『デジモンゴーストゲーム』第10話「死ノ遊戯」:振り返り感想①
『デジモンゴーストゲーム』第10話「死ノ遊戯」の感想①です。
記事が長くなったので、先輩とジェリーモンについては感想②に回して分割しました。
それ以外の部分への感想です。
※この記事は初見当時に他媒体で書いた感想を元に、後から再構築したものです。
■嫌なパターンが定例になっている
・助けるには共感できない奴が被害に遭う、または事件発生のトリガーになる。(コタロウやルリなど)
・人の心が無いし積極的に人を助けることを目的にもしてない感じのヒロが首を突っ込む、または巻き込まれる。
・ヒロまたはルリにこき使われるのは先輩。
この定型やめようよ。
ヒロやルリ、ひいてはデジモン事件に関わる動機に何にも同意できないよ。ついでに先輩が可哀想だよ。
■ヒロが友人の失踪に動揺した、と思ったら……
今回、ヒロは友人・コタロウの異変を目の前で目撃しました。
目を見開いて驚くヒロには「よ、ようやく怯えという感情を知った!? ようやく人の心を得た!?」と驚きました。
その直後に既に冷めてましたけどね。やめろよ! 逆に冷酷な印象になるからさ!!!
目の前で友人が消えてるんだから、疑問形で「コタロウ?」と名前呼ぶ程度で終わらせないでほしいです。景気良く、『取り乱し→絶叫』ぐらいしてほしいです。
まあ、ヒロって、自分が手を貸したせいで友人(コタロウ)が目の前で生死不明状態まで追いやられても、動揺もしなければ自責もしなかった奴(第1話参照)なんだよな。
『冷静』というより『人の心がない』。ダメなとこが一貫しています。
ヒロがここまで感情の起伏がない上に良心もトんでるの、意図的な表現なんでしょうかね。単に、制作スタッフがキャラ心情や感情を表現するのが異様に下手なだけなんだとは思いますが。むしろそう思いたいですが。
■キャラの感情表現の出し惜しみ
『ゴーストゲーム』は本当に、そういうキャラの感情表現を出し惜しみする傾向にあります。常にオーバーに叫んでて欲しいとは言ってませんよ。ただ、あんまりに淡白なんです。
ホラーとしての筋書きがだいぶ雑になってきてるのに、恐怖感情を含めたキャラの心情を絵とか声とかの演出で印象的に表現することができていないんです。
なお、『声』と言いましたが、声優さんの演技が悪いという意味では全くありません。絵から見て、恐らくそういう演技が指示されてすらないよねと言ってるんです。絵が伴ってないのに声優さんが勝手に熱演したらそれはそれで問題です。
ヒロはもともと淡白でドライなキャラなのだからこれで正しい、と言えばそうなのかもしれません。ただ、ほとんど怯えもしてくれないし友人のピンチに動揺もしてくれないキャラって、そもそもホラー作品の主人公に適役だったのか? とは疑問に思います。
ヒロ(とルリ)は、『怖いけど勇気を振り絞る』でも『最初は怖かったけど成長して勇気ある行動ができるようになった』でもないんですもん。『そもそも怖くなさそう』なんですもん。
■『キモオタ』的なクズさが増すコタロウ
>(先輩がコタロウに)「ここは寮内だよ。大声でそういう不純な話をしないでくれたまえ」
>(ヒロがコタロウを擁護して)「先輩。不純って、ゲームの話ですよ」
不純は不純だと思いますが。コタロウきめえ。
コタロウってどちらかと言うとチャラ男系のキャラとして作られているように見えますが、今回はいわゆる『キモオタ』的なキャラ像(テンプレ的、ステロタイプ的に誇張された『キモオタ』像)ぽかったですね。
別に女好きキャラが即座に悪いとも思いません。
コタロウはキモい意味、下衆な意味でしか女好き要素が描写されないのでとにかくキモいし下衆ですね。
というか女好き色ボケ要素がどうこうに関わらず、良いところが大して描写されないままクズな描写ばかりされますね。鳥の名前を憶えているから実は学校の飼育部を真面目にやってるかもしれないとか、自分が限定品を買いたいからヒロと待ち合わせしたのにヒロの遅刻を待ってくれるところもあるとか、無理矢理好意的な補完が可能なところはなくはないです。が、悪い描写に比べて印象は弱いです。
第1話感想から述べているとおり、コタロウは『ホラー作品の序盤で死ぬから許されるヘイト役のキャラ』の造形だと思います。なんでこいつを単発モブで終わらせず、ヒロの友人という役を与えて長々と出番を与えているのか疑問です。
