灰色の本

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『デジモンゴーストゲーム』第20話「炎ノ監獄」:感想

デジモンゴーストゲーム』第20話「炎ノ監獄」の感想です。

話を動かそうとしている、重要回なのは分かります。が、残念ながら全体的な印象は前回に続いてとっちらかっており、ピンと来ないぼやっとした回だと感じました。重要回なのにあまり書くことがありません。

 

※初見直後に感想を書いていますが、初放送から時間をおいた段階での視聴となっています。

 

 

 

■重要回なのは分かるが……

話を動かそうとしている、重要回なのは分かります。

 

・初めて人間がはっきり死亡した。ようやくですね。

・デジタルワールドに帰りたいのに帰れなくて追い詰められているデジモンがいるというのは、実は初出の着眼点ですね。アンゴラモン先生は「まあみんな、なあなあでこっちの世界に馴染んでいる」って言ってましたからね。

・ガンマモンが『他人のために』という意志を明確に見せてきました。初ではないですが、演出が良かったので「おっ? ようやく他人のためにという感情が芽生えたか」と思いました。まあ(特に1クール中が)チョコ>>>他人な害獣だという印象が強すぎたせいですが……

・ガンマモンが能動的に進化形態を選択できるようになりました。進化ランダム設定自体が死に設定に近い(ずっとその設定が語られているのにいまいち話に活かされていない)ので微妙ですが、成長としては分かりやすくて良いと思います。

・死亡回以降ほぼ忘れ去られていたボコモン先生も回想として現れ、「ヒロ達は人間とデジモンの架け橋なのかもしれんじゃい」というメッセージがリフレインされました。

・ヒロ自身も「人間とデジモンの架け橋が必要なのかもしれない」、つまり(暗に)「自分たちがその人間とデジモンの架け橋になるべきなのではないか」というところに目を向けたように思います。

 

これから重要になってくると思われる要素がいくつも見受けられました。重要回であることは伝わります。大まかな筋も良いと思いました。

が、個人的には残念ながら、前回に続いてとっちらかったピンと来ない回だと思いました。いろいろあったのに全体的にぼやっとした印象です。

この回自体がぼやぼやっとしているのもありますが、今までヒロ、そして『ゴーストゲーム』という作品自体がふらふらしてきたからというのも非常に大きいと思います。

 

・ボコモン先生の「ヒロ達は人間とデジモンの架け橋なのかも」を思い出すのは、第13話のボコモン死亡から7話も経った今で良いのか、とか。

・こんなに深刻に悩んでいるデジモンが出てきて『人を(守ろうとして)死なせてしまったんだ』という深刻な話を打ち明けるまで、デジモンとの共生をどうするか(自分に何か貢献できるのか)ということについて何も思わなかったのか、とか。

・今回のデジモンを見ていろいろ考えだすということは、遡及的に今までの害獣デジモン達についてはその後のことをあんまり考えてこなかったんじゃないか。事件が終了して「やれやれ」したらそれで興味を失ってたんじゃないか、とか。

・13話グルスガンマモン登場からの物語の大きな流れ(テーマ)は、一応「ガンマモンをグルスガンマモンに進化させたくない。ガンマモンに殺しをさせたくない」だったと思うんですが(※まあこのことについても、もっと深刻に思い悩んでいても良いのに大した回数触れてないので、それをテーマだと感じたほうが間違いだと言われればあまり反論できません)、急にテーマが「人間とデジモンの共生」に変わった気がするなあ、とか。そのふたつは並行で進めることができるテーマではあるんですが、『ゴーストゲーム』はそれができるほど器用な制作だったかなあ、とか。

 

ヒロがデジモンに興味を持ってくれたのは良いです。ようやく彼自身の目的っぽいことを見つけようとしているのも良いです。

でもモヤモヤする。もうちょっとはっきりした印象の回にできなかったでしょうか。

はっきりした人間の死亡をここまで引っ張った結果がこれなのは厳しいです。

 

 

■ホラーとしては微妙だが、今回はそういう話じゃない

ホラー要素は微妙です。ただ、今回はホラーが微妙でも許される回だったと思います。というか、わざと捨ててるのでしょう。

今回の敵デジモンはヒロ達をピンポイントに狙っており、普段から怪異として暴れているわけではありません(全く無害なわけでもなさそうな気がしますけど)。『怪奇現象』としての出演ではなかったので、これで良いと思います。

 

 

