灰色の本

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『デジモンゴーストゲーム』第14話「座敷童」:振り返り感想①

デジモンゴーストゲーム』第14話「座敷童」の感想①です。

全体的な雰囲気とゲストデジモンの物語の運びは良くまとまっている良回です。が、細かく見ていくと意味がわからず、話の前提にも納得しがたいというところはいつも通りです。

 

長くなったので①②に分割しています。①はまあ、ボコモンの死の扱いとかそんなかんじの話題についての怨嗟です。

 

 

※この記事は初見当時に他媒体で書いた感想を元に、後から再構築したものです。

 

 

 

■ガンマモンの『死』の理解度が支離滅裂

前回、ボコモンの死に凶暴化(グルスガンマモン進化)して大暴れし、進化が解除された後も大泣きして悲しんでいたガンマモン。今回は意気消沈し、元気を失っています。

 

なのにボコモンに美味しいもの持っていきたいとか言い出す。

 

前回も五秒ぐらい前までもガンマモンが「死の意味を分かっている」前提で描いてたはずなのに、突然「死の意味が分かってないのでボコモンに会いたがる」にシフトしないんでほしいんですよこの野郎。

 


あ、あの、死の意味が、死の意味が分かってないならガンマモンが大泣きした意味がわかんないと思うんですよ? 意気消沈してた意味もわかんないと思うんですよ! おかしくないですか?

えっ? それともあれって、ボコモンの死に大泣きしてたんじゃなくて、『グルスガンマモンになって大暴れしてしまった』ことに泣いてたってこと?

 


いやでも……ボコモンが消滅したことに動揺したからヒロのデジヴァイスと連動せずに単独で進化してグルスガンマモンになったんだよね? ボコモンが自分を庇ってくれたことを思い出したから暴走が止まったんだよね? それ、ある程度は『死』を理解してないと無理だよね?

 


いやね、全く無いわけではないと思うんですよ。子供の、それもガンマモンレベルの赤ちゃんの『死』の理解が滅裂になるということは。

赤ちゃんじゃなくても、他者の死を経験した人が状況を受け入れられずに否認してしまい、感情が湧かず涙も出ないとか、他人事のような気分になるということはあります。

 


でもな。そういう複雑な心理がガンマモンの中で発生してるって描きたいなら、ヒロ達のセリフで「そういうことが起きてるのかも」みたいにはっきり言わせなきゃ無理だと思うよ!?

これ子供向けアニメだからある程度は分かりやすくしてくれないかな!? しかもこれって分かる人だけ分かれば良いディテール部分じゃなくて本筋だから、ちゃんと説明してほしいんですよね! 好意的な補完をするにもちょっと限界がある気がするんだよなあ!!!

あと、ここまでの回を見てる限り、制作側が『そこまで考えてる』という信頼は正直ないですこの野郎。

 

あとね、今作としては通常運転なんですけど、ガンマモンがボコモンに「美味しいものをあげたい」と思うほど懐いていた設定を後出ししてくるのもやめてほしいんですよこの野郎。

前回第13話の感想でもさんざん言いましたが、ガンマモンとボコモンの関係は『ガンマモンがボコモンに餌付けされてただけ』としか今まで描かれてないんですよこの野郎。

 


ガンマモンとボコモン間の関係の説明がチョコ餌付けでしかなされてないこと、

ガンマモンの優先順位がチョコ>>>その他だとひたすらひたすらひたすら描かれていたことを合わせると、

ボコモンが死んでガンマモンが泣いてるのはガンマにとって

『ボコモン=チョコ(をくれるやつ)』

だからだっつってるだろうこの野郎。

 

今までの描写だと『チョコがもらえなくなるから悲しい』にすぎないはずのものを『大切な友人が死んだから悲しい』みたいに演出してる時点でもう腹立ってたのに、

後付けで『ガンマが死の意味を理解してなかった』って、何?

 

……ほんとに何?

なんなんだよこの野郎。

 

いや確かに前回「え、ガンマモンが大泣きするってことは、死の意味が分かるんだ……?」とは思ったけどさ! 分かってないのに大泣きしてたってほんとに何?

 

え?

ほんとにほんとに何?

 

 

◾︎死の意味を理解できなかったガンマモン

あの流れだと、結局ガンマモンは死の概念を理解していないんですがそれは良いんですかね。ダメな気がするんですけど。

ガンマモン、死をうすうす理解してるけどわざと「旅に出たんだな」と表現したという表情じゃなかったですよね? 悲しいけど我慢してる泣き笑いみたいな表情じゃなくて、ふつうに爽やかに笑ってましたよね?

 

今回のゲストデジモン・コエモンが会いたかった『ばあば』は、結局は生きているという説明がされました。

そこで生きてる設定にする理由が話の流れ的に理解できなかったので、「生きている」という情報はコエモンを悲しませないためのばあばの嘘なのかと思いましたが、嘘と断定できる情報もありません。生きているというのは正しい情報と考えるのがとりあえず妥当でしょう。

 

そして、デジタルワールドを旅している北斗(ヒロのカス親父)も生きています。

彼にいたってはただ生きているというだけではなく、『これから探し出して、会う』という前提です。

もう出会えない前提の死者とは全く違う。

 

このお話の中にボコモン、コエモンのばあば、北斗という三人の『旅人=今は出会えない他者』を出して重ね合わせようとした、その試み自体は良いと思います。

けど、全然重なってなくない?

