灰色の本

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『デリシャスパーティ♡プリキュア』第14話「初恋ってどんな味? 恋するキモチと拓海のこたえ」:感想

『デリシャスパーティ♡プリキュア』第14話「初恋ってどんな味? 恋するキモチと拓海のこたえ」の感想です。

 

好きな女の子のために戦うことを決める決意回の直後に、全く関係ない女の子から告白される回って。拓海さん、大変ですね。(笑)

 

■初恋を主題にそれぞれの思いの描写が光る

今回も濃密な回でした。

ゲストのともえちゃんと彼女に告白された拓海の話を中心に、「初恋」という主題ですっきりとまとめていました。

一方でともえの心情描写、拓海の心情描写、ローズマリーの心情描写はしっかり挟まれ、拓海とローズマリーのにらみ合い(※ローズマリーは恐らく気づいていない)も続いていることが描写されます。また、拓海が初めてデリシャスフィールド内での戦闘に姿を明確にあらわし、(とっさにつけた)「ブラックペッパー」という名乗りも明かされました。ゲストキャラがほぼ中心にある話でこれだけ進めるのはすごいと思います。今回の「初恋」という主題から逸れず、ゲストのともえちゃんのストーリーと共存しながらきっちりと『デリシャスパーティ♡プリキュア』としての本筋もメインキャラの心情描写も行えていると思いました。

※拓海とローズマリーのにらみ合いには結局進展はなかったじゃないかって? 『拓海はまだローズマリーから情報を得ようと努力と行動を続けているんですよ』という描写がされることに意味があるんですよ。

 

ただちょっと気になるのは、マリちゃんがあまりに便利キャラすぎる(ボケもツッコミもプリキュアを支える大人役も話を進めるキーキャラも全部一人でできてしまう。更には、突然出てきても違和感が全くない)ために肝心のプリキュア達を食ってしまっている気配すらあることです。

プリキュアでは非プリキュアの味方キャラが一時退場する展開もときどきあるイメージなので、どこかで一旦ローズマリーが引っ込むタイミングを取るというのも一つの手ではあるかなあと思います。と言っても、今作のプリキュア3人娘にはローズマリーという安全な基地のような人・場所が必要であるような気もします。そう思えてしまうほど、ローズマリーが『サポートする大人』の役割をしっかりきっちり果たしているのです。

 

 

■「スイートクリスタル」の露骨な販促回だが、ちゃんと筋には噛み合っている

普段、『デリシャスパーティ♡プリキュア』はタイアップ商品(玩具や食品など)の販促シーンがさりげなくて上手いなあと思っています。これで子供が買いたくなるのかどうかは自分にはよく分かりませんが、さらっと入ってきて脚本の流れ上はあまり不自然ではないのは上手いと思います。まあそりゃ「おっ、これはCMのターンだな」ぐらいは思いますけど。

 

そんな中で、今回の「スイートクリスタル」はがっつり前面に出てきたので驚きました。

ともえちゃんに勧めるときにも「これ食べて」で済まさずに「スイートクリスタルで」「笑顔になるよ!」とちゃんと商品名を言ってオススメし、その後もスイートクリスタルの名前を出し続けました。いつものメンバーで美味しそうにスイートクリスタルを食べるシーンも長めの尺を使ってしっかり書かれました。更にはローズマリーが拓海におすそ分けする、おすそ分けされた拓海がスイートクリスタルを食べるシーンもちゃんと作中で描く、最後にはまたみんなでスイートクリスタルを食べると、大盤振る舞いです。

 

うーん、普段に比べるとかなりくどい。清々しいほどの販促☆大盤振る舞いです。

けど、『初恋』『人それぞれどんな食べ方をしても良い』という要素と「スイートクリスタルは初恋の味」「恋する気持ちは十人十色、みんな違って良い」としっかり絡めに行っているところ、全編しっかりスイートクリスタルが小道具として傍にある回として描き切っているところは個人的には高評価です。なので、個人的にはプラマイはとんとんと言ったところです。

特に、「スイートクリスタルは初恋の味」というベタなコピーと「スイートクリスタルにはいろんな味がある」ことを噛み合わせて、過去or現在に恋愛要素を持つキャラ(ローズマリーセクレトルー、拓海)の恋愛模様に暗に触れてきたところは上手いなあと思いました。仮にセクレトルーあたりは今後その恋愛模様について触れられることがなかったとしても、キャラ設定の『匂わせ』としては非常に良いと思います。押しつけがましくない情報量があります。

 

