灰色の本

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『デジモンゴーストゲーム』第33話「死霊ノ囁キ」:感想①

デジモンゴーストゲーム』第33話「死霊ノ囁キ」の感想①です。

久々に良いホラー回だったのですが、本筋以外の要素のフラストレーションが酷い。

 

 長くなったので記事を①②に分割しています。

 

■本筋の大ネタは良く、久々の良ホラーだが……。

先輩の担当回はシナリオに恵まれており、比較的見やすい傾向にあると思います。……シナリオに恵まれているというか、素直に「キャラ自体が分かりやすく、見やすい」ので釣られてシナリオも見やすくなるだけだと思います。

もっと言うと、先輩が良いというよりヒロ&ルリが出張る回がヒロ&ルリのキャラの見にくさに釣られてシナリオも見にくくなるんだと思いますが。

 

今回も、本筋はなかなか良かったと思います。

臨死体験をきっかけに聞こえ始める声。

先輩を死に引きずり込もうとする声の不気味さと、その声が指し示すとおりに起こり、先輩の命を奪おうとする数々の怪異。

この世とあの世の境、現実世界によく似たゴーストタウンを、命の危険を感じて怯え、隠れながら逃げ回る先輩。

姿を現した怪異・セピックモンについには先輩はつかまり、「まだ死にたくない」と泣きながら川へ――死者が渡る三途の川へと引きずられていく……。

 

最近はもう『ゴーストゲーム』をホラー観点から「今回は怖い」「今回は怖くない」「ああだ」「こうだ」と評することも忘れていましたが、久々にしっかり怖かったです。

 

特に、個人的にはセピックモンのセリフ&声が状況にピッタリでとてもよく活きていたと思います。

舌っ足らずで幼く可愛らしいけれどどこか淡々とした声で、意味はあるけど絶妙に分かりづらいという不気味なセリフ回しで先輩に語りかけ、悪意が感じられない様子でころころと笑う。一方で、突如幼さが抜け、すっと冷徹にのみ声を響かせる瞬間もある。

(やっていることは殺人で迷惑という言葉で済まされないレベルだけど)決して悪意はない、自分がしていることの恐ろしさに自覚がないセピックモンのキャラに対して、セリフ回しも、声優さんの演技(と声優さんへの演技指示)も最高だったと思います。

 

久々に良いホラー回でした。

死の可能性があることを踏まえて生死の境に飛び込み、ジェリーモンが先輩を助けに来てくれる→バトルで圧勝という展開も久々に爽快感があって良かったです。

 

が……それ以外の要素のフラストレーションがひどい。

 

 

■ピッコロモンが最悪

普通にピッコロモンが再登場して引きました。そりゃ確かにピッコロモンのほうは友達だって言ってましたが、「ピッコロモンのほう友達だって言ってただけ」なんですが……。

で? ピッコロモンが「未来のガンマモンはすごいっぴ~」とか言ってたの、詳細を聞き出したんですかねこの野郎。

 

ただでさえもともと印象が最悪なピッコロモン再登場。初手から他人のもの(ガンマモンのチョコ)を食い散らかして先輩の部屋で暴れまわって爆弾爆発させて先輩を死なせかけて「まったく……よわニンゲンっぴ♪」と当然のことのように罵倒文句を吐く、と印象最悪です。

えっ、そんな理由で死にかけて、そんな理由で今回の怪異が始まるんですか? ひどくない? ジェリーモンが電撃で起こしてくれたから(ジェリーモンが電撃で起こせる程度の臨死体験だったから)良かったものの、もうピッコロモンなんざ袋叩きにして箱詰めにしてユーバーテイルモンに叩きつけてデジタルワールドに島流ししたほうが良いですよ。

しかもピッコロモン、ほんとに部屋を爆破しかけた&先輩を殺しかけただけで出番終了ですし。先輩が先んじて疑似デジタルワールド化して現実世界への被害を防いだだけで、爆破したこと自体は事実ですし。もともと底辺の好感度をさらに下げるために来たのか?

 

 

■ガンマモンの所業は、ピッコロモンと比べると目立たないが……

ピッコロモンのほうが明らかに悪いので情状酌量の余地は多分にありますけど、対するガンマモンもいきなりピッコロモンの羽に嚙みつき始めるのでまあ悪いです。

ガンマモンはヒロの「ものをかじるな」という言いつけすら守れないのでヒロの教育が何も効果がないのは察せますが、とりあえず「暴力で解決しようとしない」という精神は育っていないようです。グルスガンマモンに進化する素養があるのもうなずけます。

 

あと、ピッコロモンを先輩の部屋に招いたのは誰なんでしょうね?

