灰色の本

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『デリシャスパーティ♡プリキュア』第4話「ふくらむ、この想い…キュアスパイシー誕生!」:感想

『デリシャスパーティ♡プリキュア』第4話「ふくらむ、この想い…キュアスパイシー誕生!」の感想です。

 


※リアルタイムより遅れて視聴していますが、初見状態で執筆しています。

 

 

■背伸びしすぎてコケるかのような第4話

決して、『悪い話』『つまらない話』とは思いませんでした。面白いかつまらないかと言われるとどちらかと言うと面白いと思いましたし、扱おうとしているテーマも共感しやすくて良いと思います。

ただ、無理せず自然にキャラに寄り添って描いていた第3話から比べると、無理して背伸びして盛大にコケたかのような印象を受け、第3話の恵まれたパスを無駄にしたなあと感じました。

 

 

■ここねの心情変化のダイナミックさについていけない

やりたいことが分からないわけではありません。むしろ、「引っ込み思案で人付き合いを避けていた女の子が踏み出す勇気を得る」という、やりたいテーマ自体は王道で共感しやすいものだと思います。ただその感情が、たった1話で展開するには激重すぎてついていけませんでした。

ここねは第3話で丁寧にキャラの現状が説明されました。が、あくまで『現状』です。何かが展開したわけではありません。ゆいとの友情が開始したのは今回第4話からです。今回の後半でここねはもう変身するので、そこまでの友情構築フェーズは0.5話ぶんぐらいしかありません。なのに、変身前の決意表明がこれです。

>わたし……一人が楽だった。

>静かな一人の時間が好き。

>人と関わるのは面倒だしすごく疲れるから。

>でも、あの子と一緒だと、心の中で温かいものが……

>今まで知らなかった思いがどんどんふくらんでいく。

>わたし、守りたい。大切な場所をあの子と。

>だって、どんなことも一緒にやればできるって、もう知ってるから。

流石に感情が重すぎでしょ。一緒に重いマットを運んで、パン食べただけの数時間(最悪1時間以下かもしれない)の仲ですよ。ここねさん、ほんとに友達いなかったんですね……と引き気味に思ってしまいました。

 

あと、『どんなことも一緒にやればできる』をここねが力説する根拠が『一人じゃ力が足りなくて動かせないマットも二人なら動かせる』というひたすら物理的な話なのも大減点です。重いものが人数を増やせば運べるってそんなの当たり前だし、ゆいである必要もここねである必要もないじゃないですか。なんでそんなに感銘を受けたのか、全くついていけませんでした。

 

更には戦闘終了後、

>それにわたし、ずっとあなたに伝えたかった。

>ありがとう。

『ずっと』って……この数時間以内のこと(マット動かしとパンの分け合い)+キュアプレシャスに家まで送ってもらったことぐらいしか指す内容ないよね? 重すぎてちょっと怖いぐらいだよ。

良く言えば、ちょっとお礼を言えなかったことを悔やむ真面目で素直で純粋な子で、ゆえにメンタル弱くて生きづらい……って解釈はできるんでしょうけどね。

 

こんな重い感情を展開するには、相応の尺を使ってここねの心情をじっくり丁寧に描く必要があると思います。たった1話で足りるとは思いません。なんだか、先輩魔法少女に憧れながらなかなか覚醒せずに1クール末ぐらいにようやく変身する魔法少女の話を、過程を飛ばしていきなり初変身回から見せられたような感触です。それぐらいぶっ飛んでました。

 

 

■今回第4話から逆算すると第3話がおかしい

こんな話をしたいなら1クール末ぐらいにしろというのが自分の意見ですが、プリキュアのフォーマット的にはさっさと仲間を回収するのがデフォルトでしょう(※数作品見た印象だけで言っています)。そんなに初期仲間の回収を遅らせられない事情はあるかもしれません。

だとしたら、第3話の内容がおかしいです。この第4話をやりたかったなら、パムパムはさておきコメコメに構っている暇はなかったと思います。ここねとコメコメの事前出会いシーンすら無駄です。そんなことより、ゆい-ここね間の友情の下積みをやっておくべきでした。それでも二人のあいだの友好度が足りないと思いますが、第4話だけで駆け足で描くよりはマシです。

「仲間加入回で扱うにはここねの感情が重すぎるから、描くのは諦めろ(orそういう重い感情は次の個人回かその次の個人回で描くつもりで準備するだけに留めて、もうちょっとささやかな話を覚醒理由にしろ)」と言ってしまえばそれまでですけどね。

