灰色の本

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『デジモンゴーストゲーム』第16話「人喰ノ森」:感想①

デジモンゴーストゲーム』第16話「人喰ノ森」の感想①です。

長くなったので例によって記事を二つに分割しています。

良いほうの回なのだが。制作スタッフと、どの情報をどこで流すというタイミングの感覚がひたすら合わない。

 


※ここまでの記事は他媒体で過去に書いた感想を元に『初見風に』書いていましたが、ここからは本当に初見後すぐに感想を書いています。ただし、初放送後から時間をおいた段階での視聴となっています。

 

 

 

■ヒロとガンマモンの仲良しをやるのが遅い

今回はヒロの趣味であるキャンプ回です。後半のホラー要素のほうはホラーだからというよりシビアだから怖いのですが、前半でヒロとガンマモンがのんびりキャンプをしている平和なさまはほっこりしていて癒されます。

ここに来て、ようやくヒロの穏やかな笑顔が見られたという感触です。キャンプ趣味は例えばスポーツなどのように「何かを達成するぞ! うおー!」という盛り上がりのある趣味ではなく穏やかなものなので、ヒロもがんがん頑張ってがんがん笑うという感じではありません。しかし、穏やかにですが幸せそうです。ガンマモンにも笑顔を向けており、初めて『お世話しなきゃいけない兄とお世話される弟』という関係ではない、もっと単純で優しい意味での兄弟を二人でやっていました。

うん、良いシーンです。

今はもう第16話だってことがめちゃくちゃ気になりますけどね。

やるのが遅いだろ。

 

どう考えてもこれ最序盤でやったほうが良かったと思う。『二人は当たり前に仲が良いのだ』っていう話はもっと前にやってほしかった。第2クールに入ってからやるような話じゃないと思う。今回みたいなシビアな話は第1クールではまだできないという判断だったならキャンプの話じゃなくても別の話でも良いです。話の細かい内容はどうでもいいから、今回ぐらい『ヒロとガンマモンは仲が良い』が分かる回は第1クール中盤ぐらいまでにやっておくべきだった。

 

ゴーストゲームね、キャラクター同士が仲が良いということが納得できるなら、発生してなかった問題って結構たくさんあると思うんですよ……。

まあ、ヒロ&ルリ間のように、制作スタッフにいくら「仲が良いんですよ~」的に言われても全く同意できないような描写の連中もいますが……。

 

 

■グルスガンマモンへの言及が遅い

ガンマモンがグルスガンマモンになってしまったことについて、初めてまともに言及されました。(以前にルリが「ガンマモンを進化させて、グルスガンマモンになったらどうするんだ」という趣旨の発言をしたときは、結局まともに議論されなかったのでノーカンにします。)

 

うん、言及自体は必須なので、言及があって良かったです。

絶対おせえけどな。

遅いくせに言及内容自体も浅いし少ないけどな。

 

なんでルリと先輩は、グルスガンマモンの話題に触れなきゃそれで良いみたいな態度なんでしょうね。今後また同じことが起きたらどうしようか対策を取らなきゃとか、グルスガンマモンに進化して大暴れしかねないガンマモンのことが怖くなってきたとか、そういう話はないんですかね。

ちょっと話はずれますが、グルスガンマモン以外でも、そろそろ「デジモンという種族自体、怖いよね」って話が出たりしないのでしょうか。友好的・無害なデジモンもいるから怖くないというには、強烈に害悪なデジモンをヒロ達は見すぎている気がしますけど。シールズドラモンだけなら逆に「デジモンの中にもイレギュラーな凶悪犯罪者がいるんだな」で済むかもしれませんが、イレギュラーでも怖いもんは怖いだろうし。

 

 

■脱線:こいつらコミュニケーションしないよね

……まあね、そんなシリアスな議論を喧々諤々できるほど、メインメンバー達は仲が良くないんですが。そもそも、今までまともなコミュニケーションを取っていないんですもの。

ヒロ達は話が通じない連中ではありませんし、話を文字通りの意味で聞かない連中でもありません。けど、心を通わす気は全くない。他人がどんな考えをしていて何を求めているのかを会話を重ねて理解しようとしたり、折り合いをつけるためにどこまで譲るかどこを譲らないかの交渉をしたり、建設的で友好的な会話というものを行いません。

