灰色の本

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『デジモンゴーストゲーム』第5話のジェリーモンを許せるか? ~害獣としての『デジモン』達と創作上のクズについて

デジモンゴーストゲーム』第5話「神ノ怒リ」のジェリーモンの悪業についての話です。

また、ここまでの記事でも述べてきた「今作のデジモンは『害獣』である」ということや『創作上のクズはどこまで許されるか』みたいな話です。

※この記事は初見当時に他媒体で書いた感想を元に、後から再構築したものです。

 

 

■先に総評

まず先に述べておきますが、自分の出した結論は第5話感想①で述べたとおりです。

可愛い。イカレてるクズだし害獣だけど、何故か先輩とのコンビ相性は良い

これは色々考えた後に「なんであれ自分は最初に思ったから自分の感想はそうだ」という形で出した結論です。つまり、相当悩みました

自分は確かにジェリーモンを可愛いと思ったし、先輩とジェリーモンのコンビをもっと見たいと思った。けどそれと同時に「許せない」と思う人がいるだろうことが分かるし、すごく気になるし、自分自身、このジェリーモンを許して良いのか? と思いました。

自分の出した結論は上記です。しかし『個人的な結論』である、とは何度強調しても強調しすぎることはないです。そして、一応結論を出してケリをつけたと言えど、迷いが残りまくっているのも確かです。

 

■害獣としてのデジモン

『ゴーストゲーム』のデジモン達は、「日本語が通じるため和解できる連中『も』いる」という存在です。「話し合いで和解できることを前提に動いていい存在ではない」のです。

第5話までだと、話し合いで問題が収まったケースが3件、問題が収まらず人間に危害を与える状態のデジモンが野放しにされたケースが2件です。数的には解決ケースのほうが1件だけ多いですが、アニメ5話までで『積極的に人間に危害を加えるために動いており改心しなかった凶悪なデジモン』が5例中2例もいるのは今作のデジモンは危険であるというには十分なのではないでしょうか。

でも、それらは、デジモンの倫理観は人間と違う』からなのです。一貫してそう描かれてると思います。

彼らデジモンは、人間の考える善悪や常識に縛られていません。人間を大事にするなんて考えは基本的にはありません。人間は、デジモン達にとってはおもちゃかそれ以下の存在です。時間を奪おうが何しようが自由なのです――恐らく、『人間を殺そうと』彼らの自由です。

そして、人間に善意または好意で動いている連中でさえ、永遠の命を与えると言って拉致拘束して危うく殺すところだったり、強制的に友達にすると言い出してカボチャかぶせて目をえぐってくるような奴らです。「人間の富の流れを邪魔した! これはもう光の矢を108本ぶっ刺しても良いよね!」とかって襲ってくる奴らです。人間の常識が無さ過ぎてムチャクチャです。ふざけんなよこの野郎。

彼らは、人間の良き隣人なんかではないのです。決して油断ならない、隣にいる怪物。しかし、隣にいるので、話が通じなくても法律や武力で対抗することができなくても、折り合っていかないといけない存在。油断のならない天災、害獣であるのが今作のデジモンです。

確かにジェリーモンは悪い。けど、山を下りてきて人里を荒らす熊とか猿とかに「お前は悪い!」と言っても仕方ないのと同じなように、悪行を働くジェリーモンやデジモンたちに「お前は悪い!」と言っても仕方ないのです。だって、そういう存在なんですから。

むしろ、ジェリーモンは話が通じるほうです。ジェリーモンの『悪さ』(人間の価値観での『悪さ』)は、今作の他のデジモンどもの『悪さ』の中でそんなに悪目立ちはしていないと思いました。
ジェリーモンちゃんは、あなたの街のまあ話が通じるほうのまあ可愛いほうの害獣なのです。

それが相棒キャラとして仲間にいてほしいかどうかとか好きになれるキャラかどうかは別

 

■創作上のクズキャラとクズ行為はどこまで許されるのか

ジェリーモンは、作中で考えると擁護不能なクズです。お遊び気分でやらかしていることは、イタズラの範疇では済まされない大犯罪です。周囲に絶対いてほしくないタイプの輩です。

その一方で、メタ的に考えると、ジェリーモンはどう見ても制作スタッフが故意にクズに設定したタイプのクズキャラです。

作者が意図したクズキャラって、神キャラも多いと思うけど『神キャラであっても好みが分かれる』キャラだと思う~~~! 自分は笑って許しちゃうほうだしジェリーモンの無茶苦茶さと巻き込まれて泣き言言ってるトンチキ先輩は見てて面白い~~~!

