、今回は「何かやりたそうな雰囲気」だけは伝わってくるので、逆に今まででトップクラスに「ぴんと来ない回だなあ」と思いました。

前回が、『ゴーストゲーム』にしては珍しく何がやりたいか分かりやすい回だったというのも芸術点が高いです。前回は(本筋はいつもどおり無茶苦茶だったけど)新キャラ・エスピモンを魅力的に描きたいという意欲はばりばり伝わってきましたし、結果もついてきていたと感じましたからね。前回が意図が分かりやすく、『ゴーストゲーム』では全エピソード中の首位独占レベルで明確に「話が進んだ」という珍しすぎる回だっただけに、落差が激しすぎます。

 

具体的にどんなところのせいで「ぴんと来ない回だなあ」と思ったかというと、下記のような感じです。

 

・ヒロがギュウキモンを放置せず島に連れて行ったのが迂闊なのは、まあそうだよねっていう感じで……それ以上言うことがありません。一方で「でも放置してたら都会で大暴れしてたんじゃないの?」という疑問もあります。ヒロの意見もバクモンの意見もどっちもそれぞれアホな気がして、もやもやはしますが特に何か言えるほどの話ではありません。

 

・ギュウキモンを島に連れてきたヒロを責める先輩&ジェリーモンは、「ギュウキモンは勝手についてきただけ」という事実を考えれば酷いです。けど、何故先輩&ジェリーモンがヒロを責めるかって、そりゃあヒロが「俺が連れてきた」に近い発言をしたのが原因なので……これも「まあ、先輩&ジェリーモンの視点からはそうだよね」という印象でそれ以上言うことがありません。もやもやはしますが特に何か言えるほどの話ではない。

 

・今回のギュウキモンはヒロに勝手についてきただけであるはずです。なのに、ヒロが「俺がギュウキモンを連れてきてしまったせいだ……」と異常にナイーブなことを主張し始めるので全くついていけません。(この観点は長くなるので別項目で詳しく書きます)

 

・突然、今さらすぎるバクモンの再登場。しかも大して良い出番とも思えない。ボコモンへの言及もおざなり。バクモンがデジヴァイスによる退化を提案しなければどうにもならなかったので今回の功労者だ? うん、その「デジヴァイスによる退化」という突然生えてきた妙な設定と、そんな「妙な設定」を仮説として思いついてお出ししてきた突飛さも印象が悪いので……。

前回のバクモン再登場回である第22話「悪夢」(もう17話も前か……)でもそうでしたが、恩師ボコモンを失ったバクモンの「心情」にはまともに触れないんですよね。『デジモンゴーストゲーム』はずっとキャラの心情になんか興味がないよ、メインキャラの心情にも興味がないんだからバクモン程度のサブキャラの心情に興味があるわけないよと言われればそうなんですが……。

 

デジヴァイスは進化だけでなく退化にも使える……とのことですが、今さらすぎるし突然すぎるし、その設定があるから一体何なの……。

だいたい、今作のデジヴァイスは妙な新規設定が生えたかと思うとその後何もなかったり、かと思ってるとン十話も経ったようなところで急に後付け設定を盛ってきたりするので、非常に印象が悪いです。今後もご都合主義で突然設定が生えてきて、一話で忘れられるんだろ。今回の設定もどうせ今回限りでしょ。どうっでも良いよ。

 

・宣伝の雰囲気からして、ギュウキモン=リュウダモンはどうやら制作側としては今後も続投予定のキャラであるらしいです。どうもエスピモンと同格ぐらいの扱いであるらしい。え、そのキャラの扱いが、これ? いつものゲスト害獣デジモンじゃん? (この観点も後ほどもうちょっと言及します)

 

・いつものことですが、話は全く進みません。リュウダモンを助けたからって、それでだから何……。いつものゲスト害獣デジモンと何が違うの……。

 

・サブタイトルが「感染孤島」ですが、「感染」という要素も「孤島」という要素も大して生きていない気がします。山中の田舎でも変わらないですし、感染以外の手法(例えば操りとか)でも変わらなかったですよね。

もっと身も蓋もないことを言えば、ほとんど変わらない話をこないだ第37話「死霊ノ群レ」で見た。

 

 

こんなところですかねえ。「ぴんと来ない回だなあ」と思った理由。

これもう、今回の要素のほぼすべてでは?