常に意識高くそういうことばっか考えながらトモダチをやれって意味じゃないですよ。そこまで深く考えなくても、友好的な会話というものには自然とそういう側面が含まれているというだけです。日常的な、ありふれた話をしています。ぐだぐだ雑談してるだけである程度までは達成されるようなことです。

だけどヒロ達はそういう会話をしない。そういう建設的な会話や、意味は無くても仲が良くなるような雑談(創作的には『仲が良いことを視聴者に示す』ような雑談)を作中で見せてくれません。

ていうかお互いのことを知りたい場合、ヒロ達は会話を重ねるんじゃなくて犯罪行為に走り始める。「尾行すれば良い(第11話カマイタチ回・未遂)」とか、「部屋に無断侵入して確認しよう。それでも分からなかったらパソコンの中身を漁ろう(今回第16話)」とかね。

 

先輩は比較的話を聞いてくれるしコミュニケーションを取ろうとしてくれるんですが、残念ながら彼の意見はたいてい無視されます。

正確には、『場でこうしたいという意見がある人が一人以上いた場合は、誰か一人の意見が優先的に勝つ。話し合いで調整したりはしない』あたりが正しいと思います。

よく見ていくと先輩も、ヒロとルリに案がない場合は無視されず、あっさり意見が通っています。先輩もヒロとルリに意見が『潰された』ことは無いように思います。あくまで『無視される』だけで。言葉遊びですけどね。案の欠点をあげつらわれて叩かれまくって却下される……みたいな意味で『潰された』ことは無いと思います。

基本的にはメインメンバーのヒエラルキーはルリ>ヒロ>>(デジモン達が団子)>>先輩なので、ルリの意見が通ってることが多い印象なのですが、ルリも第14話座敷童回では「またグルスガンマモンに進化したらどうするのか(だからガンマモンを進化させるのは反対)」という真っ当な意見をヒロに考慮されずに『無視』されています。もしかしたらヒロはちゃんと考えたうえで突っ切ったのかもしれませんが、それを台詞で表現してくれません。視聴者に伝わらないだけならまだしも、ルリ本人にも伝わらないと思います。

 

結局、意見の出し合いはあるけど、それをメインメンバー間で話し合って調整したりブラッシュアップしたりすることはほぼないんですよね。強いて言うなら、第4話カボチャ回ぐらい? あの回はおとり作戦の詳細をどうするかで若干モメたっぽい描写だったような。メンバー間で相談して何かを決めたというエピソードが弱々しい一方で、誰かの意見を聞かなかったエピソードの印象は強いです。というか意見を聞かなかったエピソードがやたら回数が多い気がする。

 

人間だけで三人、デジモンも含めて六人もいるのに、これでは個人戦となんら変わりがありません。人間の絆の力や協力の力を指して「1+1が10になった」「100になった」などと表現することはよくありますが、これでは「1+1+1+1+1+1=6」なだけです。

……いや、流石にパートナー同士の「1+1」が「2」にしかなってないというのは言いすぎかな。3組を平均すれば「1+1=2.2」ぐらいにはなってると思う。

でも3組をそれぞれ1として「1+1+1」だと表現すれば、それは「3」にしかなってないと思う。パートナー同士はさておき、パーティ(6人)としての相乗効果がない。

 

パーティメンバーより害獣デジモン相手のほうがよっぽど要求を理解しようと対話しているのが涙を誘いますね。被害が既に発生しているところで、その犯人をなだめて被害を抑えるためにしか対話できないんですかね、こいつら……

 

 

■ヒロが怯えるのが遅い

モリシェルモンから「ジュレイモンは人間を生きたまま食っている」という時のヒロの怯え顔は年相応で良かったです。これだけシビアな設定を持ってくるとそれだけでホラー感が出るので良いですね。

 

いや、ヒロが怯えるのが遅い

ヒロやルリに恐怖という感情を分かってもらうためにも人が死んだほうが良いんじゃないかとは思ってたけど! 実際そうなってみると! 「ヒロさんおまえ、人が死なないと恐怖を感じられないんすか」って思う! やっぱり今まで怯えてないのが悪い! 怯えるシーンがだいたい毎回一瞬だけで、喉元過ぎれば胃に落ちるより前に恐怖を忘れるのが悪い!