■感情移入できる初の敵、ダークリザモンとセーバードラモン

ダークリザモンとセーバードラモン。今作で初めて、しっかり共感できるデジモンが出てきたと思いました。

やらかしてしまったことはダメだし、手段を選ばなくなってそのへんの邪魔な人間は殺すみたいな勢いでヒロに襲い掛かってくるのもダメだけど、感情は理解することができました。

メインとなる感情(過去への悔恨と「この世界は人間の世界であって、デジモンである俺達の居場所ではない」という感情)以外はこの二人についてあまり描写されていませんが、セーバードラモンが飛べないダークリザモンを掴んで移動していることから、相棒としては上手くやってきたらしいことがなんとなく伝わりました。

あくまで人間の世界に馴染めないだけであって、デジタルワールドだったら彼らは二人で仲良く相棒しながら暮らしていけるんでしょうね。帰還した彼らが仲良く暮らせていけますように。腐れ縁でも良いからさ。

 

しかしこの二人、「彼らなりに追い詰められていたのであって、彼ら自身が悪かったわけではない」と害獣じゃなさそうな顔をしていますが、「そこから出たければ好きにしろ」とだけ言って去っていく(炎から出ると燃えることは言わない)というあたりはタチは悪いですよ。遊園地に来ていた人たちを無差別に巻き込もうとしていたのもふつーにタチが悪いです。

 

ダークリザモンさん達、普段のデジモンよりだいぶ共感できるだけで害獣は害獣です。最悪、ヒロとガンマモンを残して全員が死ぬところでした。

先輩&ジェリーモン組とルリ&アンゴラモン組がそれぞれ炎のギミックに気づいて良かったですね。おかげで余計に4キルしなくて済んだんですよ、ダークリザモンさん。ルリ&アンゴラモン組は人質にする意図があったしダークリザモンさん達がそばにいたからまだしも、置き去りの先輩&ジェリーモン組に対するムダな殺意についてはあんまり言い訳できないですよ。

 

 

■ブラックテイルモンの情報が無さ過ぎる

ダークリザモンさん達がデジタルワールドを行き来できるブラックテイルモンに目をつけるのは着眼点が良く、ちゃんと調査をしているなあと好印象です。

が、肝心のブラックテイルモンが今のところ特に情報が無いんだよなあ……。

 

ブラックテイルモン、演出や振る舞いからは、なんか重要キャラというイメージもないんですよね。重要は重要かもしれないけど『ただの運び屋』『ブラックテイルモン自身はただのコマ』っていうイメージがあって、ブラックテイルモン本人が何かを考えているわけではなさそうに見えるので。

ブラックテイルモンがデジタルワールドとの行き来の鍵を握ると踏んだダークリザモンさん達の着眼点は良いと思います。けど、だからと言って、ヒロ達がブラックテイルモンを追って何か情報が得られるのかとか、『ゴーストゲーム』という物語がこれからブラックテイルモンを探すような展開になるのかというと……ぴんと来ません。

今のところ他の手がかりがないのはそうなんですけど、『ゴーストゲーム』は手がかりになりそうなものがあっても調査はしないというのが常なので、「ブラックテイルモンが怪しい(何か情報を持っていそう)」みたいに見せる演出が本当に後の展開に繋がってくるのか分かりません。

 

ところでセーバードラモンさんの言っていた台詞。

>「何を運んでいるかは知らんが、(ブラックテイルモンが)お前のところに出入りしているのは分かっているんだ!」

映像では第14話のシーンが回想に使われていますけど、『出入り』というにはセーバードラモンさん(達)はヒロのところにブラックテイルモンが現れていることを複数回確認してるんですよね。

ブラックテイルモンがヒロのところに現れたのは、以下ぐらいだったと思います(歯抜けの可能性あり)。

 

・第1話「口縫男」。ヒロの私室に登場。何を届けに来たのかは明確には不明。デジヴァイスに差すカードがいきなりヒロの近くに降ってきたのでそのカードを持ってきた? あるいは、ガンマモンを指さしているのでガンマモン自体を連れてきた?