 

 

■勝手についてきたギュウキモンと、その責任を奪ってナルシストをするヒロ

そもそもギュウキモン、隠れて勝手についてきたんでしょ? 船内でギュウキモンがガンマモンに「ついてきちゃってごめん……」と突然謝り始めたのは「勝手についてきちゃってごめん」の意味ですよね。同意して同行しているなら、今さらガンマモンに謝る意味が分かりません。ヒロが故意に連れてきたならガンマモンだって知っていると考えるのが普通でしょう。

他の描写も合わせて考えると、ヒロもガンマモンも、ギュウキモンがついてきていることを知らなかったはずです。「ギュウキモンはバクモンが来るまではヒロの部屋に待機することをバクモンと話しあって決めていた(※ヒロは自然教室に出かけているので部屋は無人)」のだと思われます。それなのに勝手についてきたことについて、ヒロが責任を負わされるのは不当ですよね。

 

でもヒロが、あんまりにナチュラルに「ギュウキモンは自分が故意に連れて来たんだ」という前提の話をし始めて、ギュウキモンの責任をぬるっと取っていく。

……は? なんでそんな嘘を突然、しかもナチュラルにつき始めたの? 自分の嘘をガチで信じ込むタイプの虚言癖を発症したの? え、何、怖いんだけど。ギュウキモン=リュウダモンが可哀想だったから自分が嘘をついてでも庇おうと思ったんだ……と補完するには、嘘をつく際の表情も発言も迷いがなさすぎです。怖い。

 

そんなことを言い出すので当然先輩&ジェリーモンとバクモンからはヒロがぼろくそに責められるわけですが、そうするとヒロは「俺のせいでみんなが……」とクソナイーブな、逆被害妄想みたいなこと言い始めるんですよね。普段は「このまま放置するとどこかでまた被害者が出ることが分かり切っている」ときでもガン無視なのに、何その繊細さ!? 誰!? 他に「俺のせいでみんなが……」って言うべき回が絶対あったよね!?

今回は明らかにヒロのせいじゃないのに自分で責任をかぶっておいて、「俺のせいでみんなに被害が……」って言い出すの、なんかもうそれ一周回って誇大妄想じみてますよ!? 変形したミュンヒハウゼン症候群にも見えますよ!?

 

「悲劇のヒロインぶる」という言葉がありますが、そういう感じにも見えました。自分の行動のせいで社会に多大な影響を出してしまった、悲劇の主人公・俺……という寸法です。いや、今回に限ってはだが、今回はお前のせいじゃない。残念ながら今回のお前にそこまでの影響力はない。

影響力がないくせに影響力を持っていると思い込んでいる。自分の行動で本来は事態を抑えられたはずなのにと、自分の能力を過信して「行動が悪かっただけ」と主張している。誇大妄想的、ヒロイック妄想的だなあと思いました。今回のヒロ、ナルシストだと思いますよ。意外ですね。普段はむしろ、ヒロは自分自身に興味が持てないセルフネグレクトタイプの子だよな(自分が尊重できない子だから他人も尊重できないタイプの子だよな)と思いながら見てるんですが……。

 

※仮に「マジでヒロが故意にギュウキモンを連れてきた」のだとしてもさ。

その場合はヒロは「バクモンに嘘をついたor考え直して連れていくことにしたのに再度の相談をしなかった」「先輩たちにも『ギュウキモンのことはバクモンに任せる』と故意に嘘をついた」ということになってもっと最悪だからな。

