灰色の本

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『デジモンゴーストゲーム』第5話「神ノ怒リ」:振り返り感想①(個別描写について)

デジモンゴーストゲーム』第5話「神ノ怒リ」の感想①です。

待っていたぜ先輩回! 個人的には面白かったのですが、一方で非常に評価が分かれるタイプの話で、「この展開は許せない……」という人も多いだろうなと思いました。

長かったので記事を分割しました。①は、第5話の細かい描写についてが中心の感想です。

 

※この記事は初見当時に他媒体で書いた感想を元に、後から再構築したものです。

 

 

 

■天才・清司郎にくだる天罰!

↑って、録画タイトルを見ると書いてあるんですけどね(ラテ欄って言うんですかね)。

天罰を受けるようなことをしたのは先輩じゃないので可哀想。

 

■事件の規模が大きいゆえに、ホラーとしては微妙

今回はホラーとしては微妙でした。おどろおどろしい雰囲気はあったんですけどね。ゲストデジモンのマジラモンさんも、デザインはいかにも『怪奇現象を起こす怒れる神』という感じだったので良いやつ引っ張ってきたなと思いましたし。

規模が「大規模ハッキング!」「経済危機!」「神の怒りを鎮めないと!」と日常を通り越していたので、ピンと来なかったところがあると思います。わらわら沸いた白蛇さんも、話の流れにはあんまり関係ありませんでしたね。

ジェリーモンのホラー嫌がらせはなかなか面白かったので、ホラー性を重視するなら開き直ってジェリーモンだけで1話にしてしまっても良かったかも。アンゴラモンさんはルリに危害を加える気がなかったので他に敵デジモンを呼んでくる必要がありましたが、ジェリーモンは先輩を気に入ってちょっかい=危害をかけてくるキャラなので必ずしも他の敵デジモンを呼ばなくても展開できたと思います。

前半で先輩へのジェリーモン被害を描いて、ガンマモン&アンゴラモンVSジェリーモンで一旦バトル。それからいつものように『倒さない』方針でバトルの結末をなあなあにし、理由をつけて仲間加入。そんな感じでも成立したような気はします。

まあ、言っておいてなんですが、今回の先輩&ジェリーモンのコンビの描写はなかなか良かったので結果オーライです。

 

■ビビリまくりだが有能天才な清司郎パイセン

>「バーチャルお守りをプログラミングして設置を……。」

>「お守りのありがたい教えをデータ化して、ネットを使って結界を張ろうと……。」

>「この寮はもちろんのこと、近所のIOTや知り合いや学院の生徒たちのスマホの中にも(バーチャルお守りを設置した)……。」

迷惑なクソ有能(笑)。ジェリーモン被害に悩まされていた彼は、とにかく近所のネット機器を手当たり次第にハッキングしてバーチャルお守りとやらを仕込んでいたそうです。サイバーな話なので、ハッカー役が出てくるのはベタを押さえてきていると思います。

ジェリーモンによると、清司郎先輩はアメリカ留学経験持ち、飛び級で13歳で大学院を卒業した神童なのだそうです。ベタベタコテコテな天才キャラ設定ですが、『ゴーストゲーム』のリアリティラインから浮いてはいないと思うので良いでしょう。分かりやすいしね。大規模ハッキングができるのにも納得するし。

天才すぎる系の天才キャラですが、ビビリでアニメ漫画オタクで中二病というポンコツ設定特盛り+ワガママジェリーモンに圧倒されることでバランスは取ってきていますね。

『限界突破』の設定だけは現段階ではどう転ぶかわかりません。いきなり覚醒して格好良くなって行動的に・自信満々に立ち振る舞い始める。しかし、事が終わると本人は覚えてない。ゴスゲの設定の中でもマンガチックすぎ、ご都合主義っぽすぎて浮いているような気がします。

でもそんな懸念をひとまず置いておくと、展開としては先輩の覚醒は格好良いし、逆転劇が始まってスカッとしますね! 今回は悪い敵をぶっ倒すような流れではなく、味方サイド(というかジェリーモン)の悪行に謝罪してなんとか許してもらうという流れなのに、ここまでスカッとした展開に持っていった先輩は素晴らしいです。謝罪姿が潔くて格好良い、というキャラも珍しいのではないでしょうか?