けどさ。

ジェリーモンはどう見ても故意のクズキャラなんだけどさ。

それはそれとして、今回の行為は『制作スタッフが故意に設定したクズ行為』だったのでしょうか? つまり、最終的にマジラモンに先輩だけが土下座謝罪して、ジェリーモンは謝罪しなかったのは、「ジェリーモンが悪いけど、彼女はここで謝るはずがない」と制作スタッフが考えたための故意の結果なのでしょうか。それとも、「ジェリーモンは悪くないから当然謝る必要もない」または「ジェリーモンの悪事はどうでもいいことなのでジェリーモンの謝罪の有無もどうでもいい」という考えだったのでしょうか

後者だとしたら制作スタッフの倫理観を疑います。しかし、第5話からはいまいちどちらだとも言い切れないのです。

マジラモンは「富の流れを止めたのは貴様らか!」と複数系で述べていて、ジェリーモンの罪(ひいては制作スタッフ)を分かっているようにも聞こえます。

しかし、マジラモンは先輩とジェリーモンを視認してから発言しているので、単に原因が(場所は分かるけど)誰なのかまでは分かってなかったような気もしますし、マジラモンは「先輩一人の」謝罪を受け入れると満足して帰っていきました。となると、マジラモン(ひいては制作スタッフ)はジェリーモンの罪を分かっていなかった、ということなのでしょうか。

総合的には、どちらかと言うと制作スタッフが分かっていなかったような気はしますけど、はっきりはしません。

 

■『おとがめなし』が悪い

まあ良いです。「ジェリーモンが悪いけど、彼女はここで謝るはずがない」と制作スタッフが考えたための故意の結果だった、と好意的に見ましょう。

いや謝れよ。

「ジェリーモンはここで謝るはずがないようなキャラである」というのと、「誰もジェリーモンを責めないし謝罪・反省させない」って別の問題ですよね!?

そもそもマジラモン、「二人の」または「ジェリーモンの」謝罪を聞くべきだったんじゃないの? なんで先輩の謝罪だけ聞いて満足して帰ってんの?

細かい事情が分かってなさそうなルリとアンゴラモン、細かい事情を分かる知能がないガンマモン(とジェリーモンに好き放題されてて意見できない先輩本人)は置いといて、ヒロがジェリーモンに謝罪を求めないし諭しもしないのって何なの!? 話の本筋とズレるけど、ヒロってほんとめんどくさがり屋ですよね! めんどくさいから自己主張せず他人に言われるままパシられて、本気で困っている先輩は断ったほうが早いしめんどくさくないから爆速で断って、事態はひとまず解決したからジェリーモンを諭すなんていうめんどくさいことはしないって、そういうことなんですかね!?

ジェリーモンはクズキャラです。ここで謝るのはキャラ崩壊である、とスタッフが判断したならそれはそうなんでしょう。

誰か非難ぐらいしろよ。

尺が足りない? 非難される尺は先に用意しろよ。

 

■WARNING! これは子供向けアニメです!

ここまで考えて、結局自分は「ジェリーモンがクズ害獣であることは、今作のデジモンが基本的にクズ害獣であることから描写としては正しいと思う。何故か第5話の限りでは先輩とのコミュニケーションも成立していたし、先輩とのコンビは面白くて良く描けていた。総合的には5話は高評価。それはそれとしてスタッフの根本的な倫理観は今後めちゃくちゃ疑いの眼で見るけど。ていうか今までも割と疑いの眼だけど」という結論を出しました。
けどそうしてるうちに、ぽそっと、一言だけの感想を見ました。

>(意訳・要約)子供向けアニメなんだから悪いことは謝れよ。

 

ぐうの音も出ねえ。

 

すいませんでした。

 

そ、……そもそもですね? 考えてみれば、自分がジェリーモンを許す根拠にしている「元々今作のデジモンはおもしろおかしく人間を襲ってくるような、人間の善悪の価値観が通じない害獣である。そういう殺伐とした設定の作品なのである」というのが、子供向けアニメの設定なのかというところからだいぶ怪しい、ん、ですよね……

子供向けアニメの設定としておかしいものを根拠に何かを正当化しても、「結局それって子供向けアニメとしてはダメじゃない?」って言われたら、何も言い返せねえわ……何も言い返せねえぜ……。

 

この観点はどう考えても、自分では反論できませんでした。ただ、自分は最初っから、殺伐メガテンアニメとして『ゴーストゲーム』を見ていました。「深夜帯で本気で殺伐アニメにしたほうが面白いのになー」なんて思いながら。「最初から見方がおかしいだろそれは」と言われても、そう見ていました。

『自分の視聴の前提では、ジェリーモンは許せる』。だってデジモンは人間から見たら害悪であり、人間のことや人間にかかる迷惑など毛ほども気にしていないというのは当初からずっと描かれている前提なのだから。そういう殺伐としたアニメだという前提なのだから。

でもその『前提』が子供向けアニメ作品としてそもそもおかしいなら、子供向けアニメ作品としてはそもそものところから絶対におかしいのです。その考え方には同意します。

 

結局制作スタッフがあんまり考えずに殺伐設定とクズジェリーモン入れちゃったせいで派手に失敗しちゃってるってことなんじゃないかなあ。(逃げの結論)