後者も最悪ですけど、特に前者です。ヒロはバクモンと話をしたときには「自然学校行きで自分が寮を離れる」ことぐらい分かっていたのですから、「なんでギュウキモンを連れて行ったんだ!」とバクモンがマジギレしている(=バクモンは何も知らなかった)ということは、真面目に誠意を持った話し合いなんか最初からしていないということになるんですよ。

あと、「マジでヒロが故意にギュウキモンを連れてきた」のだとすると、ギュウキモンが姿を見せてしまった瞬間いきなり謝罪し始めるシーンは「ガンマモンがギュウキモンがついてきていることを知らなかった」ように見え、キャラ的に不自然です。誤解を招きすぎ。創作が、おヘタクソ。

 

※追記。今回の事情について、考えられるパターン分け。

①ヒロはギュウキモンがついてきていることを知らなかったのに、いかにも自分が故意に連れてきたかのように謎の嘘をついた。挙句、「自分のせいだ……!」とナルシスト仕草をした。

②ヒロはギュウキモンを故意につれてきた。バクモン、先輩&ジェリーモンには嘘をついた。ギュウキモンは突然の罪悪感発作を起こしてガンマモンに謝り始めただけで、ガンマモンはギュウキモンの同行を知っていた。

③ギュウキモンを故意につれてきたこと、バクモン&先輩&ジェリーモンに嘘をついたことは②と同じ。ただし、何故かガンマモンにもギュウキモンの同行を隠したのでガンマモンは知らなかった。

 

「俺がギュウキモンをつれてきてしまったせいだ……!」と、いかにも「判断ミスだっただけで善意だったんだ」みたいに思わせることを言ってますけど、パターン分けして整理してみるとそんなことよりも事態をムダに隠蔽しようとしたのが悪いと思う。悪意じゃん。

……いやあ、やっぱりヒロって、単に恐ろしくめんどくさがりなだけなんだと思いますよ。同行を知らなかったパターン①では「適当に自分が責任をひっかぶっておいたほうがめんどくさくない」と謎の判断をして、故意に同行させたパターン②や③だったとしても「判断を変えて同行させようと思うけど、みんなに相談するのも連絡するのもめんどくさい」と思っただけなんだと思います。彼の美徳とされる「頼まれると断らない」は、一貫してそういう内訳です。

 

 

■モブゲスト害獣デジモンすぎるリュウダモン(ギュウキモン)

ギュウキモン=リュウダモンがいつものゲスト害獣デジモンすぎて全くノレねえ。いつもどおりのゲスト害獣デジモンなので、いつもどおり全く感情移入できねえ。

 

確かに、ギュウキモンとして他者に危害を加えることを非常に嫌って恐れていたことから、性質としては「善良」なキャラ(視聴者含む人間の一般的感性と照らして「善良」と判断できるキャラ)です。ほぼ害獣しかいない『ゴーストゲーム』のデジモンの中では珍しかったですが……

いや、それでもやっぱり、いつもの害獣だろこんなの。リュウダモンは、ギュウキモンとしての自分が襲ってしまった人間を「他の人間に危害を出さないようになんとか抑え込もう」とは発想せずにすぐに逃げ出すタイプの奴ですよ(パニックになっていたのだとは思いますが)。

 

あと、逆に「善良」すぎて「デジモンのくせにコイツ何言ってるんだろうな」と思ってしまったところもありました。

だってデジモンでしょ? 『ゴーストゲーム』のデジモンでしょ? 害獣なのがデフォルトじゃないですか。

更に言えば、ギュウキモンって「そういう種族」なんでしょ? 他のデジモンでも容赦なく襲うんでしょ? デジモン達の思考って「デジモン>>>人間」がデフォルトでしょ。なんでリュウダモンはギュウキモンという種の本能に逆らってまでイヤイヤしてるの?

