灰色の本

アニメ他の創作作品の感想とか。更新がある日は、22:00に予約投稿します。

MENU

『デリシャスパーティ♡プリキュア』第5話「なかよくなりたいのに…!ここね、初めてのおともだち!」:感想

 『デリシャスパーティ♡プリキュア』第5話「なかよくなりたいのに…!ここね、初めてのおともだち!」の感想です。

 


※リアルタイムより遅れて視聴していますが、初見状態で執筆しています。

 

 

■良い回だったが、手放しで褒めがたい

不思議な感触の回でした。

話の前半は、決してダメではないのですが、基本設定なテンプレ引っ込み思案(というか、俗語で言ってしまえばテンプレコミュ障ですね)を繰り返しているだけのように見えてちょっと退屈でした。この序盤段階で基本設定を繰り返し強調すること自体が悪いとも思わないので、退屈と感じた実際の理由は「新情報が少ない」と「筆致がところどころ強引でちょこちょこ引っかかり、乗り切れない」だと思います。

 

そのままバトル展開に突入してしまうと、今度はスパイシーの突然の暴走に驚きました。ここね=スパイシーが悩んでいるのは分かっていましたが、戦闘で暴走するような内容&度合いだとは思っていなかったので戸惑いました。前回突然のプリキュア覚醒でも知力を生かして堂々と戦っていたスパイシーらしくない、という意味でも戸惑いました。

 

ですがここね=スパイシーが心情を吐露し始めると、やりたいことは一気に納得できました。

「せっかくできた友達に嫌われたくない」と焦っていた、というのが悩みの詳細だったんですね。単に「付き合い方が分からない」という悩みだと思うと理解できませんでしたが、焦っていたと言われるなら暴走は理解できます(知性担当というキャラにはあまり似合わないとは思いますが)。

スパイシーが空回りしてしまうせいでプリキュア(+ローズマリー)がチームとして噛み合わない……というのは、やるなら序盤にやっておくべき内容なのでこのタイミングでやって良かったと思います。

 

最終的な感触はだいぶ良かったです。描こうとしていた情感も個人的には好みでした。

しかし、細かい描写に引っかかりがあって話の流れが悪くなっており、雑な筆運びだなあと思えました。手放しで褒めて良いのか迷います。内容は良いのに筆致で損をしています。

 

 

■ここねの口下手さを脚本が持て余している

第4話もなんだか似たような構成なんですよね。最終的に言いたいこと(ここねの心情)それ自体は共感できるものなんです。ただ、その心情が出てくるのが遅く、後半のバトル展開に入ってからいきなりここねがべらべら喋り出して口頭で全部語ってしまいます。唐突なんですよね。

 

ここねが無口(口下手)という設定なのが、脚本構成の足を引っ張ってしまっている気がします。ここねがキャラクターとしてダメというわけではありませんよ。あくまで、『脚本が下手(脚本陣の技量不足でここねを扱いかねている)』という話です。

 

ここねは口下手なので、自分の思いをすぐに喋ることができません。その設定に誠実に・ド正直に・愚直に従うと、基本的に作中で感情を出せないのです。

なので、話後半の盛り上がりで『ここねが感情を昂らせる』シーンを設定して一気に喋らせる……という処理の仕方をする。そうすると当然、唐突に見えやすくなる。自分にはそう映りました。

 

脚本側がここねの感情を『回の最後(クライマックス)で明かされるべき謎』だと思い込んでいるような気配があるのも気になります。第4話と第5話のここねの感情は最後まで引っ張るタイプの謎ではなかったと思うので、小出しに明かしながら語っていっても良かったと思います。

 

なんか上手いこと、ここねの感情を(口下手なここねに喋らせなくても)出す手段があれば良いんですけどね。そうすれば唐突にならなくて済むので、全体的な筆致がなめらかになってぐっと良くなるんじゃないかなあと思うんですが。

 

今作では視点を無視して語ることができる『ナレーター』があるんですから、ナレーターを使って何かしら言わせてもいいと思うんですけどね。別にここねの内心を断言するような物言いじゃなくて、例えば「ここねちゃんは、ユイちゃんの良いお友達になりたくて頑張りすぎちゃうんですねえ」ぐらいの言い方で……

 

 

■パムパムに尺を回しても良かったのではないか

ここねが、友達ができないあまり、初めての友達であるゆいに嫌われないよう焦ってしまう心情はよく分かりました。

でも、第4話を既に丸々ここねに使っている状態で、第5話でやることなのかな? とちょっと疑問に思ってしまいました。なんか、第4話と第5話で言ってることが結局あんまり変わんないんですよ。序盤に2話も使ったわりに情報量が物足りない気がしまして。