※追記。個人的には「スイートクリスタルを食べたいか?」と言われると微妙なんですが、少なくともアニメを見ていて興味は沸いたので、販促としてはこれぐらいの勢いでも正しいんじゃないかと思います。

 

 

■覗き見を全員で謝る、プリキュア達の善性

覗き見したことを全員で謝るシーンは、きっちりしてるなあと思いました。子供向けアニメですもの、これぐらいきっちりしてても良いと思います。

それに、「このキャラ達ならちゃんと謝りそう。謝るシーンが入っても不自然ではない」と思えるぐらいのキャラ描写と世界観(作風)の構築はできていると思います。ゆい達は良い子で、ゆい達がのどかで呑気で純粋な良い子であることが許される~良い子であることが普通である世界。『デリシャスパーティ♡プリキュア』ではそういうキャラと世界観(作風)が確立されていると思います。

 

いや、でも、この謝罪シーン、地味ながら凄いと思いますよ。創作慣れしてる人ほど、「わざわざ謝罪シーンをやろうとするとゴタゴタしてめんどくさいから、なあなあで流そう。謝罪シーンを入れなくて良い話の流れにしよう」って回避して描いちゃいがちなシーンだと思います。

脚本家さんが凄いんですかね? それともチェック体制が凄いんですかね? 何にせよ、しっかりしてるなあと思います。

 

 

プリキュア達の三者三葉の反応の違いが面白い

拓海への告白シーンを覗き見して、顔を赤らめるここねとらん。興味が薄そうなゆい。

ともえの打ち明け話を聞いて、共感するここね。食の話に意識が逸れまくってしまうゆいとらん。

3人のキャラ性の違いが反応の違いとして現れていて面白かったです。

 

特に興味深かったのはここねです。ここねは、実は『食事内容(味など)』にはあまり興味がないキャラなんですよね。彼女は『誰かと一緒に食べる』ことに重きを置いているキャラなので、『食』それ自体にはあまり釣られないのです。

 

結果的にプリキュア3人娘の中で唯一まともにともえの話に耳を傾けているここねが、「もう一度話す勇気なんて出ないかも」と言うともえに、ここねは言います。

>自分がどう思われているのかを聞くのって、勇気が要るよね……。

共感するように、あるいは自分自身の気持ちを確認するかのように語り掛けるここね。

作中ではあまりウェイトを取って表現されているセリフではありませんが、彼女らしい等身大の説得力があるセリフでした。

 

 

■シリアスからギャグ展開への切り替え、そして目線の違いへの意識が秀逸

ローズマリーと拓海がなごみ亭で同席するシーン。

「あんたに聞きたいことがあるんだけど」と言う拓海に対し、「ゆいのことでしょ」とシリアスな声で返すローズマリープリキュアのことを話すのか……という深刻な声色から、突然「いつから好きなの? ゆいのこと!」とギャグに持っていくのは「どうせそうだろう」と思っていたにも関わらず笑ってしまいました。テンポ感が巧みですね。

 

拓海側から見ると、そりゃあ話したいことはゆいが巻き込まれている事件やプリキュアのことに決まってます。

一方、ローズマリー側からすれば拓海関連で今気になることはそりゃあ「恋愛話」に決まってますもんね。そもそも、ローズマリー側は拓海に勘付かれてることすら(ひとまず作中の表現の範囲では)感知していないはずですもんね。

 

この二人の意識は噛み合っていません。お互いに「話がある」と言い出したら、こうなるに決まってるんです。

でも、そういう目線の違いをちゃんと把握したうえでギャグシーンに昇華しているのは上手いです。『デリシャスパーティ♡プリキュア』は、キャラの目線の違いについての脚本側の意識が安定していて上手いです。

 

 

■スイートクリスタルを「苦い」と言う拓海の意味は?

前半終了直前。拓海が選んだスイートクリスタルが明らかに緑色でとげとげしていて、拓海本人も「苦っ!」と思わず口に出すような味だったというのは興味深いです。

このシーンって、「甘っ!」でも「すっぱ!」でもギャグとしては成立したと思いますし、必ずしもギャグにしなくても「甘いなこれ……」「しょっぱい味だな……」などと呟いて遠い目をする悩める拓海の顔でCM入りしても良かったと思うんですよ。

その中でわざわざ制作スタッフは「苦い」を選んだ。ここに、何か意味を見出すべきなのでしょうか。

 

拓海が食べたスイートクリスタルの味=恋の味は苦かった。これは、拓海の恋=拓海とゆいにまつわるこれからの物語が、拓海にとって苦いものとなる可能性の暗示なのでしょうか。

 

