灰色の本

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『デリシャスパーティ♡プリキュア』第12話「小さじ一杯の希望!ジェントルーの本当の心」:感想

『デリシャスパーティ♡プリキュア』第12話「小さじ一杯の希望!ジェントルーの本当の心」の感想です。

 

 

 

■ゆいの優しさが良かった。それだけで感想を締めたい回

今回は、あんまり体系だった感想を書きたくないなあ。そう思いました。

 

個人的に、普段なら嫌いなタイプの回だと思ってしまったんですよ。ゆいがああまでジェントルー=あまねを助けようとする理由となる性格設定があまりはっきり説明されてない気がするとか、いくらなんでも「生徒会長はレシピッピが好きだ! レシピッピを好きな人に悪い人はいない!」理論でごり押ししすぎな気がするとか、最初から最後まで同じような話をしていて『起承転結』ではなくて『承承承結』ぐらいに見えるとか……。もやもやする部分はこまごまとあります。それをつらつら書いて、言語化することで整理しようと思えばできるんだと思います。

 

悪いところは多分、あげつらうことはできる。けれどそれをしたくないと思いました。そうすることでこの回を「悪い回だった」かのように書きたくないと思いました。

 

「生徒会長を助けたい」という意志で動くゆいが素晴らしいと、心を動かされたからです。

ゆいという、これだけ真っ直ぐに「生徒会長を助けたい」と言える子。これだけ真っ直ぐに生徒会長に語り掛けられる優しい子。『デリシャスパーティ♡プリキュア』は、ゆいを主人公にして本当に良かったとしみじみと思いました。彼女がどうしてこんな性格の子なのかは、自分はあまり良く知りません。ゆいについてはまだあまり深掘りができていないとは感じています。しかし、彼女は現にこの、優しい性格の子として存在しています。ゆいは『現時点でこういう子だ』ということはちゃんと語られていると思います。それでいいじゃないですか。

今回第12話は、情報量が少なくても、ゆいの揺らがぬ優しい心が見られただけでとても良かった。

 

ここまでの回で、他のキャラの描写が忙しすぎるせいで主人公のゆい(キャラが安定すぎて波乱がない)は比較して空気気味になってしまっているなあと思っていたほどなんですが、今回だけでかなり盛り返した気がします。それぐらい印象が良かったです。

 

 

 

■そのほか

体系立てていろいろ言おうとしてしまうと今回は意志に反して『あげつらい』になってしまいそうなので、箇条書きで済ませます。

 

・冒頭、重い空気で話し合うメンバー達の様子が印象的でした。特に、憂いを顔に浮かべながら大人(一行の一種の保護者)として冷静に状況を話すローズマリーの様子が印象的で、綺麗だとすら感じました。そのほかのシーンでも、ローズマリーの憂いを帯びた表情や、プリキュア達に優しい目を向ける表情、一転して具体的な行動をどうするかを話し始める冷静な表情と、移り変わる表情が美しいなと思いました。

ローズマリーのキャラ像にはいろいろ言いたいことがなくはないのですが、それでも自分は、『デリシャスパーティ♡プリキュア』のキャラの中ではローズマリーが一番好きかもしれないなあと思います。プリキュア達に親しく接する明るい性格ながら、戦力になれない無力さ(=子供であるプリキュア達を前線に出さなくてはならない無力さ)を噛みしめて憂い、できるサポートをすべて行おうとすることで責任を取ろうとする、凛々しい人だと思います。

 

ローズマリーについては、大人の見地から意見はいろいろと言うけど、子供たちが「こうしたい」と言えばすぐに肯定して全面的にバックアップしてくれるところも好感が高いです。今回のジェントルーの件なんて、戦略的には恐らく「必ずしも助けなくて良かった(倒しても良かった)」と思いますし、マリはジェントルーを助けられる可能性は低いと思っていたのですからマリとしてはジェントルーは「倒したほうが安全だった」のではないかと思います。でも、ゆい筆頭に子供たちが「助けたい」と言えば、すぐにフォローに回ってくれるんですよね。良い人です。

※もちろん、ローズマリー自身が善良な人で、ジェントルーを助けられるなら助けたいと思っていたという面はあると思いますが。

 

ローズマリーは最終盤の「拓海の気配に気づく→プリキュア達には『気のせいだったみたい』と微笑みかけるが、再び警戒した表情に戻る(警戒をゆるめない)」という描写でも株が上がりました。

