灰色の本

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『デジモンゴーストゲーム』第18話「子供ノ国」:感想①

デジモンゴーストゲーム』第18話「子供ノ国」の感想①です。

デジモンがキモい。

どうにでも味付けはできたと思うのに、どうしてこう小児性愛者じみたキモさに落ち着いたんでしょうか。理解に苦しみます。

 

例によって、長いので記事を二つに分割しています。毎回長くて毎回分割してるね。

今回のメインテーマである「成長(子供のままであるべきだ←→大人になりたい)」を感想記事①で、その他の細かい話を②で書いています。

 

※初見直後に感想を書いていますが、初放送から時間をおいた段階での視聴となっています。

 

 

 

■ピーターモンがとにかくキモい

ピーターモンが小児性愛者みたいでとにかくキモい。細かくは良いところも結構ある回なのに、全体印象としてはこれに尽きます。

ピーターモンは小学生以下(もっと下?)の子供を狙って「可愛い」「良い匂いがするよ」と言って誘拐するショタコンロリコン野郎でとにかくキモいです。しっかり人間型のデジモンなのが『人間にもいるガチ不審者、ガチ犯罪者』ぽくて更にキモいです。

中学生のヒロ達ではもう「臭い大人」でダメらしいんですよね。しかもその『臭い』というのは性格や言動などを指した比喩表現ではなく、本当に『体臭』のことです。ガンマモン本人はピーターモンの誘拐対象の範疇らしいのに、ヒロの体臭がついてるから無理と言ってます。

 

ごめん、キッッッッモ。

え、無理、キモッ。声優さんが良い声してるせいで更にキモッ。今までもデジモン達は害獣だったけど、こいつは生理的にキモい害獣だから無理。

どうしてこんなキャラにしたのか理解に苦しみます。

 

彼は、潔癖なまでに「大人は臭いんだ」と言い続けています「子供は子供のままでいないとねえ」と言い続けています。「大人は何でも決めつけ、約束を破り、平気で嘘をつく」と彼は語ります。「身体がもっと大きかったら手が届いたのに」程度の発言を聞きとがめて、「大人になりたいのか」と剣を突きつけて子供を脅します。彼が愛し、守りたい対象と思われる『子供』を、です。

 

彼は吐き出すように、叫ぶように語ります。

>駄目だ駄目だ! 大人になんかなっちゃ絶対に駄目だ。

>約束は破る。

>嘘はつく。

>大人なんて最低最悪。

>大人になんかならないで、ずっと僕の国で遊ぶんだ!

 

その強迫的な様子は声優さんの熱演も相まって、何か過去に相当なトラウマがあったのではないか? と感じさせるようなものでした。

例えば、大人に手酷く裏切られたとか……子供であるために馬鹿にされて大人の社会でずっと酷い目に遭わされていたとか、大事な約束を踏みにじられたとか。

 

けれど、基本的にデジモン=『人間とは常識や考え方が違いすぎて理解や意思疎通が困難な存在』だと描いている『ゴーストゲーム』では、ピーターモンの暴挙の理由にそういう辛い過去などの分かりやすい理由を用意することはありません。

あくまで、価値観が違うので理解できない理由で大迷惑をかけてくる害悪、です。そういう作品なのです。

 

いやでもさあ……。

今回のピーターモンとあと前回のフロゾモンは、もうちょっとだけ描写すれば『やることはクソ迷惑だが動機は理解できる』範疇になったと思うし、そうすべきだったんじゃないの?

 

ピーターモンは、過去に大人から酷い目に遭わされたことがトラウマで、子供の人間とデジモンを守ろうとして誘拐していた。

 

前回のフロゾモンは、寒さに弱いデジモン達を守るために、(直進したいからという理解しがたい欲求のせいではなくて)どうしても発電所を通らなくてはならなかった。

そのためにはどうしても発電所の熱源を落とす必要があったし、ヒロ達の命を厭わないほど切羽詰まっていた。

 

それじゃあダメだったんでしょうか。

毎回毎回が理解不能な害獣じゃなくても、ときどきぐらいそういう『迷惑だが理解できなくはない』デジモンを出したって良いんじゃないでしょうか?

 

まあ確かに、上記をそのまま採用すると、今回前回は元々のままのオチにはなりません。敵デジモン達サイドの思いの強さゆえに状況はもっとシビアになります。元のオチとは別の落としどころを用意する必要があり、ヒロ達はもっと大変になったと思います。

 

でも、それぐらいしたって良いんじゃないでしょうか。

折り合いが見えないところに折り合いを探すのが、『ゴーストゲーム』が今まで(脚本的にだいぶ拙かったけど……)やってきたことなんじゃないですか? ヒロ達という主人公達を使って、やろうとしてきていることなんじゃないですか?

 

あと単純に、『ゴーストゲーム』のデジモン=理解できない害獣という作風、それ自体は自分は好きなんですけど、デジモン好きやデジモンシリーズ好きを増やすことには寄与しているのか疑問ですね。好きになれるデジモンが少ないんですが……。

 

 

■子供のままであるべきだ←→大人になりたい

・「子供は子供のままで」というピーターモンの(残念ながら演出のせいでだいぶキモい)願い。

・『それでも僕たちは成長していく、大人になる。大人になりたい』というテーマ。

デジモン達の不可逆な進化を噛み合わせる。

素材の取り合わせは非常に良かったと思います。

 

友達のカズマ君を守りたいという願いで進化したホークモン→オルカモン達は非常に良かったと思います。

また、その戦いに感化されて「僕も僕も」と子供デジモンたちがみんなでわらわら進化し始める進化ラッシュも非常に良いですね。彼らは大人になることの美点を見て、成長したい、大人になりたいと願ったのです。

