灰色の本

アニメ他の創作作品の感想とか。更新がある日は、22:00に予約投稿します。

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『デジモンゴーストゲーム』放置されている設定の話

デジモンゴーストゲーム』の、放置されている設定の話を中心としたぐだぐだとした話です。

感想記事を作る際に文章を書くだけ書いて「これ、特別今回の話に言うようなことじゃなくて、作品全体についての話なんだよなあ……」と取り下げていたものが溜まってきたので、棚卸です。

 

 

デジモンの殺害にまつわる事柄について

ガンマモンに殺しをさせたくないっていう話がそろそろ大昔になってきた気がするんですけどいいんでしたっけ。

話数で言っても、グルスガンマモンの最後の登場が第21話「蜘蛛ノ誘惑」なので最新の第32話から数えてもう12話(※)も前。殺しをさせたくないという直接的な話をしたのにいたっては第16話「人喰ノ森」が(最初で)最後なので17話(※)も前です。放送休止期間も含めればさらに一ヶ月ほど前の放送回になってしまいます。

(※)話数の連番が振られていないスペシャル回が1話あるのでこの計算になります。念のため。

 

そのあいだに、グルスガンマモンの凶行に関係あるものも関係ないものも含め、敵デジモンの死も多く起こりました。(敵でないモブデジモンも地味に死亡数が増え続けているのも気になるところですが、今したい話ではないので無視します。)

 

・第21話「蜘蛛ノ誘惑」で、ヒロたちを殺害しようとしたアルケニモンがグルスガンマモンに殺害される。グルスガンマモンの行為をとがめる描写、またグルスガンマモンの殺害を止められなかったことを悔やむ描写はなし。

・第24話「歪ンダ愛」で、アヤタラモンの自滅行為を止められず、そのままアヤタラモンは実質的に自害。

・第25話「紅ノ饗宴」で、ドラクモンが器の小さいヴァンデモンの怒りに触れて殺害される。

・第26話「飢餓屋敷」で、人間の捕食を繰り返していたデジタマモンがアンゴラモンに殺害される。

 

ただ死亡数が多いというだけでなく、創作上のテーマの描き方としても悲惨で阿鼻叫喚でした。

 

アルケニモンにしてもドラクモンにしても「許しちゃいけない凶悪な敵」なんですが、都合良くグルスガンマモンだったりヴァンデモンだったりに処分してもらえます。アヤタラモンもある程度追い詰めたら勝手に自害してくれます。ヒロ達は手を汚さずに済んで良いですね。ご都合主義が酷いと思います。グルスガンマモンがアルケニモンを殺したのが作中でおとがめなしだったこと、というよりヒロ達がグルスガンマモンの殺害にノーコメントだったことは、開いた口が塞がらないほど酷いと未だに思っています。

 

で、そんな中で唯一「良心と葛藤しながら、敵の凶行を防ぐため仕方なく殺害を実行した」のがアンゴラモンです。これもまた、アンゴラモンさんだけが貧乏くじを引かされる構図で、酷いんですよ。

だって、パーティの中でアンゴラモンさんだけは明確に「町を守りたい」という意思の持ち主です。かなり早期から、少なくとも第11話「カマイタチ」の時点以降からは「いざとなったら、罪がないデジモン達を守るために凶暴なデジモンを殺すことは止むを得ない」と覚悟を決めていたのがアンゴラモンさんなんです。

そんな彼がついに殺害という手段を取ったところで、悲痛ではあっても物語上はあまり意味が感じられないうえに、マイナスの意味も発生しているのです。理由の詳細は、下記です。

 

アンゴラモンはいざとなったら殺害を辞さない覚悟を決めていたので、その対象が『親友』であったことは悲痛だが、殺害という行為自体への覚悟を新しく決めたわけではない。

アンゴラモンが殺害による解決を引き受けてしまったせいで、ヒロたちが『殺害すること』について考える機会が削がれた。

・第11話「カマイタチ」ではアンゴラモンは一度は敵デジモンの殺害を覚悟しながら、パートナーのルリの敵デジモン説得によって殺害せずに救う手立てを見出す流れだった。アンゴラモンがデジタマモンを殺害したことは、ルリとの過去の経験を生かせなかったこと、生存した状態で救うことを『諦めた』ことを示してしまう。

 

作中のアンゴラモンさんは悲痛な決断をしましたが、メタ目線で言えば、制作スタッフはアンゴラモンさんにすべてを押し付けるという甘えを選んだのです。アンゴラモンさんはルリたちや将来被害者になったかもしれない人間たちを救いましたが、物語の全体的な流れやテーマ描写には貢献しませんでした。

 

「ガンマモンに殺しをさせたくない」という直接的な話をした第16話「人喰ノ森」以降、そのテーマの話をしたことがない。さらには、第16話以降の敵デジモンの死亡描写からはむしろテーマに対してマイナスが積みあがっています。

 

これでは、『ゴーストゲーム』が「グルスガンマモンに殺害をさせたくない・させない」というゴールに着地したとしても、説得力がなさ過ぎてダメだと思います。そんなゴールに着地する気があるのかどうかわからないほど放置されてますが。

 

