灰色の本

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『デジモンゴーストゲーム』第48話「白イ花嫁」:感想

 『デジモンゴーストゲーム』第48話「白イ花嫁」の感想です。

割と良いほうの回だったんじゃないでしょうか。ただし、『カオス回』という方向でなら、ですが。

 

 

■全体が良作なら「カオス回」としてファンに愛される回

割と良いほうの回だったと思います。特に、最後あたりの展開がぶっ飛んでいて全部持ってかれました。

先輩の「ボクのキノコにケチをつけるなんて!」「(キノコを自分で食べて)うまいじゃないか!」は恐らく暗に下ネタを狙っていて『ゴーストゲーム』にしては珍しい攻め方をするなあと思いました(地味に「ボクのキノコ」のセリフを連発していた印象を受けました)し、キノコを食べたテスラジェリーモンのセリフが若干ラリった調子だったのも危ないネタという感じでした。

そもそも自分の身体に生えたキノコ(体からちぎるとダメージ)をもりもりちぎって生で食べ始める先輩はだいぶイッてます。キノコをむしられて惨たらしくのたうち回っていたメインメンバーの直前までの様子をガン無視した展開だったので「お、おいおい!?」となりましたが、勢いでそのまま釣り込まれて見てしまいました。カオスでしたね。普段の「制作スタッフは真面目にやってるつもりなんだけど無茶苦茶で、加害的・犯罪的」とは違って狙ったカオスさだと思えたので、良かったです。

いや、ドラッグをほのめかすよーなネタはとっても「犯罪的」ではあるんですが、ヤバいネタだってわかって描かれてるじゃないですか。『ゴーストゲーム』って侵入だの窃盗だのの犯罪を主人公達が自発的にしかも息をするようにやることが多く、それらの描写の大半は制作スタッフが悪さを自覚してるのかどうか分からないので……

 

あとはオチも初の展開でしたね。怪異の原因であるシャンブルモンとは別にゲレモンが横でうろうろしていて、倒されたシャンブルモンをかっさらうことを狙っていたと。怪異に手を下したくないばかりに危険なままで野放しにする展開がやたら多い『ゴーストゲーム』の中では、ブラックですが納得のいく終わり方でした。

 

いや、今回は良回だったと思います。

正確には、「良作の中で存在していたらファンに話のネタにされるカオス回(シリアスな笑い回、シュール回)」タイプに突き抜けていたと思います。ただ、「良作だけどあの回はカオスだったよね~」と言えるほど『ゴーストゲーム』全体が良作ではないのが困りものです。『ゴーストゲーム』全体が良作でもないのに単独で伝説として語り継がれるほどの回かというと、明らかに力不足です(それは要求しすぎですしね)。

 

 

■リョナリョナしい描写には引くが、ダメージ描写を頑張っていることには好感

もう一つ。これは相当好みが分かれると思うので、一概に良い描写とは言い切れませんが、個人的には評価したいことを……。

 

ダメージ描写が『ゴーストゲーム』屈指レベルで凄かった。

言ってしまえばすげえリョナくさかった。中の人の性癖くさいと思えるほど表現を頑張っていましたし、合わせて声優さんも熱演でした。絵が頑張ってるんだから熱演しないと絵についていけないんですよね。(いつもは「絵が頑張ってないから熱演もやりようがないんだろうな」と思うことのほうが多いです。)

 

いや……。

『ゴーストゲーム』、中の人にリョナ好きいるんですね……。

『ゴーストゲーム』のダメージ描写(グロ描写)ってだいたいやる気がないから、リョナ好きはいないんだと思っていました。今回はほぼ確実に中にリョナ好きが紛れてたと思います。なんならフェチくさくて変態くささすら感じました。ちょっと引いた。

 

日朝9時からリョナやるんじゃねえ。という意見はあると思います。ていうか俺自身がちょっとそう思う。

が、日朝9時からホラージャンルしかやる気が無い『ゴーストゲーム』(※)でダメージ描写が弱いのはやる気の無さの表れです。中に性癖がある人が新しく混ざったっていう話であってもダメージ描写の強化は歓迎です。……変態くさいからちょっと困りますけど。

(※)比較として挙げると、『鬼太郎』はホラー以外の要素もあるアニメという認識です。

 

一応言っておきますが、今回みたいなリョナリョナしいのを自分が個人的に見たいってわけではないですよ。リョナリョナしいことをやってほしいというわけでもないです。ただダメージ描写や恐怖表情の表現をまじめにやってほしいだけです。リョナくさくてフェチくさかろうとダメージ描写や恐怖表情の描写をやってくれたほうが、やらないよりはマシ。それだけです。

今は「直近の秀逸な恐怖表情表現」が第43話「赤目」や第46話「女王ノ晩餐」とそこそこ近い話数で存在するんですけど、それより前になると第37話「死霊ノ群レ」とか第27話「美妖液」じゃないかって気がするんですよね。『ゴーストゲーム』はホラージャンルなのに基本的に恐怖表情もろくにしてくれないアニメって印象です。