・第8話「百鬼夜行」。疑似デジタルワールド化状態の高速道路に突然登場。暴走を続けるシスタモンシエル&メタルファントモン&巻き込まれたその他大勢を、ゲートを開くことでデジタルワールドに帰還させ、強制終了させた。

・第14話「座敷童」。旅行先の宿のヒロ達の部屋に登場。デジヴァイスに差すカード=北斗の思い出自慢VR写真データを配達しに来た。

 

うーーーん、ブラックテイルモンさん、ほぼカス親父の自慢写真を届けるために来ている。第8話は例外っぽいと考えるとカス親父の自慢写真宅配のためにしか来てない。ヒロがセーバードラモン達に襲われたの、カス親父のせいじゃねえの。

 

あと、第8話みたいにやばいデジモン達をデジタルワールドに返す役割も果たしているなら、今回もこんなことになる前にさっさとダークリザモン&セーバードラモン達のところにブラックテイルモンさんが来てくれれば良かったのにね。

 

 

■重要回らしく、気合が入ったバトル

今回のバトルは比較的よく動くし、カメラワークも凝っていて良いと思いました。何より、(殺してはいないものの)敵をしっかり撃破しているので満足感がありました。

 

カウスガンマモンがセーバードラモンをキックで派手に吹っ飛ばしてKOしたのも良かったですし、『ダークリザモンの大技でカウスガンマモンが殺されたと一瞬思った→デジヴァイスの光で生存を察した→バンクをかっ飛ばして一瞬でベテルガンマモンに進化し、一撃必殺』の流れも爽快で最高でした。

地味ながら、『闇の炎が消えてルリや先輩達が解放される』ことでダークリザモンが撃破されたこと=戦闘終了がはっきり分かるのも良かったです。

 

……『ゴーストゲーム』、敵を倒さない=殺さないことにこだわっているように見えるけど、そもそも『倒す』と『殺す』はイコールではないんですよね。今回みたいな『倒す(殺しはしない)』ケースがありなら、がんがんやったほうが話のメリハリもバトルの満足感もあってすっきりするんじゃないかなあ……。

 

 

■そのほか

・ウェズンさん、火力大砲な代わりに鈍重なタイプかと思ってましたけど、実は案外機動力があるタイプなんですかね。ヒロを乗せて機敏に走りだしたので「おっ?」となりました。

定番ですが、人外相棒に乗ってがんがん走るシーンは良いですね。ポケモンでいうとこの相棒ライドポケモンみたいな感じ。『ゴーストゲーム』でも以前にカウスに乗るシーンがありましたが、今回のほうが前後の流れが良くて堪能できた気がします。攻撃でひっくりかえされたまま射撃するウェズンも好き。

 

・ゴーカートに乗って突撃→そのまま直前で乗り捨てて攻撃回避→倒れたガンマモンを回収して逃走、というヒロは勇気があって良かったです。いつもの自己犠牲だと言ってしまえばそうなんですが、同じ自己犠牲ならこういう能動的で勇気を振り絞った展開を序盤から見たかったなあ。

 

・今回はホラーっぽい意味での『怖い』要素は薄いんですけど、表情は良いんですよねえ。ていうか第16話ぐらいから『怖い』『苦しい』の表情がずっと良い。頑張ってる気がする。今回は『怖い』が薄いぶん、『苦しい』の表情や、勇ましく立ち向かう表情が良いです。

序盤からちゃんとこれぐらい表情描写をやってほしかったんですけど、第16話ぐらいから新しいスタッフさんでも入ったんですかね。

 

・自分は第7話「鳥」でガンマモンが「空を飛びたいー!」って言ったらマジでカウスガンマモンになったことには「そりゃねえだろ」ってずっっっと思ってるんですが、未だに思ってるんですが、今回「(ヒロを守るために)もっと素早く! もっと強く!」でベテルガンマモンに進化したのは違和感が無く、熱いシーンであるように感じました。

今回と比較すると、第7話は単純に演出と流れが悪かっただけのような気がしてきました。だって、『仲良しの兄貴のヒロを守るために力が欲しいから、知っているフォームに進化する』は分かるじゃん。『チョコの仇のカラス(まあまあ言いがかり)を倒したいから知らないフォームにいきなり進化する』、全然分かんないじゃん。

 

「人間ってのは……デジタマには戻らないんだよな……」これは文句なしの名言です。デジモンの死生観を使って「死んだ」ということを遠回しに指し、ダークリザモンの深い後悔も示す。短い中に情報と感情がしっかり入っています。

 

・「炎ノ監獄」というサブタイトル、なんか今までで一番内容に関係ないような気がしました。確かに今回のホラー要素はそこなんですけど、今回の話でホラー要素はそこまで重要じゃないですからね。技の一つにそこまで着目されてもね。