灰色の本

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『デジモンゴーストゲーム』第21話まで見ての総評

 『デジモンゴーストゲーム』第21話までを視聴しての総評です。

今作にリアルタイムで興味を持っている方のおおむねが恐らくご存知でしょうが、東映アニメーションへの不正アクセス事件があったため、第21話以降の放送が一ヵ月(それ以上?)中止になっています。なので第21話までの時点で総評を書いておきます。

 

※記事中で引用しているデータについては、綺麗に整理したものを後日に別記事として投稿しようと思います。

 

 

■ヒロに目的らしい目的が感じられない・何を考えているのか分からない

ずっと言っていますが、ヒロに目的が感じられません。かと言って、巻き込まれ系キャラとして見るにはリアクションも感情表現も薄く、何を考えているかわかりません。

 

一応、序盤の目標は『父親を捜すために、父親が旅しているデジタルワールドの情報を集める』だったのだと思います。ですが、この意思表明はものすごくさらっと流されています。この話が作中で触れられるとき、ヒロはだいたい「(父親は)元気そうだから(知らないなら)良いです」と言っていて、積極性が感じられません。積極的に情報を集めようとしたり、そのためにデジモンとコンタクトを取ろうとしたりしている印象は第2話を除いてありません。実際、ヒロ父(北斗)はデジタルワールドは元気にやっているらしく、ヒロのほうが父親がいなくて困るとか寂しくて会いたいなどということもないらしいので、危険なデジモン事件に身を晒してまで父を探したい理由が分かりません。

 

一応、この状況を変えるかもしれない描写が二回ありました。

第16話「人喰ノ森」で、ヒロがガンマモンに殺しをさせたくないと思い、ジュレイモンを殺さずに済まそうと立ち回る描写。

第20話「炎ノ監獄」で、ヒロがボコモン先生の言葉を思い出し、「人間とデジモンの架け橋が必要なのかもしれない」と思う描写。

この二回です。これらはヒロの強い望み、そして行動指針になる可能性が大いにあります。

 

ただ、この二つの望みは別物です。更には、どちらも「今そう思った」程度で、まだヒロ自身が「必ずそうしたい」と腹を決めたわけではありません。この望みが真っ当に深掘りされるかは未知数で、不安が残ります。普通の作品ならこの描写をしたからには貫徹すると思いますが、『ゴーストゲームという作品の今までを考えると個人的にはいまいち信用がありません。真っ当に深掘りされて、ヒロという主人公の少年がなんらかの結論に辿り着くことを望みます。

 

 

■物語の進展がない、遅い(特に1クール)

とにかく物語が進行しません。

上記の通り主人公のヒロに目的が感じられないことも影響しており、主人公たちが何をやりたいのか分からないし、実際主人公たちは積極的には何もやりません。なので話が進みません。

ルリがわけわかんないことに首突っ込んでいちいち事件を持ってくる傾向はありますが、それも狙ってやっているわけではなく、ルリに何らかの意思や望みがあるようにも見えません。ばらばらな事件にばらばらに巻き込まれているだけで、物語の本筋に影響してきません。ピッタリ探しなんて曖昧なことは、命の危機がある事件に首を突っ込む以外の方法で探してほしいものです。

 

1クールの時点では、まず物語を進める意識が感じられませんでした。仲間を集めて進化して、漫然と異変をなあなあで解決してただけです。あとはアンゴラモン先生とボコモン先生のデジモン講座があったぐらいかな。

更に言えば、仲間集め回と初進化回では本当に仲間集めと初進化しかやりません。仲間の絆を深めることすらほとんどやりません。仲間集め回はともかく、初進化させながら同じ回で何か別の描写をすることはできたと思いますし、初進化ノルマさえない回でもろくに何もしていないのが厳しいです。

進化したところで『ゴーストゲーム』では敵をぶっ倒すわけではないからあんまり嬉しくないというのも厳しいです。進化の価値がどうしても下がりやすくなる作風なのに、初進化回は「進化させたからノルマ完了!」で他の進展もないので、話が薄くてしょっぱいです。

 

物語を前に進めるような情報量が薄い中で、『メインメンバーのキャラ立ち』『メインメンバー間の友好度稼ぎ』さえしっかりやってないのが厳しかったですね。キャラが立っていないし仲良くなっているとも感じられなかったので、キャラがわちゃわちゃ仲良くしてるのを見ているだけで楽しいという感情は個人的には湧きませんでいた。

