『デジモンゴーストゲーム』第19話「逢魔ガ時」:感想①
『デジモンゴーストゲーム』第19話「逢魔ガ時」の感想①です。
ホラー演出は非常に頑張っており、個人的には高く全体的に見ると要素がとっちらかっており、ピンと来ない回です。
今回、分割すると中途半端になるのでちょっと迷ったんですが、やはり長いので記事を分けています。
※初見直後に感想を書いていますが、初放送から時間をおいた段階での視聴となっています。
■ガンマモン☆はじめてのおつかい大作戦!←必要だった?
『はじめてのおつかい』回です。
「わざわざおつかいを今やり始めた意味わかんねーな……まあ今回の話を展開させるために重要で、仕方ないんだろうな」と首をひねりながら見ていたんですが、最後まで見ると特に関係なかったのでビビりました。
おつかい展開、不自然だったわりに特に意味なかったことないですか?
今回のピッコロモンの怪異ですが、
・発生時間帯は『逢魔が時(夕方の一定の時刻)』。
・場所はランダム。
・対象となる人も元々はランダム。ただし、ピッコロモンがデジヴァイスのことを聞いて興味を持ったため、ヒロ達3人に狙いを絞った。
・1人でいようと複数人でいようと関係なく襲撃される。
こういう感じです。
つまり、ガンマモンが『はじめてのおつかい』をしていたことは、怪異とは何も絡まないんですよね。ガンマモンが通ったルートがトリガーになったとか、ガンマモンが一人でおつかい→ヒロも単独行動を取っていたので狙われたとか、そういうことではないんです。
なんか、雑だなあと思います。
全く関係ない2つの事柄が同時並行で動いていても別に構わないでしょって?
いやあ……それを言うには、『はじめてのおつかい』というシチュエーション設定自体が不自然すぎませんか?
・ガンマモンが一人で外に出たがる。なんで? どんな心境の変化? 確かに最近ちょっと成長してきたぽくは見えるけどなんで突然……
・デジモンであるガンマモンが一人で外出したいというのに対し、人間社会の買い物行為をやらせようとする。なぜいきなりハードルをどかんと、しかも斜め上の方向に上げる? しかも、『一人で外出したい』って普通は『一人で自由に外に出たい』だと思うから、『おつかいを命じられたい』にはならない気がするんですが……
・ヒロが乗り気でガンマモンの『はじめてのおつかい』計画を立てる。おまえそんなことするほど積極的なキャラやったっけか、もっと合理的な淡白な性格という印象があるんだけど……。確かに最近はガンマモンを可愛く思っているように見えるシーンも増えてきたけど……。
・お店の人にはガンマモンのことはホログラムだと言っている。←ホログラムゴーストは物体に触れても、ホログラムは物体に触れない=商品を受け取れないと思うのだが……
・逢魔が時=かなり暗い夕方におつかいに行かせる。ガンマモンの安全のためにもガンマモンを見張りやすくする意味でも、お昼とかにしなさいよ。ガンマモンが何かで手間取ったり道草食ったりしたら夜になるじゃん。
・そこまでして『はじめてのおつかい』をガンマモンが遂行したところで、デジモンであるガンマモンに今後人間社会での買い物をする機会があるのか? させる気なのか?
・ガンマモンがグルスガンマモンに突然進化して暴れまわる可能性のこと覚えてる? ガンマモンが1人でのおつかいに成功したとして、それで今後ガンマモンから目を離して1人でお出かけさせて良いかって言うと駄目だよね?
この怪異って、逢魔が時に外に出ているだけで巻き込まれることが可能だよね? 脚本としてはそれだけで済むよね。
なんか、不自然じゃないシチュエーションは他になかったの?
