灰色の本

アニメ他の創作作品の感想とか。更新がある日は、22:00に予約投稿します。

MENU

『デジモンゴーストゲーム』第29話「妖花粉」:感想②

デジモンゴーストゲーム』第29話「妖花粉」の感想②です。

 

長くなったので記事を①②に分割しています。

①は先輩とジェリーモンに関連する話です。②はそれ以外の話です。

 

 

■説明していないものを使う悪癖が出ている

>岩のフィールドとか使わないさ?

迷子の結菜ちゃんをどうやって迷子センターに連れて行くかの話のときの、ジェリーモンのセリフです。

 

このセリフ自体が「結菜は疑似デジタルワールドに連れて入れないのにどういう提案だよ……」なんですけど、もっと根本的なこととして、

『先輩のカード=岩フィールドの疑似デジタルワールドを展開する』って説明、今までにありました???

 

えっ……あった? あったっけ? 知らんがな!

あったとしても『岩フィールド』が重要な話じゃなかったでしょうが! 単に疑似デジタルワールドを展開しただけの話でしょうが!

んなの覚えてねえよ! 知ってる前提で『岩フィールド』って呼び名で出すんじゃねえよ!

 

かと言って当ブログで使っている『疑似デジタルワールド』『疑似デジタルワールド化機能』という呼び名も、第14話で先輩が「なるほど! それが疑似的なデジタルワールドの正体か!」と一回言っただけなのを引いているだけなので、作中では一回もそんな呼ばれ方をしていません。視聴者の大半は全く覚えていないと思います。

制作側が、作品内の現象や機能に固有名称を付けることを怠っているのです。なので先輩のカード固有の『岩フィールド』どころか、より包括的な『疑似デジタルワールド』すら公式では指す言葉がない状態だったのです。

 

それをいきなり、「疑似的なデジタルワールドを展開する機能のことも、先輩のカードが岩フィールドを展開するカードであることも知ってるよね?」みたいなノリで『岩フィールド』って出してこないでほしいんですよ。知らねえですよ。出てたとしても覚えてねえですよ。

 

※第27話「美妖液」のとき、ヒロのカード=砂漠、ルリのカード=雪原の疑似デジタルワールドを展開するという違いを覚えていなくて「ヒロはなんで雪原を出すのにルリに頼ったの?」と混乱している方も見かけました。

俺はこんな長文記事書いてるような輩なのでこの二人のカードは覚えていましたが、通常の視聴者は恐らく覚えていて「ヒロのカード=砂漠(※第17話「極寒地獄」でセリフで言及される)」だけだったと思います。それすらかなり昔の話です。第27話「美妖液」時点で「ルリのカード=雪原なのね」と分かっても、「他のキャラのカードは何を呼び出せるんだっけ?」な人のほうが大半だと思います。

で、俺は、先輩のカード=岩はマジで覚えてねえ……出てたかどうかも思い出せねえし、出てたならどこで出たかも全く思い出せねえ……。

 

この件については後日、別の記事を立てて更に言及しようと思います。

 

 

■多趣味設定に足を引っ張られているヒロとルリ

今回はヒロとルリも別にいなくても構わない立ち位置でしたね。ヒロに「地下道に詳しい」という謎趣味、謎知識が加わっただけです。

 

ヒロは……多趣味&博学&マルチスキルなキャラ自体は別に良いんですが、基本的なキャラ付けが不安定なままでそういう設定ばかり足してしまうと、『器用貧乏』という印象ばかりが強くなるうえに肝心のキャラ本人の印象はぼやけていくので考え物です。多趣味設定って、言い換えれば「これが絶対好き!」という部分で強烈な個性が発生する可能性を投げ捨ててるっていうことですからね。

 

「ぴったり探し」といういつまでも進行の気配がないことをやっていて結果的に多趣味状態のルリもそうです。ルリの場合はヒロと違って納得できるまでやってすらいない(すぐ飽きている)ので『器用貧乏』にすらなりませんね。自分探しふらふらガールです。

 

念のため繰り返し言いますが、多趣味キャラや多方面の趣味に対応できるマルチスキルキャラが悪いのでも、「好きなものがない」ことが悪いのでもありませんよ。他の掘り下げが放置されていてキャラの印象が深まっていない状態の中で『多趣味&マルチスキルキャラ』だと余計に印象がぼやけるよね、と言っているのです。

 

 

■貴方の街のまあどちらかと言うとまだ良いほうの害獣、トロピアモン

今回の怪異の原因、トロピアモン。

人間を襲撃する意図で怪異を起こしていたわけでもなく、最後には人間がいるところではもう花粉を出さないことも約束してくれて、比較的良いほうのデジモンでした。

 