 

・ここでジェントルーの洗脳が解除されてしまうと、いろいろ思わせぶりなことを言っていたナルシストルーの立つ瀬があんまりない(口ではいろいろ言ってたくせにジェントルーの件であんまり出番がなかった)ことになりますが……これからばりばり暗躍してくれるんですかね? 一般人に戻ったジェントルー=あまねにもガンガン精神攻撃を仕掛けてくると面白そうだなあ。

 

エナジー妖精たちはもともとそこまでの出番が求められていない薄味なキャラですが、序盤の送り迎えシーンでちゃんとパートナー達と心を通わせる描写を入れるあたりが誠実だなあと思いました。深掘りこそしていないですが、放置はしない、隙間があったらちゃんと会話を入れてくるという。

喋れないコメコメはゆいのパートナー感が薄いなあと思っていたのですが、ゆいの肩にしっかりくっついていたところや、ゆいの言葉に真っ先に反応して「やだコメ~!(=自分もゆいと同じ気持ちである、ゆいが心配するのと同じものを怖がる)」と表明したところを見て、「ああ、ちゃんとコメコメはゆいのパートナーなんだなあ」とぼやぼやしみじみ思いました。

 

・送り迎えシーンの最後、ここねとらんに手を差し出されたゆいが二人の手を握り返すシーン。ささやかだけどとても良い描写だと思います。セリフがなくても、支え合う三人の絆が伝わってきます。

 

・今回の話で、ジェントルーを救うという思考を語るのにキーとなるのが「想像力」の話と「小さじ一杯、大事な一杯」というワードでした。どちらも前回以前に出た話のリフレインです。回またぎネタを使ってくると思っていなかったので少し驚き、そしてお洒落だなと思いました。

特に「想像力」のほうはその回であまり活かし切れていなかった(ジェントルーを救うという結論と紐づいていなかった)ように感じたので、ここで改めて紐づけてくるとは思っていませんでした。改めてきっちり紐づけてきたので、嬉しい驚きがありました。

 

・どうでもいいんですが、ゆいは感性派で言葉ったらずなところがありますね(苦笑)。発言がおばあちゃん格言の引用頼りで、その格言が具体的にどういうことなのかは周囲のキャラが解釈して台詞に落とし込むのに任せている気がします。多分、本人も意味は分かってるんだけど(引用箇所が適切なので)、感性で分かってるだけなので言葉で説明するのが下手&言葉に落とし込む必要をあんまり感じてないんだと思います。

 

・開店時間を偽った情報を流してジェントルーをおびき寄せるらんちゃん、しっかり頭が良い。他の人も真に受けてしまったら迷惑だろう……とはちょっと思いましたが、まあ事態を考えれば目をつぶれる範囲でしょう。

しかし、虚偽情報を流した店が『いつでもハンバーグ(開店前)』で、そのすぐ近くに『あさからハンバーグ(開店中)』があるのには笑いました。らんちゃん、詰めが甘かったですね。でもまあ『近くの店で早くから開いてる店がある』は見落としちゃうだろうな~。

 

・「話す」と「放す」の突然のアンジャッシュコント→いいにおいがしてきてみんな「腹ペコった~」で気が抜けてしまうという流れには笑いました。ギャグ展開に笑ったというより、突然ブレイクシーンを挟んできたことに笑いました。重い展開が続いていましたが、シリアスにさせきらないことで『デリシャスパーティ♡プリキュア』らしいバランスを取ろうとしたんだと思います。その手法には個人的に好感を覚えます。

 

・前も書きましたけど、三人全員変身バンクが好き。横三分割は見やすいし、その後の展開も統一感があって好き。ちゃんと全員バンクを考えながら単体バンク作ったんだな感がマジで好き。

あと、背景の謎空間も、横三分割カットを含む前半はゆめかわ系の淡い色合いで統一し、後半は宇宙空間のような黒ベース+各イメージカラーの光で統一されていて、きらきらしていて派手なのに三人合わせて見たときにも統一感があります。

 

・前回「スパイシーとヤムヤムがそれぞれ単独ミキサー技(初お披露目)を撃つ」という豪華なことをした直後、今回は「前半と後半で二度プリキュアに変身」「前半ではプレシャスの単独ミキサー技、後半では単独技の強化技(初お披露目)と三人全員合体ミキサー技(初お披露目)を撃つ」と、展開がほんとに豪華でした。スピード感があって良いです。

