灰色の本

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『デジモンゴーストゲーム』第37話「死霊ノ群レ」:感想③

デジモンゴーストゲーム』第37話「死霊ノ群レ」の感想③です。

 

 

長くなったので記事を①②③に分割しています。更に、肝心の『ヒロたちが事態解決に殺害という手段を選んだ』については①②③までを執筆した時点で言及していませんのでまだ増えます。

 

 

■ドーナツによる導入からして超展開

ドーナツを運んできてもらってお礼も言わない先輩が無礼だというのは置いといても、

①「遠方までドーナツ運んで来い」という意味不明な要求を受けてほんとに遠方の田舎まで赴くヒロ。

②遠方にドーナツ運ぶというクソみたいなおつかいミッションにわざわざついてくるルリ。

③そもそもヒロに頼む先輩。

 

全部が超展開すぎると思います。

 

①については、ヒロは確かに「頼まれると断らない」という設定はあるんですけど、実際の描写を見ると「頼まれごとを『断るとめんどくさいから』断らない」という描き方がされています。「頼まれごと自体のめんどくささ」が「頼まれごとを断ることのめんどくささ」を上回った場合は断るのです。

具体的には、第5話で「ジェリーモンをなんとかしてくれ(めんどくさい頼み事)」という「先輩(断るのがめんどくさくない相手)の頼み事」を断ったのが印象的です。第5話「神ノ怒リ」は先輩の仲間加入回であり彼にスポットライトが当てられた初めての回で、つまりヒロは最初から先輩をそうやって粗雑に扱っています。他の事例がぱっと出てきませんが、ヒロは先輩の細かい頼み事は結構断っている……というか、発言や提案自体を無視していることが多いと思います。

 

で、今回も、『先輩(断るのがめんどくさくない相手)』からの依頼です。

たかがドーナツを運ぶ仕事です。

交通費も時間もバカになりません。

多分、他に観光できる場所もあまりないところなのだと思います(例外はもちろんありますが、観光に良い場所ならだいたいのところは交通網がもっと整備されているわけです)(強いて言えば湖の眺めを楽しめる穴場的な土地という可能性はなくはありません)。

 

どう考えても「めんどくさい」です。しかも非常識な要求なので、断るのに心理的ハードルがあるとも思えません。ましてや、ヒロが普段から軽んじてる先輩相手ですよ。

絶対、断ったほうがめんどくさくないでしょ。

何故ヒロが断らなかったのか分かりません。どう考えても「断るほうがめんどくさくない」案件です。ヒロのキャラなら断るはずです。

 

 

で、そこに②なので更にワケが分かりません。

ヒロは本質的にめんどくさがり屋ですが、あくまで『本質』がめんどくさがりなだけなので表面上はマメによく働くキャラです。

しかしルリは本質的にも表面的にも堂々と自分勝手で、友達や仲間が困っていようとしたくないことは絶対しません。

 

軽んじている先輩のために?

ド田舎まで行って?

たかがドーナツを配達する?

ドーナツの配達自体はヒロにさせるとしても、何もないド田舎にわざわざやってくる?

 

やらないでしょ絶対。

 

ルリがやるわけないでしょ。強いて言うならドーナツを一緒に買いに行くまでしかやってくれないでしょ。(そして自分がドーナツを買ってフォトジェニックして自分で食べる。)

今回の事件は、「最近家畜がいなくなる(盗まれる?)ようになった」ということぐらいしか予兆が無くて、オカルト事件としては全く認識されていなかったんですよ。あの土地にはオカルトの面でも観光の面でも面白いものがないと思われるのに、ルリがなんで来たがったんですか?

 

 

③だけは若干言いがかりです。先輩がやたらとヒロを頼る(それこそパートナーのジェリーモンに頼る以上にひたすらヒロに頼る)のは今までちゃんと描写されているからです。その前提を知っていれば、先輩が今回もヒロに頼るのはおかしくありません。

その前提がワケわからんって言ってます。

だって、先ほども①で述べたとおり、ヒロは先輩に頼られたところで雑な対応をしているイメージしかないんですよ。ヒロ(ルリも)は先輩をずっと軽んじている描写があるんですよ。なんで先輩は未だにヒロなりルリなりに頼るんでしょうか。ワケわかんないです。ジェリーモンもとんでもないことに巻き込んでくるので全く信用できませんが、ヒロルリのほうがマシかって言われると微妙だと思います。

なんで先輩は特にヒロにべったりなの? 二次創作でBL層を沸かせることでも意識しているんですか? 別に二次創作の盛り上がりを狙うのは今どきの商業戦略としてアリ(実際に二次創作を歓迎するかは企業や制作の方針の問題)ですが、それならそういう小手先の技で狙うのではなくちゃんとキャラを描きこんでほしいものです。それこそ、感想記事②で言った通り、先輩が学校に通っているのか通っていないのか分からないみたいな基本設定からふわふわしているのを先にどうにかしてほしいです。尺は無駄にいっぱいあったんですから。

