『デジモンゴーストゲーム』第11話「カマイタチ」:振り返り感想
『デジモンゴーストゲーム』第11話「カマイタチ」の感想です。
細かい描写は結構良かったです。本筋には同意できないですが。
※この記事は初見当時に他媒体で書いた感想を元に、後から再構築したものです。
■俺の知ってる『気まずくなる』と違う
やっぱり思ってた通り、ルリとアンゴラモンが気まずくなったのはルリが酷いこと言ったせいでした。
自分の知ってる『気まずくなる』と違って開幕から困惑する。
えっ、『気まずくなる』って、
・ルリがあかんこと言う。
・アンゴラモンさんお怒り。
・ルリも逆ギレ。
・ぎくしゃく。
という流れじゃないんだ?
・ルリがあかんこと言う。
・ルリが一人で逆ギレ。(アンゴラさんは「ええ……?」の反応)
これを『気まずくなる』って言うんだ!?
完全にルリだけが悪いし、ルリだけが勝手に騒いでるじゃん。
すごいですね、ルリさんが害獣であることを追認するだけのこの導入。何これ?
アンゴラモンさんがルリの暴挙に今さら怒ることで変に株が落ちるんじゃないかと心配していたんですが、徹頭徹尾ルリの逆ギレだったせいでこの件では株は落ちませんでした。
が、それとは無関係にルリに「映えてる?」って聞いてる件で株が落ちました。
ルリの害獣挙動、半分くらいはSNS映え狙いのせいだからね? アンゴラさん分かってる?
もう半分は『ぴったりするものを探している』という、とてつもなく突然生えてきたうえに今のところ解説もないワケの分からんルリの欲求のせいです。
でもアンゴラモンさんはルリの逆ギレにも寛大だったり、深刻な被害を出しており和解が不可能そうなレッパモンと話をしたいと言い出したルリに場を任せて譲ったり、レッパモンにナイスな提案をしてまとめたりと他で株を上げもしたので、収支はトントンと言ったところですね。
■ぴったり探しという一発ネタみたいな何か
ルリのぴったり探し、スタッフ的に大事な要素らしいのは察します。ですが、視聴者としての印象は『ヒロがいきなり一人キャンプが趣味とほざきだした』のと同じぐらいの一発ネタです。
ついでに言えば、『ルリがヒロの趣味=一人キャンプと聞いてドン引きしてた』のと同じ程度には(そんなことで人を巻き込むなという意味で)ドン引きしてます。
※いやまあ、スタッフ的には案外『ヒロの一人キャンプネタ』も後で拾う気で、前振りのつもりでばら撒いてるんじゃないかってのは別の話です。
印象に残るように尺を使ってないから、一発ネタにしか見えないんです。
その『一発ネタ』を複数回やってるのと、単発ネタとしては意味不明だから、「流石に後で解説を入れるんだろう(じゃないと意味が分からん)」と善意でこっちが補完してるだけですよ。
■脚本が下手
素直に、今回のテーマと脚本の流れが噛み合ってません。
ルリが喧嘩する敵デジモン達に言う説得内容の趣旨は、『お互いが不満をぶつけ合うだけではダメ』です。
気まずくなった今回のルリ&アンゴラモンの現状とこの論旨が重なっているので、ルリの言葉がより真に迫ったものとして響く。普通の作劇ならそう描きます。
ですが、今回の話ではまずその前提が重なっていません。
今回のルリ&アンゴラモンの不和はルリが一方的に不満がっていただけであって、その不満を相棒にぶつけてすらいません。
『お互いが不満をぶつけ合うだけではダメ』の状態になっていないんです。
ルリは『お互いが不満をぶつけ合うだけではダメ』だったから、身をもって知ったからこその言葉を言っているわけではないんです。あの脚本だとね。
ルリ&アンゴラモンの不和展開がなくてもあの説教はできてしまうんですよ。
ルリはアンゴラモンに『要求』はしていません。不満を『ぶつける』はしていないんです。何も言ってないのに勝手に「察してくれない」と不満になって、勝手にスネてただけです。
それを『不満をぶつけ合った』と認識している、つまり、
・ルリも不満をぶつけた(実際にはルリが察してちゃんなだけ)
・アンゴラモンも不満をぶつけてきた(実際にはアンゴラモンさんは何も言ってない)
と認識してるなら、それは認知が歪んでるしマジで性格が悪いです。
ルリが『お互いが不満をぶつけ合うだけではダメ』という内容で敵に説教するなら、
・ルリがアンゴラモンに無理に行き先を聞き出そうとする。
・ルリが逆ギレする。
・ルリのあまりの態度にアンゴラモンもキレて「ルリはいつもこっちの気持ちを考えてくれない」と怒る。
