灰色の本

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『デジモンゴーストゲーム』第45話「幽霊新聞」:感想 ①

デジモンゴーストゲーム』第45話「幽霊新聞」の感想①です。

いつもの回だが、いつもでは済まされないダメさも兼ね備えた回。

 

長くなったので記事を①②に分割しています。 

 

■ようやく真っ当な被害者になったコタロウ

今回のコタロウは普通に……ようやく普通に真っ当な被害者でした。コタロウの被害はだいたい毎回自業自得だったり、自業自得でこそ無いものの他にカスな行為をしてたりして素直に可哀想だと思えませんでしたからね。こんなに真っ当な被害者だったのは初めてでは。

(前回も自業自得ではないタイプの被害者だったんですが……「ものを無料でくれると言う後輩の言葉に乗ってほいほいタカった」ってのはカス行為までは行かないかもしれないけど共感しがたいんですよねえ……。ヒロがパシられやすい性格をしてるのを知ってて心配するどころか積極的にパシるという搾取的な性質は第1話から語られているわけですし。)

 

ずっと言ってるんですけど、コタロウってカスすぎて「ホラー映画なら真っ先に死ぬヤツ」ってイメージなんですよ。正直1話でクロックモンに襲われた時点で死んでておかしくないキャラ性なのに、『ゴーストゲーム』が主に人間に謎の御都合主義回復設定を持たせる傾向にあるのでなんでか生き残ってるだけのキャラです。

ずっとこのままカスキャラなんだったら「なんで作品のシリアスさを高めるための犠牲としてさっさと殺さないんだろう」と思いますし、カスキャラという意図じゃないんだったらなんでこんなカスな言動ばっかりなんだろう・ヒロとの友情エピソードをやらずに名前ありモブに毛が生えたようなカスをやってるんだろう、と疑問です。ただの一般人枠&良き友人枠で良いのに。

 

 

■未だに危機感がなく、友人を危険に晒すルリ

ルリは……うん、普通なら「いたずらでしょ」という切り捨ては冷静で素晴らしいと思うのですが……。これだけ怪異に出会っているのに容易にそう切り捨てるあたり、マジで生命の危険の可能性がある事件に関わっている自覚がないというか……。

 

ミカちゃんが怪我止まりで死ななかったら良かったものの、死んでたらどうする気だったんでしょうか。だってルリはミカちゃんへの被害を全く止められていなかったんですよ? ミカちゃんが死ななかったのは、徐々に事件をエスカレートさせることで自分のニュースの人気を狙っているパブリモンがあのタイミングではまだ殺人をする気ではなかったというだけです。パブリモンがミカちゃんを殺す気で来てたらミカちゃんはあっさり死んでましたよね……。

 

後半のパブリモン登場後に「えっ、デジモン!?」と今さら驚いたように言うルリも酷かったです。いつもいつも「デジモンのせいなの!?」と今さら驚いているので、いつも通りの酷さなんですけどね。

 

 

■突然のアイドル登場&先輩のアイドルオタク化がいただけない

有名人が被害者になってほしかったという脚本事情があるのでしょうが、先輩を突然アイドルオタクにする手癖の悪さはいただけませんね……。そりゃ二次元オタクと三次元のアイドルオタクを兼ねているオタクもいますが、先輩がアイドルオタクも兼ねているという前振りが無さすぎる気がします。登場してからそこまで間を置かない第10話「死ノ遊戯」時点で「実はアニメオタクだけでなくゲームオタクでもあった」と語られるのは十分分かる範囲なのですが、そこからもう30話以上も経っていきなりアイドルオタク設定も増えるなんて……。

いや、一応「声優ユニット」でもあるという説明はつけられてるんですよ。でもその設定、俺は2週目を見ないと入ってこなかったです。だって彼女達がやってる料理番組しかり、「番組内での勝敗による罰ゲーム」という設定しかり、まるきり普通のアイドル風(それも一昔前感あるアイドル風)なんですもの。声優らしさが感じられなかったです。

 

もちろんどうせ後付けなんでしょうからあまり言っても仕方ないのですが、先輩のアイドルオタク設定が突然のぽっと出なら、アイドル達も突然のぽっと出なのもしょっぱいです。これが、序盤からサブリミナル的に背景に映り込んでいた(先輩の見てるアニメ情報に出ているとかスマホのニュース記事に出ているとか街頭テレビに映っているとか)ようなアイドルたちが満を持してついに本編登場、だったらそれだけで熱いわけですよ。

例えば第40話「螺旋海岸」でゲストキャラが勉強に使ってるホロAIが、映像では既に出てきていたホロだったのだってちょっとうれしかったじゃないですか。

まあ確かにここは脚本考えてないのに事前に仕込んでおくというのも難しいところではあるんですけど……全部が全部ぽっと出なので、世界が生きている感じがしないなあと思います。

