灰色の本

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『デジモンゴーストゲーム』第37話「死霊ノ群レ」:感想②

デジモンゴーストゲーム』第37話「死霊ノ群レ」の感想②です。

 

 

長くなったので記事を①②③に分割しています。更に、肝心の『ヒロたちが事態解決に殺害という手段を選んだ』については①②③までを執筆した時点で言及していませんのでまだ増えます。

②は先輩周りの話です。先輩の設定も、データセンター勤務というネタも、ドーナツも全部疑問点しかないです。

 

 

■先輩の暮らしぶりが(少なくとも直感的には)矛盾している

先輩の普段の生活が全く分からないので、「データセンター勤務していてしばらく寮に戻っていないらしい(恐らく近くに社宅でもあってそこを借りて生活しているのでしょう)」「修学旅行はどうするんだと先生が気にしていた」と相反する情報を畳みかけられても良く分かりませんね……。説明が少なすぎます。

これが先輩の生活についての説明(先輩の掘り下げ)のつもりなんだったらもっと真面目に説明をすべき、かつ序盤に説明すべきだったと思います。……いやまあ、『ゴーストゲーム』はだいたいの描写が「遅い。もっと序盤にやるべき」になっちゃうんですが。必要な他の説明のために序盤の尺を使い切ってしまっていてカツカツだったんです……というなら別に良いですが、『ゴーストゲーム』はエブリデイ&エブリタイムで暇してますからね。尺が無いという言い訳はできません、単にやっていないだけです。

 

真面目に言及すると普段の先輩は、仕事をしているにしても「リモートワークメイン。ときどき出張」ぐらいだと思います。それも、通常の9時5時の仕事ではないでしょう(IT企業が9時5時出勤固定っていうイメージもありませんが)。もっと悠々と時間的に余裕がある暮らしをしているように見えるので、時短の仕事……でもないですね、スポット参戦的な仕事(高い技能が求められる代わりに高給取りなタイプの派遣契約とか)なのではないかと思います。

先輩の実力なら、わざわざド田舎のデータセンターに足を運ばなくても仕事はよりどりみどりだと思います。それこそ、ヒロなんかにドーナツを運んできてもらう必要がないような近所の勤務先を選べるはずです(恐らく東京住まい、そうでなくてもその近辺の住まいであるはずですし)。もちろん、今まで恐らくそうしていたと思われる通り、完全在宅案件だって選べるはずです。

 

それと、これは設定が元々おかしいのを今までわざわざはツッコんでこなかっただけなんですけど、そもそも「日本の学生になって学生寮で寮長をしたい」という先輩が「だが学校自体には通っていない(ヒロが学校に行っているあいだガンマモンを預かっているというか押し付けられている)」のは直感的にはおかしい設定ですよね。「あくまで『寮長』がしたいだけだから学校生活には興味がない」という意図なんでしょうが、学生生活が伴わない『学生寮寮長』っていったい何なんでしょうか。

でも、先輩は第1話で「学校では先輩、学生寮では寮長と呼べ」という趣旨のことを言っているんですよね。先生は先輩が修学旅行に参加できるのかどうかは気にするんですよね。

 

意味が分からない。先輩は不登校児(本来は学校に通うべきなのに通っていない)ってこと? 既に飛び級をしているような子で寮長がやりたいだけらしいから学校側は不登校を気にしていない(不登校を認めている)、ってことじゃないんですか?

