灰色の本

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『デリシャスパーティ♡プリキュア』第2話「さようなら、ゆい…! マリちゃんの決意」:感想

 『デリシャスパーティ♡プリキュア』第2話「さようなら、ゆい…! マリちゃんの決意」の感想です。

 

※リアルタイムより遅れて視聴していますが、初見状態で執筆しています。

 

 

 

ローズマリーの心情描写が光るが、肝心なところが欠けている

第2話はほぼ完全にローズマリー回と言っていい回でした。ゆいの過去回想もありましたが、第2話単体で見る限りは外周の話でしかありません。今回の話の主題は、ゆいを危険な戦闘に参加させたくないと悩むローズマリーの心情です。

 

これにはちょっとびっくりしました。プリキュアは第1話で主人公を変身させたあと、さっさと第2話で落ち着きなく次の仲間を回収して、その後も仲間回収回が連続するという勝手な偏見があったので。仮に仲間回収をやらない場合は相棒妖精との絡み回をやるというイメージだったので、次の仲間回収回でもコメコメ回でもなくローズマリーの回をやるのが意外でした。

でも確かに、「子供をプリキュアとして戦わせたくない」という回をしっかりやるならこのタイミングしかないと思います。この回をやるという判断をしたなら今やるしかありませんでした。その点は良かったと思います。

デリシャストーンが壊れたのはゆいが強引に関わったせいなのにローズマリーがゆいを全く責めようとしないところ、デリシャストーンが壊れてクッキングダムに返る手段も戦う手段もないのにそれでもゆいを戦わせないために去る決断をするところはローズマリーの善良さがよく表れていたと思いますし、ローズマリーを追い詰めたのがあくまで善意で関わろうとしている無邪気に自信満々なゆいの姿だったのもとても良かったと思いました。

 

ただ、「子供をプリキュアとして戦わせたくない」という回をやるその判断自体が正しいのか? というのはやや疑問に思います。プリキュアにわかだからなのか、いまいち意味が分かりませんでした。ローズマリーの悩みは確かに見ごたえがありましたが、主人公であるゆいの更なるキャラ立てを後に回してまでやることだったのでしょうか。ちょっと謎です。

 

何より、「ローズマリーがゆいを戦わせたくなくて真剣に悩んでいる」という描写は優れていても、「その悩みを吹っ切ってゆいと一緒に戦う決心を決めた」という流れがどうにも説得力が欠けています。こんなに深刻に悩んでいるのに、

>「この世で一番強いのは、誰かのために頑張る心」

>「その言葉を私は信じてる。だから、絶対できるって信じてる。マリちゃん! 私諦めないよ!」

この説得内容で「じゃあ、ゆいを危険にさらしても一緒に頑張って戦おう」の方向に気が変わっちゃダメじゃないですか? 納得できなかったです。そこに説得力を持たせられないなら、この回はやらずになあなあで流したほうがマシだったのではないか。そう思ってしまいました。

 

敢えて好意的に見れば、ローズマリーさんが今回のゆいの発言=ゆいの祖母の発言と全く同じことを実は過去に聞いたことがあった、とかかなあ。それで心が動いてしまったなら納得はできます。その場合でも、第2話を単体で見ると心情変化についていけないのはいただけませんが。

『デパプリ』にはわざわざ『正体を明かさない』ことを明言しているナレーターがいるんですよねえ。で、そのナレーターさんはどうも声からするとゆいの祖母だろうという。その人が実は元々クッキングダムに関係がある人で、ローズマリーにも以前出会っていて「この世で一番強いのは、誰かのために頑張る心」という言葉を伝えていたとか、そんな話になりませんかね。それなら、後付けであっても納得『は』できるんですけど。第2話単体で見るとついていけないのがダメ、という評価は変わりませんけどね。

 

 

■ゆいとローズマリーの友情回として見れば良回

先述の通り、今回の話は一番重要なピースが欠けていると思っています。その観点だけで見るなら、やらないほうが良かった回なのではないかとすら思いました。

 

