灰色の本

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『デジモンゴーストゲーム』第33話「死霊ノ囁キ」:感想②

デジモンゴーストゲーム』第33話「死霊ノ囁キ」の感想②です。

 

 長くなったので記事を①②に分割しています。

 

■医者を任せておけない倫理観のマミーモン

感想記事①で、「デジモンでマミーだからほんとに人でなしなマミーモンさんは良いんですけど……」とは述べました。

だってそりゃあ、デジモンですもの。人の迷惑も人の命も顧みず暴れまわる害獣スタイルがデフォルトな蛮族ですもの。ぶっちゃけデジモン達って、人間のことを「ていのいい食べ物」と思ってる連中はまだマシなほうで、「俺たちのための歯車」とか「叩いたら変な液体を出してつぶれて面白い虫」とか思ってますもん。

デジモンであるマミーモンさんが人間の感情の機微に疎くて無神経な発言をしたって仕方ないというものです。

 

けどさあ。

>まだ未完成でな。投与すると、生きているか死んでいるかわからぬ状態になる。
>しかも、なぜか逆に極度に興奮して……ふふふふふ……。

ニンゲンだろうとデジモンだろうと医者として治療したい、守りたいと考えているヤツが『実験段階の』『飲むと強制的に臨死状態になる』薬を「お前の言ってることが本当かどうか、証明するチャンスだぞ。もう一度臨死体験を」という変な煽り方(やや脅迫のようなニュアンスも混じる言い方※)で飲ませようとするって、凶悪すぎるだろ。それつまり『飲むと強制的に臨死状態になる』=死ぬ可能性がある薬を先輩に飲ませて実験台にしようとしているわけですが。

※「証明すれば良いだろう?」という言葉は、暗に「証明しなきゃ俺は信じないorヒロ達は信じない」というニュアンスを含んでしまうので脅迫に近い言葉になってしまいます。更には今回の場合、その証明の方法として勧めている方法が『死ぬ可能性がある薬を飲む』なのであくどすぎます。

更には、細かいことを言えば「飲んだところで外野のヒロ達に何を証明できるのかよくわからない」気がするのですが……?

 

マミーモンさん、もしかして、医者としての職業倫理はお持ち合わせではいらっしゃらない? それとも人間とデジモンでは、『医者としての職業倫理』すら非常にかけ離れた別物になりますか?

 

■久々に良く動く、良戦闘回

戦闘は、『ゴーストゲーム』にしては良く動いていてとても良かったと思います。敵をきっちりボコる回なので爽快感もありました。

 

ジェリーモンはデフォルトで空を自在に飛べるキャラであるがためか、動作にいちいち回転(横回転も縦回転も)を挟む傾向にあり、それだけで動作が見栄えするんですよね。

戦闘の手数も多く、最初の先輩回収&頭突き→進化→スピリットブーメランをはじく・はじく・回避・回避→舞い上がってからの急降下キックで破壊→フィサリストでKOと、豪華に8手もありました。しかもそれぞれがちゃんとよく動いていて見ごたえがありました。

……カノーヴァイスモン初進化回とか、しょっちゅう戦闘不参加&参加できても手から波動ビームばっか撃ってるアンゴラモンさんにその枚数回してあげれば良いのにね。

 

 

■ピッコロモン&マミーモン&ベツモンのクズキャラ大集合回

ベツモンの再登場がウザかったです。何しに来たんだ。バクモンとかコエモンといった比較的まともなほうの友達キャラはろくに再登場しない中で、こんなクズキャラに爆速で再登場されるとウンザリします。

マミーモンも正直医者スキルが優秀なだけで、安全性や効果が確立していない治療法を試したがるマッドサイエンティスト気質だったり、状況がはっきりしていないときに患者や周囲が過剰に怖がるようなセリフ回しを好んで言いたがったりと倫理観がトんでるクズという印象があります。今回はピッコロモン&マミーモン&ベツモンというクズキャラ再登場祭りだったことになりますね。マミーモンは流石に、クズキャラとしては作中での格がかなり低いですけど。

 

一応真面目に言っておきますとね、ベツモンはね、恐らく『マミーモンに先輩の治療をさせるため、人間の病院に搬送されてしまった先輩を人間の医者や看護師に感知されない部屋に担ぎ込む』目的でクロックモン経由で派遣されたんだとは思うんですよ。説明不足で視聴者の善意脳内補完に甘えてるなあとは思いますけどそれぐらいはまあ察しても良いですよ、それぐらいは分かっても良いですよ。

だから何?

