灰色の本

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『デジモンゴーストゲーム』第1話「口縫男」:振り返り感想②(個別描写について)

デジモンゴーストゲーム』第1話、「口縫男」の感想②です。

細かい描写についての感想です。

 


※この記事は初見当時に他媒体で書いた感想を元に、後から再構築したものです。

 

 

 

■突然のシビアな展開

開幕10分で主人公のパパンが魔物に食われて死んでびっくりしました。嘘です。パパンはただ突然消滅して失踪しただけです。

しかし、1話だけでは主人公パパが生きているとは微妙に断定しづらい展開だったのも確かです。連絡してきた主人公パパは、録画のメッセージを送りつけてきました。なら、『死亡する前に録画したものを主人公に送った』可能性は有り得ます。まあまず生きてるんでしょうけど。

個人的には死んでて欲しいと思いました。ていうか、詳しくは後述しますが、主人公の父親も主人公の友人のチャラ男(コタロウ)も『ホラー映画の序盤で死ぬから許されるよーな腹立つ奴』っぽいキャラ付けになってるような気がします。死んで作品の緊迫感に貢献してくれるなら許す。でもまあ生きてるんだろうなあ。

 

■主人公・ヒロの『パシられ』病理?

主人公であるヒロは、頭が良くて家事でもなんでもだいたい器用にこなす(何故かピッキングまでできてしまう)キャラなのに、人に頼まれると断れないキャラである、ということが1話で解説されました。

この『人に頼まれると断れない』というのは、厳密には『自分でやってしまうほうがめんどくさくないので、断る発想すら浮かんでない』という状態のように見えます。優しいキャラというより、流されやすい、主体性を欠いたキャラであるように見えます。友人に頼まれるがままに立入禁止のドアをピッキングで開けてしまい、結果的に友人が怪奇現象の被害に遭うのですからその流されやすさは相当なものです。

この作品がホラーであり『事件のほうからやってくるタイプの作品』と思われるということを考えると、主人公であるヒロが主体性を欠いていることは、それだけではマイナスにはなりません。料理次第でどうにでも化けます。今後の扱いに注視したいと思います。

自力での主体性を欠いているのに、頭が良くて、ピッキングという行動的な技能を持っているのは面白い・変わったキャラ像ですね。初戦闘で「敵の時間操作技を利用して栗の木を成長させて攻撃し、隙を作る」なんて機転がものすごく利く子なのも好ましいです。今後、恵まれた才能をヒロ自身の積極的な意志で使っていけると良いのですが。

 

■ヒロとガンマモンの関係

ガンマモンは「何も分かってない赤ちゃん」だと割り切ることができれば可愛いですね。親父に「ヒロ=兄」と教え込まれれば、兄を守るために積極的に戦ってくれる健気さも見せてくれます。ヒロが「おやじに押し付けられたのでほっとくわけにもいかず仕方なく」という感じに見える一方、ガンマモンは「兄! だから助ける!」という感じで純粋です。

現段階ではヒロ自身との絆があるわけではなくて「兄と言われたから→兄弟は助け合うものだから」ぐらいで動いてるのが難ですが、まあ、絆形成はこれからやっていけば大丈夫でしょう。最後のシーンで「へへっ」と笑うガンマモンは既にちょっとヒロに懐いてる表情で可愛かったです。

ただ戦闘終盤のヒロの「まだよく分かんないけど(ガンマモンは俺の)弟なんだろ!」はいただけないです。二人に本当に兄弟の絆があり、ガンマモンがもっとしっかりしているキャラならともかく、ついさっき兄弟だといきなり決められただけの関係で、知能的には赤ちゃんみたいなガンマモンに「弟だから兄の俺を守れ、兄の俺のために戦え」と聞こえる台詞を向けるのは良くないと思います。「兄だから頑張る!(お前のお兄ちゃんという役柄を頑張ってこなすし、その一環としてまずは目前の敵を撃退する)」みたいな文脈の台詞がヒロに言えれば良かったのですが。

 

■クソ親父だよねえ

しみじみ思うんですが、ヒロの親父、クソ親父だよなあ……。なんならヒロのパシられ病理も主体性の無さも、小さい時からこのクソ親父のお世話係をさせられ続けたからなんじゃないかなあとさえ思います。

制作スタッフが真面目に本気でその設定でやってるなら褒めちぎりますけど、そういうわけじゃないだろうなあ……。デジモンのスタッフって、機能不全家庭ネタをやりたがる割には扱いががさつだったり、クソ親ネタやクソ友人ネタをやってることに無自覚だったりすることが多い印象なんですよね。

 

