灰色の本

アニメ他の創作作品の感想とか。更新がある日は、22:00に予約投稿します。

MENU

『デジモンゴーストゲーム』スペシャル回感想と「話が進まない」是非の話

デジモンゴーストゲーム』スペシャル回の感想と、『デジモンゴーストゲーム』という作品が「話が進まない」ことについての是非の話、その話に絡めたここまでの物語全体についての感想です。

 

正直スペシャル回自体は感想を書くほどの内容ではなかったのですが、スペシャル回の構成から見えてくるものはある気がしました。そういう話です。

 

 

■あくまでスペシャル回であって、総集編ではない

正直、実際の放送を見て困惑しました。今回は、下記のいずれかなんだろうなあと勝手な予測をしていたからです。

①総集編。キャラの改めての紹介や、現在の状況などのまとめ。

②実写の語りを生かして、語り(とプラスアルファで何枚かアニメ絵)だけでできる独自の話をする。

 

更に言えば、

不正アクセス事件で制作状況が遅れ気味で厳しいからお茶を濁したかった→①か②

元々クールの切れ目でまとめ放送をやる気だった→①

かなあと予想していました。改めて本放送を見てみるとかなりセットや小物が凝っていたので、実写にすることでなんとか一話でっちあげたというわけではなく、元々からこの予定だったのかもしれませんが。

 

実際には、総集編ですらありませんでした。第2話と第4話を1話分に圧縮して流して、切れ目で適当なコメントを入れていただけです。キャラや状況のおさらいの役にすら立ちません。せっかくセットには凝ってそう(?)なのに、実写にした意味が分からない内容でした。

これなら、竹中直人さんの実写パートなし+追加カットなしで語りだけでも大差ないと思います。ヒロとガンマモンさんの声優さんにキャラとしてコメントを入れてもらっても大差なかったと思いますし、むしろそちらのほうが掛け合いの中で小粒な新情報が出てきた可能性もあります。

 

 

■そもそもゴーストナビゲーターの意義が薄い

どうでも良すぎて今までツッコんでこなかったんですけど、ゴーストナビゲーターとしてわざわざ名乗っている割には、『ゴーストゲーム』という作品にゴーストナビゲーター自体の意義がないと思っています。

 

ナレーター役として作中で喋るわけでもありません。

冒頭の解説はいつも同じ内容だし、ホログラムゴーストどうこうという要素が本編の中であまり活きていないので、変更なしで使われている冒頭解説もピンボケしています。

次回予告は思わせぶりなことを言うばかりで次回の内容に全く関係がなく、次回予告として役に立ちません。

 

竹中さんご本人については嫌いではありませんが、『ゴーストナビゲーター』というキャラ(キャラではないですが……)は嫌いです。

次回予告での語りが、内容がないくせに「フフフそんなことすると大変なことになりますよ人間……」みたいに上から目線っぽくてウザいんですもの。

『ゴーストゲーム』のED曲も作品に合ってなくてウザい(特に2期OP)ので、今はもうEDも予告も見ずに終わらせることが大半です。

 

正直、ゴーストナビゲーターに何の意味があるのか分かりません。予告のあの語りで「怖い~」ってなる人もやっぱりいるのはいるんでしょうか? 自分は白けてますし、今回のスペシャル回の語りも頑張って聞いてみたら情報量が何もなくてやっぱり白けちゃいましたけど。

 

 

スペシャル回の構成から見えるもの

あんまり深読みしても意味が無さそうだとは自分で思いますけどね。思ったことがあるので書いておきます。

 

この回、無難に総集編をしてキャラ紹介と状況まとめをしても良かったと思うんですよ。不正アクセス事件で仲間加入回については再放送をしてしまったので改めてキャラ紹介をする効果があまりなかったとしても、状況のまとめをする意味はあったと思います。だって、見ててあんまり進んでる感がないアニメであっても、下記ぐらいの情報量はあるはずなんですよ。

・ガンマモンたちがどこまで進化できるようになったか。

・父親を捜すためにデジタルワールドに行きたいと思っていること。

・ボコモン先生の残した『人間とデジモンの架け橋』という願い。

・グルスガンマモン絡みのあれこれ。

 

でも、それらの情報をまとめる回にするという手は取らず、単純に第2話と第4話の切り貼り再放送にした。

 

これ、もしかして、「これらの情報は『ゴーストゲーム』という作品上では割とどうでも良い(だから情報まとめ回ではなく切り貼り再放送回にした)」ということなんですかね?