 

 

■人が死ぬのが遅い

終盤でジュレイモンに捕まっていた人達が解放されるシーンがあるけど、一応、話の流れ的に『解放されたのは最近ジュレイモンに捕まった人。だいぶ前に捕まった人は既に助からなかった』という想定で言いますね?

 

うん、人が死ぬの遅い。

いや……本当はこのぐらいの位置で適切なのかもしれないけど、自分は第13話でデジモンがゴミみたいに1001人も殺された(1000人殺し+殺害犯殺し)ことを根に持ってるんですよ。

いや、ボコモン先生含むデジモン1000人がゴミみたいに殺されたあと悪堕ちガンマモンが殺害犯をゴミみたいに殺したのも、それ自体が問題ある展開なんじゃなくて、『そこまでのあいだ、いくら不自然な展開であっても人間は死ななかった』からデジモンのゴミみたいな殺され方が腹立つって言ってるんですよ。そもそも『人間は不自然に死なない』をやらなきゃ良かっただけなんですけどね。『人間だけは不自然に死なない』を数回やってしまった以上、第13話はその描写とのバランスを取ってデジモンの死傷者を数人レベルぐらいに押さえるor人間も同等レベルで死ぬような話にするか、そうじゃなきゃ第13話以前に別件で人死にが出ているべきだった。だから、第16話になってからこんなことしてるのは遅い。そう思います。

ここまでの物語の構成が違えば、このタイミングでの人間初死亡(ヒロ達の目前以ではないが人間が死亡していると思われる描写)は適切だった可能性はあると思います。

 

あと、人間死亡をここまで引っ張った割に薄味じゃない?

いや……ヒロは普段に比べたらだいぶ怯えてくれたけど……

 

……それとも『別にまだ人間は死んでなかった』っていう意図で、人間だけ異常に脚本に守られて絶対死なないいつもの展開だったのかなあ。

・モリシェルモンによると、ジュレイモンが来たのは最近のこと。

・ロッジ管理人も『最近』お金を払わずに帰る人(=失踪する人)が多くて困ると発言している。

ジュレイモンは人間を「生きたままじわじわと養分にする」ので、襲われた人間が死ぬのには時間がかかる。

・今回の終盤で、樹木(ジュレイモンの身体?)に同化させられたはずの人間が解放されている。人数は7人みたい。

これらを結びつけると、ジュレイモンは最近やってきてとりあえず7人ほど襲って貯め込んでいただけでまだ誰も殺せていなかったという説は通ります。ジュレイモンの言い方は「既に人を殺したことがある」っぽい言い回しに個人的には聞こえたんですが、「人を殺すことを悪いとも何とも思っていない」という調子だったのをそういう言葉尻だと誤解しただけなのかもしれません。

 

でも、『霞さまの神隠し』は昔からあったように聞こえるんですよね。霞さまには祠も建てられてますし。霞さまはいたけど神隠しは最近だけということ? この地域に昔からあった霞さま伝説に、最近ふらっとたまたまジュレイモンが来て失踪事件を起こしたから混同されてただけ?

『霞』はモリシェルモンも操れるようだから、霞さまの正体は最近来たジュレイモンではなくてモリシェルモンということ? いやでも、モリシェルモンは霞を操って人間社会に何かするメリットがなさそうだし。そもそもホログラムゴースト=デジモンが人間社会に現れ始めたこと自体が作中では『最近』(近年)だと思うから、霞さま伝説と時系列が一致しない気がするし。

情報が少なすぎてよく分かりません。

 

ひとつ言えるのは、個人的には、今回が『人間は実は死んでない』パターンだった場合「また人間だけは意地でも守られるのかよ」とまーたはらわたがムカムカ来るということですね。

そもそも取り込んだ人間をジュレイモンがわざわざ吐き出して帰ってくれるのもめちゃくちゃご都合主義ですからね。ほんとなんでコメディ寄り冒険ものじゃなくてこのホラー作風でこのご都合主義展開をやるんだろう、解せんわ。んで解放された人たち、養分を吸われてたはずなのに衰弱した様子もなさそうだしさ。