灰色の本

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『デリシャスパーティ♡プリキュア』第11話「ジェントルーの罠! ゆいとらん、テストで大ピンチ!?」:感想

『デリシャスパーティ♡プリキュア』第11話「ジェントルーの罠! ゆいとらん、テストで大ピンチ!?」の感想です。

無理してる詰め込んでいるようにも見えないスムーズな展開なのに、密度が高くて見ごたえがありました。

 

 

■スムーズな流れに無理なく情報を入れ込んでいる

今回も安定した脚本でした。

『デリシャスパーティ♡プリキュア』の魅力に、1話の中でさまざまな話が少しずつ進行するというところがあると思います。必ずしもプリキュアメンバー3人の話ばかりに集中するのではなく、マリちゃん、エナジー妖精たち、ジェントルー、拓海……といろいろなキャラにちょっとずつ焦点を当てているのです。(※ただし、この作劇傾向が悪い方向に出ると「なんか散漫な印象の回だなあ」となるときはあります。)

 

今回はジェントルーに着目した実質ジェントルー回でしたが、操られており本人の素の状態ではないジェントルーは実はそこまで深掘りできる要素がなくて、1話をまるまる与えても尺が余ってしまうんですよね。

そんな中、ジェントルーがプリキュア達を妨害した方法を「生徒会長の身分を利用してプリキュア達にだけ高難度のテストを配布し、補習で居残りさせる」にすることで、

 

・勉強に関連する中学生らしい雑談をさせる。

・勉強する意義について、『デリシャスパーティ♡プリキュア』としての見解を述べさせる。

・「ゆいと一緒にパフェを食べに行く約束をしていたマリ」という設定にすることでゆいとマリの仲を描きつつ、「ゆいを迎えに来た」ということでマリの出番を作る。かつ、拓海にマリを目撃させる。

・補習の手伝い役として同じ学校の拓海に出番を与える。心配して見に来るという挙動、一方でからかうような声をかけてくるということから、拓海がどんなキャラでゆいとどんなやりとりをする関係のキャラかも地味ながら説明できている。

・らん(たまたまゆいよりも良い点を取ったので補習課題が少なかったと思われる)を先に課題を終わらせて教室から飛び出させることで、ゆいと拓海の幼馴染組だけで話せるシーンを作る。

・拓海がマリへの疑念と、怪物が街を襲っていないことへの疑問をゆいに打ち明ける。(→ゆいがジェントルーは本当は良い人なのではないかと思って語り掛ける根拠のひとつとなる)

 

一つ一つは細かいのですが、これだけいろいろとやっています。しかも情報の出し方がくどくなくて、流れがスムーズです。感心しました。

 

 

■バンクに尺を使いすぎ?

分断されてそれぞれで敵を追う展開は、緊張感もダイナミックさもあって好きです。前回手に入れたミキサーを今回スパイシーとヤムヤムの2人に一気に使わせてしまうところもスピード感あって好きです。

しかしその結果、

・3人全員変身バンクが既に登場しているのに、3人それぞれに単体バンクで変身させる。

・2人も長尺のバンクで大技(ミキサー)を使う。

……という展開には、ちょっと苦笑してしまいました。ちと流石にバンクが多すぎないかい。1人2人は手書きでしゃしゃっと変身させるとか、変身シーンなし(場面転換を利用して、既に変身した姿で現れる)にして、他の話をする尺を稼いでも良かったんじゃないですかね。まあ、今回第11話は出来が良かったと思うので、好みの話ですけどね。

 

 

■勉強の意義を無理なく伝えられている

ゆい達がおしゃべりしていた勉強関連の話は、正直に言えば本筋に無関係な内容ではあります。今回の本筋はジェントルーの葛藤とそのジェントルーへの説得です。勉強関連の雑談の内容が、ジェントルーの話に絡んでくるわけではありません。

 