先輩は渋りそうですし、ジェリーモンもめんどくさがりそうです。

となるとガンマモン自身が遊びに来たピッコロモンにOKして招き入れたか、ヒロが口添えしたかということになるのですが……どちらであっても、自分で対応できないのに先輩(とジェリーモン)に対応を押し付けていて酷いですね。いつものことですが。

 

 

■先輩ラブを忘れたジェリーモンの態度もひどい

ジェリーモンもジェリーモンですよ。電撃は先輩を叩き起こすという一種の治療目的だったので一応とりあえずなんとか目はつぶりますけど、ピッコロモンの所業を「やりすぎさ!」で済ませるんじゃありませんよ。

ジェリーモン、先輩好き好き超愛してるキャラのくせに、先輩のピンチにガチ切れしてくれることが異常に少ないんですよね。

 

しかしまあこれは、ジェリーモンが悪いというより、制作スタッフがギャグで先輩を命の危険に晒しまくるのが悪いんです。制作スタッフとしてはただのギャグ描写だからジェリーモンもまともに取り合わない。制作スタッフの意識が狂っているだけです。

最も、だからといって、ジェリーモンの印象が悪くならないわけではないのですが。だいたい、「ジェリーモンは悪くないんだ、制作スタッフが悪いだけ」と頑張って唱えればジェリーモンの『マイナス』は無くなるかもしれませんけど、それでは『ゼロ』になるだけで、『プラス』にはなりません。

 

更には、死にかけた、死にかけてから謎の声が聞こえると訴えている先輩に

>誰もいないさ、空耳さ。

>死にかけたってのも気のせいさ。じゃ、行ってくるさ~♪

と突き放す言葉を投げかけて、放置してさっさと出かけてしまいます。もともと先輩は何かが起きる前から怯えているタイプのキャラで、ジェリーモンは勝手に外を遊び歩いているキャラで先輩の静止なんか聞くキャラではないというのはそうなので、正しいと言えば正しいキャラ描写ですが、本気でやばい事態になっているという先輩の訴えをジェリーモンは検知してくれません。

 

『ゴーストゲーム』って、割といっつもそうですよね。「俺たちはパートナーだから」という絆描写のためにはご都合主義があんまり発生しません。脚本を動かす都合のためのご都合主義のほうが強いので、常に競り負けます。

 

後半で死の危険がある薬を投与して先輩を助けに行ってくれたのは本当に良かったんですけどね……何故前半の態度がぐだぐだなんでしょうね……。

(前半であんな態度なのに後半で命を賭けて先輩を助けに行ってくれるのは、ある意味『絆描写のためのご都合主義』ではありますが……そういう意味じゃなくてもっとエモい展開をするために絆ご都合主義は使ってほしいです……。)

 

 

■先輩もジェリーモンに頼らないし、誰にも頼れない

ジェリーモン側が上記の体たらくだから仕方ないんですが、先輩も先輩で、ジェリーモンには一切頼りません。この世とあの世の境から「スマホで電話する」先がスマホを持っているヒロなのは仕方ないですが、電話に出たジェリーモンが「ダーリン!」と呼び掛けても「ジェリーモン様ぁ~!」と泣きつくことはしません。何故か一貫してヒロに助けを求めます。

 

改めて思えば、人数だけはこんなにいるのに心情的に頼りになる相手が一人もいない先輩は本当に可哀想ですね。今回は最終的にはジェリーモンが奮闘する回で、(前半は見なかったことにするとして)最終的には一応ジェリーモン→先輩の思いの強さを描く回です。なのに、先輩本人はほとんどジェリーモンに着目していないように見えます。

>ダーリンは全部、全部、ぜ〜んぶ、ミーのものさ!