いや……うん。『困ったら大声で俺(パートナー)の名前を呼んで』を引き出したかったのは分かりますよ。それがないと今回の怪異を打破できませんでしたからね。うん……。
やっぱり、他になんかやりようなかったの? 『はじめてのおつかい』なんていう不自然なシチュエーションじゃなきゃダメだったの? 逆に、『はじめてのおつかい』を最終的に題材として選んだなら、もうちょっと丁寧に違和感を消せなかったの?
■逆に、『はじめてのおつかい』をここで使ってしまって良かったのか?
(※『はじめてのおつかい』については、子供が本気で頑張ったり本気で困って泣いたりしている姿を見て楽しむ、つまり子供の頑張りを搾取して楽しむ趣旨はいかがなものか……と個人的に思っていますが、そういう個人的な考えは脇に置いておきます。)
逆の観点なんですけど、今回の話、『はじめてのおつかい』ものとしてはあんまり面白くないよねって思いました。
ガンマモンのどたばた珍道中や、危なっかしいガンマモンのおつかい風景にはらはらする保護者ズの一喜一憂が描かれてないんですよ。最終的にガンマモンが意外としっかりしてておつかいをやり遂げたとか、一人で泣きそうになったけど頑張って克服したとかで「成長してたんだね」と分かる……みたいな話もありませんでした。
『ゴーストゲーム』はホラージャンルであって子育てほのぼの日常アニメじゃないんだから、そこに焦点が当たらないのは当然なのかもしれませんけどね。この回で『はじめてのおつかい』ネタを消費しちゃったのは、もったいないなあと思います。
ホラージャンル×『はじめてのおつかい』題材という取り合わせなら、前半をひたすらほのぼのさせた後に急転直下でホラー展開にさせればギャップでより怖くできたんじゃないですか?
関連して、今回の『逢魔が時』の赤いライティングは非常に怖いんですけど、1話通してずっとその怖い赤色なのがちょっと惜しいかなとも思います。
・お昼設定のほのぼのおつかいシーン(通常のライティング)を入れてから、
・帰っている最中に時間が経って逢魔が時になり(ここから赤いライティング)、
・そのまま怪異に巻き込まれる。
という流れのほうが際立った気がします。
■また要らんこと考えるルリ
先の話題に関連して。
今回の『はじめてのおつかい』はルリ提案だそうです。
クソッ! またルリのせいかよこの害獣め! ルリのせいでまた不必要に怪異に巻き込まれて危険な目に遭うだろルリ反省しろ! ルリ本人は酷い事態を引き起こすことは分かってないだろうけど、これで何回目だよ畜生!
……とめちゃくちゃ思ったのですが、先述したとおり、『はじめてのおつかい』は怪異との遭遇フラグでもなんでもなかったのでフクロウのごとく首を傾げました。今回はルリの強引な提案は何も関係なく怪異に巻き込まれたので、ルリは悪くなかったです。ごめん。
……でもさあ、
・ルリが強引かつ適当な提案をして、
・ヒロがその提案に巻き込まれor自分から乗り、
・先輩がパシられる。
……久々にこの定型パターンに帰ってきてしまいましたね。『ゴーストゲーム』1クールで頻発していたダメ定型です。最近のルリ、害獣らしさを出さずに大人しくしてたのにね。
今回は敵デジモンが『人間は楽しんでいると誤解していた』ケースなのも含め、初期っぽい味付けですね。初期の誤解ケースは誤解を解いて改心していたのに対し、ピッコロモンは誤解自体は解いてないし改心もしてないのが酷いですが。
■アンゴラモンさんの解説キャンセルの良し悪し
アンゴラモンさんが『逢魔が時』についての説明をしているあいだに横のルリがさらわれるという展開にはびっくりしました。本当にすぐ横にいるのに、たまたまアンゴラモンさんがルリではなく夕暮れ(逢魔が時)を見ていたこと、そして怪異に助けを求める声を阻まれたことで気づくのが遅れる。ハラハラする意味で怖かったです。