逆に、そろそろ主役回またはヒロとの友情回を与えて『良い奴でもある』『ヒロの良い友人である側面もちゃんとある』ことを描いてもらえないでしょうかねえ。
つか今回(というかコタロウ被害者回)は、先輩が助けるんじゃなくてヒロが助ける回にすべきだったんじゃあ? 珍しくコタロウを助けたいらしい台詞は言うけど状況的に先輩に頼らざるを得ない今回のヒロ、結局は先輩任せなのに横でうるさかったです。
■貴方の(害獣ではない)良き隣人、ボコモンとバクモン
引っ越しの挨拶でわざわざチョコを持ってきて、ガンマモンを気にかけてくれているボコモン先生は良いですね。善人(善デジモン)でほっこりします。チョコネタばっか強調してるせいでチョコ>>>その他みたいになっているガンマモンはそろそろ鼻につきますが。
ボコモン先生、前の図書館の本を全部読んだのは恐らく本当なんでしょうがただの口実で、ヒロ達を心配して近くの図書館に引っ越してきてくれたんでしょうね。根拠がない妄想ですけど、今はそう信じられるぐらい信用度が高いです。
キンカクモンとギンカクモンのことを知っていて教えてくれるバクモンもナイスアシストで好感度が高いです。今回についてはたまたま知っていただけと言えばそうなんでしょうけどね。
■ヒロは父親をどう思っているの?
とりあえず、クズ親父だろうと他人の私物を勝手に売り飛ばすな(デジモンを暴れさせないために献上するな)。クズ親だからってそれはねーわ。相変わらずホップステップで犯罪をしていらっしゃる。
ヒロが父親のことをどう思っているのかというのは、実ははっきりしません。
どっかで「クソ親父」とは言ってた気がするので、欠点の無い良い親父と思っているわけではないことは分かります。
けど、頼まれてもいないのに父親を探すためデジタルワールドの情報を集めているところを見ると、嫌いでどうしようもないというわけでもなさそうです。
このへんの描き方は本当に微妙で、ヒロは積極的にばりばり情報を集めているようにも見えません。積極的と言うにはデジモンやデジモン事件との遭遇をやたらルリの巻き込みに頼っていて受動的です。
ヒロがしばしば言う「父親は元気そうだから(分からないなら別に)良いです」という台詞からは、どうしても父親に会いたいという必死さや熱意は伝わってきません。その一方で、探すことは継続するし、何か心配そうな状態と判断できる場合はもっと必死になって探すという考えも透けて見えるため、父親を見捨てているわけでもありません。
ヒロは父親をクソ親父とは思っていそうですが、『愛すべきクソ親父』『親も人間なのでということで許せるor許すべき範囲のダメ人間』ぐらいの認識なのだと思います。
少なくとも、「視界にも入ってほしくないクズ人間。いなくなってくれてせいせいした。もう帰ってきませんように」とは言われてませんし、「子供の俺を置いて遊び惚けやがって。捕まえてタコ殴りにしてやらんと気が済まん」とも言われていません。
親子の情で許せるダメ人間。ヒロにとって父親は、そんな対象なのだと思います。
その親父に犯罪行為をするという前提の提案をするとかないわ。
ヒ……ヒロ、親父のことを嫌いなわけではないだろうけど温かい感情のやりとりもしてないよね!? 温かい感情は特にないよね……ていうか特にプラスもマイナスも感情がないよね……。
クズ親父なのでぶん殴りに行きたいという感情もない。
心配だとかいないと寂しいから早く見つけたいという感情もない。
なんかこう……逆にすごいですね。家族として過ごしていたはずなのに愛着がないんですよ。
「自分もクソ親父に勝手に私物を捨てられたことがあって、未だに恨んでいる。復讐してやりたいと常々思っていた」って言い出すならこの暴挙も分かりますが。
まあ、別にヒロは誰に対しても愛着らしい愛着がないんですけどね。
というか、『ゴーストゲーム』でそういう温かい感情のやりとりを見た覚えがほとんどないんですけど。鳥回のミカとペットの鳥のチロルちゃんぐらいかな。
(先輩とジェリーモンは……『温かい』と形容するにはちょっと微妙っていうか……)
■先輩のガンマモンにこにこ託児所
害獣ガンマモンが学業に邪魔なのは分かるけど、それで先輩に押し付けてるのはパートナーとの共存を諦めてないですか……?