 

学校に行ってるのか行ってないのかすらよく分からなくなった気がします。

ひとまず「ヒロが学校に行っている日中は先輩がガンマモンを預かっている」という設定を優先して「先輩は学校に行っていない」と仮定してもう一度まとめなおすと、

・学校に行かない『学生寮寮長』というのも不自然な気がしますし、

・先生が修学旅行に行くかどうかを気にしているのも不自然です。

・(修学旅行に行くことが不自然ではない状況と仮定して)修学旅行に行きたいと考えているのに突然に田舎のデータセンターでの仕事を入れて、長期間学校に通えない状態を自分から選択するのも不自然です。

・教師から直接修学旅行の話を聞かれるのではなくヒロから又聞きする=「特殊な事情があり登校しない子or登校日数が少ない子で、保護者も同居していない子なのに直接連絡を取り合っていない」というのもかなり変です。

 

なんだか全部が全部かなり変です。

直感的には矛盾しています。

実際には細かい設定があって実は矛盾していないんだよという可能性は無くはないです。でもその説明がなされたことはありません。

きちんと尺を使って説明しろと思うものの、本当に説明されたところで多分どうでもいい設定なので、尺を使って説明したところで虚無なんだと思います。ていうか何も考えてないだけだと思います。

 

や、設定を何も考えてないのは今さらすぎるので別に良いんですけど(良くないですが)、「これ書いちゃうと前の設定となんとなく矛盾するよね? 変だよね?」ぐらいのことも考えないんでしょうか? 今回のこれは、かなり分かりやすい粗だと思いますが……。

いや、最初から先輩の設定がなんとなく矛盾しているから、「矛盾の上に矛盾を重ねても今さら気にしない」or「矛盾した設定のうちどの設定を認識して優先しているかが脚本家によって違うだけ(脚本家個人の中の優先設定に準拠すれば矛盾していない)」のかな。……監督あたりがダメ出ししないもんなんでしょうか、と思いますが、ダメ出ししない監督だから「先輩は学校に行っているのか行っていないのか」という基本的なレベルのことがふわふわしてるんでしょうね……。

 

 

■データセンターも、在宅ではなく田舎への出社勤務を選ぶ先輩も全部変

……そもそも。

・修学旅行や学校の話題に触れること。

・今回の舞台がド田舎のデータセンターであること(先輩がそこに仕事で出向いていることがきっかけになって事件に巻き込まれること)。

これら、必要でしたか? どちらも必須の要素ではなかったと思うので、どちらかを外すだけで矛盾がなくなったと思いますが。

 

いやね、普通の創作作品で普通の筆力がある作品でなら、こういう細かいセリフでキャラの情報量を増してくれることはありがたいんですよ。でもこれ、脚本陣にそんな筆力が無い『ゴーストゲーム』ですからね。そんな細かいセリフで矛盾点を増やすなら言及しないでほしいですし、細かいセリフでキャラ描写する前にちゃんと尺を使ったところでキャラ描写をしっかりしてくださいという話です。

 

更に言えば、今回「田舎のデータセンター」が舞台になったのって、データセンターよりも『田舎』に重点置かれてますよね。ヒロたちを田舎に呼び出したかったから、田舎にデータセンターを置いて、先輩がそこで働いていることにした。そういう順序ですよね。

でも、世界的企業のデータセンターが日本ド田舎にあるって……そんなもんなんですかね? 無くは無いと思いますが……。日本って地震頻発国で、データセンターを置くにはだいぶリスクがあるんですけどねえ。(日本国内でも地震がない地方には需要があります。)

 

……もうひとつ、ついでに言えば。先輩の頭脳は天才レベルであるはずです。第17話「極寒地獄」のときのように「この発電所のシステムは僕が作ったものでね! 僕がメンテナンスする必要があるんだよ凄いだろう!(意訳・要約)」みたいなスケールの話なら、天才(高い技術を持つ技術者)がやるべき仕事なのは分かります。

今回の「データセンター勤務でプログラミングに従事」は何故そこに先輩が呼ばれたのか(何故先輩レベルの技術者が必要だったのか)は言及されませんでした。先輩の職務内容が重要な筋ではないのでそれ自体は別に良いのですが、通常のIT労働者に混ざって同じようにデータセンターで働いているのはちょっと違和感がありました。しかもへろへろになるまで働かされてる。先輩ならもっとホワイトな職場も選べるでしょうに、何やってんだ?

