灰色の本

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『デジモンゴーストゲーム』第17話「極寒地獄」:感想①

デジモンゴーストゲーム』第17話「極寒地獄」の感想①です。

良すぎるんだけど何?

 

例によって、長いので記事を二つに分割しています。今回は主だったこと(最初に強く感じたこと)を①で、その他の細かい話を②で書くという構成にしています。

 

※初見直後に感想を書いていますが、初放送から時間をおいた段階での視聴となっています。

 

 

 

■細かいことはさておき、神回

良すぎるんだけど何。

粗はいろいろありまくるけどとりあえず本筋の流れが神回なんだけど、突然どうした。地味に重要そうな事実が判明したりもしてるけど、これってそんなに気合入れる回か? クールの初めの回とか締めの回とか、進化形態や販促アイテムを新しく手に入れたとかでもないのにほんとどうした。

普段脚本家の名前は敢えて全く見ないようにしているんだけど、思わず脚本家の名前を調べるためにwikipedia見に行ったわ。普段のローテーションの脚本家じゃない、ベテランさんでも新しく呼んできたのかと思って。脚本家さんも演出家さんもついでに総作画監督さんも他の回で出てるいつもの人たちだし、マシなほうの回を担当してた人たちというわけでもないのでめちゃくちゃ困惑した。とてもとても困惑した。

えっ……たまたまクリティカルヒットが出ただけってこと……? それとも逆に、いつも通りいろいろ悪いけど、悪いところがたまたま自分の盲点になるところに入って見えてないだけ……? あ、そう考え始めたらそういう気もしてきた。いや、とりあえず良いとこ描きますね。

 

 

■ようやく見せてくれた恐怖と憔悴の表情

ずっと……ずっと過去記事で言ってましたよね……恐怖の顔を見せてくれって。怯えてくれって。そうすればホラーが締まるんだからって。

 

くっそおおおお言った通りだったじゃんかよおおおお!歓喜の雄叫び)

 

厳密には恐怖と言うより『ほんとに死にかけてるので、死に瀕した憔悴の表情』が正しいですけどね! 細かいこたあ良いんだよ、こういうホラーっぽい表情が見たかったんだよ!

寒さの描写やホラーの筋運びが若干大味かなってのは許します! ヒロ達の憔悴の表情憔悴していくあいだのやりとり! 良いですね! ここまでやってくれるとちゃんとホラーとして締まるんだよ!

身も蓋もないことを言えば、実体化レベルを変えれば壁をすり抜けられるデジモン達がさっさと抜け出して外に出て体温低下を抑える→ルリと合流してフロゾモン撃破に動いて早くヒロと先輩を救出する算段をするべきだろと思うし、ルリが外にいるのに大人しく室内で籠城戦するアンゴラモンや、先輩が弱っていくのぐらい分かるだろうに一人だけ自家発電して呑気に耐久戦してるジェリーモンはほんとに先輩好きなのかよとか、ツッコミは大量にあるんですが、ホラー表情が良すぎて全部トんだ。

 

いやもう、寒さでぼろぼろになっているシーンだけですげえ良い。寒さで昏睡するシーンの表情だけで1億点あるから逆に何も言えないわ。

表情が、めちゃくちゃ良い。

一連のシーンにそれ以外のことを言うのは野暮。俺は喜びのあまり踊るぞ。

 

ホラー展開にガチで怯えてくれるシーンを見るまで何話かかりました? 第17話までかかりました! 第17話で到達できておめでとう!

もし友人に布教することがあったら「第17話の死にそうな表情までで良いから見てくれ」って言っとくわ!

いや、正確には「第17話の死にそうな表情見てくれ。スクショ送るから」で済ますけど。俺の友達は多分、第1話から素直に見せると俺と同じように倫理観の部分で引っかかって1クールもたずに脱落するよ。

 

今回は白眉ですけど、前回第16話の表情も良かったんですよね。どうしたんだ、ようやくホラー表情の演出的価値に制作スタッフが気づいたのか?

 

 

■キャラの良さと絆が良く伝わる、先輩&ジェリーモンのやりとり

>「テ、テスラジェリーモン様は、大丈夫そうですね……」

>「電気ビリビリで、さっきから身体あっためてたから。自分だけ、ゴメンっピ!」

>「そ……そうでしたか。良かった……」

>「ダーリン?」

>「テスラジェリーモン様……月夜野さんだけでも、助け、て……」

>「ダーリン!」

「もっと早くにテスラジェリーモン(や他のデジモン)を外に行かせろよ」とか「テスラジェリーモンだけなら自家発電で体温がもつという情報はもっと早く共有しろよ」とかツッコミは入れたいんですが、そこに目をつぶるとめちゃくちゃ良いやりとりだと思いました。

 