2クールに入って、なあなあのままとは言えど流石に時間が経ったので、そこそこの友好度がある仲間っぽくなってきました。『今、仲間であること。そこそこ仲良しであること』は認めます。けど、『何故、仲間になったのか。何故仲良くなったのか』は1クールが酷かったので未だに解せません。

 

 

■(2クール以降)物語を進める意思は感じられるようになった

一方で、2クール突入以後、『物語をちゃんと前に進めていこう』という意志は感じるようになりました。前に進めようとし始めるのが遅いですし、進む速度もやっぱり遅いですけどね。

個人的には14話「座敷童」と15話「占イノ館」は「今する話がそれなのか!? それだけで良いのか!?」と思うので除外したい気分なんですが、その14話・15話も含めてちゃんと前に進行させようとしている意識は感じます。あ、第18話「子供ノ国」は大して進まなかったかな……。

でもとにかく、1クールの進展が「進化回収と仲間回収……」ぐらいしか言えなかったのに比べると、グルスガンマモン絡みの話をしているおかげでほぼ全話に新情報があるという状態になったと思います。これは評価したいです。

まあ実際には「その新情報とやらがショボい」みたいな回とか、「それが今後の展開の前振りなのか単発ネタなのか判断しがたい」みたいな回もあったんですが……

あとごめん、17話ごろの初見感想メモを見たら「ここ(17話)まで虚無」と書いてました。あくまで第21話まで見てから改めて振り返っての評価ということで……

 

 

■全体的に倫理観が無い(しょっちゅう犯罪をする)

人間と違う価値観と常識を持ち、人間の迷惑を全く考えないor考えられない害獣デジモン達が犯罪をやらかすのは仕方がありません。そういう物語です、と済ませるしかないですしそれで良いでしょう。

けど人間の主人公達がしょっちゅう犯罪をするのは子供向けアニメとして最悪だと思います。しかも犯罪をするほどの理由が立ってないことのほうが圧倒的に多いので、この観点だけで言えば子供向けアニメじゃなくても最悪から数えたほうが早い部類だと思います。

 

ちなみに、作中で主人公達が犯罪をした描写がある話数の数を数えると、21話中10話でした。パーセントで言うと約48%です。やったね50%は超えなかったよ。

ただし、これは『同じ回で複数の犯罪描写がある』ものも含めて『1』と数える方式なのはご理解いただきたいです。厳密な犯罪の数は、数え方が難しい(どこまでを一つの犯罪と数えるか、複数人が同じ犯罪をしているのはどう数えるべきか、犯罪を依頼した指示犯と実際に犯罪行為をした実行犯はどう数えるべきかetc.)ので数えません。

 

今後、『ゴーストゲーム』はガンマモン(グルスガンマモン)に『殺しをさせたくない』ということが主題になって展開していくのだと思われます。そのとき、そもそもヒロ達の倫理観がびっくりするほど低いというのは大きな足かせになると思います。「どの口が言うんだてめえ」ってことになるじゃん。

 

というかせっかくデジモンを『価値観が違うので息をするように人間に迷惑をかけてくる害獣』と描いているのに、人間の主人公達まで倫理観が低くて他人に迷惑をかけようと気にしない連中だと、デジモンと人間とのギャップが出なくて台無しだと思います。

 

 

■全体的に倫理観が無い(犯罪以外のこと)

主人公達がしょっちゅう犯罪をする以外にも、作劇やらキャラやらに倫理観が無いなあと思うところはいっぱいあります。

 

・ルリがひたすら周囲をパシり続ける。

・先輩がひたすら周囲と脚本に軽んじられ続ける。

・ジェリーモンが害獣すぎて、仲間に存在していること自体が不穏。(ただしこの要素は話が進むにつれ目立たなくなってきている)

・害獣デジモンが謝らないのは設定上仕方ないにしても、ヒロ達が責めて謝罪を求めることすらしない。デジモンの加害行為を助長するような行動を取る場合すらある。

・ヒロ達が害獣デジモンを見逃すばかりするので、その先にある人間の被害やひいては人命を軽んじているように見える。

・とりあえずボコモン先生を殺しとけば視聴者は泣くだろうしガンマモンは悪堕ちするだろうという作劇態度。

・とりあえず暗殺系のデジモンキャラにデジモン1000人ぐらい殺させとけば良いでしょという作劇態度。

・ヒロの父親がカス。スタッフの故意によるカスなのかどうかよくわからないが、故意ではなく無自覚っぽいように見える。

・ヒロの母親もまあまあカス。スタッフの故意によるカスなのかどうかはよくわからないが、故意ではなく無自覚っぽいように見える。

 

