灰色の本

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『デジモンゴーストゲーム』第3話「ラクガキ」:振り返り感想

デジモンゴーストゲーム』第3話「ラクガキ」の感想です。

ヒロインであるルリの初担当回ですが、さて。

 

※この記事は初見当時に他媒体で書いた感想を元に、後から再構築したものです。

 

 

 

■ホラー要素が快調

今回のホラーは「デジタルの写真データに赤いラクガキが浮かび、ラクガキの箇所から身体に異変が起こる」というものです。今回も凝ってて良いですね。

夜の博物館×ミイラという古典ネタだった2話から一転して3話はSNSでの都市伝説風と、一気に現代的なテイストなのも良いです。

 

今回は仲間加入するヒロイン・ルリが犠牲者だったこともあり、怪奇現象とその恐怖が丹念に描かれていました。ピアノが好きなルリの『手』が消えていくというのは弱みを狙われているようで良い感じに怖いです。追い詰められていくルリの様子を丁寧に追っていました。

 

毎回、怖すぎないけどしっかり「これは怖い……」と思えて上手いです。メインキャラが薄味な傾向がありますが、ホラー展開だけで「次はどんな手段で怖がらせてくるだろう?」と思えるので、このまま弾切れせずに良ホラー描写が続いてくれることを願います。

 

 

■ヒロはどんな子なの!?

個人的にヒロの印象は「頭は良いが流されやすく主体性に欠ける」だと思っています。詳細は下記の第1話感想を参照してください。

 

haiironohon.hatenablog.com

 

ヒロは第2話後半の博物館潜入でも異様な行動力を発揮していたので首をがっつり傾けましたが、それでも全体的な印象は変わっていません。与えられた状況にはその知性とドライな性格を生かして粛々と処理しようとしますが、あくまで受け身スタンスの子、というイメージです。

そんな子が、ネットのアイドル的存在(※アルファアカウントなだけだと思いますが)にDM送り付けてまで接触するとかある!?

 

い、いや、2話でもデジモン接触するために博物館に潜入する異常な行動力は見せたので、『デジモンの情報のためならなんでもする』イカデジモンマニアみたいなやる気スイッチの入り方をしてたのはそうですけど。

でもなんでそこまでしてデジモンの情報を知りたいんでしたっけ!? 情報目当てではなくホログラムゴースト=デジモンの被害を押さえたい(ルリを救いたい)という動機だとしても、そんな正義感と決意にあふれる表明をヒロの口から聞いたことがないんですけど!?

 

なんだか、ヒロの性格設定がふらついているような気がします。

……しかしまあ、上述のように長々と感想を書いてしまうと如何にも問題がある描写みたいに読めてしまいますが、正確には「そもそもキャラ付けがまだ薄く、情報量が無い」「目的意識がはっきりしないので、どのぐらいの熱意で動いてるキャラなのかがよく分からない」というのが正解なんだと思います。

 

例えばこれが「アホ父さんが! 一人だと何やらかすか心配だから! デジモンのことをばりばり調べて出来るだけ早くデジタルワールドに突入するぜ! うおおおおお!」みたいな暑苦しい決意に燃えるキャラだと表現されているなら、第2話で犯罪行為をして夜の博物館に乗り込もうと、アルファアカウントのりるるんにいきなりDM送り付けてコンタクト取りに行くのも「その行動するのはびっくりだけどお前の気合とやりたいことはまあ分かる」で済む話だと思います。

※ヒロの目標が分からないという話は下記の第2話感想も参照してください。

haiironohon.hatenablog.com

 

 

■ルリちゃんのファーストインプレッション

ルリちゃんは、現段階では可もなく不可もなくです。キャラデザインは可愛いですがそれ以上ではなく、まだ薄い。今後に期待です。

 

・ホラー現象にしっかり怯えてくれるのは人間らしさを感じて良いですね。

 

・怯える一辺倒ではなく、過去の犠牲者である美容師に話を聞くため住所まで直接会いに行くルリは行動力があって勇ましくて良かったです。

 