データセンターなのでサーバと思われる機材がたくさん設置されているのは間違っていないですが、物理的に機材のド真ん前でタブレットをつついているというのも妙です。「プログラミング」のために呼ばれた先輩が「タブレット」で作業しているのはまあまあ一般的ではありません。

 

※ちなみに、「IT企業なのにリモートワークできない」こと自体は、実際の機械を動かさないといけない分野では有り得ます。データセンターというのは機材が物理的に大量に存在する場所なので、実地でないと不可能な仕事(機材の動作チェックとか)があること自体は自然です。何故先輩がその仕事をやっているのか、という不自然さには目をつぶる必要がありますが。わざわざ高技能な技術者である先輩をスポットで外部から呼ばなきゃいけない機材 is 何。

 

↓これはものすごく脱線です

……全然関係ないんですが、第17話「極寒地獄」について言及したら、第17話の冒頭で一瞬だけ先輩の説明をきらきらした尊敬の目で聞いていたヒロの描写を思い出してちょっと凹みました。あのときの、きちんと他人に敬意を持てるヒロはどこへ。いや、「先輩に敬意がある(ように見える)」描写のほうが例外なので、むしろ第17話のあの描写のほうがキャラ崩壊しているのですが……。

ただ、第17話の時点ではやや首を傾げる描写だった「先輩の発電所説明を嬉々として聞いている」については第29話「妖花粉」で「小学生の頃は廃線巡りツアーに良く行っていた」という設定が追加されたことで、建築物・建設業またはインフラ設計などの方面への興味もあるということで多少落ち着いた気がします。ヒロの雑学知識の範囲は自分の手で日常に使えるもの(一人暮らしで寮の食堂らしきところで食事を取っている様子なのに各種の調味料が揃っていたり凝った料理を作っていたり、自分で手を動かしてピッキングしたり、一人キャンプに行ったり)というところに偏っている印象だったので「発電所」はやや浮いている印象でした。

↑ここまで脱線です

 

 

■先輩が、キテレツ変人キャラというより単純に無礼

前提(上述した内容)がむちゃくちゃなので既にどうでもいい感じもするんですが、先輩のドーナツのシーンやその前後の描かれ方にも「ええ……」と困惑です。

先輩に突然ドーナツ好き設定が沸いてくること自体は先輩はそういうトンチキ天才キャラなのでまあ良いと思います。が、

 

・前振りもない突然のドーナツ好き設定によって、ドーナツを運ばせるためだけに普段の居住地からかなり遠方と思われる田舎(わざわざ宿に泊まらないといけないような距離)にヒロを呼びつける。

・遠方から来てくれたヒロに、一番に声をかけるでもなくお礼を言うでもなく、ドーナツを強奪する。

・「天ノ河くん、これ、揚げたてじゃないね……」と無理筋な文句を言う。

・(ドーナツを宅配してくれたヒロ(やルリ達)について、お礼を言うシーンもなければ謝礼を渡すシーンもない。交通費も宿代も発生しているし、時給という考えも無視できない時間を使わせているだろうに。ここは「そんなのアニメ上では削られただけ」と言えばそれまでですが、削るシーンの取捨選択がいつも温かみがないです。お礼を言うシーンがあってしかるべきなのに削られていることがやたら多い気がします。)

 

このあたり、変人天才キャラというより、常識が欠落した無礼なキャラという印象のほうが強くて見ていてキツいです。もともと常識無し無礼タイプの変人天才キャラなら良いのですが、先輩は「電車の中だから」という理由で電話に出なかったこともあるという常識人として描かれていたはずです。

いやまあ……ううん……「魔法」と称してジェリーモンにドアをこじ開けさせて他人の家に強引に押し入ったこともある(第18話「子供ノ国」)ので、常識人と言い難いと言えばそうなんですが……でもそれは多分スタッフの倫理観がないだけで、制作スタッフ的には先輩を常識人キャラと描いているつもりだと思うので……。

ああうんごめんなさい。書いてて気づきました。いつもの通り、制作スタッフの意図(先輩=常識人キャラ)に対して制作スタッフの倫理観が追いついてないだけの案件ですね。はい。