これ、先輩が台詞ではっきり言っているのは「月夜野さん(ルリ)を助けて」だけですけど、「そ……そうでしたか。良かった……」の台詞は『ジェリーモンが無事で良かった』という意味なんですよね。

(助かりそうにない自分達のことはもう良いから)助かりそうなルリだけでも助けてほしいという先輩の責任感・面倒見の良さと、ジェリーモンとここまで築いてきた友情の強さが伺える良いやりとりです。

ジェリーモンが先輩が弱る前にさっさと動かなかったことはやはり気になるものの、先輩の窮地を見て奮起するジェリーモンの姿自体は感情移入できて非常に良いと思いました。

 

 

■今回のMVP、ルリ&ジェリーモンの共闘

そこからのルリ&ジェリーモンの共闘の流れも良いですね。

ヒロ達の窮地を察して自分の危険を顧みずフロゾモンに喧嘩を売って気を引くルリは彼女の美点である勇気が出ていて良いですし、だからこそその直後にジェリーモンの様子から『もうヒロ達がやられてしまったらしい』と察したルリの絶望の表情が映えます。

ジェリーモンがキャラを活かして、「とにかく、うちらだけでなんとかするしかないってこと! 今いろいろ考えるの最悪だかんね!」とわざと明るく軽く努めているのも最高です。彼女も恐怖に震えているけれどあくまで明るく強気に鼓舞している。恐怖の中で頑張って凛々しく立っているジェリーモンの光と、ヒロ達がやられてしまったらしいことを『今知った』ルリの絶望という闇との明暗のコントラストが最高です。

 

自分は普段のルリに『行動力があること』を非常に高く評価しています(駄目な方向に働くことが多いのが悪いだけで)。

そのルリが『止まってしまう』んですよね。『もうヒロ達がやられてしまったらしい』という情報は、それほどの恐怖だった。

普段のルリからのギャップでより強く恐怖が強調されていて、非常に良い配役(または配役に合わせた非常に良い演出)だったと思います。

 

その絶望の流れが、ジェリーモンからのルリへのビンタで変わる。

仲間を失った二人の意志の強さが一気に戦闘力、技としてフロゾモンに向かうのです。ひたすらのフィサリストの連発がルリとジェリーモンの感情の強さをうかがわせます。

 

 

■今回のルリの感情表現を支える、声優さんの名演技

徐々に絶叫に近づいていくルリの「フィサリスト」の発声も良かったですね。声優さんの迫真の演技でした。ルリは描写には恵まれませんが、声優さんの演技には非常に恵まれていると思います。

真面目に言うと、メインメンバーの声優さんの中で一番の大御所さんは先輩役の石田彰さんなんだと思います。石田さんはコメディっぽい役柄の先輩の演技が『ずっと上手い』、実は結構いろんな要素が入っていて難しい先輩のキャラを上手いこと一定の範疇に落ち着かせるためにずっと静かに縁の下の力持ちをやってくれている印象です。けど逆に『ずっと上手い』せいなのかそれとも脚本が先輩を軽んじる傾向にあるせいなのか、どのシーンが特に光っていた、という印象は個人的にはありません。

それに比べるとルリは瞬間的には凄く良いシーンがある、という印象です。というかルリって、自分の感覚では迷惑挙動に着目しちゃうんですけど、美点の『勇気』や『行動力』が良い方向に働いているシーンだけを見ればめちゃくちゃ格好良くて意志が強いキャラなんですよね。そういうルリの美点が強く出ているときに、声優さんが頑張ってくれている演技が印象に残りやすい気が個人的にはします。

 

 

■パートナーは交代できる。というより、『最初からパートナーではない』?

非常に気になったのが、ルリ→ジェリーモンで技の指示出しが出来てしまうことです。

 

『ゴーストゲーム』では人間がデジモンの技の指示を出します。その際には、何故か人間の頭にデジモンの技名が閃きます。どうしてそうなるのか、という理屈は今のところ説明されていません。

グルスガンマモン進化時(第13話)で、グルスガンマモン側が技を出したいときにヒロが技名を閃きそうになって「何かが流れ込んでくる……でも……!」とヒロが技の指示出しを拒否した(? 説明が少ないため詳細不明)こともありました。デジモンは単独では技が出せないのだろうか……とも思ったんですが、グルスガンマモンはその直後に自分の意志で技を出すので、そういうことでも無いようです。というかメインメンバーのデジモン達以外はパートナー人間の指示出しなんか無くても技を出しますしね。どういうことなのか不明です。

 

で、本題に戻ると、今までジェリーモンのパートナーは清司郎パイセンでした。技の指示出しをする=技名を閃くのも先輩でした。

それがいきなり、ルリが技名を閃く形になるのです。パートナー権みたいなものが移行した、とでも表現すべきでしょうか。特にデジヴァイスを操作する必要もありませんでした。