え、それで疑問点を潰した気になってる? んですか??

そのレベルの疑問点を潰すなら、「何故マミーモンが病院内の部屋(と思しき場所)を陣取って治療できるのか」とか「何故クロックモンはヒロたちの窮状をさっさと察せたのか」「何故クロックモンは迅速にベツモン手配までしてくれてるのか」とかも気になりますけど???

説明なしの「こまけえこたあ良いんだよ」のゴリ押しでマミーモンが病院内の部屋を使ってたほうが俺はツッコミ入れたがったとは思うけど逆に気にならなかったと思います。

 

 

■久々に冴えていたのは良いが、また無駄に自己犠牲に走りたがるヒロ

「電話がつながったから、先輩はまだ帰ってこられる範囲の場所にいる」と主張するヒロは珍しく冴えていて良かったです。このぐらい冴えてたの、第1話で栗の木を急成長させたときぶりぐらいじゃないですかね?

(ちまちました冴え描写は忘れたころにちょこちょこ挟まれて死にかけで息をしていましたが、ここまでクリティカルに冴えてたのは第1話ぶりぐらいであるような気がします。)

 

でも、普段は雑に扱ってる先輩のために死にかねない薬をいきなり摂取しようとし始めるのはダメですね。

「普段から先輩と仲が良い、大事に思っている」も「自己犠牲するようなシーンじゃなくても普段から他人を守りたいと望んでいる」も描写が足りない……というか無いので、ただ単なる自己犠牲スキーの人です。ずっとずっとずっと指摘しているとおり、自分を大切にしないセルフネグレクトタイプの人間です。

もっと直接的に言いましょうか? 直接的にナイフで手首を掻っ切らないだけで、自傷的な行動を選びたがる人間です。

 

制作スタッフがヒロを「自己犠牲さえ軽々と選んでしまう優しい人間」と描きたいなら、英雄的な自己犠牲シーンばかりに着目せず、もっと足元を見たほうが良いです。普段のシーンのヒロは特に優しくもないめんどくさがり人間(断るのがめんどくさいから仕事をするだけの人間)ですから、『自己犠牲を選んでしまう優しさ』を描いてもそこだけ浮いていて、信用できません。

 

 

■死者の霊・死後の世界との境目というアイデアで、ボコモンは出ない

うん……

期待なんかもうしてなかったんで、もう逆に今更どうでもいいっちゃいいんですけど……

 

死者の霊・死後の世界との境目っつーアイデアで、ボコモン先生が再登場したりは……ないんですね。はい。どうでもいいですね……。

 

デジモンにわかのマジで素朴な疑問として、デジモンって死ねばすぐにデジタマになっちゃうんじゃなかったんですっけ? 死亡からデジタマ化までのタイムラグのあいだに魂の状態はあるかもしれませんけど、『デジタマにならずにさまよう魂』ってあるんですか? 今回の話って、セピックモンはそういうデジモンの死後の魂と仲良くしてきたという前提の話ですよね? デジモンシリーズの死生観とは矛盾しないんですか?