自分が家にいるにもかかわらず、ヒロに家事をさせている。中学校の入学式時点で手馴れた朝食を作っていることから、小学生の頃からやっているのでしょう。

失踪して半年も連絡しない。ヒロは父親が生きていることを知っているふうではなかったので、このクソ親父、『生活費を振り込む』とかもしなかったんじゃないかなあ……

(・父親のクソさには関係ないですが、父親が奇怪な状況で失踪したにも関わらずどうも一回も帰ってきてないと思われる母親もたいがいクソです。連絡は取れたとのことなので、『連絡したのに一度も帰ってこない』んですよね、母親。)

・いきなりガンマモンという得体がしれない存在(しかも挙動的に赤ちゃん)をヒロに押し付けて、養育させる。自分はデジタルワールドで育児放棄ワクワク冒険旅してるのに、良い気なもんです。

 

こういうクソ親父(グレー案件のネグレクトじゃないかと思います)のせいでヒロがああいう主体性がない性格をしている……学習性無力感を拗らせているのではないか? というような挙動をしていると考えれば筋は通ってしまいます。まあ……現段階ではそこまで断言するのは時期尚早ですね。

ヒロ=被ネグレクト設定じゃないんだったらなんで父親の失踪シーンにわざわざ「父親ではなくヒロが朝食を作っている」という不必要な描写をしたんだ? とは言えますが、自分が過去に視聴したデジモンシリーズから考えると、単にこの父親(母親も)の設定がネグレクトカス親父になっていることに気付いてないだけなよーな気がします。

 

■クソ友人だよねえ

ヒロの友人のチャラ男・コタロウですが、まあ、クソ友人だよねえ。コタロウはヒロが「頼まれやすいオーラが出てる」のを分かっているにも関わらず、自重せずそのオーラにノってしょっちゅうヒロに頼みごとをしてるようです。「なんか頼みやすくてうっかり頼んじゃうから、あまりなんでもやらせないように気をつけよう」とはならないらしい。

危険区域に入るドアを開けてくれとピッキングをさせ、悪事の片棒を担がせる。それで「やっぱお前便利だわー」とか言う。ヤな友人です。さっさと縁切ったほうが良い。(ここまで露骨に酷いと、毅然と断らないヒロも悪いが。)

ただその一方で、自分はその『イヤらしさ』が1話ではそこまで気になりませんでした。先に述べた通り、コタロウはいかにも『ホラー映画の序盤で死ぬから許されるよーな腹立つ奴』で、怪異に面白半分で首を突っ込んだ自業自得によって再起不能の老化状態で入院したからです。

コタロウはホラー作品の1話で死んだことでキャラが完成した。完璧です。

で、なんで再起不能状態から回復するかなあぁぁ。そのまま退場しておいたほうが良かったと思うよ。

それにさあ、コタロウがゲストモブなんかじゃなくて再登場するほど重要なヒロの友人キャラなんだったら、ヒロは「自分がピッキングしたせいでコタロウが被害に遭った」って事実にもっと悔いて怯えるべきじゃないかと思うよ。

 

■そのほかの感想

・導入描写は気合が入っていました。メッセ形式で今回の都市伝説の話をしつつ、バックでホログラムが当たり前のように使われている世界観を描写。実際に怪異に襲われるモブ女子の『時間を奪われる』描写も丁寧でした。

・先輩はこの時点ではいてもいなくても本筋に関係ないキャラですが、若干めんどくさいビビリ君で既にキャラが濃くて良いですね。主人公にお守りを渡すシーン、安産御守なのでトンチンカンなのですが、主人公を案じてくれる優しさは伝わります。

・瑠璃は、そこまで考えてSNSをしろというのはまあ難しい要求なのかもしれませんが、こいつが都市伝説の情報募集をしたせいで結果的にコタロウが危険区域に侵入して被害に遭ったので、良い印象はないです。軽率ですよね。

・デバイスのシーンが素直によく分かりませんでした。父親の失踪場所から拾ったのはデバイス一個だったのにヒロは箱の中に三つもデバイスをしまいこんでいたのは何故だったんでしょう。『カードがいきなり降ってくる』も唐突すぎてついていけませんでした。宅配屋のデジモンが指をさした後、ドアの効果音だけ残して次のカットでは退場しているのも「え?」となりました。

・ガンマモンの登場シーンの一連はコンゴトモヨロシク(※メガテン)に見えて仕方なかった。ヨロシクタノム! って言ってるし。

・戦闘中にガンマモンから出てきた謎の黒い影は、扱い方がヘタだなと思いました。あの影が出てきても出てこなくても戦闘の流れには一切影響がないです。クロックモンは一瞬たじろいでいましたが、黒い影が消えるとすぐに不敵な笑みを浮かべていました。「なんだアレは!?」とか「あの影はまさか……!」というセリフすらなくて、印象が薄いです。