 

 

■「話が進まない」是非

ちょっと他の方の『ゴーストゲーム』の感想を見ていたときに、「『ゴーストゲーム』は話が進まないことを楽しむ作品だ(話が進まないタイプの作品だ)」という意見を見つけたんですね。

 

確かに、今のところそちらのほうが作品の造りが近いんです。

『ゴーストゲーム』はメインキャラと無関係に事件が起きて巻き込まれて(実際にはよくよく考えるとメインキャラが事件を誘発してることやメインキャラが事件に突撃してることが多いのですが……)、その回の中で解決して終わり、というスタイルです。

事件は単発で発生してその回が終われば触れられることもほぼ無く、何かが起こったからといってキャラや作中社会に長期的な影響が出るという展開があまりありません。ザッソーモンが大繁殖して大暴れして一般人と大激突しようと、デジモンと友達になる人間の子供が出ようと、学者がうっかりデジモンを捕獲して「学会発表したい……」みたいに言ってよううと、それが次回以降の話に何か影響を与えることは有りません。

また、主人公たちの目的も実質ないようなものです。事件に巻き込まれるばかりで、能動的に何かをすることはあまりありません。

キャラの深掘りはあんまりされません。やってるつもりなのかもしれませんが、散発的で積み重なりません。

 

この造りは鬼太郎シリーズに近いと思っています(※自分が知っている鬼太郎アニメは五期と六期です)。

鬼太郎は自分から事件を解決しに各地に行きますが、基本的に「事件発生→依頼」を待つスタイルなのでどちらかというと巻き込まれ型の構造です。

メインキャラのことは視聴者もだいたい知っている前提なので、メインキャラの深掘り回は少なめ(※ないわけではありません)で、ゲスト妖怪の描き込みや事件解決に尺を使います。メインキャラの成長要素というのはあんまりなくて、メインキャラ同士の関係性もあんまり変わりません。サザエさん時空よりは進展がありますけどね。

長期スパンでの大筋があることもありますが、その大筋に無関係な単発回をやっていることが結構多い印象です。

鬼太郎シリーズは進展がなかろうと、そういうものだと思って安心して見ることができるフォーマットが完成していると思います。

 

『ゴーストゲーム』もそういう「進展があんまりないタイプのアニメ」だと思えば少しは安心して見ることができる……可能性はあるのですが、個人的にはそうは見難いです。

というか、「進展があんまりないタイプのアニメ」「進展があるタイプのアニメ」のどちらだとしても作り方が下手なのです。

 

確かに、実際に出来上がったものを見ると進展がないタイプのアニメなのは先述した通りです。スペシャル回の構成からすると、進展要素が重要ではなさそうだという目で見ることもできます。

が、進展なしタイプのアニメだと見るには逆に『目的がありすぎる』のです。

 

 

■目標があるのに目標に向かって何かをすることがない

特に、下手に「父親探しにデジタルワールドへ行きたい」というヒロの弱くてしょぼい目的がずっとあるのがしょっぱいです。これがあるせいで、「いつまで調査もせずにだらだらしているんだ?」となります。結局、積極的にその調査をしていたのは第2話ぐらいだという印象があります。たまたま出会ったデジモンに聞いてみた回は何度かありましたが、ヒロが自発的に出向いたり調査したりしていたわけではありません。

 

物語が動かないのは不自然であるような目標を持っている。なのに、切実ではない弱い目標でしかなく、物語を牽引できない。これが、創作の設定の立て方として下手です。

もっと切実でヒロ自身の望みから出てくる目標にして、ヒロからがんがん事件に関わっていくスタイルを取ることもできました。逆にそんなスタイルを取りたくなくて巻き込まれ型主人公をやりたいなら、もっと呑気でどうでもいい目標を設定するか、目標を設定しないこともできたはず。

変に「親父を探さなきゃいけないんだけどー、探せとも言われてないしー、命がピンチなわけでもないしー、まあ分かんないなら良いですしそんなに真面目に探す気もないですしー」なんてやるせいで、ヒロが積極的になるのにも共感できないけどヒロが積極的にならないのも情がなさすぎて共感できないのです。すごく妙な状況です。

 