・助けようと申し出てくれたヒロへの態度は感じ悪かったです。

確かにルリ目線ではヒロは突然沸いて出てうさんくさいことこの上ないんですが、自分を助けられるかもしれない人にそのツンケンした態度はあんまりじゃないでしょうか。『恐怖で動揺して当たり散らしている』のではなくて素で態度が悪いだけに見えるのが更に良くないです。

 

・バトル中、デジモンが見えてなくて状況を正確に理解できないのに、何か危ない状況なのを理解してヒロからデジヴァイスを確保して「これ! 何をどうしたらいいの!?」って言い出すところや、アンゴラモンを初めて視認して実体化させるシーンの「次からはもう隠れて聞いてないで姿を見せてよね!」なんかは、行動的で強気で凛々しくてすごく良いと思いました。彼女の美点はその行動力と勇気だと思います。この方向で雑味なくキャラを伸ばしていけると良いのですが。(ただし、無駄に行動力があるせいでトラブルに首を突っ込みがちという意味では既に雑味が混入しています。)

 

・今回の第3話と、第2話まででちょろちょろ出てきたルリの印象を総合すると、「トラブルメーカーとまでは言わんが、トラブルが場に存在したときに彼女がいることで収束に向かうかというと微妙。どちらかというと火に油注ぎそう」というビミョーなところでキャラが安定しちゃっている気がします。この後どうする気なんでしょうか?

ヒロが積極的ではないので、代わりに彼女みたいな暴走したキャラに事件を呼んできてもらうと話づくりは楽になるのはそうなのですが……

 

 

■会話する気がないヒロとルリ

ヒロとルリの初会話。アニメ作品として、視聴者への情報の与え方はテンポが良いです。

が、緊迫した事態なのに、二人ともまともに会話する気がないのはびっくりします。ヒロはデジモンが見えてないルリへのフォローをほぼ入れずに自分達だけで話をしようとするし、ルリは突然別のことを話し始めたりするし。

 

ヒロ、「君のそばにアンゴラモンっていうデジモンがいてね」という台詞を言ってくれないんですよ。いきなり「アンゴラモンはどうだ、こうだ」という、アンゴラモンの存在をルリが知っていることを前提にしているかのような喋り方をするんです。

そりゃあアンゴラモンの話したことを一から十まで通訳してたらテンポが悪すぎますけど、もうちょっと気を遣った台詞回しにできなかったもんでしょうか。

 

ヒロはルリとの初会話の途中で、「時間が無い」と言っているルリを「絶対帰ってくるから!」と置き去りにしました。何の事情説明もなく、「説明してる時間が無いんだ」の一言もなくです。

ヒロは、頭は良いのかもしれないけど他人の気持ちへの想像力が無い子かもしれないなと感じてしまいました。

 

 

■穏やかな設定の穏やかな良いやつ、アンゴラモンさん

ただただ悪意無く、ルリのピアノが好きでルリの周りをちょろちょろしてただけ。別にそれ以上の大した理由はないけど、ルリが好きだから守りたい。ルリが好きだから身を投じて戦ってくれる。

そんなアンゴラモンの設定は、派手さはないけど穏やかで良かったです。

 

身体は大きいしぼさっとした感じのキャラデザインですけど、実体化して本気が出せるようになれば鈍重ではなく、(体格を利用した押しつぶし技がありはするものの)俊敏に戦う格闘家キャラっぽいところに落とし込んでいて面白かったです。戦える善人、アンゴラモンさん。

 

彼は多分頭も良さそうですね。最後の格言みたいな謎の台詞は、頭が良いから人間達の格言をもじって遊んでいるのか、頭が良くても人間達の格言までは分からずトンチンカンなことを言ってしまうのか、どちらなのかよく分かりませんが。

 

ただし、ひとつ懸念を言うなら、アンゴラモンさんは別にルリと仲良くなりたかったわけではないですよね。ルリのピアノを聞きながら穏やかに見守っていければそれで良かったようです。

 

アンゴラモンさんは今のところ、欲求が穏やかに満たされているので積極性はありません。ルリとばりばりに仲良くなりたい意志も感じないので、その積極性の無さが今後の絆構築において足枷にならないかは気になるところです。

 