 

余談ですが、『ゴーストゲーム』って本筋がろくに存在せずに単発回ばかりやっているため、ある意味では特定界隈のニッチな人を呼ぶような性癖回をやろうと思えばばんばんできる作りではあります。今回の話なら寄生好きの人が喜んでいるのを見ました。グルスガンマモンを悪堕ち方面で捕捉している人もいるようです。開き直ってフェチ集合作品にすれば伝説にできる側面は無くは無い……ですが、まあ、イロモノをやるより先に王道(ふつーのこと)を頑張ったほうが良い気がしますね……

 

 

■花嫁ネタ×ルリという取り合わせはやはり持ち上げ回

ルリの花嫁姿は、想像していたとおり持ち上げでした。結婚式場に行ったら都合良くスタッフが声かけてきてウェディングドレスの撮影モデルにしてくれる。どうせその程度のことだろうと想像していたけれど引きました。ルリだけ「なろうチート」の酷いほうの作品みたいな御都合主義世界に生きてるんですよね。

なあ制作スタッフさんよ。昔の作った有用な表現のひとつ、「贔屓の引き倒し」って言葉知ってる?

 

まあそのせいでキノコ生やされて攫われて体から何度もキノコをむしられたのは可哀想ですが、今回は「何度もキノコをむしられて苦痛の悲鳴を上げる」というのは「リョナ趣味の文脈」(=キャラ萌えの発露の一種)という趣がありましたので……。キモっ……。リョナ趣味自体はまあ薄目で見るけど、ルリ持ち上げはキモ……。

 

一応言っておくと、最後のルリ&ジェリーモンのウェディングドレスカットは可愛かったですよ。別にメタ的に見たときにアニメキャラとして可愛らしいよねってことまで否定する話じゃないんです。もともと自分が『ゴーストゲーム』を見始めた理由はヒロとルリの(つまりやぶのてんや先生の絵の)素朴なかわいらしさに惹かれてですし。

ただ、アニメキャラがメタな視聴者目線で「可愛い」のと、作中で見ても「可愛い」のとは話が必ずしも同じではありません。更には、作中でも「可愛い」という評価のキャラであったとしても「可愛いからなんでも許される」「可愛いから都合良いことがなんでも起きる」のが良いかというのも別の話です。

ルリは制作スタッフが可愛い可愛いと持ち上げて作っていて本人の性格が追いついておらず、制作スタッフがちやほやして無批判なせいで結果的に害獣挙動が許されていたり、可愛いからという理由で都合良いことが起きてみたり、そういうところがすげーーーイヤ。

 

 

■他人を引きずり回しても便宜は図らない自分勝手なルリ

ルリの友達の結婚式だから先輩たちは誘われていない……とのことですが、ジェリーモンは行きたかったんですよね……。先輩とジェリーモンって割と離れて行動することも多いですよね……。ルリが便宜を図って、連れていくぐらいしてくれても良かったんじゃ……。普段先輩を無理やりいろんなところに引きずり回してるのに、全く気を回してくれない子です。

まあ、ジェリーモンははっきりとは言ってないですけど『先輩と』行きたかったのでしょうし、先輩は作業があるからもともと行きたくなかったのでしょう。その可能性は感じてますよ。でも、ルリは無慈悲だなあという感覚も消せませんね。

 

 

エスピモンの設定がちぐはぐしていて毎回引っかかる

エスピモンが場に参加してくれると声色だけでも場が明るくなって締まるので良いんですが、

エスピモンが何も説明なく一緒にいると「ホンモノヒロ探しはどうした。忙しいんじゃなかったのか」というツッコミが生まれる。

エスピモンが一緒にいることに説明をつけようとすると、周囲が渋るエスピモンを無理やり引きずりこんだという流れになる。

……ってんで、どっちにしても難がありますね……。

 

エスピモン自体は(食い物の盗難はしょっちゅうやってるみたいですが)善良なほうの、人間の倫理が分かるほうのデジモンなんですよ。今回だって、事件の発生を確認すると何も言わずに自分から手伝ってくれました。何故ヒロたちと一緒に結婚式を見物しに来ているのかという前提部分が分からないだけです。

前回の感想でも言及しましたが、エスピモンは簡単に「ちっしょーがねーなー」テンションで手伝ってくれる子なんですよ。だから、ちゃんと「ちっしょーがねーなー」で巻き込まれてくれるような筋書きを用意すれば良いだけなんですけどね。今までの回の参加率から見ると毎回参加させなきゃいけないノルマがあるキャラではないのですから(むしろ鳴り物入りで登場した割には参加話数がやたら少ない)、参加させる回ぐらい丁寧に導線を引いてくれたって良いんじゃないですか。