まあ「ガンマモンをグルスガンマモンにさせたくない(殺しをさせたくない)」とか「人間とデジモンの架け橋になりたい」っていう切実な目標が後から出てきてもヒロは特に何もしないので、どちらにしろ設定の運用がおかしいんですけどね。目標が切実かどうかが問題なんじゃなくて、単純に『設定があっても使わない』『使わないのに設定だけ立てる』のが問題なだけです。

 

 

■犯罪までして首を突っ込もうとする駄目さ

ヒロは「これは特に本筋が重要じゃないタイプの作品です。俺は巻き込まれ主人公です」という顔をするには、犯罪までしてデジモン事件に首を突っ込もうとする駄目な積極性があります。

第8話で危険性がよく分からない時点でカートを盗んで高速道路に突入した件もありますが、特に(駄目な意味で)印象的だったのは第2話です。まだこのアニメの見方が視聴者の中で確立してないだろう初期に、犯罪までしてごりごりにデジモン事件に関わろうとした前歴がヒロにはあるのです。

なので、その印象を元に物語を追うと「最初はあんなに無茶苦茶をしてまで目的を追っていたのになんで今は全然調査しないの?」「デジモンにコンタクトを取ってデジタルワールド行きの方法を探すのが目標じゃないの?」と見えやすいのです。

 

 

■『進展しない』とデジモンシリーズの相性が悪い

そもそも、デジモンのアニメシリーズと『話が進展しない型のアニメのフォーマット』の相性が悪いと思います。

 

まず、デジモンのアニメシリーズは前提として、パートナーデジモンの進化要素が存在します。

この進化は(実はそこまで脚本が追い付けてないことも多いのですが、恐らく存在すると思われる設定としては)パートナーの人間の精神的成長か、パートナーの人間とデジモンとの絆の形成によって発生します。人間の精神、または人間とデジモンとの絆が進展することを求められているため、『進展しない』わけにはいかないのです。

 

『ゴーストゲーム』ではデジヴァイスを使用してデジモンを進化させるのが実は特定の人間パートナーであることを要求していない可能性があるので、上記の話は無視できる可能性はありました。

しかし、設定的にそうだったとしても実際の脚本的には変わらず『人間の精神的成長』『人間とデジモンとの絆』をトリガーにしています(若干筆力が不安定ですがそういう意図だと思います)。なのでやはり進展が必要になってきます。

 

仮に進化にそれらの要素が必要ではなかったとしても、デジモンアニメシリーズは基本的に人間とデジモンの『異種バディもの』の構造でもあるのです(それを重視しているかは怪しい脚本、怪しい公式であることが多い印象ですが……)

『人間とデジモンとの絆』の進展を描かないことは不可能なのです。

仮にデジモンアニメシリーズで日常ギャグものをやりたいとしても、進化要素を入れたい・特定の人間と特定のデジモンのバディものをやりたいと思う限り『進展しない』型のアニメにするのはまあまあ難しいと思うよ。

 

 

■キャラが弱いのは別問題

あと、キャラ立てや掘り下げが弱いのは『進展しない型のアニメかどうか』とは全く別問題なんですよね。話の進展がないアニメでもキャラの掘り下げ回はたいていあるし、掘り下げ回らしい掘り下げ回を設けなくても毎回の細かいやり取りからキャラを魅力的に見せるように工夫するもんだと思いますよ。

いや、制作スタッフもそれを『やってるつもり』なことだけは理解しますけどね。やってるつもりなのは理解しますよ、実際に魅力が描けているとは思いませんけど。

 

 

■このまま3クールに入って大丈夫?

これだけ書いておいてなんですが、いつもの感想記事と言っていることは同じです。目標があるのに不在。それだけです。

2クールになって「グルスガンマモン絡みの問題」「人間とデジモンの架け橋問題」という新たな目標が浮上してきたはずなのに、やっぱり目標不在。1クールも2クールも結局、その状況は変わらなかったように思います。

 

『ゴーストゲーム』が何クールやる気で作っているのか分かりませんが、4クール(1年)だと考えるともう折り返しに入っているわけです。いい加減、話の方向性ぐらいははっきりさせたほうが良いと思います。

ヒロに何もさせずに、怠惰で人命軽視なところばかり描いて2クールを終えてしまったのはかなりきついと思います。いい加減リカバリしてほしいですが……正直、あまり期待はしていません。淡々と見守ろうと思います。