 

 

■フォトジェニックドーナツの絵は良好

「たかがドーナツ」と言いすぎてなんかドーナツに申し訳なくなってきた。言い訳を書いておきますが、あくまで「遠隔地にわざわざ物資を運ぶ。そのために宅配業者ではなく友人を使う」という異様に非常識な前提に照らして「ドーナツ(嗜好品)」はおかしすぎるでしょという話です。ドーナツは美味しいよね。

 

それに、どこか宇宙を思わせるきらきらした色彩のソースがかかったミラージュドーナツは、良い感じにフォトジェニックさと美味しそうな印象を両立した良い作画だったと思います。実物があったら買って食べたいです(アニメだからぎりぎり成立するケバめの配色なので、実物にしたらケバいんだろうなとは思いますが……)。

強いて言うなら、フォトジェニック過ぎて「これが先輩が好きなドーナツ? ルリが好きなドーナツではなくて?」という気はしましたが、まあ別に先輩が「奇っ怪なこの色!(※多分褒めてる)」と叫びながらフォトジェニックドーナツ食べても良いですよね。味も美味しいんだと思いますし。

『ゴーストゲーム』は何故か、本筋に関係が薄い小物や背景の描写は優れている気がするんですよね。本筋に関係がある描写になると何故か途端に下手になってくる印象が強いんですが、脚本が関わるものと作画班だけで完結するものの違いでしょうか……?

 

 

■ゾンビ知識の扱いが微妙

どうでもいいですが、ガンマモンにルリがゾンビのことを説明するシーン。

>「ルリ。ゾンビってなんだ?」

>「怪物。生きてる死体」

ゾンビを「生きてる死体」って表現するのは珍しい気がします。「動く死体」あたり、あとは最後のほうでルリ自体が言っていたとおり「生けるしかばね」あたりで表現することが多いですよね。特段意味がないセリフだとは思いますが、ちょっと面白いなと思いました。

これがルリのキャラ性や思考に基づいて「ちょっと変わった表現を使わせている」だったらすごく面白いんですけどね……もちろんそんなことはないのでちょっと切ない。

 

ジンバーアンゴラモンが「(ルリは)結構好きなんだ。ゾンビ映画と彼らしくもなくぶっきらぼうに、ぼそっと言ってるのが面白かったです。アンゴラモンのほうはゾンビ映画が好きじゃないのかもしれません。アンゴラモン、硬派な趣味をしてるからなあ。確かにエンタメ極振り血みどろゾンビパニックものなんかは好きではないかも……。

 

……でもゾンビが「怪物。生きてる死体」「噛みつかれると、噛まれた人もゾンビになっちゃうの」って、ヒロが「ルリ、詳しいな……」と言うほどの知識じゃなくないです? それぐらいは流石にオタクじゃなくても知ってるでしょうよ。それに、こないだ(ようやく)ルリ=オカルト好きって設定が明言されたでしょ? オカルト好きならゾンビを知らないはずないでしょうが……。

『ゴーストゲーム』は一応児童向けですから、ゾンビをまだ知らない子供向けに説明を加えること自体は良いと思います。赤ちゃんガンマモンに質問させることで自然に説明セリフを言わせるのも良いと思います。が、わざわざこんなしょうもないとこで、ルリを持ち上げなくて、良いです……。

 

……それとも、もしかしてヒロのほうが興味範囲外の知識が薄いということを指しているんでしょうか。『ヒロが』今どきゾンビが特殊知識だと思ってる?

>「ルリ、詳しいな……」

これまさか、『ヒロはゾンビについてルリほど詳しく知らなかった(=ほぼ無知だった)』って意味なんでしょうか? いや、まさか、そんな……。でも確かにヒロって、小説アニメ漫画ドラマ映画、その手のもの全部興味無さそうだよな……。

 

※なお、ジンバーアンゴラモンはヒロの「ルリはゾンビに詳しい(=普通の人はそこまで知らない)」という意見に違和感を持ってなさそうということが分かります。ジンバーアンゴラモンがヒロのセリフにツッコまずに「結構好きなんだ。ゾンビ映画とさらっと話を続けていることからです。

が、知識枠の一人であってもデジモンである彼の『人間界の常識』は信用ならないので、ヒロの発言の意図を推測する材料にはなりません。ましてや今回は「ゾンビの概念が一般の人間のあいだでどこまで有名か?」という話です。設定上多数の人間とは交流できないアンゴラモンには推測不可能であると思います。