 

この観点は、今まで「種としての本能に逆らう意思や望みを持つデジモン」が出てきているなら分かるのですが……特にそんなことはないので突飛です。『ゴーストゲーム』の描写では人間とデジモンでは常識が違うのだということだけは一貫しています(※だから毎回のデジモンが人間にとって害獣と化すのです)が、一方でこの観点――「そもそもデジモン達にとって殺人や加害は大したタブーではないのではないか」という観点はずっと蔑ろにされ続けてきています。

第37話「死霊ノ群レ」の「ヒロたちが殺害という手法を選んだことについて」という感想が遅れ遅れになっていますが、この観点についても書くことができればいいなと思っています。

 

 

■むごい生まれのギュウキモン=リュウダモン

ギュウキモン、比較的冷静なアンゴラモンに即座に「危険だから今すぐ離れろ」と言われるレベルで危険なんですね。今回のアンゴラモンは珍しくヒステリックで、ギュウキモンの存在を全否定する勢いで警告していました。

更にはリュウダモンが自分でも「ギュウキモンになりたくない」と言い、狂気に取りつかれそうになってガンガンと壁に頭を打ち付けて自傷して……。

……ギュウキモンに進化するリュウダモンに生まれたこと自体が彼の不幸という印象で、可哀想です。生きてるだけで罰ゲームみたいなもんじゃないですか。

 

 

■カス度がまだ上がり続けるヒロのカス親父

>北斗が言ってたんだ。人間の世界で何か困ったら、俺の息子・天ノ河ヒロんとこへ行けって。

クロックモンだけでなく、北斗……ヒロのカス親父までヒロに面倒ごとを押し付けてるんですか。どうなってるんだ。

……いや、ヒロのカス親父はもともとヒロに面倒ごとを押し付けるカスでしたね。ガンマモン自体がカス親父の押し付けた面倒ごとなわけですよ。

 

で、カス親父、ガンマモンだけでなくそのへんの野良デジモンの面倒ごとまでヒロに押し付けといて、ヒロに「厄介すぎるデジモンどうすれば良い?」と聞かれたら「知らん!」なんだ……。そのド最低な親父、デジタルワールドでデジモンにアタママルカジリされたほうが良いし、ヒロも親父見捨てたほうが良いです。

 

 

■相変わらずの薄情害獣・ジェリーモン

>ジェリーモンさまなんて、島につくやいなや逃げてしまったぞ!

ジェリーモン……。マジで薄情害獣ですね。ダーリン呼びしてても平気で見捨てるという。一貫はしていますが、どうしてそういう薄情なところで一貫しているのでしょうか……。後でちゃんと助けに来てくれたよねっていう話じゃないんですよ。そういうことばっかしてるせいで先輩の信頼が未だにゼロだよねって言ってるんです。

おかげで先輩は、心情的に頼りにならないヒロやらガンマモンに頼ることになるんですよね。

 

 

 

■そのほか

・新島さんって寮の管理が仕事だろうに、孤島への合宿についてこないといけないんですね……設定が適当ですね大変ですね。

で、新島さんのところに食事を持って行ったのがたまたまヒロだったから彼女のギュウキモン化を隠す方向になりましたけど、……それで良かったんですかねえ。パニックになるとしても、全体に状況が知られたほうが良かったのではないでしょうか。結局、ヒロが先輩を呼んでくるタイムラグのあいだに集団まるごと襲われちゃってますし。

 

・ルリのセリフ。

アンゴラモン……エアドラモンを(呼んで)!

簡単に言うけど、エアドラモンはポケットの中の秘密道具じゃないし妖怪メダルで呼び出せる妖怪でもないんだぞ。別の生活をしている一個人(一個体)だぞ。

※追記:読み直したら「妖怪メダルで呼び出される妖怪だって、呼び出しで私生活を邪魔されてキレることもあるんだぞ」とセルフツッコミしたくなったので書いておきます。

 

・「データ」って語が出てくるたびに言ってるけど、だから「データ」って何……。

デジモンゴーストゲーム』の「データ」って、一般的な語とは違うんですよね。人間に入り込んだデータって一体なに? そこ、現実世界なのに?