ビビリではあるものの根底にある意志は強く寮長の誇りを背景にした強い責任感や正義感もある。覚醒してしまえば自信にあふれ凛々しく、潔さも兼ね備えている。ついでに面倒見も良いし頭も良い

更に言えば、ホラー現象にいちいちオーバーに怯えてくれるし、寮長の肩書きを出せばだいたいのことに釣られてくれそうだし、脚本的にも使いやすそう(笑)。

いやあ……初当番回にして良キャラです。第5話全体ではいろいろ言いたいことがありますが、彼に関してはお見事でした。あとは、ちゃんとキャラをこのまま制御して安定的に魅力を見せていけるか、そしてジェリーモンとのとんでもない関係を上手いこと脚本で丸め込んでいけるか、ですね。期待は大です。

 

■貴方のとなりの害獣、ジェリーモン

ジェリーモンちゃんの初登場です。ジェリーモンのクラゲ形態、可愛いと思えば可愛いんですけど、キモいと言えばキモいので絶妙ですね。初めて清司郎が視認した時、影を落として表現されていて「これは清司郎ならそりゃ叫ぶわ」という絶妙なビジュアルで登場したので感心しました。触手持ちなのも怖いと言えば怖いのでイヤらしい(笑)。

それでまた、可愛らしい声に「ユー」「ミー」「~なのさ!」という独特の喋り方、清司郎に「様」付けを強制し圧倒する、人間形態になるとすらっとしてて可愛い、とキャラが既に濃い(笑)

そして、その性質は極めて悪辣です。

怯える姿が面白いからという理由で先輩の周りをうろついて執拗にポルターガイスト現象で怖がらせ続ける

先輩が自衛のためにバーチャルお守りを設置したらそれを利用したハッキングを企み、マネーゲームが興味深かった」というだけの理由で電子マネー決済システムを混乱させ、大規模な社会混乱を招く

マジラモンが怒って向かってきていても、天罰を受けるのは先輩だと笑って傍観し、「逃げちゃえば?」「光の矢が108本、清司郎の身体にぶすぶすさ~♪」「きっと想像を絶する激痛さー!」などと言って煽る

可愛い顔してとんでもなく邪悪な輩です。第1話の感想で「今作のデジモンは、メガテンの『悪魔』のような存在」と書きましたがまさしくそんな感じです。言葉は通じるが人間の価値観を持っておらず、お遊びで人に深刻な被害を出し、それを笑って見ている。もう、ここまで行くと、天災です。何を説いても無駄な存在。天災という言い方が大仰なら、害獣ですかね。

貴方のとなりの害獣、ジェリーモン。

 

■貴方のとなりのまあ話が通じるほうの害獣、ジェリーモン

一方でジェリーモンは、『ゴーストゲーム』作中のデジモン(害獣)たちの中では比較的話が通じるほうの害獣でもあります。

先輩を煽り倒して「逃げれば良い」と強弁するものの、先輩が「僕は寮長だ!」と覚悟の一片を見せれば驚いてたじろぐ

「お助けください! お願いですジェリーモン様!」と頼み込まれれば絆されて手伝っちゃう

気絶した先輩を起こすのに「起きるのさ! ユーは寮長なのさ!」と、『寮長である』ことを誇りにしている先輩の性格を察して理解した語り掛けをする

覚醒して底力を見せた先輩に、「ダーリン」とか言っちゃう

クロックモンとかドラクモンといった、話し合い不可能と思われる害獣が多かったデジモン達の中ではまあ可愛らしいほうの害獣です。人間を理解する気と柔軟性を(一応)持っているのです。

>ミーは興味を持った分野はとことん極めて、かならず一番になりたいさ。それには、ゲームのルールを知らなきゃなのさ。知ったあとは、誰よりも上手にプレイするだけさ。

ジェリーモンのこのマイルール・人生哲学は(実際にやっていることはド迷惑ですが)それなりに筋が通っているもので、思わず先輩も共感していました。ヒロは「そこお?」とツッコミを入れていましたが、アニメ作品の流れとして必要なツッコミだけどアンタ野暮やで。人間と、害獣みたいなデジモンとの間で『通じ合える』箇所が見つかったシーンなんですから。

 

自分は、今回のジェリーモンについて、総合的には『可愛い。イカレてるクズだし害獣だけど、何故か先輩とのコンビ相性は良い』という結論に落ち着きました。

ただし正直なところ、これは色々考えた後に「なんであれ自分は最初に思ったから自分の感想はそうだ」という形で出した結論です。

先輩を脅してバーチャルお守りを設置せざるを得ない状況を作った挙句、そのバーチャルお守りを乗っ取って金融に混乱をもたらしてマジラモンを激怒させ、先輩に責任を押し付けて自分は謝罪をしなかった。そんなジェリーモンについて、「許せない」人は絶対にいるだろうな、と思ったのも確かです。

この件については別記事を立ててしっかり書こうと思います。

 

■パシられヒロは冷徹ヒロ?