 

例えば先輩のアニメ好きも、「先輩が特に凝っているアニメ」を設定しておいてちょこちょこ話題に出させるとかさあ。

ルリのアルファアカウント友達も、事前に設定しておいて、ちらちらSNS画面に映すとかさあ。

 

こんなに話数があるのに、この世界の日常がほとんど見えてこないんですよね。……真面目に謎なんですけど『ゴーストゲーム』って何にここまで話数使ってるんでしょうね? ホラーも鳴かず飛ばず、話も進まない、キャラの深堀りもしない、わちゃわちゃ仲良くつるむこともしない、世界観も大して描かない。なんなんでしょうね……?

で、正直ファンにも新規にもほぼウケてないイメージ(※)なのに1年を超えて続いているのも、どんな判断だ金をドブに捨てる気か、という気はだいぶします。

(※)そもそも各SNSを見ている限り反応数≒視聴者が少ないです。直近の『デジモンアドベンチャー:』の反応数と比べてしまっているのが悪いような気もしますが。『デジモンアドベンチャー:』は、『デジモンアドベンチャー』という人気過去作を下敷きにしたために反応だけは結構あったようですからね。今も検索すれば(批判的なものが大半とは言え)感想が相当数引っかかるので、感想がほぼ砂漠な『ゴーストゲーム』よりは相当マシです。

 

 

■アイドルに罰ゲームでキャンセル不可スカイダイビングという人権蹂躙っぷり

そもそも。

アイドル→罰ゲームでスカイダイビング(事前通達無し、罰ゲームの差し替え不可)

って、脚本の根本的なところからぶっ飛びすぎているような……。

 

不吉な未来を告げるネットニュース! ってネタは分かりますよ。

不吉なネットニュースで予言されたのが有名アイドルの訃報! ってネタも分かりますよ。

そのアイドルの死亡原因が「罰ゲームのスカイダイビングを無理やり受けさせられた挙句に事故死!」って、そうはならんやろ。

創作への「そうはならんやろ」のツッコミって、必ず「なっとるやろがい!」で返されるから困りものですよね。現実的にありえんやろ→現実はともかく作品で実際そうなっとるやろがい、ですもんね。

 

なんだろう、治安(?)がド悪い世界ですね。ほんと何? 「罰ゲームでスカイダイビング(事前通達無し、罰ゲームの差し替え不可)」って。キャラの人権がナチュラルに蹂躙されがち、と言い換えればいつものことではあるのですが。いつものことじゃダメだろ。

……『ゴーストゲーム』、最初からこういうトンチキ作品なんですよって態度を隠さなければ逆に名作になった可能性はありますよね……倫理観むちゃくちゃなギャグ作品って結構ありますもんね。例えば、古いですがドラマの『TRICK』なんか怪奇オカルトでミステリですけど倫理観ムチャ(敵が組織的犯罪者であることが多く法の目が届かない場所が舞台であることも多いので対峙する味方側が悪いことをしても理解ができる雰囲気がちゃんと作ってある)でコメディでバディものでもある人気作ですもんね。(『TRICK』には個人的には今見ると流石に感覚が古いとも思うんですが、人気の理由は分かりますし、実際面白い作品だとも思います。)

まあ、作中キャラが犯罪だったり人権ガン無視だったりの行動をしていることをスタッフが自覚してなさそうなので、犯罪行為や倫理観のなさを作風として制御できるわけがないのが『ゴーストゲーム』なのですが……

 

『ゴーストゲーム』は結構な割合で脚本がちぐはぐしていますが、それにしても今回はすさまじい気がします。不吉な未来予知ネットニュースがやりたかったかスカイダイビング空中戦がやりたかったかのどちらかだとは思うのですが、どちらを最初に思いついたのか、主にどちらをやりたいからこの案で行こうと思ったのかさっぱり分かりません。どちらを最初に思いついてどちらをやりたかったにしても、この二つのネタを同じ回にぶっこもうと思った理由もさっぱり分かりません。

ただ、敵怪異が今までの回の中でも屈指クラスに雑な退場(雑に殺されてそのまま終わり)ということから、敵怪異のことは制作側にとっては非常にどうでも良かった気配だけはビンビンに伝わります。

 

 

■加速するのは怪奇じゃなくてルリのいじめっこ気質

EDが新規だったのでついでに「宙のデジモン調査ファイル」も見てしまいましたが、いつもどおりルリがあることないこと言って先輩をいじめてましたね……。ルリってマジでいじめっこ気質ですよね。創作のキャラ、それも仲間キャラとしては珍しい気がします。作中に出てこない部分でクラスメイトをいじめ倒して不登校に追い込んでてもおかしくないキャラだと思います。取り巻きのミカちゃんとアオイちゃんがまともなので集団でのいじめは出来ないと思いますが。(でもルリは一人でも結構な破壊力あるタイプなんですよね……。)