 

 

■地味に優秀な動きをしている先輩の描写が良

先輩が砂漠疑似デジタルワールドを見てヒロが疑似デジタルワールド化機能を使用したと見抜いていたのが良かったです。まあ、そりゃ知ってて当たり前なんですが、「誰がどの疑似デジタルワールド化機能を所有しているか」ってあんまり話に出ないので……。

 

※けど、こんな長文クソ感想書いてド真面目に『ゴーストゲーム』を見ているイカレブログはさておき、普通の視聴者は「誰がどの疑似デジタルワールド化機能を所有しているか」なんて覚えてなさそうな気がします。だとすれば、先輩が「ヒロが疑似デジタルワールド化機能を使った」と見抜いたシーンは意味が分からないものだったかもはしれません。「これは天野河君の……」で止めずに、「これは天野河君の砂漠フィールド……!」ぐらいまで言えば良いのにね。

 

しかし、ヒロたちが疑似デジタルワールド化機能を発動して一般人を逃がしていても、先輩は一般人と一緒に逃げることができないのがあらためて悲惨で可哀想だなあと思ってしまいました。ジェリーモンのせいでデジヴァイスなんか装着する羽目になってしまったがために、疑似デジタルワールド化の際に取り込まれてしまうんですよね。先輩は何一つそんなこと望んでなかったのに。可哀想。

 

今回、先輩は可哀想な役回りですけど、やってることは地味に優秀なんですよね。

砂漠フィールドから「やったのはヒロ」と見抜いたり。

ちゃんと敵を一旦ダウンさせて隙を作ってから橋を落としたり。

怖いのにちゃんと敵を観察していて、レアレアモンの中にあるガスボンベに気づいて「引火させて倒そう」と提案したり。

 

普段の回でもなんだかだ優秀なことが多いのに、全く評価されない。ほとんどの回で、虐げても良いコメディキャラとしてしか扱われないのです。

そんな悲惨な扱いの中で、今回、彼が言ったとあるセリフだけがひどく印象的だったのですが……これはレアレアモンの殺害の件に絡んできますので、後発の別記事に回します。

 

 

■先輩の怯え表情は良好だが、先輩の怯え表情に頼らないとホラーらしくならない厳しさ

最近はホラーとして鳴かず飛ばずな回が多すぎて言及していませんでしたが、今回の先輩の怯え顔は良表現でした。活きが良かったです。

 

『ゴーストゲーム』は相変わらず、先輩が怯えてくれないとホラーらしくならないんですよね。あんまり比較はしたくないのですが、『ゴーストゲーム』を見ていると『鬼太郎』などの先発作品の基本フォーマットが優れていることが改めて分かってしまいます。例えば『鬼太郎』なら、熟練の妖怪ハンター(※正確には調停者の立ち位置だと思います)で自らも妖怪である主人公・鬼太郎が怯える必要はないんですよ。ゲストの人間が怯えてくれればそれでホラーっぽくなるから良いんです。更には、鬼太郎はもともと戦闘力もメンタルも強めの存在で、鬼太郎の成長が物語の中で大きなウェイトを占めるということは少なめです(※全くないわけではありません)。

それに対して『ゴーストゲーム』は主人公が(たまたまデジモンを見ることができる機械を持った)一般人です。ゲスト回でない限り、他に怯えてくれる人はいない(いてもモブ程度)ので、一般人である自分たちが怯えないといけません。それなのにヒロ(とルリ)が基本怯えないという時点でおかしいのですが……仮にヒロ(とルリ)がちゃんと怯えるキャラだったとしても、一般人である彼らは「成長」もしなくてはいけません。怯えないとホラーっぽくならない。だからといっていつまで経っても怯えていると「成長しないのかこいつら」になる。この時点で、構造として相当厳しいのです。……実際にはヒロルリは最初から怯えないので逆の意味で「こいつら成長しないのか(これだけ怪異に出会ってていまだに死の危険の緊張感すら感じないのか)」なのですが……。

 

ヒロルリが怯えなくてホラージャンルらしくする仕事をしない。そのぶんを先輩にカバーさせているのは……まあ「先輩がカバーに入るかどうか以前にまずヒロルリが怯えない時点で根本的に設定がおかしいのでは」という疑問に目をつぶれば、正しいと思います。先輩も先輩でいつまで怯えてるんだという印象はなくはないのですが、怯えないヒロルリの不自然さと比べればどうでも良いんじゃないかなと思います。

先輩が怯えた表情を見せてくれると、『ゴーストゲーム』はとりあえず一応はホラージャンルなのだと思うことができます。このまま怯え続けてもらうべきでしょう。……彼が「前よりも比較的怯えなくなる」という成長を見ることができない(その成長をさせてしまうと作品からホラージャンルらしさが大きく削がれてしまう)というのが悲しいところですが。