地味なとこなんですが、ヒロはパシられを断れないどころか嫌とも思うことができないような気配でずっと描かれてるのに、「ジェリー引き取って」という先輩の泣きつきは秒で却下してるのは暗雲が立ち込めてるなーと思いました。つまり、ヒロ、最初から先輩を軽んじてないですかね?

ルリが頼まれて「私が? 嫌よ!」と却下するならそういう強気キャラだから分かります。

返事をする前にジェリーモンが引き取られることを拒否したからヒロは曖昧に笑ってごまかした、みたいな流れでもそういうキャラ達だから分かります。

『普段は断らないヒロが即断ではっきり断る』というのは、先輩を最初から軽んじて良い人だと思ってるからじゃないんですか?

ヒロの「面倒だから自分でやったほうが早い」という言葉は、つまり普段ヒロをパシってくる連中は押しが強くて断るのが手間だから。先輩は押しが強くないから断ったほうが早いので、困っていようと迷いもなく即座に見捨てる。そういうことなんですかね。随分冷たいですよね。

※一応さ、「どっちにしろヒロじゃジェリーモンをどうしようもできんから結果としては断るしかないでしょ……」という点を差し引いて見ることはできるんすよ? けどさあ、ここまでのヒロの先輩へのさりげない態度とか、他のキャラにもいまいち優しくはないところを見ると、こいつ先輩を舐め腐ってるし、別に性格は本質的には優しくないよなって感じるんすよ。「冷たいんじゃなくてドライな性格をしてるだけだ」って見方をするには、ドライにばっさり切ることをせずに他人に流さればっかりしてるし……。ヒロが先輩にだけ「ばっさり」が出来てしまうことについて「うわぁ……」つってるんですよ……。

 

■そのほか

・ジェリーモンがデジヴァイスを持ってたのって、先輩の「(ヒロにデジヴァイスを)返す」という台詞から考えてヒロからパクったってことで良いんですよね。事前に誰かがデジヴァイスを盗んだらしいと分かる匂わせ描写とか、「無くなってると思ったらお前のせいか!」みたいな説明台詞は一つも無かったですが。なんかゴスゲって、そういう雑な説明カットが多いですよね、ヒロに助けられたルリがお礼を言うシーンを全カットしてるとか

キャラを把握してる制作スタッフにとっては「このキャラなんだから説明なんかしなくてもそういう行動をするって分かるだろ?」という感じなのかもしれませんが、分からねーよ。こっちはまだ5話なんだよ。そんなとこまで視聴者の脳内補完に頼らないでくれよ。

・ジェリーモンが先輩の部屋にデジヴァイスを持ちこめた……ってことは、デジヴァイスに触れた、ってことになると思いますけど……。実体化してないデジモンが物に触れるのか触れないのか、ルールが更によく分からなくなりましたね。脚本の都合、その場のノリなんでしょうか。

・マジラモンに「こんなでかいデジモンいるんだ」って唐突にニコニコしてるヒロさんはいったい何ですかね。正直今まで、デジタルワールドへの突入方法を知る必要があるから調査していただけで、デジモンそれ自体に興味があったようには思えなかったのですけど(そこそこ話が通じそうなデジモンには交渉でどうにかするような柔軟性はあったので、デジモン=駆除しようぜってキャラでもないのはそうですが)。ていうか危機感なくない?

・ガンマモンがニコニコで白蛇を集めた後、次のカットでは嫌そうに部屋の外に捨てていたのには「?」となりました。白蛇が嫌だったんじゃなくて、カットとカットの間で「そんなの捨てていらっしゃい! めっ!」てされて渋々捨てたってことなんですかね。もうちょっとわかりやすい表現があった気がします。ヒロが怒った顔かうんざりした顔でドアの外を指さしてるだけでも「あ、捨ててきなさいってことだな」とだいぶ分かりやすくなったでしょうし。