本当に、『ゴーストゲーム』って何歳向けを想定した作品なんでしょうね。いじめ描写や犯罪描写を肯定的に描く~否定的でなく描くって、児童向け作品では御法度ってイメージですけどそうでもないんですね。少なくとも制作体制内部でそういう観点でのチェック体制(自主検閲)は一切働いてないように見えます。

……まあそんなチェック体制があるなら、(倫理観以外の観点でも同様のチェックを入れるでしょうから)近年のデジモンシリーズがファンからボコボコに叩かれまくるような事態にはなってない気がしますが……。

 

 

■新ED曲は空気&サイコパス

え? 新EDですか? 悪くはないけど空気ですかね。正直『ゴーストゲーム』はOPが良いだけで、EDは空気曲(1,3,5クール)とトンチンカン曲(2,4クール)を交互に繰り返してるだけだと思います。

 

やぶのてんや氏提供のイラストレーションは毎回可愛らしいですけどね。そのイラストレーションも、氏に描かれたメインキャラたちからあふれる人の良さそうな・純粋な良い子そうな印象はどこにも存在しないんだよなあ……と思うと微妙です。そんな印象のキャラはアニメに存在しないんだけど誰を描いてるんだ? って話なんですよね。最も、氏が恐らく「普通にいそうな、視聴者が共感しやすい素朴な良い子」と注文されてキャラデザインを提供したと思われるヒロたちにホップステップ軽犯罪でパシリ&いじめ大好きで命を軽んじたイカレた挙動をさせているアニメスタッフが悪いのですが。

 

……今回のEDも『ゴーストゲーム』の作風に合わない綺麗なメロディの空気ソングですけど、サビで一番耳につきやすい部分、綺麗なメロディラインに乗せて「君のこと壊してしまうかもしれない♪」と言って格好良くカットアウトで終わるサイコパスさは『ゴーストゲーム』っぽいですね……。いやそんなところで作風に合ってちゃダメだろうがよ。

曲全体は『ゴーストゲーム』の作風ガン無視のラブソングだよねってことは伝わるので「君のこと壊してしまうかもしれない♪」も意図は分からなくはないんです。けど、それでも歌詞を通しで読むと「君のこと壊してしまうかもしれない」はかなり唐突に登場するので、キてます。

 

 

■そのほか

・アイドルたちのところへ乗り込んだときのジェリーモンのセリフ。

>「最新型の警備ホログラムさ」

人間の指示がなくともサッと言い訳を並べられるジェリーモンは優秀ですよね。その優秀な頭脳を悪だくみに使う上に、肝心なとこで詰めが甘くてすっぽ抜ける傾向があるのでトラブルメーカーを通り越して害悪メーカーになるだけで。……それ、『だけで』って言って流していい要素なのか?

 

・今回はアニメは凄かったですね。「とりゃさ!」と叫びながら回し蹴りを決めるジェリーモンの動きは特に目を見張るものがありました。

 

・アイドル達はキャラが立ってて良かったと思います。『ゴーストゲーム』には珍しく、愛着が持てそうなキャラだなーと思いました。

……でもどうせ今回こっきりの出番なんだろ。アイドルって設定から、ヒロたちと何度も接点を作るのは厳しそうだし。

 

・いや、杏奈ちゃんを守ると言っていたガンマモンがちゃんと航空機から飛び降りてくれるのは良かったんですけど……。装備無し生身のヒロを連れて突然飛び降りるあたりはガチで危険害獣ですね……。いや、というか、逆に『飛び降りて守らなきゃいけない』可能性を考えてヒロが事前にガンマモンと意見をすり合わせ、装備を借りて装着しておくべきだったんですけどね。

てーかヒロと一緒に飛び降りなきゃいけないってのは「じゃないと進化できないし技も撃てないから」とかそんな事情なのは察するんですけど、進化はしてから飛び降りれば良いだろって話ですし、進化や技を出すのにパートナー人間の指示が必須であるかははっきりしていない(パートナー人間が進化の意思を示せそうにない状態でデジモンが勝手に進化している描写が複数回あったり、グルスガンマモンはヒロの指示拒否を無視して自分の意思で技をぶっぱなつ描写があったりする)ので、説得力はないですね……。

 

・事実上の殺害予告とも取れるようなことをされているのに、ぽっと出のヒロたちに警備を任せるアイドル事務所どうなってんだよ。まずヒロたちが不審者だろうがよ。……というのは流石に話の都合、で押し切って良い話でしょうか。

どうせなら、御都合主義はもっと熱い理由で使ってほしいんですが……。