……てーか、デジモンシリーズ全体の死生観と矛盾しているかどうかというより、『ゴーストゲーム』で今まで説明されてきたデジモンの死生観設定と矛盾するような気がするのが気になります。

 

 

■そのほか

・薬の効果。「生きているか死んでいるかわからぬ状態になる」はさておき、「極度の興奮状態になる」はなくても全然構わないムダ設定だったような気がします。デメリットがあるわけでもなし、興奮パワーアップ設定なしでセピックモンを圧倒したってたいして変わらなかったんじゃないですか。

ていうか「生きているか死んでいるかわからぬ状態になる」も「極度の興奮状態になる」も、おどろおどろしい設定なわりに実際にはデメリットが無さすぎる気がします。

 

・完全に参っている先輩に、自分にとっての『最強』であるチョコをあげて元気づけようとしているガンマモンの様子はガンマモンにしては珍しく良かったです。

残念ながら、その先輩の部屋でピッコロモンとチョコ絡みの喧嘩をして嚙みついたせいでピッコロモンが部屋を爆発させるきっかけを作ったことでプラマイゼロという感じですが。

 

・自動運転車が広く普及している舞台設定を利用して、「自動運転システムを乗っ取って先輩を事故死させようとする」は秀逸なアイデアだったと思います。そういう近未来舞台設定とデジタル要素を掛け合わせたネタ、無限にくれ。

 

・クソどうでもいいですが、バイタル正常な相手に電撃かますとむしろ心停止して死ぬ可能性があると思います。ジェリーモンは普段からバイタル正常な先輩に電撃かましまくってるので、ほんとにクソどうでもいいですが。

 

・目覚める気配がない先輩に、ヒロが「先輩……いや、寮長……。」と言い換えた心の機微がマジでわかりませんでした。

え、ヒロ的には呼称の敬意度合いは「先輩<寮長」だと思ってる……? なのに一貫して「先輩」のほうで呼んでたの……? 酷くないですかね……?

※なお、先輩当人は確か「場合によって呼び分けろ」という面倒くさい要求をしていたはずです。つまり、先輩当人はどちらの呼称が上だとも下だとも思っていないはずです。めんどくさいこと言ってくるだけで。

 

デジヴァイスが装着者の生体エネルギーで動いているのはなんとなく分かっていましたけど、そこから変換してスマホ動かしたりできるんですね。

①便利ですね。発想が良い。

②また例によって唐突だな。この設定、どうせ次に使うことはないんでしょ?

③「異界に飛ばされているからスマホが動かない」&「特殊なデバイスであるデジヴァイスなら動く」というのは分かるけど、「異界に飛ばされているから動かない」スマホが電力供給さえしてやれば動くというのはどういう理屈じゃ。

 

・先輩(inこの世とあの世の境)との電話が切れた瞬間、何かわからないかとアンゴラモン!」と呼び掛けるルリの描写は良かったです。こういうさりげない絆描写を毎回やってくれ。

 

・セピックモン、霊場である恐山に放逐エンドって。

①まあそりゃ自分(中の人:グレイ)は良い年してるんで意味ぐらい分かるんですけど、ちびっこに恐山ってどれだけ通じるんですかね。例によって説明不足です。

②恐山だからって放逐していいの? ちゃんと今回の件の何がダメだったか、何なら良いかってことを言い聞かせたんですか? 言い聞かせた内容を聞くようなデジモンだとどうやって保証できるんですか?

 

・なんなんですか、最後のアンゴラモンワイプ。本編の出来が良いならシュールギャグで流すんですが、本編の出来が悪いのでサムいです。

 

・『ヒロのデジモン調査ファイル』というミニコーナーが始まりましたが、ちょっと引いちゃいました。

①まずボイスで一番肝心の「デジモン」部分を飛ばして「ヒロの調査ファイル」って言うな。

②コミカル雰囲気すぎて引く。本編でシリアスとコミカルがまともにメリハリつけられてないのにこんなコミカル絵柄でやられると、作品全体の雰囲気をどうバランスを取ろうと考えてるのか分からなくなる。まあね、『ゴーストゲーム』はもともとED曲で唐突に「キミのことひたすらにぶっちゃけ惚れていた♪」って歌わせるような作品なんですが……。

③キャラ同士でわいわいさせるという意味ではもっと早く思いつけ。ただでさえ本編で仲良くしてる描写が少ないんだから。

④例によってルリの先輩いじめをやるぐらいならやるな。いつもと同じで情報量が少ないのに『悪い』描写を無駄に増やすな。