害獣には変わらねえけどな。

人間とデジモンの感覚が違うといえ、「君たちの花粉は人の身体に良くないんだ! 今後は誰もいない場所で頼むよ!」と言われて「分かった」と答えたならさっきまでその花粉をまき散らしていた=人間に迷惑をかけていたことも分かるだろうに、一言も謝ってはくれないし。

仲間に見つけてもらうために盛大に花粉をまき散らしていたこと自体は理解の余地があっても、そこらを徘徊するコドクグモンに自分の毒を渡して援助する理由はなかったはずなので、やっぱり根本的に害悪寄りの存在(自分の猛毒がまき散らされて人間に被害が出ようと知ったこっちゃない)だろうと思われるし。

 

どさくさに紛れてコドクグモンはお咎めなし……というかお咎めを食らう前にさっさと逃げ出しました。

 

 

■「不遜クラゲ」という、妥当だがモニョる暴言

アンゴラモンが毎度のポエムの中で、ジェリーモンを指してこう言います。

不遜クラゲ、と。

 

ふうん。不遜クラゲ、ねえ。

 

①よく言ってくれたアンゴラモン。よくぞ俺達の気持ちを代弁してくれた。

②いや、制作スタッフ。ジェリーモン=不遜クラゲだと分かってるんだったらもっとちゃんと丁寧にバランス取りをしろよ。ふざけてんじゃねえぞ。

③「不遜クラゲ」だと思ってるのにジェリーモンがやることを止めないアンゴラモンはそれはそれはカスでは。普段は行動を注意することもなく放置して『仲間』をやっているジェリーモンに、「不遜クラゲ」と突然暴言を吐き始めるアンゴラモンはそれはそれでカスでは。

ジェリーモンは『不遜』どころの騒ぎじゃねえ。

 

 

■影響が残る怪異と影響が残らない怪異の差とは?

デジモンの怪異の悪影響が、デジモンが去っても残り続ける(=回復させる手段が必要になる)のには渋い顔です……。

 

今回のように人間に被害を及ぼす意志自体はなかったデジモンが原因でも自動回復しない。

第24話「歪ンダ愛」のように原因のデジモンが死んでも自動回復しない。

じゃあもっと凶悪な連中が、改心せずに逃亡したのに、被害者たちが勝手に回復したのって何故なんですかね……。

 

この件については第24話「歪ンダ愛」の感想のときに書いたので、そちらも参照してください。

 

haiironohon.hatenablog.com

 

 

 

■使い捨てられた「花粉」という良アイデア

今回のサブタイトルの「妖花粉」だけどさあ……。「花粉」に「妖」をつけときゃサブタイトルになるだろ! っていう強引なタイトル付けの割には、そんなに……本筋じゃないですよね……。

 

今回の怪異の大筋って、「黄色い濃霧=花粉」ではなくて、「(閉じ込められて孤立した中での)毒蜘蛛」のほうですよね。花粉は『閉じ込め』に利用されただけで、先輩たちは花粉それ自体には大して立ち向かっていないんですよ。

ジェリーモンは「出るなって言われると出たくなるさ。ダーリン、見に行くさ!」と外に出たがりましたが、先輩は責任感から「その前に迷子センターです!」と主張して意見を通したので、先輩達は濃霧(=花粉)の様子を見にすら行っていません。更には、花粉は疑似デジタルワールド化機能だけで消滅させることができました。先輩たちが花粉に困ったという内容ではありません。

なんだか、本筋と全然関係ないサブタイトルである気がします。

 

今回の黄色い花粉は「吸いこむと口から緑色の火のようなものを吐いて倒れる、強烈な猛毒」でした。

本当に引火しているのか人間の呼気などと反応してそう見えるだけなのか分かりませんが(効果音などから判断すると多分本当に燃えている可能性が高いとは思います)、そのビジュアル設定は非常に優れていたと思います。ビジュアル的に分かりやすく、かつおどろおどろしく恐ろしい設定だったので感心しました。

 

また、黄色い濃霧を見て、中の人(グレイ)は「この描写の雰囲気は……ペルソナ4がイメージ元か……?」と連想しました。

ペルソナ4は「原作はゲーム作品である」「怪異を大きなモチーフにはしているが、ばりばりのホラーものや妖怪ものではない」などの事情の違いはありますが、黄色い濃霧(とその関連設定)だけで一年分の物語を作っています。

 