強いて言うなら、第31話「辻斬リ」でヒロがカス親父に「手に負えないデジモンはどうすればいいか」と質問していたことが判明したので、つまり「殺害しないとどうにもならないようなデジモンと対峙する場合はどう心がけたら良いのか」ということを一応気にしているらしい(?)とは分かったのが恐らく第16話~第31話の中で唯一のプラスですが……なんというか、このエピソード、ほんとにそれだけです。ヒロは一応気にしていないわけではなさそうだということが分かっただけなんですよ。

しかもこれ、結構善意の推測なので歯切れが悪いです。もしかしたらヒロが気にしているのは「殺害しないと事態が収拾しないデジモンではなくて単に「とんでもなく被害を出すデジモンとか「こちらより強いので戦闘ではどうにかならなさそうなデジモンというだけかもしれません。ヒロは「手に負えないデジモン」としか言っていませんし、カス親父も「俺は知らん! ワハハ!(要約・意訳)」としか返していないので詳細なニュアンスがつかめません。

 

 

 

■人間とデジモンの共存(人間とデジモンの架け橋)について

えー……、まあ……。第20話「炎ノ監獄」以降まともに描写がなくて、書くことすらありません。放置されてるよね。以上です。

強いてあげるなら前述したとおりヒロがカス親父に「手に負えないデジモンはどうすればいいか」と質問していたことが判明したので、デジモンとの共存を目指しているのかどうかというと微妙ですが、現実的な対処方法を気にしていることは分かります。

 

 

■デジタルワールドへの行き方探し・父親探しについて

失踪した父親を探すためにデジタルワールドへの行き方を探すみたいなことを言ってた気がするんですけど、最後にその話をしたのいつでしたっけ。これはちょっと、本気で調べなおさないと何話が最後だったか自分には見当もつきません。

そもそもまともに探してたイメージもあんまりないですけどね。わざわざ博物館侵入(不退去)してまでデジモンにコンタクト取ろうとしてた2話と、アルファアカウントにDM送り付けてまでデジモン事件の被害者と思われる人物(ルリ)にコンタクト取ろうとしてた3話が最盛期だったのは覚えてます。

 

上の項目であげた『ヒロがカス親父に「手に負えないデジモンはどうすればいいか」と質問した』件は、この観点では(この観点でも?)マイナスです。普通に考えれば、失踪した父親を探す目的があるということになっているヒロが真っ先に父親への手紙に書くべきは「今どこにいるのか」「どうやったらそっちに行けるのか」「音信不通になるな、連絡が取れるようにしろ」「いったん帰ってきて元気な顔を見せろ」あたりになるはずです。

※ただし、子供放置デジタルワールド自由旅をしているカス親父に直接それらを聞いてものらくら回答を避けるんだろうなあ……という推測はなんとなく立ちます。それならそれで、作中で「多分そのへんのことは答えてくれないだろうから」とはっきり言及してほしかったものですが。

 

 

■ルリのぴったり探しについて

ルリのぴったり探しも大昔にやったっきりな気がするんでしたけど、これ何のための設定なんでしたっけ。

 

実はこのネタ、なんっっっにも進展してないですよね。なんで『ぴったり探し』なんてことしてるの? っていうことに言及する話もないですし、『ヒロや先輩が巻き込まれる』はやりまくったけど『ルリに友情を感じるヒロや先輩が積極的に手伝ってくれる』というようなこともないし、ぴったり候補は全部「ぴったりじゃなかった」で捨ててしまっています。

 

ぴったり探しを掘り下げていない(ぴったり探しを主題にした回をやってない)ので、物語の終盤にあるだろうルリのまとめ回にぴったり探しネタを使うのは無理だと思います。

……いや、『ゴーストゲーム』にそんな、キャラの物語のまとめ回なんて親切なものないような気もしますけど。

 

じゃあ、あくまでキャラ付けだけのための設定?

……ルリのその多趣味宙ぶらりん設定さあ、多趣味を突き詰める器用貧乏ヒロと比較すると気分的に下位互換なんですよねえ。

キャラ付けだけのためなら、メインメンバーに人間が3人しかいない中でキャラ被りしないでほしいと思います……。

 

 

■実体化したいデジモンたちについて

これは、直近の第32話感想記事(リンク先参照)でも書いたのですが……

ラクモンやフィレスモンがほのめかしていた『人間の感情を利用して実体化したいデジモン達がいる』という話も放り投げられていると思います。

見ている限り、フィレスモンしかりヴァンデモンしかり、あとジュレイモンやモリシェルモンなど、強大な力を持つ連中はとっくに実体化済(制御済)っぽいんですよね。更には、無害そうな通行人モブだったエリスモンなんかも実体化・非実体化の両方の状態で登場していました。

 

フィレスモンは『強大な力を持つ自分が』実体化したいのではなくて『自分ほど力を持たない連中を含め、他のデジモン(自分の支配している一派)を組織的に』実体化することを企んで動いていて、放送当時は面白いなと思ったのですが……。

いや、比較的格下の連中まで含めて猫も杓子も実体化できてるんですよ。企む必要すらないですよ。

 

もっと言えば、今さら「人間の感情を利用して実体化してやるのだ!」なんてレベルを目指している『強大な敵』、もういないでしょ。