しかし、個人的には、語られた『勉強することの意義』がとても良いなあと思いました。

>「勉強って、いろんなことを知って、いろんな想像ができるようになるためにするんだよって、おばあちゃん言ってた!」

この結論は、決して目新しいものではありません。ありふれた考えと言って良いと思います。

けれどその結論の前にゆいから述べられた話は、ごはんの話。その材料のことを想像するという、彼女達にとって非常に卑近な題材から始まりました。

そしてゆいの語った(おばあちゃんから教えられた)結論に続けて話をしたここねも、「らんのキュアスタも、英語で発信すれば外国の人が見てくれるかもしれないし、お料理の材料がどこで作られたとかも書いたら、もっといろんな人が見てくれるかも」と聞き手のらんにとってとても身近な題材を選んで話をしていました。

 

彼女達3人にとってこれらの話がとても身近で重要なことは今までの描写からとてもよく伝わっているので、『想像できるようになるために勉強をする』というありふれた話をすっと飲み込むことができました。こんなありふれた説教をこんなに説得力があるものにすることができるのか、と脱帽しました。これは創作の利点のひとつの極致と言っても良いと思います。

 

欲を言えば、せっかくならこの『勉強と想像力』の話がジェントルーの説得につながると良かったかな。多少強引だけど、「貴方のことも想像してみたの! どうしてレシピッピを苦しめてる貴方自身が辛い顔をしてたのかなって……」とか……。

でも、その回で出たお話がその回の結論と直結していないといけないわけでは必ずしもないと思いますし、そこは「好みの問題」で片付く程度の話だと思います。

 

 

■各キャラそれぞれの目線と、当然の疑念

『デリシャスパーティ♡プリキュア』は、『疑う』シーンが多い作品だなあと思います。けなすために言っているんじゃないんですよ、褒めてるんです。

 

事情を何も知らずに『マリが謎の光に包まれて消えるところ』を目撃している拓海は、マリを疑って当然なんですよ。マリはゆいの近くをうろちょろしている(ゆいは呑気にマリと仲良くしている)のだから、拓海としては気になるし不安になって当然です。

 

キュアスタの「ちゅるりん」はブンドル団と何か関係があるのではないか? と疑ったときも同じです。ゆい・ここねから見れば『ブンドル団の襲撃先が全部網羅されているアカウント』なんて当然怪しいに決まってるんです。(そして実際、「ちゅるりん」本人には何も悪意がなかっただけで、「ちゅるりん」の情報をブンドル団が当てにしていたという意味ではその疑惑は正解でした。)

 

『デリシャスパーティ♡プリキュア』は、ちゃんとキャラの視点(そのキャラの手持ちの情報ならどう考えるか?)に寄り添って台詞や展開を書くことができていると思います。これは『デリシャスパーティ♡プリキュア』の地味ながら大きな魅力だと、個人的には思っています。

 

 

■そのほか

・公式ブレーン扱いのここねだけが「いくらなんでもテスト内容が難しすぎる……」と状況を不審がっている描写が良いなあと思いました。『デリシャスパーティ♡プリキュア』はメンバー3人ともがなんだかんだで頭は良さそうなんですけど、学業成績の面でも頭が良いのはここねだけのようなので、この状況を不審に思えるのはここねだけですよね。

 

・マリちゃん、突発的なテストで居残り補習になってしまったゆい(成績が悪かっただけで非はない)が謝っているのに「え~! 補習!? パフェは!?」「3日間ものあいだ、甘いもの断ちをしておったのに! 甘いもの~、甘みをおくれ~……」と畳みかけていて大人げないです(苦笑)。直接ゆいを責めてはないけど、その言い方だと罪悪感は刺激されるだろうに。

『マリは雑に扱ってもギャグで済む』のはときどきうっすら鼻につくなあと思ってるんですが、逆に『マリがちょっと大人げない行動を取ってもギャグで済む』という面もあるのですね。それなら、バランスさえ取れていれば総合的にはそこまで問題にならないのかもしれません。

でも、ゆいちゃん可哀想(苦笑)。いやあ、マリさんさあ、ゆいは「ごめん~!」て必死で謝ってるんだからさあ……。

 

・拓海が「怪物は街を襲っていない」ということに気づくのは、着眼点がすごいなあと思います。拓海自身の着眼点もすごいと思いますし、「今作の怪物って一般人の拓海から見れば何もしてないよね?」と着目する制作スタッフもすごいと思います。