何が言いたいかって、毒蜘蛛騒動と絡めなくても単独で1話分の話を作ることは十分可能なネタだったのではないか? と言いたいのです。『口から火を吐いて倒れる恐ろしげな猛毒』にもっとしっかりフォーカスされた話を見たかったです。ちょっともったいない。

 

 

■そのほか

・ゲストキャラである迷子の結菜ちゃんだけどさあ。他のキャラとキャラデザが全然違って見えるんですよねえ。もうちょっと整えられなかったんでしょうか。あんまりにもオタフク顔すぎるのが悪いんだと思うんですけど、もうちょっとこう、バランスというか、どうにかできなかったんですかね。

あと、いくら「迷子になるような子供」だからといって、頭身が低すぎないか? と思いました。『ゴーストゲーム』のリアリティラインとズレている気がします。

 

・地下道にいたアイツ。エリスモン。デジモンにわかでも知ってるぞ。なんかこう、デジモンスマホゲーで主役級みたいに扱われてる……みたいな……なんかそんな感じの子(※漠然とした知識)だろ? だからこう、結構、扱いとしては『目玉』というかそんな子だろ?

……いなくても別に構わないし、どんなデジモンがやっても構わない役割でしたよね? 良いの? 声の演技も正直『ザ・モブ』って感じでしたし……

 

・エリスモンは、前半の出番ではホログラムゴースト状態、終盤の出番では実体化状態で登場します。別に問題はないっちゃないですけど、何の意味もなく変更しているなら雑だなあとは思います。

 

・気になったので再視聴して確認しましたが、第18話「子供ノ国」で先輩が見ていたアニメは『魔術探偵エルフバスターズ』。今回、迷子の結菜ちゃんが見ていて先輩は「僕まだチェックしてなかったな……」と言っていたアニメは『アカデミックバスターズ』。別物ですね。

『魔術探偵エルフバスターズ』と『アカデミックバスターズ』、『バスターズ』が共通していますが、同一シリーズではないのでしょうか? 『エルフバスターズ』に激ハマりしていた先輩が(ジーニアス=アカデミックバスターズのキャラ名と分かる程度の情報はちゃんと得ているのに)同一シリーズの現行作品をチェックしていないのも不自然なので、別物なのでしょうか。

 

「これ、デジモンの仕業だったりする?」前半、高所から新宿濃霧怪異を見下ろすルリの言葉。

前回も言ったけど、推定は妥当でも言い始めるのが遅い。今もう第29話だぞ。デジモンによる怪異を今回含めなくてももう28回も見てるでしょうが。とりあえずデジモンの仕業だと推定して動いてくださいよ。というか、そうだと思ってるからわざわざ工事現場的なところに不法侵入して濃霧の確認してるんでしょ?

……え? もしかしてルリ、「デジモン事件だから私たちが動かなきゃ」って意志じゃなくて、もしかしてもしかして単に野次馬に行ってるの????? 工事現場に不法侵入(例によってホップステップ犯罪)してまで?????

 

・コドクグモンは人間の『データ』を狙っている。ほう。なるほど。……『エネルギー』、ではなく?

デジタルワールドにいるわけではない、データ化しているわけではない人間の、『データ』を狙っている? ……正しいんですか? それ。

ていうか話の流れ的にも、吸ってるものは恐らく『エネルギー』ですよね。二重の意味で言葉のチョイスががさつではないでしょうか。そもそも『データ』ではないだろという意味と、「話の流れ上、データと表現するよりエネルギーと表現するほうが伝わりやすいよね」という意味と。

 

・コドクグモンは本来毒を生み出せないはず。コドクグモンに毒を与えて力を貸している何者かのところへ行って毒を手に入れ、血清を作らなくてはいけない。なるほどね。

……そのぉ、与えられた毒を保有しているコドクグモンから毒を手に入れれば良いんじゃ……ないかなーと……。まあ、流石にこれは野暮なツッコミでしょうね。

 

・今回は限凸状態が解除された素の状態で先輩が奮起することが重要だった回ですが、ここでそれをやると、今後の限凸の意義が薄まりますよね。限凸状態が無意味になるとまでは言わないものの、「通常状態←→限凸状態」のギャップは以前より弱まると思います。

まあ、やや懸念ですがそれ自体はどうでも良いです。けど、ここで限凸状態の設定を弱めてしまうなら、第22話「悪夢」で「僕のこの力(限凸状態)はなんだろう……?」的なフリをしてたのは何だったんでしょう。今後回収されるかもしれないので保留ですが、もし制作スタッフが第22話の前振りをこれで回収した気になってるんなら駄目駄目です。