 

重い重いって言ってますけど、別にその感情が悪いとは思わないんですよ。『出会ったばかりの相手に対して重すぎる』と言っているだけです。感情の詰めより方が急すぎる。

あるいは、単に見せ方が悪かったのかもしれません。無口(口下手)なここねがプリキュア覚醒直前まで内心をそんなに見せない構成なのに、覚醒直前の決意表明でいきなりべらべら喋り出すから突拍子もなく見えるという点もあると思います。ここねが無口(口下手)な設定は動かせないでしょうから、独り言のシーンを入れるなりモノローグを使うなりしてここねの心情を事前に分かるようにしておけば、違和感は減ったと思います。

 

 

■ここねの『運命の相手』から転げ落ちたパムパム

前回第3話で、パムパムとここねの間に特段の描写がされたわけではありません。ただ、この二人の出会いは運命だよと指し示すように、出会いシーンが印象的な演出で描かれただけです。それは良かったと個人的には思います。あの時点で(コメコメの話をやっている横で)ここね-パムパムの関係を深掘りしても、話がごちゃごちゃするだけであまり効果的ではなかったでしょう。

 

けど今回がここね-パムパムの関係を描く回ではなくてゆい-ここねの関係を描く回だったことで、せっかくの前回の『運命的出会い』かのような演出の力が弱まってしまったと思います。

だって、パムパムは特にここねがプリキュアになる動機を作った存在ではなかった、ってことですからね。そりゃパムパムが会いたいって言ったせいで事件に巻き込まれたというのがここねのプリキュア覚醒のきっかけではあったけどさ。

 

「自分のせいでここねを巻き込んでしまった」とここねに謝るパムパムは健気で良い子で、普段は自信満々ながらもちゃんと謝れる、善性に満ちた良いキャラだなあと思いました。そこは良かったです。

が、それではパムパムがここねを選んだ理由が立ってないよなあ、と思います。残念ながらパムパムはどんな相手にでも言えるようなことを言っているだけで、『これからパートナーになる、ここねが相手だから』という内容は言えていません。パムパムは『ここね』個人に語ることは持っていないのです。

 

更には、パムパムがここねのことを『容姿的に』褒めたこと(しかも結構具体的に褒めたこと)も地味ながら減点です。しかも学校シーンでの解説でここねが本当に美少女であることが強調されているので更に倍増しで減点です。

パムパムは、何の変哲もない平凡な女の子であるここねが何故かすごく引き付けられて見えたとかではないんですね。運命を感じたとかじゃなくて、可愛いなーって一目惚れしちゃっただけなんです。パムパムに、ここねへの多特別な感情が芽生えるエピソードはほぼ何もない。第3話の展開から優しい子だなとぐらいは思っているでしょうけど、それだけです。ここねについて語るパムパムは容姿面をあげており、そちらの印象のほうが強いということなのです。可愛くなかったらパムパムは大して興味を惹かれなかったってことかなあ。

多分そこまで考えずに台詞書いちゃったんだろうな、とは察しますがね。『ここねは美少女』が基本設定なら、ここね担当初回である今回でその設定に触れておくことは重要ですしね……。

 

コメコメも何故ゆいをパートナーに選んだかとかそういう話はないので、別にプリキュア-妖精間でパートナーへの思い入れがあってもなくても良いという脚本スタンスなんでしょうけど。なんか、味気ない展開ですね。

 

 

■キュアスパイシー&ここねの設定のちぐはぐさ

脚本ではなく設定段階の話なのですが、キュアスパイシーの設定がちぐはぐして見えて、すっきりしませんでした。こんな感じです(↓)。

・『スパイシー』という名前で青衣装なのがピンと来ない

・『スパイシー』という名前でパンモチーフなのがピンと来ない

・スパイシー+パン=カレーパンモチーフなのかと思ったが、その割にはカレーパンが強調されない。他のパンの描かれ方と印象が変わらない。

・攻撃技とかパムパムの変化はサンドイッチモチーフっぽい

・『ふわふわサンド』と言っているが、『ふわふわ』と『スパイシー』のイメージが喧嘩している気がする

・『ふくらむ』もキーワードのようだが、このキーワードも目立たない

・『焼き上げる』は名乗り口上にあるのに話にはまだ使われていない

・『いろんなパン』をモチーフにしていますというのが正解なのだろうが、それが伝わってこないというか……。

・『いろんなパン』をモチーフにするなら、当てはまらないパンのほうが多いだろう『スパイシー』を名前にするのはどうなのだろうか

 

