灰色の本

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『デジモンゴーストゲーム』第1話「口縫男」:振り返り感想①(作品全体について)

デジモンゴーストゲーム』第1話、「口縫男」の感想①です。

第1話から分かる作品全体の方向性についての感想です。

 

※この記事は初見当時に他媒体で書いた感想を元に、後から再構築したものです。

 

 

 

■期待できる出来。先が気になる

1話はホラー描写にがっつりと尺を使い『ホラー要素がある作品である』という方向性を打ち出しつつ、ガンマモン登場からはデジモンやデジタルワールドといった基本設定をしっかり説明し、敵デジモンとバトルして倒すという、手堅い構成になっていました。

細かい粗はありますが、1話の段階で説明すべきことはちゃんと説明できていると思いました。また、ホラーをしっかり書いたことで物語に「恐怖感」と「この脅威をどうやって解決する(生き延びる)のだろう」という緊張感があり、ダレることなく進んだと思います。

 

■『ホログラム』×『幽霊(ゴースト)』×『デジモン』の組み合わせ

近未来技術の中でも視覚要素が強い『ホログラム』に着目して、更に『幽霊』と組み合わせたのは着眼点が良いと思いました。画面上にホログラムの表現があるだけで見た目的に面白いですし、近未来らしさも伝わります。

その近未来らしさと『幽霊』という古くからある概念を掛け合わせ、『新しい都市伝説・ホログラムゴースト』という設定を組み上げたのは素直に発想が上手いと思います。ホログラムゴーストというこの作品にしかないうえに分かりやすい固有名詞が出てくるのもキャッチーで良いですね。

更に『ホログラムゴーストとは、デジモンのことである』というのが今作の基本設定なわけですが、これも面白いと思いました。今作ではデジモン幽霊、もっと言えば、妖怪怪異に近い恐ろしい存在なわけですね。

自分はデジモンについてはにわかで、通しで見たのは初代、02(とアプモン)のみです。「今作の『恐ろしい怪物』であるモンスターにデジモンを流用しないでほしかった」という意見を見かけましたが、デジモンファンの中にそう思う人がいるのは当然だろうなと思います。ただし、にわかな自分からすると、デジモンという種族に「人間と通じ合えない価値観を持つ可能性がある存在」という解釈を与えるのは面白い試みだなあと思いました。

 

■朝の児童向け枠でメガテンをやる?

前項で『今作ではデジモンは幽霊、もっと言えば、妖怪や怪異に近い恐ろしい存在』と述べましたが、自分の初見の感想は別のものでした。

メガテン女神転生)シリーズの『悪魔』。

それが一番近いと思ったのです。1話の世界観自体もメガテンだなあと思いました。具体的には、↓こうです。

 

・ホログラム演出、デジタルデバイスに代表されるサイバーな世界観。

・モンスターは相手によっては親しくなることが可能だが、相手によっては人間の価値観が全く通じない。人間を平気で殺そうとしてきたり、人間をおもちゃとしか思っていなかったりするが、『そういう価値観』なだけであり人間の善悪で推し量ることが難しい。

・ばかすか人が死ぬ。主人公の親や一番近い友人でもばかすか死ぬ。(※1話では最終的に被害者が全員回復したため、実際には死亡や再起不能の被害は出ませんでした。)

 

上記のようなメガテンなノリで始まった今作を、個人的には正直「面白い。」と思いました。メガテンばりに死人をばかすか出す気概でやってくれたら絶対面白くなる。ただしその一方で、「朝の児童向け枠で? デジモンシリーズが? そんなことやって、ちゃんと物語の進行を制御できるの?」とものすごく疑問にも思いました。自分は嬉しいけど朝枠で子供向けにそれをやるなら、客層の考慮は正しいのか。それとも、そこまでシビアにならないようになんとか丸めていくのか。

最終的に被害者全員が回復したことを考えると、どちらかと言えば鬼太郎シリーズ(だいたいの敵(妖怪)たちは交渉が通じるか鬼太郎に倒されて改心する。妖怪の言い分はそれなりに通っており、妖怪=文化の違う隣人ぐらいに収まっている)に近い作風を狙っているのかもしれません。ただ、1話を見る限りでは、デジモン達は鬼太郎シリーズの妖怪達のように「話が通じる」ような甘い存在ではありません。

 

■ホラー? ミステリー?

都市伝説、日常に突然忍び寄る怪異という題材や書きぶりから、1話は完全にホラーテイストの物語でした。しかし、公式による作品内容紹介文は下記です。

>新感覚ミステリー!全く新しい形の「デジモン」が始まる!!

……ううん。ミステリーというジャンルをどう解釈するかにもよりますが、『謎解きもの』という意味のミステリーなら、ホラー要素とは相性が悪い場合もあります。ホラーは『謎解き』されて暴かれてしまうと怖さが薄れてしまうからです。もちろん、ミステリーホラーと呼ばれるジャンルも存在するのですが……

 

ホラー。ミステリ。電子ネタ込みのサイバーチックなファンタジー。そこに投入される、ガンマモンのコミカルなキャラ。この四点はそれぞれ喧嘩し合うところがあります。製作スタッフが今作のジャンルをどのように考えていて、これらの要素をどう調和させていくつもりなのか、何も考えてないのかは気になるところです。ひとまず様子見ですね。

 

1話の恐怖演出は「怖すぎず、先は気になる」というバランスでなかなかのものだったと思っていますが、ホラージャンルって、とてもネタ出しが大変なジャンルだという印象があります。元々のホラー好きでなければネタ出しだけで重コストだと思われるこの作品を、息切れせずに続けることができるでしょうか。

 

■そのほかの感想

・キャラクタービジュアルは可愛いですね。デザインがどうと言うより、絵柄がころころと可愛くて、等身も低すぎなくて好みです。自分はキャラクタービジュアルが好みだったので今作を見始めました。

・OP曲はおどろおどろしさとカッコよさを両立してて好きです。何回も聞きたくなりますね。ホラーで冒険もののアニメのOP曲という注文にこの曲をちゃんと出してくる楽曲制作者さんはプロだなあと感じます。

・OP映像も優れていますが、こちらは何度も集中して見るほどではないかな。でもたまにしっかり映像まで見たくなります。

 

 

※この記事は初見当時に他媒体で書いた感想を元に、後から再構築したものです。