ジェリーモン本人はハイテンションのどさくさでこんな可愛らしい(支配欲も強いですが)言葉を言っているのに、先輩のほうはジェリーモンが駆け付けたあたりから終始ぽかんとしていて、ジェリーモンが助けに来るとは思っていなかったのではないかとすら思えるような顔をしています。あまりにぽかんとしているので「助かった……!」という反応すらできないし、ジェリーモンにも最初に「ジェリーモン様……」とぽかんと呼びかけたあとは彼の側からはまともに会話もしていません。

 

先輩本人はヒロに頼りがちですが、ヒロが頼れるかというと……。

 

 

■メンバーのだいたいが人でなし

>ルリ「ほんとに死にかけたの~? ただの寝不足じゃない?」

>マミーモン「(先輩の必死の訴えを聞いて)ふふふ、面白い」

>ヒロ「(マミーモンが鎮静剤を先輩に投与するという話の流れを聞いて)興奮? ……ああ!(※先輩が無駄に興奮しているから鎮静剤でどうにかする、という意味で納得して笑いながら)」

全員人でなしか?

ビビリの先輩の発言を「大げさだなあ」と取りがちになってしまうのは分かるけど、人でなしか?

 

まあ、デジモンでマミーだからほんとに人でなしなマミーモンさんは良いんですけど……。

前に第23話「ウメク蟲」に登場した時だって、要約すると「調べてみないと何も分からん」ぐらいの話を無駄に恐怖を煽る言い方で伝えてきたようなやつですし。マミーモンはデジモンどもの中では比較的マシなだけで、精神的にはやっぱり害獣ですからね。

 

ヒロとルリは、なんでこんなに一貫して冷たい態度、嘲笑的な態度を取れるんでしょうね。今までのデジモン事件の数々を考えると、命の危機を感じて多少怯えるのだっておかしくないでしょうに。先輩は何も起きていないうちから怯え始めるビビリではありますけど、今回のように既に『何か起きている』ならそれは正当な怯えでしょうに。

 

なんか、ヒロとルリの性格って、現実的(現代的)に設定されているのに現実的じゃないですよね。何言ってるのか分からないって? つまりね、

『怪異が起こらない』現実日本社会になら結構いそうな、(やや美化した)凡人なんですよ。

趣味すらふわふわしてて、これといった特筆すべき点がない一般人なんです。例えば一部のRPGが、プレイヤーが自身を投影しやすいように敢えて無個性寄り(でも各種能力が平均点よりは上)に整えている主人公キャラのような。

ちょっとのらくらっと生きてて、例えば身の回りで事件が起きても(それは人生の中ではあくまでイレギュラーケースなので)逃げようともせずにスマホ取り出して「すげー」って言いながら動画撮っちゃうような。それを即座にSNSにあげちゃうような。

 

そんな平和ボケしてて危機感がなくて、

でもとりあえず自分が生きている半径数キロ圏内は実際に平和なのでそんな平和ボケした態度が一概に間違いでもなくて、

正しく平和を享受して平穏に生きている、

平和ボケが許される社会の人々。

事故や事件に巻き込まれて命が脅かされるときは常に不意打ちの悲劇という、ごくごく一般的な人々です。

 

けど『ゴーストゲーム』ってそんな話じゃないよね!?

怪異は頻発しまくってて『不意打ちの悲劇』なんかじゃなく「次もまた何かあるかも」程度は予想可能なのに、なんでヒロとルリは未だに事件発生の可能性があっても他人事な態度のままなんでしょうか。デジヴァイスを手に入れてデジモンのパートナー(※パートナーという言葉は作中で使用されていないので厳密には不明)もいてデジモンによる怪事件にも頻繁にかかわっているのに、なぜ未だに凡人と同じような危機感のなさなんでしょうか。

現実的でない怪異が跋扈する舞台なのに、いつまでも『現実にいそう』な良くも悪くもふわふわしたキャラ(創作っぽいキャラ個性が確立していないキャラ。この場合は『怪異に命の危機を感じて対処しようと勇気を持って立ち上がる』なども『創作っぽいキャラ個性』に入ります)をやっているのでちぐはぐ感がすごいです。

『怪異が起こらない』現実日本社会になら結構いそうなキャラ、って言ったけど、こんな気軽に軽犯罪をしまくるキャラが現実日本社会に「結構いる」と判定するのもおかしな話なのですが……。まあ、今は犯罪の話はしてなくて、命の危険に対する危機感の話だったので……。

 

中盤以降は事の深刻さに気が付いて全員まともに動こうとしてくれました。ですが、初動の遅れの結果として、先輩がまた臨死状態まで持ち込まれて殺されかけました。ヒロ&ルリ&マミーモン、あとジェリーモンは全員先輩に土下座して謝るべきだと思います。

(まあジェリーモンは、普段の素行の悪さはさておき今回は身を挺して先輩を助けに行ってくれたので土下座までしなくても良いかもしれませんが、謝るのは謝るべきだと思います。)