 

いやあ、ほんと最近『ゴーストゲーム』をホラーとして見る意欲と感覚が薄れてきてるんですよね。一応ホラージャンルだと思ってるから、ここが怖い怖くないって言及していたんですが。

そうだなあ、直近では第34話「壁這ウ者」のヤモリ人間なんかはキモチワル怖かったけど、「今自分はホラージャンルを楽しんでるんだな~」と思えるほど真っ当に怖かったのなんて第19話「逢魔ガ時」ぐらいまで遡らないと無いですからね……。

……いろいろ言いましたけど、今回も、褒めたのは「先輩の怯え顔の表現が良かった」という部分だけです。別にホラーとして面白い回ではないですからねえ……。

 

 

デジモンは相変わらず害獣で、仲良くする動機が無い

「またデジモンか~!」みたいなセリフがちょいちょいありますけど、ここまでデジモン大暴れ事例を見てるんですからさっさとデジモンだという前提を仮置きしてひとまずそのつもりで動けっていう話ですからね。怪異の原因がデジモンじゃないという例外事例のほうがよほど怖いんですから、怪異の原因がいつものごとくまたデジモンだった程度でいちいち騒がないでほしいです。

でもここまで害獣デジモン大暴れフェスティバルを見てるんですから、ヒロたちにデジモンと仲良くしたいと思う動機なんて無いようなものですよね。パートナーやボコモンなどの善良なデジモンのほうが例外すぎます。……いや、パートナーたちもアンゴラモンぐらいしか善良じゃないと思います。ジェリーモンはド直球に害獣なので言わずもがなですし、ガンマモンも赤ちゃん赤ちゃんして可愛い見てくれなだけで、やってることは赤ちゃん赤ちゃんした破壊魔です。

 

 

■『殺害という解決法』については別記事にします

今回の目玉である、ヒロたちが故意に敵デジモン(レアレアモン)の殺害を決めてガンマモン(カノーヴァイスモン)が殺害したというシーンですが……。

すみません。考える時間をくれ。否定的な感慨しか浮かんでこないとは先に明言しておきますが、ちょっと言及の仕方を整理する時間をください。

ただでさえレアレアモン殺害以外の言及だけで16000字ほど書いてて時間食ってて大変なんだよ(バカ)。

おそらく世界で一番ゴーストゲームのために文字数を書いている自信がある……。対抗が出てきてほしいもんです。いやほんと、他人の真っ当なしっかりした感想が読みたいんですよ、肯定でも否定でも良いから。『ゴーストゲーム』の他人の感想がなさすぎてせめて自家発電して欲求満たすために感想ブログ始めたやつのブログですよここは。

 

 

■そのほか

・モブ動物の作画は良かったと思います。けどな! イノシシさんたち(と他の動物たち)は悪くないやろ!(泣)

ただ襲われるだけでもとばっちりなのに、襲われる描写がグロテスクで可哀想でした。ゾンビたちによって目の中に手を突っ込まれたり(※体内に侵入して操る意図)とか……。

たとえホラージャンルであっても(他のジャンルであっても)犬などの動物が死ぬのは耐えられないという層はいるらしく、動物が死ぬ描写があるかどうかが事前に分かるネタバレ情報などは一定の需要があるそうです。もしそういうネタバレ情報を書くなら、今回の話は動物死亡描写アリ&グロ注意、ですね。

 

「これじゃミーのリゾートが台無しさ! ユーたち! 他行って!」

その理屈で怪異に突っ込んでいけるジェリーモンは活きの良い害獣だなーと思いました。別にまだお前のリゾートじゃないし、お前の所有土地でもない。好き。(笑)

 

・枚数が多かったわけではありませんが、今回はジンバーアンゴラモンがちゃんと格闘の動作をしていました。良かったね。

 

・不意打ちでのゾンビの登場に深刻な悲鳴を上げたルリが、変な顔でキックして自分でピンチを脱しているのに苦笑してしまいました。自力でどうにかするのは良いですが、もうちょっと見せ方っていうもんが……。噛まれると一発アウトなのにルリから目を離すような隊列を組んでいるジンバーアンゴラモンや、十分ルリの状況が見える位置にいたのに動いていないジェリーモンがしょぼく見えますし。

 

・今回そんなこと言ってる場合ではないってのはそうなんですが、アンゴラモンはラモールモンに進化することで明らかに知能が退化することに抵抗や葛藤はないんでしょうか。自分なら絶対嫌ですが。普段から結局は「オレ ルリ マモル!」しか言ってないから別に良いんですかね?