『デジモンゴーストゲーム』第46話「女王ノ晩餐」：感想
『デジモンゴーストゲーム』第46話「女王ノ晩餐」の感想です。
大筋は良かったほうの回なんですが、結末も含めてディテールがカス。
■コタロウが連チャン出演でダルいし共感できなくてダルい
素直に、コタロウ3話連発は不自然でダルい。いやうん……今回はちゃんと怖いほうの話ではあるんですけど……。
コタロウが序盤からハイペース怪奇現象巻き込まれ男をやってたんなら別に良いんですが、なんでここに来て突然の3連発なんでしょう。『ゴーストゲーム』は話数入れ替えても何も問題ない構成なんだから、多少入れ替えろよ。なんですか、スタッフの中でにわかにコタロウブームなんですか。今一番やるべきはエスピモンブームだと思いますが。
で、前回第45話「幽霊新聞」では純然たる被害者だったコタロウも、今回はスケベ心を発揮してプールに通い詰めていたことが原因なので……直接的に怪異を引き起こすような真似はしていないものの、共感はしづらいんですよね。「でも元々はこいつがスケベなのが原因やろ……こいつ母親にガチギレされて入院を取り消されるぐらいの酷いナンパを看護師にしてたんやろ……セクハラ男なんやろ……」と思うと助けたくならないんですよ。
怯えた表情をしてるのは可哀想なんですけどね。今回の話、普通にトラウマものですしね。精神的に後遺症（※医学的な「後遺症」というよりは俗語チックなレベルの話）が残ってもおかしくないんですけどね。でも助けたくはならねえ。積極的に死んでくれとも思わないですけど。
でも最後まで見ると、トラウマにもならずに凄まじい精神的回復をして「おっ、ヒロ！ プール行こうぜ！」などとほざいてるんで、「やっぱこいつ一回死んどくべきだったかもな……」とは思いました……
■コタロウを友人と思っているとは思えない、放置対応のヒロ
相変わらず、ヒロがヘルプに入るのが遅い気がします……。第28話「顔取リ」でコタロウが引きこもってるのにヒロが数日ほっといたときも酷いと思いましたが、引きこもってるから異常が分からなかったという言い訳はぎりぎり……立たないですね……。まあ酷いのは酷いけど「分からなかった」とはいえるんですよ。でも今回は？ ヒロはコタロウが悲鳴を上げて風呂場から逃げ出すという様子を初期から見ていて、他の同様の奇行だって気づかなかったとは思えないのに、2週間放置してますよね。（弁当を買ってきてあげているのが甲斐甲斐しいとは特に思えません。だって2週間後の時点であの会話をしているということは、多分その間は放置してますよね。全然甲斐甲斐しくないですよね。奇行を繰り返した後に外出不可＝不登校になって計2週間経つまでコタロウを放置って。）
ヒロにとって、友情っていったい何なんでしょうね。ヒロって特に友情に篤くはないですよね……というかドライを通り越して心が砂漠レベルですよね。さっさと助けるために動いてやれよって話ですし、こんだけ巻き込まれてるんならもうデジモンのこと教えてやれよって気がするんですけどね……。まあ、コタロウはヒロにとっては「パシってくる友達」であるはずなので、そんなに熱い友情を抱きようがないのかもしれません。
そしてヒロにとって、命って何なんでしょうね……。これだけ怪異現象に（偶然巻き込まれただけで自分から飛び込んではいないことが大半とはいえ）立ち向かっているのに、誰かの危機に「これもまたデジモンの仕業かも？」という感覚が働かない、またはデジモンの仕業だと思ったとしても助けようという感覚が働かないって。
ヒロの人命軽視スタンスは初期からずっと一貫していると思います。そりゃあ、メンタルもパワーも不安定な赤ちゃんデジモンをパートナーに持つだけの中学生であるヒロが助けられる範囲はそう大きくはないでしょうけど、せめて手が届きそうなところぐらい手を伸ばそうとしてもらえないでしょうか……。
■話の大筋は良いほうの回
上記までで指摘したのは、ディテールの問題です。ディテールが酷いだけで、今回の話の大筋は良いほうだったと思います。ディテールを無視していいなら、この世の物語はぜんぶ「あらすじ」だけで良いことになりますが。
コタロウが「でもこいつカスじゃん……カスじゃなくても巻き込まれる可能性はある怪異だったけど、でもひとまず今回巻き込まれたのはナンパカスだったせいじゃん……」という情報があるので感情移入しづらいだけで、日常生活でありふれて存在する「水」に怯えて追い詰められていくコタロウの描写には説得力がありました。幻覚に操られて、自分で自分の下ごしらえを完成させていく『注文の多い料理店』を彷彿とさせる流れも良かったですね。（オウリアモンがアンゴラモンに向けた「注文の多い料理人ね」というセリフはそのオマージュ性を暗に指しているのでしょう。指し方が乱暴ですけど。）