 

今回一番重要なのは『ボコモンの死(もう出会えないこと)を受け入れる』ことだったはず。なのに、肝心の『もう出会えない』に重なる状態の人がこの中にはいません。

ガンマモンが『ボコモンは死んだ=もう出会えない旅に出たんだ』と学習できるモデルがいないんです。これではガンマモンは死を理解できないと思う。

 

結局これって、例によって『意地でもテコでも不自然でも人間は殺したくない』という方針(?)の悪影響なんですかね。人間であるばあばを意地でも殺したくなかった、そういうこと?

理解に苦しみますし本当に存在するのかも怪しい方針ですが、今のところ全話そんな感じです。スポンサーの意向などの、作品レベルでは語り得ない事情なのかもしれません。

 

今回の流れとしては、ばあばが死んでいるほうがスマートなんですよ。そうすれば『もう出会えない、死んだ人』としてボコモンと重ね合わせることができます。そうすればガンマモンが死がどういうことなのかを理解する流れも自然でしょう。

 

あるいはどうしてもばあばを脚本上で殺したくなかったなら、『ばあばは死んでないけどコエモンは死んだと本気で思っていた』でも良かったと思います。こういう感じです。

 

コエモン「ぼく、ほんとはなんとなく分かってるんだ。ばあばは死んじゃって、だからもう会いに来てくれないんだ、って……」

ガンマモン「シンジャウ? シンジャウってどういうことだ?」

コエモン「もう帰って来られない旅に行かなきゃいけなかったってことだよ……」

ガンマモン「旅……。ヒロ、ボコモンも、帰って来られない旅に行ったのか……?」

ヒロ「……そうだよ。ボコモンは、もう帰って来ないんだ……」

ガンマモン「………。ボコモン〜……(泣く)」

コエモン「(釣られて泣き始め、ガンマモンと抱き合って泣く)」

 

これぐらいしておけば、ガンマモンが死を理解するのには足りるのです。

このあと、『実は生きています』と展開しても問題ありません。無駄に泣かされたと視聴者が思わないように、気合い入れてコエモンの新たな旅立ちを描けば済むと思います。

 

カマイタチ回でもそうだったんですが、脚本での重ね合わせがすっげー下手です。結論だけ見るとちゃんと良い話なのに、わざわざゲストを使って語った物語と主人公サイドの物語が重なっていないのです。

 

それとも今回の回って、別にガンマモンが死の意味を分からなかろうとどうでも良くて、とりあえずボコモンショックを受け入れればそれで良かったみたいな、そんなかんじなんですかね。

グルスガンマモンに進化して他者を殺した、これからも殺し得るガンマモンが死の意味を分かってくれないの、すっげー戦々恐々とするんですけど……。

今すぐ「デジモン殺しの罪を自覚する」まではいけないと思うのでそこまでは求めないけど、将来的には自覚してほしいし、自らのグルスガンマモン形態に恐れも抱いてほしいです。その手前の手前の「死を理解する」段階でコケないでほしいです。

 

 

◾︎『殺害』に触れられない話運び

身もふたもないですけど、目の前で殺害された人を『旅に出た』って誤魔化した言い方はふつーしないよーな気もします。

ボコモンは病死や事故死じゃなくて『殺害』という悪意ある結果の死なんだから、グリーフケアにも特殊な配慮が必要になる気がするんですけど、今回の話は『ボコモンの死はただの死ではなく理不尽な殺害だった』という目線が全く入っていない筆運びですよね。ボコモンが病死などの他の死因でも全く同じ話が作れると思います。

 

『ガンマモン自身もグルスガンマモンになることでデジモンを殺した殺害犯なのだ』というファクターが全く触れられないのもすげーです。

というか、ガンマモンがグルスガンマモンに進化してしまったことも誰一人として触れない(ルリが珍しく「グルスガンマモンになったらどうするんだ」と止めたぐらいしか触れられないし、その警告も無視された)のですげえ。

 

そりゃ数目的でデジモン無差別大量殺害をしていた殺害犯は許せないし、和解のしようもなかったけど、それでも殺害は罪なんですよ。

グルスガンマモンは『和解のしようが無いから事態の解決には殺す以外にもうどうしようもない』と自分の手を汚す苦渋の決断で殺したんじゃなくて、ムカついてヒャッハーしてぶっ殺しただけですし。

 


話の流れで、『殺しはダメ』っていう基本的思想を示さないままになあなあでガンマモン(グルスガンマモン)の殺しを無視しちゃってませんか?

 

今回取り扱うのは『ボコモンの死の受容』だけで良かったんですか?

ガンマモン本人はまだ殺害の罪を理解できる頭がないとしても、周りのヒロ達が「ガンマモンはとんでもないことをしてしまった。これからどうしていけば良いだろうか」と苦悩するシーンは見せなくて良かったんですか?