赤ちゃんを託児するのは当たり前だからええんすかね。
託児自体に正当性があったところで「ヒロお前、また先輩をパシるのかよ最低だな」ってなるだけなんですけどね。
少なくとも今までの描写だと一番他人と真っ当に会話してコミュニケーションを取ろうとしているのは先輩です。先輩への託児展開をすると、先輩ばっかりがガンマモンとの絆値を稼ぐことになります。
妥当に考えたらガンマモンの絆値が『ここまであんまり絆値稼いでない主人公<<先輩』というワケ分からんことになる気がします。
けどまあ、スルーされて都合良く『ヒロとガンマモンは最高の相棒』みたいに進むんでしょうね。
■次回予告
公式が第11話放送前日時点で公開した第11話の内容にびっくりしました。
ルリとアンゴラモンが気まずくなる???
あの非積極的な関係性であの寛大なアンゴラモンさんと気まずくなれるルリさん、逆にすげえな!?
どんな酷いこと言ったんでしょうね。「どうしよう、いつもと違ってギクシャクしちゃう……」の『いつも』がまず成立してないんですけどね。
だってルリさんは常にアンゴラモンさんをスルーしてますからね。あの二人は会話がないという意味ならいつも気まずいです。
その『いつも』より更に『気まずい』って、ルリが相当なことを言ったとしか思えないんですが。
■そのほか
・ガンマモンが自動販売機を見てすら「ヒロ~! 最強ジュース~!」と言っていました。最強ネタの徹底に余念がないことです。まあここは他の流れにも影響しないので可愛らしいものでした。『最強ジュース』ってことはチョコレートドリンクを売ってたんですかね? それともココアとかを指してたのかな?
・ファイターズキングダム(今回出てきた格闘ゲーム)で20連勝することは難しいという前提のお話だと思うんですけど、美人キャラに会いたい一心で20連勝しちゃうコタロウは地味に努力家ですげえ。すげえけどキモい。
・ビビリで心配屋で世話焼きな先輩は、コタロウ(寮生)がファイキンで遊んでると聞いてすぐに駆け出して止めに行ってくれます。ヒロもそれぐらいしてくれて良いんですよ、貴方の友人でしょ。
・襲われたコタロウの怯える表情、それを見るヒロと先輩の動揺した恐怖の表情は素晴らしかったです。毎回これぐらい頑張って描いてほしいです。今回はホラーの本筋がイマイチなので怖くなりきらなくて残念ですね。
ホラーの本筋がどうこうより、すぐ動揺から回復して普通の顔に戻るヒロがあまりにあんまりなせいで怖さが薄れるのはあるかもしれませんが。なんですかね、ずっと恐怖顔させてると普通の顔よりアニメのコストがかかるとかあるんですかね。
・また駆り出される先輩。今回は既に目の前で被害者が出ており緊急性が明白で、格ゲーで20連勝できる可能性があるのが先輩だけなので可哀想ですがやらなきゃ仕方ないです。
けど普段からヒロは緊急性とかに関係なく先輩をパシってるので、またかよって感じで印象はやっぱり良くないです。
・「勝負に関係ないけど全員酒にしちゃって良いよな!?」と言い出すギンカクモンの無法ぶり、今作の『害獣としてのデジモン』らしい振る舞いで、逆に好きです。挙動が好きなだけで、キャラに愛着が湧くわけではありませんが。
・ベテルガンマモン、進化が遅いうえにソルショット一発撃っただけで画面外でやられて終わり(その後の戦いに参加してないってことはやられてたはずです)でびっくりするほど空気です。この子さ、今のところ戦闘力ぐらいしか良いとこないのにさあ。
・ホラーである今作の怪奇現象役にデジモンを使うという発想や、今作のデジモンは話が通じない害獣のようなものなのだという視点については個人的に高く評価しています。が、怪奇現象役のデジモンがことごとく自己中心な迷惑キャラか深刻な悪役なので、せっかく出てきたデジモンに全くと言っていいほど愛着が湧かないなあとも思います。この作品、今後のシリーズ運用的にプラスなんですかね?