バトルの流れも、特にアンゴラモンさんの機転が良かったですね。オウリアモンが引っ掛かりやすすぎという面はありますが、すぐにオウリアモンの心をくすぐる言葉を見抜いた彼は間違いなく今回のMVPです。全員が封じられたあの状態から手際よく抜け出し、幻覚をもたらす痣（痣……？）まで解除したのは素晴らしかったと思います。アンゴラモン、格闘シーンを描ける人がいないのか枚数を使えないのかで戦闘での不遇が目立ちますが、それなら今回みたいに頭脳方面で見せ場を作っていけば良いんじゃないですかね？
■ド最低カス親父は食われろ
こっ……の、カス親父！ カス親父！ マジでカス親父！
なんだよこの株を下げることしかしないカス親父！ デジモンを結果的に暴走させてるだけでカス度が最悪だけど、更に多分風呂に長いこと入らなかったこともあるカス親父！
あらゆる意味でお前がオウリアモンに食われるべきだった！ オウリアモンがデジタルワールドにいるうちに、風呂に長いこと入らなかった前科があると思われる臭いお前が食われてオウリアモンを「あ、人間ってこんな感じか～もういいや」と満足させておくべきだった！！！
せっかく大筋は良いのに、ねじ込まれるカス親父がカス！！！
■殺人を未遂だから咎めないという「悪い」結末
せっかく大筋は良いのに……大筋は良いのに……。
オウリアモンがゲテモノ食いの変態害獣であること自体はなかなか良かったと思います。俺は第21話「蜘蛛ノ誘惑」の脳食い変態害獣アルケニモンさんのことも評価してんだよ。人間と人外の味覚が違うことや倫理観が違うことは仕方ないという前提にさえ立てば、「人間美味しいからor美味しそうだから食べたい！」は今作の害獣デジモン達の中ではかなり分かりやすいシンプルな欲求ですよね。相容れないけど理解はしやすいです。そして、「相容れなさ」も理解しやすいです。
けど殺人未遂犯をおとがめなしで野放しは何。ヒロたちは「人間食べなくても他の食材で生きていけるんじゃね？」って提案しただけですよね。グルメを名乗るオウリアモンなら「やっぱり未知の食材（人間）を食べてみたい」と思ってまた暗躍し始める可能性はいくらでもあるでしょうに。
そこでキレてデジモンをぶん殴ったり殺したりしたら『ゴーストゲーム』の不殺コンセプト（※）に反するというのは分かりますが、友達がグルメ目的で精神的に追い詰められた挙句殺されかけたのに、全く冷静にのほほんと事情を聞いて、なんなら途中で苦笑なんかも挟んだりして、そのまま野放しにしてチューバーデビューも見守るという神経が分かりませんね……。神経が図太いとかじゃなくて、ひん曲がった形してると思う。
（※）第37話「死霊ノ群レ」と第45話「幽霊新聞」で実質的に「殺害による解決」を解禁してしまったせいで、既に相当形骸的になっていますが……
今回、大筋はほんと良かったと思う。いや、「ほんと」っていう強調表現を使うほど著しく良くはなかったけど、良いほうの回（相対評価）だったと思います。
でもほんとディテールがカスだし、「殺人未遂反を未遂だからおとがめなしで見逃しました」エンドという締めはだいぶ「悪い」と思います。せめてデジタルワールド送りにしろよ。さっさと来いよウーバー野郎。
■そのほか
・コタロウがナンパカスなのは酷いんですけど、「モテるために清潔感を重視していて綺麗好き」はまあ一応感心だなあとは思います。女性から見ると「顔が美形かどうかは案外どうでも良いが、清潔感の段階で無理な男性はいる」というのは結構聞きますしね。
・先輩も、寮生に対する普段の甲斐甲斐しさから考えると、コタロウの状況にもっと早く気づいてくれても良さそうなものです……。でもまあ、先輩はド鈍いときはド鈍いイメージがありますし、たまたま直接的な場面（水を怖がっているところ）を見ずに作中のような「走り去っていくところ」しか見なかったなら気づかない可能性も……
いや。やっぱり気づけよ、部屋から出ずに約2週間経過してるのは。同じ寮で暮らしてる一般生徒同士ならともかく、先輩は寮長で、しかも真面目に寮生を監督しようとしてる人でしょうがよ。
寮生であるコタロウが明らかに危険な状態でふらふらと外に出ているのに、ヒロの「追いかけましょう」に「待って、本気で！？」と返す先輩もどうかと思いました。ただのビビリキャラならそれで正しいでしょうが、先輩は寮に関わることなら寮長として勇気を奮い起こせる人でしょうに。キャラブレが激しいです。
・男女で調査する更衣室が分かれるというのは当然なんですが、じゃあジェリーモンはルリと一緒に女子更衣室を探索しろよ。あるいは「デジモンだし、他の人間には見えないし……」で無視してアンゴラモンがルリについていけよ。なんで戦闘能力がないルリを一人にするんだよ。
・めちゃくちゃどうでも良いんですが、『開く』ような質量がある皮膚症状は「痣」ではなくて「おでき」とかだと思います……。