真面目に言うとこれ、『不正アクセス事件のせいで展開を圧縮するしかなかった』だけで制作スタッフからすると不本意だったのではなかろうかとも思われるのであまり褒めちゃいけない点なのかもしれません。けれど個人的には、こんなにバンバン強化技をお披露目してバンバン撃つスピード感ある展開を見ることができて良かったです。

 

・ミキサー技は『ハートジューシーミキサー』というアイテムを貰っているから単独技だろうと合体技だろうとある意味では「出せて当然」のものになってしまうんですけど、単独強化技をここで初めて使った(使えるようになった)のはプリキュア達の思いの強さ&精神的成長の表れであるようで非常に良かったです。ジェントルー=生徒会長を救うためという脚本との噛み合いが非常に良かった。

 

・新技を出すテンポ感以外にも、ジェントルーの洗脳→洗脳解除展開の異様な速さや、OPにも出ている通称『タキシード仮面』の登場がやたら遅い(恐らくジェントルーの改心話をするタイミングと入れ替えられた?)など、不正アクセス事件のせいで展開が早められたり変更されたりしたのかなと思える点はいくつかあります。

個人的には、現在のスピード感ある展開は好きです。表面的に見ると安定的に穏やかに回を進めていっている印象なのに、さまざまなキャラの動向が織り込まれていて状況が少しずつですが決して止まることなく進んでいき、飽きさせませんし、続きが気になります。

逆に、追加戦士登場あたりで(不正アクセス事件がなかった場合の)本来の予定スケジュールに追いついて、展開のスピード感が落ち着いてしまって面白さが失速しないか今からちょっと心配です。本来、一年もの長めのスパンの作品で、今みたいなハイペースでずっと進めていくのは厳しいと思われるので。※あまり詳しくないのではっきりとは言及しませんが、プリキュアシリーズの他作品や他の一話完結型児童向けホビーアニメももっとスローペースな展開であることが多いと思います。

 

・終盤のナレーターのセリフ、「小さじ一杯の希望、信じたからこそつかめたのね」。正直『デリシャスパーティ♡プリキュア』という作品でナレーターはあまり活かせてないと思っているんですけど、このセリフは良かったなあと思います。ただの説明セリフ、言わなくても分かることのダメ押し&今回の格言の「小さじ一杯、大事な一杯」のダメ押しなんですけど、言ってくれたほうが児童向けアニメ作品としては分かりやすい。けれど作中のキャラが言うとくどい。ナレーターを使ってさらっと言ってしまったのは上手かったと思います。

 

・拓海は今のところ、かなり謎な人ですね。本人はレシピッピ、ブンドル団の暗躍などについて何も知らないように見えます。ゆいを心配してデリシャスフィールドに飛び込んできたのも、偶然目の前でローズマリーがフィールドを展開したからであって、狙ってやったことではなさそうです。

一方で、デリシャスフィールドに飛び込んできた拓海はクッキングダムのものと思われる謎のアイテム(ピンク色の小箱)を既に所持していました。また、クッキングダム出身のローズマリーともしかしたら面識があるかもしれないこともだいぶ前の回で匂わされています。

素直に考えると、拓海は過去にクッキングダムとの縁があるのでしょうか。比較的最近活動し始めたと思われるブンドル団については何も知らないと。しかし、クッキングダムに縁があってレシピッピが見えていないというのも不思議なものです。仮にレシピッピが見えているなら、そのことをゆいが知らないのもちょっと不思議な気がします(ゆいはレシピッピが見えることをそこまで丁寧に隠していないでしょうし、拓海がレシピッピを見ることができるなら、ゆいにも見えていることに気づいて話をしそうだと思います)。

ローズマリーさん、心を操作する技術について知ってたじゃん? クッキングダムでは実は「心を操作する技術」は(禁術に近い扱いなのでしょうが)存在してて、それが今後も関わってくるとか……ないですかね。実は拓海はクッキングダムに行ったことがあるけどその技術で記憶がそこだけ封印されてるとか。

ゆいのおばあちゃんも恐らくクッキングダムに縁がある人物だと思われるので、クッキングダムとゆい達の世界は案外に近場であるはずなんですよね。物理的に近距離という意味でなく、案外に行き来が可能な場所という意味で。