 

■生徒会長あまねは今週も休み

ジェントルー=生徒会長あまねちゃんは今週もお休みです。

ただ、あまねちゃん宅を再び訪問するシーンを入れてリマインドをきっちりばっちり行っているので、拓海回をやっているあいだにあまねのことを忘れさせまいとする制作スタッフの意志はばりばり感じます。

個人的には好感が持てますね。ちゃんと制作スタッフがやるべきことをやっていると思います。

……ただ、「リマインドを打ち続ける手間をかけてまであまね関連の話を一旦放置する」ということ自体は構成が悪いと思うんですけどね。わざわざリマインドを打たなくて良い展開のほうがスマートなわけで。これってやっぱり不正アクセス事件の影響ですよね?

 

あまねちゃんのためにも「できることから始めましょ」というローズマリーのセリフが、拓海の「何か、できることをしなきゃ」と重なるのも上手いです。

 

 

ローズマリーからのシナモン=拓海父への初恋?

ローズマリーはブラックペッパー=拓海を見て、とっさに「シナモン」という名前をあげました。恐らく拓海の父、品田門平(『しな』だ『もん』ぺいで『シナモン』)のことだと思われます。

 

そして今回、スイートクリスタルを食べたローズマリーはその味を「あの日あの時の思い出の味」と表現して(ギャグ泣きで)涙を浮かべました。思い出して涙を浮かべるほどの初恋の経験がローズマリーにはある、ということでしょう。その相手がシナモンなのではないかという連想は、現在のところは『シナモンの名前を呼んだ際のローズマリーの雰囲気』ぐらいしか根拠がないものの、それほどおかしい連想でもないと思います。

 

終盤に、ともえちゃんを加えた全員でもう一度スイートクリスタルを食べるシーンではローズマリーは「甘ずっぱさ特盛よ~」と言っていたので、ローズマリーの初恋の顛末は(少なくともローズマリー目線では)甘ずっぱいものだったのだと思われます。

まあ、ローズマリーの初恋の人=シナモン=品田門平という推測が正しいなら、品田門平はクッキングダムを去って帰らず、結婚してしまったわけで。当時クッキングダムに残された側だと思われるローズマリーからしたら、それは甘ずっぱい、切ない思い出ですよね。

 

 

■そのほか

・今週のセクレトルーさん。

毒見と言いつつ自分がスイートクリスタルを食べたいだけなのではないか、とナルシストルーに問われてのセリフ。

>まさか……そんなわけないでしょう。

>っていうか、自分の分は取ってあるっつーの。

つまり、食べたいのは食べたいんですね。(苦笑) やっぱ好きだわーセクレトルーさん。

 

・拓海とローズマリーがなごみ亭で同席するシーン。金目鯛の煮つけですか、ローズマリーさん良いもの食ってますね。第1話では確かお金がなくて行き倒れていたはずですが、そう言えば金銭問題は解決したのかな。クッキングダムと連絡が取れたから援助金を貰ったとかそんな感じでしょうか?

で、金目鯛の煮つけ、ローズマリーさんのオススメとのことですが、その……お値段的に、中学生の拓海がふらっと晩御飯を食べに入ってきて選ぶような料理ではない気がしますが……(苦笑)。なごみ亭は大衆食堂っぽく見えるので、案外に安めのお値段で提供されるタイプの金目鯛の煮つけなんでしょうか?

 

・ツッコんで良いのか分からないんですが、拓海とローズマリーって同じ家に住んでるような状態……ですよね? 拓海の家がやってるゲストハウスにローズマリーは住んでるんですよね。……ローズマリーの性格なら、拓海が勘付いて嗅ぎまわるより先にさっさと『泊まっているゲストハウスの管理人の息子』=拓海と仲良くなっていそうなものです。

こんなに拓海→ローズマリーに警戒心を持たせる設定なら、ローズマリーが拓海の家庭に泊まり込んでいる状態にするのは避けたほうが良かったと思います。

 

・ナルシストルーのブンドルバンク、シュールなんだよなあ(笑)。

弁当箱の蓋が開くところの、マリオネットを操作するように妖しく指を動かすシーンは不気味かつものすごく格好良いと思うんですよ。その後の「トルルン! トルルン! ブンドルー!」の掛け声と動きが愉快すぎる(笑)。

掛け声の後の黒い雷が吹き荒れるシーン(吸い込むシーン)は格好良いけど、その後の腕を胸の前で組んで陶酔的=ナルシストな表情をしているナルシストルーは見てると変な笑いがこみあげてきます。いやあ、良いキャラ。