 

何回か過去記事で書いたような気がしますが、『ゴーストゲーム』の人間&デジモンのパートナー達って、作中で『パートナー』と指されたことが無いんですよね。

かつ、デジヴァイスで実体化できるのは特定の相手に限ると言われたこともありません。第3話のドラクモン戦は、デジヴァイスを使えばドラクモンのことも実体化できるという前提で進行しています。(その話はドラクモンを釣るためのブラフだったのだ、という可能性も無くはないですが。)

ついでに言えば、デジヴァイス特定の誰かが使わなくてはならないとも表現されていません。ヒロ達のうちの誰かがデジヴァイスとカードを揃って紛失すれば、デジヴァイスとカードを拾ったそこらへんの一般人、コタロウとかでもデジモンが見えるようになってデジモンを実体化させられる可能性があります。

……パートナーを縛る要素が無いんですよねえ。

 

今作のデジヴァイスは、今までのところ、下記の機能があります。

デジモンを実体化する。

デジモンを透明化する。

デジモンを進化させる。

・装着者の脳にデジモンの技名を閃かせる?(これがデジヴァイスの機能なのかは不明だが一応列挙)

(・疑似デジタルワールド化を引き起こす。今している話には無関係)

 

これ、『対象はパートナーデジモンに限る』とは言われていないのがミソなんじゃないかと思います。

 

ガンマモンは必ずしもヒロでなくてもいい。

アンゴラモンは必ずしもルリでなくてもいい。

ジェリーモンは必ずしも先輩でなくてもいい。

 

今作の人間とデジモンの関係は、そういうことなのだと思います。

これは個人的にはとても面白い試みではないかと思います。人間とデジモンは必ずしも分かちがたいニコイチである必要は無いのです。

 

ただ、その設定で今後展開していくとして、何をしたいための設定なのかが今のところ全然分からないのだが。

俺が「設定が面白え……くう、たまらんなあ……(しみじみ)」ってなるのと、「この設定、物語の展開に活きてくるのか?」ってことは別の問題だよ。

 

パートナーは必ずしもこの相手では無くても良いのかもしれない。そう語ったなら、「じゃあ何故、必ずしもこの相手では無くて良い状況で、この相手をパートナーに選ぶのか?」という問いに回答が必要になると思います。その問いへの回答になるだけの強いきずなが必要になると思います。

さて、制作スタッフはその準備ができているのでしょうか?

……ごめん、ここまでの実績から言って、正直信用ねえわあ

 

 

■『パートナーは特定の相手とは限らない』の弊害

今回の展開は単独で見ると評価しているのですが、一方で「……良いのかなあ……」と思うところもあります。

だってその。第10話思い出してもらっていいですか?

 

>ダーリン! 早く起きるのさ!

>起きないと、ダーリンのあれもこれも全部捨ててやるのさ!

>右手の秘密も世界中にバラしてやるさ!

>ミーたちはゲームだから強かったんじゃない!

>2人だから強かったさ!

 

清司郎パイセンとジェリーモンの『2人だから』強かったわけじゃなくて、任意の人間とジェリーモンの『2人だから』強かったらしいです。泣ける。

いやうん、ルリとジェリーモンは害獣同士……いえ失礼、気が強いガールズ同士で相性が良いのは分かっていましたけど。分かっていましたけど。

 

ジェリーモンお前、清司郎がパートナーじゃなくても強いんか。泣けるわ。この浮気者。ギャル。じゃあもう先輩を解放してルリと一生百合百合してろ。(スネています)

でも先輩はもうジェリーモンに慣れてて、もう鬱陶しがってなさそうで、今さら解放されたい理由もそんなに無さそうだから更に泣ける。ジェリーモンお前、釣った魚がもう逃げないと思ったらエサやりを放棄して他の人間に浮気しやがって。浮気者浮気者。何が「ダーリン浮気は許さないっちゃ(電撃)」だよ。お前が浮気者だよ。(スネ散らかしています)

 

 

■粗はあるけど神回

粗はあります。ツッコみたいとこはすごくある。

もうちょっと配慮すればより綺麗な流れにできたんじゃないかと思うところもいつも通りある。

パートナーが実は固定ではないという描写をして大丈夫なのかとは思いますし、今回そんな描写をしてしまったせいで「やっぱあんな描写しなきゃ良かったんじゃん……」と後から評価が下がる可能性もある。

 

けど総評としては、現段階の自分は、今回の話はめちゃくちゃ良かったと思った。そう言いたいです。

 

でもツッコんで良い? 今回、主人公のヒロ&ガンマモン組はほとんど空気やぞ。お前ら大丈夫か?

 

感想記事②では残りの細かいことに言及しようと思います。