なんだか設定段階でグダってるせいで実際のアニメでもどのパン種を推すか(あるいは『いろんなパン』ということにして特定のパン種を強調しないことにするか)の腹が決められないまま進んでるような、そんなもやもや感がありました。

 

ついでに言えば、ここねは描写の限りでは『内気、引っ込み思案』『本質的には優しいのだが、素直に助けを求められないほど口下手なのでその美徳が発揮されない』『傷つきやすく、人間関係を疎んじているが、内心では人間関係を求めている』というキャラです。ここまでで結構お腹がいっぱいです。

そこに『学内の高嶺の花』『美少女、スタイル抜群』『知性もずば抜けている』と美点をモブの説明台詞だけで盛り盛りにしてくるのも若干ついていけませんでした。『学内の高嶺の花』だけなら「ああ、誤解されてるタイプの子なんだな」と思いますし実際その点はそうなんだと思いますが、『美少女、スタイル抜群』『知性もずば抜けている』は誤解ではなく事実っぽいですよね。先に述べた『内気、引っ込み思案』周りの設定だけで既に丹念に語るべき内容が多くていっぱいいっぱいなのに、そんなことまで語る余裕はあるのかなという気になりました。

 

なんだか、変身後のキュアスパイシーにしても、変身前のここねにしても、ちょっと設定過剰&整理がされてなくて雑な印象を受けました。

※『学内の高嶺の花』『美少女、スタイル抜群』『知性もずば抜けている』のほうは、情報の出し方の順番によってはあまり気にならないレベルだったかもしれませんが……

 

 

■戦闘設定としてのスパイシーは魅力的

一方で、戦闘時のスパイシーの多芸っぷりは魅力的だなあと思いました。今回は敵キャラはそこまで凝ったギミックを使ってこなかったのですが、スパイシーがいろんな技を使うので楽しめました。

スパイシーは戦闘参加初回にして『バリア』『ダメージ&拘束』『浄化』と3種類(用途は合計4種類)も技を使っているんですよね。特にダメージと同時に敵の拘束が可能な「ピリッtoサンドプレス」は戦いの良いギミックになりそうで期待が持てます。

更には、スパイシーは初変身してからすぐに「私に考えがある!」と言って作戦立案してバトルに能動的に関わっていって、頼れる知性派らしさを見せつけていました。プレシャスも戦闘の頭脳は良いほうなので、あまり差がはっきりはしませんでしたが。

強いて難を言うなら、ここで知性派司令塔としてスパイシーが参戦することで『直接戦闘に参加できない頭脳担当』のローズマリーの影は薄くなる(なのにデリシャスフィールド展開役でローズマリーを参加させないわけにはいかない)という問題が上がる気がしますけど……まあ、揚げ足取りですね。今後ローズマリーの役割をどう扱うかはのんびり見守りましょう。

 

 

■そのほか

・冒頭で食べるものがタラの芽と、渋いものを突いてきているのは好きです。ちゃんと季節感もありますね。子供への教育的要素も狙ってるんでしょうね。

 

・大人なのに子供であるゆいに「自分から一緒に行きたいとは言わないけど誘って誘って~」なんてかまってちゃんな『察して』言動をするローズマリーはまあ悪いんですけど、苦笑の範囲です。

しかし、コミカルに表現されていて分かりやすいローズマリーの『察して』言動にマジで気づかないゆいにはちょっと引きましたし、一方で解釈違いを感じました。ゆいって自信があるゆえに自分の考え以外が盲点になったまま突っ走ってしまう子なだけで頭は良いし盲点に入ってさえいなければ気も回るというイメージで、こんな感じに鈍感な子だとは思ってなかったんですけど……。こういうのも盲点に入っちゃうタイプの子なんでしょうか? それとも、単に全体的に鈍感なだけ?

ローズマリーは(戦闘面では使いづらそうなものの)コミカルで使いやすそうなキャラなんですが、コミカル方面で使いやすそうなキャラだけに「なんかいっつも他のキャラからナチュラルに軽んじられている。脚本がこいつになら何をしてもギャグで済むと思っている」といった状態に陥りやすい可能性はあります。今回のゆいによるローズマリーの扱い(ギャグ描写)は、ちょっとそれっぽい懸念を感じてしまいました。

まあ、まだ序盤だし、ささやかな懸念が1回あっただけですしね。取り越し苦労であることを望みます。