これは作品の方向性や好みによるんですが、なんなら「ガンマモンはとんでもない化け物だった」と恐怖するシーンやその件で仲間内で意見が割れて口論になるシーンはなくて良かったんですか?

 

 

◾︎カス親父街道を驀進するヒロ親父

ヒロのカス親父がビデオレターにてまた再登場です。

「生きてることがほぼ確定した(死亡済だが録画だけ送られてきたわけではなさそう)」うえに「顔見知りの死亡があった直後に呑気に旅の様子送り付けてくる」ので、カス度が更に上がりました。

第1話の時点で大人しく害獣デジモンにオレサマオマエマルカジリされてれば良かったのに。

 

カス親父はヒロたちのほうで何が起こってるかを知らない? 顔見知りの死亡直後に呑気レター送ってきたのは、たまたまタイミングが悪かっただけで仕方ない?

それはそうなんですが、「今ヒロたちに何が起こっているか知らない」のは子供放置でワクワク放浪ロマン旅してるせいなんですよね。

 

カス親父、今も普通に生存しててメッセージを送る手段も持ってるなら、母親のほうに連絡して子供のところに戻ってもらうとかそういうネゴりをしても良いはずなんですよ。そういうことをできるはずなのにしないので、ほんとにカスなんですよね。

 

↓これはヒロ母への怨嗟です。

親父の失踪を知ってて全く帰ってくる気配がない母親もカスなので作中に出てこないでほしいですが。作中に出てこないで大人しくしてるなら母親のほうは許す。正確には、許しはしないけど忘れておいてやる。どうしても仕事で帰れないから母親は金を送りまくってるとか母親からの心配メッセがしょっちゅう届くとか、そういう描写があれば違うんですけどね。まあヒロが金に困ってるみたいな話は出ないので、金はちゃんと送られてきてるのだと思います。そのまま背景でいろよクズ母親、私も登場人物でごさいって出しゃばってくんなよ。刺すぞネグレクトクズ母親。アニメの人物だから刺せないけど気分的には刺すぞクズ母親。

↑ヒロ母への怨嗟ここまでです。

 

話は戻りますが、今までの描写だと、少なくともカス父親から入金はないと思います。第1話の感じだと録画見るまでヒロは父親の生存を知らんかったぽいですよね。

父親からヒロの口座に入金(または母親からではない謎の入金)が入ってたら、父親の生存を察するはずでしょ?

養育費払えやカス親父。

 

カス親父の送ったカードで疑似デジタルワールドを展開できるのは『カード=3DVR風景写真だから』っていうのは面白い発想だと思いました。素直に脱帽もの、「その発想はなかったな!?」です。

子供放置ワクワク放浪ロマン旅して、顔見知りが死んだ直後のヒロ達に3DVR風景写真を自慢目的で送り付けてくるの、マジでカスですけどね。

 

 

◾︎ボコモンの死を悲しまない主人公御一行

先程のカス親父の話でアンフェアなのは、あたかも「みんながボコモンの死に悲しんでいるところに呑気自慢を送りつけて神経を逆撫でした」かのように語っているところです。

嘘つけ、ボコモンの死に悲しんでいるのはほぼガンマモンだけ(しかもガンマモンの悲しみ方もだいぶ怪しい)ですよ。

確かに呑気自慢録画はイラッと来る内容だったけど、ボコモンの死で沈んでいる全員の神経を逆撫でしたわけじゃあないんですよ。だって、『沈んでない』んだから。

 

ボコモンについては、バクモンが意気消沈してるらしい(台詞説明のみ)というのと、ガンマがよく分からん大泣きをしてよく分からん凹み方をしてよく分からん復活をしたというぐらいしか反応が描かれてないんですよ。

他のみんなは、怯えるわけでも無し、泣くでも悲しむでも無し。大して反応が描かれていません。

アンゴラモンによるデジモンの死生観の説明のセリフから悲しみの感情を読み取る余地がないわけではありません。でも一方で『アンゴラモンは淡白に、一般的なデジモンの死生観の説明をしただけ』とも十分解釈できると思います。

 

んでまあ、前話第13話の感想でも書いたんですが、実際問題みんな『取り乱して泣く』みたいな反応をするほどボコモンと親しくないんですよ。

ボコモン先生とは隣人としてまあまあ良い感じに暮らしてました、ぐらいしか描写されてないんです。ヒロ達が泣かないのはまあまあ正しい。それよりも、経緯無視して大泣きさせれば悲しいみたいな描き方をされているガンマモンのほうにむしろドン引きしました。

 

……だとしても「隣人としてまあまあ良い感じに暮らしてた」デジモンの死に悲しむ・悼む様子すらほぼ無し、お悔やみの言葉のひとつも述べないヒロ達にはほんとこいつら人の心無いなって思います。隣人が死んでも一貫して「死の恐怖に脅える」が無いのも人の心が無いなあと思います。

今回に関しては、普段は良心であるアンゴラモンと先輩についても人の心が無いなと思いました。