逆に言えば、雑にぽんぽん登場させたいなら「ホンモノヒロ探しで忙しいからあんまり手伝いたくない」という設定が邪魔です。「ホンモノヒロ探しで忙しいけど事件と聞くと野次馬根性で駆けつけちゃう」ぐらいの設定にしておくべきだったと思います。

 

 

■シャンブルモンが新規デジモンである意義が分からない

今回の怪異デジモン、シャンブルモンは新規のデジモンだとのことです。

 

あの。

真面目な話、『ゴーストゲーム』はそういうとこがダメだと思うよ。

なに、せっかく出した新規デジモンがこれって。


にわかデジモンファン(ファンというか、ただの視聴者だが……)ですが、流石に似たデザインのキノコデジモン(マッシュモン)がいることは知ってますよ。

けど過去キノコデジモンのデザインを流用したカラバリキノコデジモンを見て「新規だ」って喜べるのはコアファンだけなんですよ。

・『ゴーストゲーム』新規ファンはそもそも新規デジモンだと気づかない。
・にわかデジモンファンも多分既存デジモンと混同するので新規デジモンだと気づかない。(※筆者:グレイはここです)
デジモンのコアファンも、カラバリの似たようなキノコ増やされて喜ぶのか?

 

カラーバリエーションでローコストに新デジモン作れました、はそうでしょうね。けどそもそもカラバリしてまで新デジモンを作る必要あったんですか? わざわざ「デザインは流用だけど色を変えて新規デジモンにしました」という出し方をしてきたからには、恐らく既存デジモンであるマッシュモンだと何かの設定が都合悪かったんですよね。けど、既存のデジモンでもキャラ崩壊(設定崩壊)させて出してきたのが『ゴーストゲーム』だったはずでしょうが。なら、既存デジモンで十分だったんじゃないですか? 逆にカラバリしただけのローコストで新デジモンを出せるなら、他の回も既存キャラを崩壊させずにカラバリ新デジモンで良かったのでは?

 

 

■そのほか

OP、今さら思ったんですけど(厳密には前からぼんやり思ってたのを今さら明確に言語化するんですけど)。最後の、コンビごとに見せるカットあるじゃないですか。あれって結局ルリ&アンゴラモン組が尺の長さとしても曲調・リズムとしても一番良いところもらってるんですよね。曲との兼ね合いもあるから仕方ない部分もあるんですが、放送開始前から贔屓されてたんだなあ……としみじみ思います。

 

・今回、特に花嫁や結婚は関係ない話でしたね……時々ある、サブタイトル詐欺回です。まあサブタイトル詐欺自体はもう『ゴーストゲーム』のネーミングはそういうものということで良いんですけど、花嫁ネタや結婚ネタをこんな回で消費しちゃうのは好きませんね。まあ、今後そのネタを使う気がないなら良いですが。

 

・次回第49話はハロウィン回ですね。ハロウィン回をやる以上、例のカボチャ野郎が出るかどうかで『ゴーストゲーム』の態度が試されるところがありますね。第4話「人形ノ館」のパンプモン、ハロウィンの時期になったらまた遊びに来るみたいなこと言ってましたからね。さて、『ゴーストゲーム』公式は忘れてないでしょうか、ちゃんと思い出せているでしょうか。

といっても、カボチャ野郎がちゃんと出てプラマイゼロ、出なくてマイナスで、プラスにはならないんですけどね。流石に思い出せてて当然ですよ、そんなの。当然のことが当然にできるかどうかっていう話です。(これが「ま、まあ、この忙しさでパンプモン出してるヒマなんかねえな……」って納得できるような忙しい展開のアニメなら別ですが、『ゴーストゲーム』はオールタイム暇してるアニメですからね。)

※記事執筆の遅延で、この記事が投稿される頃には既に第49話が放送されているので追記しておきます。とりあえず第49話にパンプモンはちゃんと登場したとのことです。

 

・先輩のキノコを食べたシャンブルモンが何故体調不良をきたしたのか説明されないのは『ゴーストゲーム』のいつもの不親切設計ですね。何も考えてないのかもしれませんが、敢えて理由を探してみようとすると、「幸福からの急転直下の絶望」の花嫁のキノコは美味しい、という設定から推測するしかなさそうです。……先輩はずっと恐怖感情でいっぱいだったからイカレキノコになった? 普段からストレスフルだからイカレキノコになった? 何にせよ先輩のネガティブな感情のせいでイカレキノコになったとしか思われず、どんな解釈をしても先輩が可哀想です。

先輩は仕事は忙しいし、私生活もずっと故意害獣ジェリーモンに張りつかれてるし、ヒロルリにはパシられるし、そのくせピンチの場面ではだいたい誰にも助けてもらえないし、そのくせピンチになりそうな場所に引きずっていかれるし嫌がってても無視されるし……日々のストレスのせいでキノコがイカレたと考えるには十分な生活環境の先輩です。可哀想ですね。