ぐらいのことをしておかないと『お互いが不満をぶつけ合う』という前提が成立しないんです。それをやるとアンゴラさんの株はがたがた落ちますけどね。
いや今回さあ……ほんとに『説教タイムに持っていくまでの脚本がヘタ』なだけで、説教内容は結構良いんですよね。説教が始まった以降の流れは良いです。でもこの展開だと、流れがおかしすぎて評価できません。
■そこまでお互いに興味ないじゃん
そもそもなんですけど、アンゴラモンさんが集会行きを『隠してた』ことが明確に読み取れませんでした。
アンゴラモンさんは確かに行き先はボカしたけど、ルリは食い下がって聞かずに勝手に拗ねてただけじゃん。ルリが重ねて二・三回聞いたら、アンゴラモンさんは普通に答えてた(または「それは事情があって教えられないんだ」と素直に言っていた)のではないかと思えてしまうから展開に納得がいかないです。
だいたい、ルリとアンゴラモンの二人はそんなことまでいちいち詮索する仲でもいちいち共有する仲でもないと思います。「そう言えば一人でいるの久しぶりだな」とルリは言ってますけど、アンゴラモンはちょくちょく抜け出して街をパトロール&調査しているっぽい描写が第5話にあるのでそんなに四六時中ひっついてるイメージもありません。なので喧嘩(?)の前提から納得できません。
お前ら、お互いにそこまでの興味はなかっただろ。まだ先輩&ジェリーモン組のほうがお互いに興味があるわ。
そういえば先輩&ジェリーモンがなんか突然仲良くなってたけど、あの二人はまあそこまでの違和感はありませんでした。直前の回が絆回みたいなもんでしたしね。
なんなんでしょうね、あの退っ引きならない関係で、対等なコミュニケーションも成立してないはずなのに、絆はなんか凄い勢いで成立しているみたいなあの二人。他のどの組より仲が良さそうっておかしいと思います。
■そのほか
・今回のヒロのドン引き発言。「本人に聞いても駄目なら、後をつけるしかないんじゃない?」。
つまりストーカーして秘密を暴けってことですよね。ストーカー教唆です。またもや例によって例のごとくホップステップ犯罪です。ストーカー教唆っていう罪が厳密に法律で裁けるのかは知りませんけどね。仲間内といえど、やっていいことと悪いことがあるんじゃないでしょうか。
・ヒロの「えっ? 俺、何の用事で呼ばれたんだ?」もまたドン引き発言です。これは、ルリにドン引き。ルリさん、友人が来るまでの暇つぶしにまたヒロとガンマモンと更にはボコモン先生まで呼びつけてパシったんですね。
いや……脚本家さんよ、ヒロのその台詞、必要だった? ヒロがそのことを台詞で言わないだけで、ルリの信頼低下が避けられたんですが。まあ何も言わなくても今までの描写の積み重ねから「ここ(カフェ的な場所)にヒロがいたってことは、もしかしてまた暇つぶしにパシった……?」と邪推はしたと思いますが、邪推は邪推止まりなので。
・例によって表情による恐怖表現は乏しいのですが、カメラがスパッと切断される→表情が凍りついたまま「あ、ああ……」とくずおれるルリは恐怖が表現されていて良かったです。短い台詞なのでさりげないですが、声優さんの演技が光りますね。
・恐怖に晒された子供たちがあまりにもすぐ立ち直ることはここまで繰り返し批判しているのですが、今回カメラを切断された直後のルリが「最近の突風被害、起こしているのは貴方!?」と問いかけるのは勇気を感じられて良かったです。ルリの行動力と勇気については自分は一貫して評価しています。使い道はもっと考えてほしいですが。
・「今日いけそう! 俺飛べる!」ガンマモンが今日はカウスガンマモンになれそうという台詞。地味ながら興味深い一言です。その日のテンション任せコンディション任せってことらしいですね。
・(ピンチなのに電車内だから電話に出てくれない先輩に対してルリが)「あの役立たず!」これには同意(苦笑)。まあ先輩がどんな原因で電話に出られないのか分からないのにこんなこと言うルリが、いつも通り酷いのはそうですけどね。結果的に先輩がポンコツなのには同意。真っ当な常識人なだけなんだけどね。
・カウスガンマモンに乗って空を飛んで「うわあ!」と思わず嬉しそうなヒロは感情が見え、年相応ぽくって良かったです。ルリがピンチなんですけど、初めて空飛んだら興奮ぐらいしますよね。普段からそれぐらい感情を顔に出してくれ。