 

特に気になったのが、パムパムがやたら空気だったことです。パムパムは前回第4話(=ここねのプリキュア覚醒回)で大した出番がなかったので、ここねに第5話を使えるならここね-パムパム間の相棒としての絡みはやっておくべきだと思うんですが、そんな描写は有りませんでした。ローズマリーがここねに嫌われてるんじゃないかとごちゃごちゃ言ってるシーンで、割り込んで喋ったって良かったと思うんですけどね。ローズマリーの余計な心配については、ここねの傍にいるパムパムだって何かしら思うところがあると思うんですが。

 

ここね-パムパムとの絡みなど新しくやらなくちゃいけないこと・やれることはあるのに、やらないから情報が少ない……というのはあんまりいただけません。第3話で、いろんなキャラを並行で動かしていろんな情報を詰めていた手腕を見ると、出来ないことはないはずなんですけどね。

(※各回の脚本家の名前は敢えて確認しないようにしています。第3話と第4話、第5話では脚本家が違うとしても考慮しません)

 

 

■最終的には良いところに落ち着いたローズマリーとの関係

個人的にもともとローズマリーに高い期待をしていたせいかもしれませんが、今回のローズマリーの描き方は不安定だなあと思いました。

 

ここねに嫌われたとすぐに思ってしまい、相談の意図といえ他メンバーにぺらぺら喋ってしまうローズマリーさん、大人として案外に頼りないなあと思ってしまったんですよ。

ここねが対人関係が苦手そうなことって、視聴者には分かっても実際に対面で見たら分からないもんなんですかね? 「大人の相手は苦手なのかしら」とどっかり構えて見守るぐらいしてほしかったなあと思います。

 

でもローズマリー&ここねの関係については、最終的な落としどころは良かったと思います。「本当はずっと話しかけたかった」でプレゼント用のコスメを買ってタイミングを伺っていたというここね、いじらしくて可愛らしいじゃないですか。

>「そのアクセすてきだなと思ってたけど、なかなか言えなくて」

>「そういうこと!? やだ、わたしったら勘違いしてたのね」

このやりとりも、誤解が解けただけでなく、もともとお互いを尊敬・尊重していたことが伝わる良いやりとりです。

>「ここねのこともっと知りたいわ」

>「ありがとう。わたしも、もっと知りたい」

ここねがローズマリーの言葉に応えてさらりとお礼を言い、さらりと「わたしも知りたい」と続けていく。

アニメの1話としてどうなのか、このタイミングでこの尺を使ってやるべきことがこれで正しいのか……という創作論を脇に置いて『ここね』という一人の子の人生を考えるなら、今回の彼女の迷走は無駄ではなかったです。

彼女がお礼を言えるようになったこと、「わたしも知りたい」と続けられるようになったこと、ささやかではありますがなんとも得難く貴重な成長であると思います。

 

 

■そのほか、細かい描写の違和感

・ゆいの挨拶にここねが張り切りすぎて「おう!」と返してしまい、ゆいと拓海にポカンとされるシーン。ゆいはそういうことは気にしてない子だと思っていたので、いちいちポカンとするのが「冷たいなあ」と感じてしまいました。拓海がポカンとするだけで、ゆいは『少し驚く→ここねの挨拶に乗って「おう!」と明るく返す』ぐらいで良かったんじゃないかな。

ゆいは主人公なのに、魅力部分が第1話以降掘り下げられず、扱いが空気寄りな気がします。もうちょっと前に出ても良い気がしますね。今回のスパイシーに向けての説得も、ゆいよりローズマリーのほうが美味しいところを持っていっている気がします。

 

・ここねは美容方面に興味がある子だったのか。突然コスメについてぺらぺらとオタクの早口トークみたいな勢いで喋り始めたのでびっくりしました。ゆいやローズマリーがびっくりするのは良いんですけど、あまりに前振りがなく突然だったので。

個人的には内気引っ込み思案の先天的美少女が『コスメ・美容に詳しい』というのはテンプレをちょっと外してきてて面白くて良いなあと思うのですが、テンプレを外しているからこそ、もうちょっと丁寧な導入だったら良かったのになあ。

というか、もしかしてパムパムが「可愛い」という方向でここねに釣られたのって、ここねの美容志向からの美しさも含めたものに釣られたってことだったんですか……ね? ここねは先天的な天然美少女っぽいキャラデザなので、パムパムが釣られたときのここねの『美』にコスメ要素や美容要素がどこまで反映されているのかよく分かりません。