しかし一方で、ゆいとローズマリーの単なる友情回として見れば十分良回であるように思えました。

前半でローズマリーの悩みを丁寧に描いたのが利いていると思います。深く悩んでいたローズマリーが、ゆいという個人を信頼したい・信頼できると思った。その感情の推移自体はコントラストを持たせて上手く語られているように思うのです。

ただ、ローズマリーの悩みに対して、制作スタッフが『実質的な説得』として用意したゆいの言葉がちぐはぐしているのが悪いだけなのです。ローズマリーの悩みはゆいを信頼できれば解消する類のものではないんですよね。

 

善人で常識人で、大人であるローズマリーの「戦わせたくない、巻き込みたくない」という悩み。

一転して、信頼を築いたゆいとローズマリーの鮮やかで爽快感ある共闘。

「この回はしないほうがマシだった」と思う観点がある一方で、この二つを見られただけでも見る価値があった。そんなアンビバレントな回でした。

 

 

■ゆいの印象のリカバリが待たれる

もうひとつ、アンビバレントなところがあります。

先ほど述べた通り今回はゆいとローズマリーの友情回として見れば良回だと思いますが、『ゆいの印象自体はどちらかというと悪くなる回』なのです。

 

今回のローズマリーの悩みは『ゆいを戦いに巻き込んでしまったこと』が前提です。しかし元々は、ゆいがローズマリーの指示を無視して突撃していったために巻き込まれたのです。

それだけでなく、ローズマリーの持つデリシャストーンが壊れていることも今回の話の前提となります。つまり、『第1話でゆいのせいでデリシャストーンが壊れたこと』が暗に前提となるのです。

今回の話はすべて暗にゆいが遠因になっているのです。

 

ゆいの身勝手さを遠因としてローズマリーが苦しんでいる。

しかも彼女を傷つけることを望まなかったローズマリーはゆいを全く責めなかったため、ゆい本人は自分の間違いに気づくことができませんでした。

 

結果的に、ゆいの身勝手さを2話も使って描いてしまったのに近い形になったわけです。ゆいの身勝手さについて、おいおいで構わないので、きちんと作中で回答をすべきだと思います。

2話をローズマリー回に回してしまったため、ゆいは2話では空気気味でした。ゆいの基本的な魅力は1話で描いていますが、2話で彼女の深掘りはほとんど進行していません。ただ、まだ2話なので致命的な遅れでは全くないでしょう。これから魅力も、身勝手さ・独善性への回答も、じっくり組み立てていけば良いと思います。

 

 

■そのほか

「ハートキュアウォッチが教えてくれたの!」「そんなことまでできるの!?」居場所を教えていないのにローズマリーのピンチに駆け付けたゆいとローズマリーのやりとり。どうも、ローズマリープリキュアの細かいことや道具の細かいことについては知らない部分が多いのかもしれませんね。

 

・戦闘中にギャグ顔したり爆弾を殴って熱い熱いと悲鳴をあげたり、戦闘中もコミカルで良かったです。

 

ローズマリーさんは単体では敵を倒す実力がないようですが、敵の気を引く程度の技量はあるようですね。異世界人だからか、ストーンを失っても完全な無力ではないと。

ただしこれは小手先の技術っぽい感じがありますし、脚本的にも使いづらそうなので、どんどんローズマリーさんの戦闘での出番は減っていっちゃうんじゃないかなあと思えます。仕方ないかもしれませんが、ちょっと残念。

 

・前回感想で気にしていた「美しさの秘訣を教える」→「それはいいかな」というローズマリー&ゆいのやりとりから感じた『オネエキャラの扱い』の不穏さは、案外あっさりと消えました。

ローズマリーの美しさや美容意識を評価して、「教えて」と話に乗ってくるキャラが登場したからです(ゆいの母)。できればゆい自身か、メイン格であるプリキュアメンバーの誰かにそういう肯定役を担ってほしかったですが、まあ良いでしょう。とにかくこれで脚本側がきちんとバランスを取る意識はあることは分かりました。ゆいの言動も、『ゆいは美容にはそこまでの興味はない』というキャラ個性程度の話として受け止めたいと思います。

今後何かあればその都度反応はするでしょうが、その時はその時。とりあえずローズマリーの基本設定はちゃんと気をつけて設定されている、と一旦は信頼して見ていきたいと思います。