適当に挙げてもこれぐらいはあります。リカバリが効くor効きそうなのがジェリーモンの件しかないのが厳しいです。しかも、ジェリーモンは初回(第5話)で「嫌い、害獣すぎて生理的に無理!」になった人にはリカバリが効かないと思います。これだけあると、制作スタッフの故意というよりはもう本当に制作スタッフの倫理観が低いような気がします。

 

めちゃくちゃどうでも良いですが、自分は『ゴーストゲーム』のこういう倫理観の低さをまともにツッコんでくれる長文感想を見つけられなかったのでこのブログを立てたところがあります。

 

 

■敵デジモンに愛着が湧かない

今作のデジモン達が害獣なのはそれはそれでそういう作風だから仕方ないと思っていますし、自分はある意味そこに惹かれて『ゴーストゲーム』を見ている変人ですけど、それと『敵デジモンに愛着が湧かない』というのは別問題だと思います。害獣だから愛着が湧かないのは仕方ないんでしょうか? 制作スタッフは「デジモン=害獣っていう今作の設定だと、愛着なんて湧かないですよね」って最初から分かってやってるんでしょうか。

 

害獣だから愛着が湧かない、っていうのは本当ですか?

例えば第4話のパンプモンは誤解解消→改心友達エンドでしたよね。そのままサブキャラとしてガンマモンと楽しくわいわいしたり、ときどき助っ人したりしてくれる道があっても良かったんじゃないでしょうか。

クロックモンも同じです。ヒロ&ガンマモンを目の敵にする腐れ縁ツンデレ兄貴(ヤなヤツだが憎めない)としてサブキャラになってくれても良かったんじゃないでしょうか。

改心しなかったタイプの敵で言えば、第17話のフロゾモンや第18話のピーターモンは多少味付けを変えるだけで「彼らなりの信念やトラウマがあって動いていたキャラクター」になって、共感できるキャラになっていた可能性はあると思っています。

完全に人間の敵という立ち位置で出てきた第15話フィレスモンを単発ゲストではなくて複数の事件の糸を引くキャラにして、他のアニメで言う『敵の幹部役』ポジションとしてしばらく敵レギュラーとして動かしても良かったと思います。

 

たとえ今作のデジモンが害獣でも、視聴者に愛着を持たせるためのやりようは色々あると思っています。ただ、『ゴーストゲーム』は今のところそれをやっていないと言って良いと思います。これは本当に制作スタッフの意図するところなんでしょうか。分かったうえで「今作の設定では敵デジモンに愛着を持たせるのは無理だから」とばっさり切り捨てているのでしょうか。

仮に故意だとして、その切り捨て方も正直よく分かりません。デジモンってシリーズものだから、デジモンに愛着を持たせたほうが他作品への導線になる→シリーズ全体のファンになってくれる可能性が高まると思いますけどね。それともシリーズものだからこそ、シリーズ全体やデジモン種族への愛着が湧かない作品が一つぐらいあっても良いみたいな判断なんですかね。正直、にわかから言わせると、デジモンシリーズはそんな悠長なことを言える余裕があるシリーズという印象もないのですが。

 

 

■そのほか

・こういうタイプの総評って、このキャラはどうだこうだとキャラ単位で言及する項目があるのがお決まりなイメージがあるんですが、『ゴーストゲーム』にキャラ単位で何か書くことがあるかと言うと、特にないです。完走後には流石に締めとしてキャラ単位の言及をすると思いますが、今は特に言及したいことがありません。比較的好感を持っている先輩&ジェリーモン組でさえ特に言うことがありません。キャラとしての愛着が薄いです。

・ホラー要素は第16話ぐらいから頑張っているんですけど、『ゴーストゲーム』のホラー要素って『単発ネタ』なんですよね。長期的に関わってくる内容ではありません。なので、『物語全体の総評』として触れることがあるかというと、残念ながら特にありません。第16話ぐらいから頑張っていること自体は褒めたいです。

・バトルはほぼ鳴かず飛ばずです。敵を倒す描写をしたくないからってほとんど毎回戦闘が尻切れトンボでは、爽快感も納得感も話のメリハリも進化の喜びもあったもんじゃありません。ただし戦闘が尻切れトンボでない回(第5話、第10話、第20話)は満足感がありました。