解説中に急にさらわれてしまうというのは地味ながら意外性があって良かったのですが、一方で悪い面もありました。
『逢魔が時』の説明が中途半端になったため、今回の話で言うところの『逢魔が時の怪異(ピッコロモンが引き起こす怪異)』も少しボヤけてしまったように思えたのです。
『ゴーストゲーム』は、公式としては『新感覚ミステリー』とも言っていますが、基本的にはホラージャンルだと思います。ホラージャンルでは、必ずしも怪異の全貌が解き明かされる必要はありません。今回の話も、全貌がはっきりしないから不気味だと思えるところはありました。
でもなんか、『怪異について』という観点に限れば、第19話まで見てきた中で一番消化不良に感じました。怪異の発生条件(発生ルール)が説明不足すぎるように感じて。
あと、ピッコロモンが何故『逢魔が時』に怪異を起こすのかもよく分かりませんでした。デジモンの元ネタを知ってると分かるんですかね? ていうかピッコロモン自体、どんなキャラかよく分かりませんでした。いつもどおり害獣なのはよく伝わりましたが。
多分、制作スタッフも『逢魔が時』ぐらいしか発生条件を設定してないんだとは思いますけどね。アンゴラモンさんは長々と説明してたけど、声が聞こえない演出になる前提なので、特に「あのときアンゴラモンはどんなことを説明していたか」を裏設定で用意していることも無いんじゃないかと思います。
■ドッペルゲンガー採用は良かったか?
作中でそうだと名前を出して語られることはありませんでしたけど、『もう一人の自分に出会うと殺される』というモチーフはドッペルゲンガー伝説が元ネタですね。
ピッコロモンに差し向けられたとも思えず、ヒロ達が飛ばされた場所が『過去の時代(建物の描写から見てヒロ達が生まれるよりも前)』ならなんでヒロ達にあたる存在がいたのかも分からず、なんで出てきたのかよく分かりませんが、そのよく分からなさが不気味で良かったです。影にされている本体にパートナーが触ると本体が元に戻ってドッペルゲンガーが消滅するのも、ヒロ達が助かって良かったけど意味はよく分からなくて不気味でした。
よく見ると、ヒロ達の顔を見せる前のドッペルゲンガーのシルエットがどう見てもヒロ達じゃないのも意味が分からなくて不気味。下駄みたいな足音させてますし。
ピッコロモンの「ずっと違う時間にいると、その人はそっちの時間に溶け込んでゆく(意訳)」という説明は今回のドッペルゲンガー現象を指しているのだと思います。言い方からすると、ピッコロモンが何かをしているのではなくて勝手にそうなるかのような言い草です。
つまり、あれはデジモンに関係ない、古来からのまじもんの怪奇現象なのではないでしょうか。その怪奇現象を引き起こすトリガーになったのが今回たまたまピッコロモンだっただけで。
トリガーが『ピッコロモンの時間移動能力(時間移動さえ発生すれば怪異も発生する)』なのか、『ピッコロモンがあの時代のあの場所に飛ばしたこと(あの時代あの場所に住んでいる怪異の近くに飛ばしてしまったので怪異が発生した)』なのかも分かりません。
ピッコロモンの能力とドッペルゲンガー現象は、特に関連性がなかったように思います。この取り合わせに意味はありません。なので『ドッペルゲンガー』ネタも、別の回で使うことで独立した1話にすることは可能だったでしょう。惜しいと言えば惜しかったかもしれません。
でも個人的には、ここでドッペルゲンガーを採用したのは『アリ』と感じました。逢魔が時の赤い不気味なライティングのもと、不気味な異界(過去世界)で、ヒロやルリの顔に恐ろしい表情を張り付けて迫ってくるドッペルゲンガー。演出力のおかげもあってばっちり怖かったと思います。迫るドッペルゲンガーも怯える本物のヒロルリも、表情が描き込まれていてめちゃくちゃ良い。
ピッコロモン周りの流れはダメだったけど、ドッペルゲンガー周りの流れと演出は最高でした。