ところでルリおまえ、物事が一段落した後にアンゴラモンに言うことが「ありがとう」じゃなくて「(アンゴラモンの自己紹介を遮り、許可なく抱きついて)ふわふわー♪」だったのちょっと腹立ったぞ。アンゴラモンさんはお前のペットじゃねえし、とりあえずお礼の言葉ぐらい言え。言葉のコミュニケーションをしてくれ。

ルリがアンゴラモンにいきなり抱きついたのは『自分の傍にいて良い』という承認の意図を表わす言動だったんでしょうけど、なんかこう、もうちょっと……。素直になれないツンキャラというわけでもなさそうなのに、なんなんでしょうね、この真っ当&明確なコミュニケーションをしてくれない子は。

アンゴラモンは初回から「君のピアノが好きだ!」「君を絶対守るから!」って言ってくれたんですけどね。ほんと良い人。

 

 

■ルリって仲間になったの?

ルリちゃん、地味に仲間フラグが立ってない気がするんですけど、次回はふつーに仲間加入してるんでしょうか。

 

なんというか今回の話って、「事件は終わったね。それじゃ!」で解散したらそれで終わりな気がするんですよね。事件解決のために何時間も一緒にいて絆が芽生えたとか、ちょっとしか喋らなかったけど意気投合したとかいう様子ではありません。友達になろうとか、これから一緒に頑張ろうみたいな台詞も特にありませんでした。

なんというかなんというか、その、例えばですが、鬼太郎シリーズとかニチアサ戦隊ものとかで、『その回のゲスト被害者。主人公が助けた』というだけのキャラって、いちいち毎回友人になったりしませんよね? 多分あんまりしないと思うんですけど……。

 

今回のルリは、ヒロにとって『その回のゲスト被害者。主人公が助けた』というだけな気がするんです。そりゃ、デジヴァイスは渡しちゃいましたけどさ。でも、ヒロがあのデジヴァイスがそんな重要なものだと思ってるという気もしないんですけど。

 

 

■現時点での良キャラ、トンチキ先輩

ルリの仲間加入フラグが立ってるのかどうか微妙な一方、何故かトンチキ先輩・清司郎の仲間フラグは立ってる気がします。ルリと同じような経緯で先輩もデジモン事件に巻き込まれるなら、先輩のほう『は』デジモンをパートナーにしているヒロ達に泣きつくだろうなあという個性が既に立っているのです。

 

というか、主人公のヒロとヒロインのルリにそれぞれ「様子見。」「警戒。」の要素が多分にあることを考慮すると、今のところ出番が大してあるわけでもないトンチキ先輩・清司郎の一人勝ちなので困りますね。ヒロやルリの「こいつのこういうとこはヤな感じだけど、あとで深掘りされるってことかな……/仲間になって仲良くなっていけば気にならなくなるのかな……」みたいな要素がなくて先輩だけ不快感がないんですよ。

そのうえで、トンチキなビビリ挙動ばっかりやってるので見てるだけで面白いからズルいキャラですね。寮生であるヒロやコタロウを心配する描写が既に何度も出ているので、面倒見が良いところが伝わってくるのも良いです。現実に近くにいればめんどくさい人ではあるんでしょうけどね。

先輩は、出番はそんなになかったはずなのに既に良キャラです。このまま上手く仲間加入→掘り下げに繋げられると良いですね。期待。

 

 

■そのほか

・ドラクモンの「ワルは山ほどいるから、(自分の悪事の)相棒はすぐ見つかる」という言葉はイヤらしくて良いですね。人間も汚い奴は汚いということをドラクモンは既に承知のようです。

人間と言葉は通じるし人間を観察することもできるが、人間(一般的な善人)の価値観は持っておらず、悪人と協力して自分の目的を達成することは思いつく。今作の妖怪・悪魔としてのデジモンのイヤらしさがよく出てると思います。

 

デジモン側から触れる・触れないというルールを利用した戦闘は面白くなりそう……なのですが、肝心のそのルールが難解だなあと思いました。理解はできますが直感的ではない。必要以上に複雑であるような気がします。

今回のバトルは先にしっかりルール説明の場を設けてからやったほうが面白かったのではないかと思います。