・ホログラムゴーストの設定が若干死にかけている気がします。近未来ネタ関係は良ネタっぽそうなのに活かされてないですね。

・実体化レベルの設定もほぼ死に設定な気がします。結局ふわふわした運用がされていて厳密にルールが守られていない気がします。わざわざ尺を使ってあの説明をする必要があったかから疑問です。1クールはスカスカなので、多少尺を使おうが使わまいが変わりはしませんが。

 

 

おまけ:第21話までの各話短評

☆☆☆☆☆  :(例外的に使用)最悪、星一つすらあげたくない
★☆☆☆☆  :かなり悪い
★★☆☆☆  :悪い
★★★☆☆  :及第点~やや良い
★★★★☆  :良い
★★★★★  :かなり良い
★★★★★★ :(例外的に使用)最高、手放しで褒めたい(※今回該当なし)

 

話数/サブタイトル 個人的評価 短評
第1話:口縫男 ★★★★☆ 期待が持てる出来。
第2話:博物館ノ怪 ★★★☆☆ 期待が持てる出来だが、ヒロとガンマモンの友情形成描写は既に薄い。
第3話:ラクガキ ★★★☆☆ ホラー描写は丹念で良い。ただしまともな会話をしないヒロとルリには既に暗雲。
第4話:人形ノ館 ★☆☆☆☆ ルリのパシリの印象が最悪。この印象の悪さが後々まで響く。
第5話:神ノ怒リ ★★★★☆ ジェリーモンの悪行を許せるかどうかで評価が変わる。個人的には初見ではぎりぎりセーフと感じた。
第6話:呪ワレタ歌 ★☆☆☆☆ ヒロルリ先輩の友情が成立してなさすぎて先行きが不安になる回。(実際、友情形成は話数任せになったので15~20話ぐらいまで印象が回復しなかった)
第7話:鳥 ★☆☆☆☆ 地味かつオチが意味不明な回。チョコの仇のために新形態に進化するガンマモンがものすごく引っかかる。
第8話:百鬼夜行 ★☆☆☆☆ 主人公側の犯罪行為とヒャッハーデジモンの印象が悪い。話が進まない。
第9話:捻レタ時 ★★☆☆☆ 雑だが、ボコモン先生&バクモンと実体化講座は良い。ルリは最悪。
第10話:死ノ遊戯 ★★★★☆ 悪いところはかなり悪いが、先輩&ジェリーモンの描写はしっかりしており、戦闘もすっきりと終わる。
第11話:カマイタチ ★★☆☆☆ ルリとアンゴラモンが喧嘩ができるほど仲良しだったことも、喧嘩の導入も納得できない。
第12話:不幸ノ手紙 ★☆☆☆☆ とどめを刺さない展開のせいで、ヒロ達が人命を軽視しているように見える。
第13話:処刑人 ☆☆☆☆☆ 二人の仲も真面目に描いていないのにとりあえずボコモンを死なせておけばガンマモンを闇堕ちさせられるという魂胆の、最低の回。
第14話:座敷童 ★★☆☆☆ ボコモンの扱いやガンマモンの死の理解度の扱いが雑で最低だが、一方でゲストの話を中心とした大筋は良い。
第15話:占イノ館 ★★☆☆☆ アンゴラモン進化はさておき、それ以外の事はこのタイミングでやる話か?
第16話:人喰ノ森 ★★★★☆ 今までになくシビアな設定で、恐怖の表情の描写も良い。そこで稼いでるだけ感はちょっとある。
第17話:極寒地獄 ★★★★★ 続けてシビアな設定で表情描写も良く、話も熱い。ただしパートナー入れ替え展開を受け入れられるか、第21話まででも屈指の害獣デジモンを受け入れられるかで評価が二分する。
第18話:子供ノ国 ★☆☆☆☆ デジモンがガチ変態(小児性愛者)でキモいのが気になりすぎて他の印象が残らない。
第19話:逢魔ガ時 ★★★★☆ 第21話まででも屈指のホラー描写が好印象を稼ぐ。それ以外はモヤっとしている。
第20話:炎ノ監獄 ★★☆☆☆ 重要回なのだが今までふらふらしてきたツケのせいでピンと来ない。戦闘は気合が入ってて良い。
第21話:蜘蛛ノ誘惑 ★★☆☆☆ 見やすい回だがオチが悪い。結局殺害を肯定してないか?

※ホラー展開が秀逸な回を高評価しがち

※「一話単体では好きなんだけど前後を考えられると褒められない」「流れは好きだけど無視できないほど倫理観がまずい描写が一部にある」で評価がバグってる回がしばしばある