人間の子供たちはデジモン達のように急激に進化することはできませんが、それでもデジモン達の進化を見て純粋に言います。「私達も大人になりたい!」と。

成長という当たり前の事柄について肯定する、子供向けアニメとして良いシーンだったと思います。

 

モブデジモン達をいっぱい出して次々と進化させたのがやっぱり良いですね。

メインメンバーのデジモン達は、パートナー人間のデジヴァイスによって『可逆的な進化』をしていますが、人間の成長は不可逆的なので、メインメンバーデジモンの進化の方法とは重なってきません。ここで『不可逆的な進化』を行うメインメンバー外の通常のデジモンを持ってきたのはナイスでした。

細かいことを言えば、あそこはモブデジモン達の進化が重要だったんだから、ガンマモンの進化で進化曲を改めてかけ直すのはやめたほーが良かった気がする。野暮。

 

ただ、ピーターモンについての話題で先述したとおり、彼の願いはまともに描かれていない(共感できるような内容として描かれていない)んですよね。

『それでも僕たちは成長していく、大人になる。大人になりたい』というテーマを描くには、対になる意見、ピーターモンの「大人になるのは嫌だ、駄目だ」という願いがより鮮烈に描かれていたほうが良かったと思います。

 

 

■不誠実で尻切れトンボなヒロとピーターモンの議論

「子供は子供のままで」×「大人になりたい・大人になる」×「デジモン達の進化」という取り合わせは非常に良かったのですが、ヒロの説得が全く共感も理解もできなくてやべえ。

 

ピーターモンの台詞をもう一度引用しますね。

>駄目だ駄目だ! 大人になんかなっちゃ絶対に駄目だ。

>約束は破る。

>嘘はつく。

>大人なんて最低最悪。

>大人になんかならないで、ずっと僕の国で遊ぶんだ!

このピーターモンの発言に「違う! 人間は大人になっても『遊ぶ』んだ!」って言い始めるヒロ、言葉尻は聞いてるかもしれないですけど話は全然聞いてないと思いませんか? クソリプかな?

 

ピーターモンは強迫的に「大人は汚い、約束を破る、すぐ嘘をつく」と繰り返しているんですよ。「(だから)大人になんかならないで、僕の国でずっと遊ぶんだ」という発言の「遊ぶ」の部分にだけ反応するの、不誠実だと思います。

真っ当に説得するなら、「大人は汚くなんかない。だって~」か、「大人は汚いかもしれない。けど~」になるような気がします。

 

話を自分の有利なほうに持っていって説得するために、わざと論点をズラしたんでしょうか?

そのわりには、議論はそのあと大して進んでいません。キャプテンフックモンがデウスエクスマキナ的に突然前触れなく現れてピーターモンを回収して強制終了しました。よく分かりません。

 

最終的には、『約束』ってワードを出したのでピーターモンがなんかうっかり丸め込まれちゃっただけに見えました。まあ……ヒロが『約束』っていうピーターモンにクリティカルなワードを出せたあたり、ヒロは話は聞いていたんでしょうね。誠実な議論だったとは感じられませんでしたが。

 

ところで、ヒロはこれで『怪異』と『約束』をしました。普通の怪奇物語なら、約束を破った人間はだいたい酷い目に遭ったり殺されたりするのですが、ヒロはどうなるのでしょうか。

まあ怪異っつってもデジモンだし、ヒロの約束もちゃんと『約束を果たしたか』が分かりづらいあやふやな内容だからなあ。

 

 

■そもそも、カス親父なのだが

え? あ、はい、わざとツッコんでないんですよ。

>人生は楽しいことだらけだって、俺の父さんが言ってた!

>自由で楽しく暮らしてるけど、約束は絶対に守る大人だ。

>俺はそういう大人になりたい。いや、絶対になる。

そいつめちゃくちゃカス親父だろってことは。約束守る大人じゃねえ(子供を面倒見ずにほったらかしにするのは、子供が生まれたときに自動的に発生した約束を破ってるようなもの)ってことは。よりにもよってあのカス親父なんかを引き合いに出すからぜんっぜん共感できねえ。そうじゃなくてもまともな議論じゃなかったけどさ。

そのうち別記事立てて語るよ。語り始めたらぜってえ長いから。長くなるのが分かってるから、もうちょっと親父の新情報が出てからにします。

 

 

■総評・「成長したい」という願い

今回は完全に、カズマ君&ホークモン→オルカモン達、そして彼らに感化されて「進化したい」「大人になりたい」と願ったモブの子供デジモンとモブの子供人間達がすべて持っていった回でした。

 

残念ながら主人公であるヒロ達も、敵デジモンにして今回の話の舞台そのものであるピーターモンも、物語の外周に留まりました。ヒロ達もピーターモンも、今回のテーマについてまともな意見を持っていませんでした(あったかもしれませんがまともな話し合いをしませんでした)。

 

今回はほんと、ピーターモンをキモい小児性愛者にせずに、大人について辛い思い出があるからこそ子供を子供のままにとどめることで守ろうとしているシリアスなキャラとして描けば良かったのになと思います。

そして、キャプテンフックモンというデウスエクスマキナに頼るのではなく、ヒロ達自身がちゃんと「大人になるのは良いことだ」と語って最後までピーターモンを説得すべきだったと思います。あるいは、モブデジモン達やモブ子供達が「成長したい」と自発的に願ったのを見たことによってピーターモンが自分の過ちにちゃんと気づいたという筋にするか。

 

テーマ設定も素材の組み合わせも良いのに、最終的な落としどころが下手くそな回でした。